Accelerated Red Invader   作:4E/あかいひと

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本来の予定→先輩リンカーによるリアルアタック&イジメ開始

ノリに任せた結果→ヤバげな先輩リンカーと共に6大レギオンへの反逆フラグ

どっちの方が酷いんだろうね(白目)


ギア3-先輩リンカーは完全一致

最近、学校に通うのも悪くないと思い始めた。

 

最初の学力調査テストでこそ下から10番目ではあったが、毎日のテストでは平均的な点数を取れる様になってきたし、ブレインバーストのお陰で勉強時間は大量に確保できるし、ストレスの発散も対戦で簡単に行える様になった。

 

兄のあの台詞、今の俺を壊してしまうというあの台詞は、間違いではなかった。これからどう転ぶかはわからないが、現状ではいい方向に今の俺は壊されて再構築されていっている。

 

「すんません、赤井くんはいますか?」

 

そんな中、少しだけ居心地の悪さが改善された教室で、聞きなれない関西弁が外から飛んできた。代々受け継いできた我が校の制服である学ランだが、腕に巻かれた『書記』の文字が目を引く。

 

3年生、狩野一鉄先輩。生徒会の書記…………とは名ばかりの、この学校では成績が悪くとも優遇される例外である(まあ、周りの視線から察するに侮蔑交じりの視線が完全に消えてるわけではなさそうだが)。

と言うのも、射撃競技で数々の賞を獲得し、この学校に貢献しているのだから。一芸に秀でていたら、俺もなんとかなったのだろうか?

 

「はい、俺が赤井です」

「おお、良かった。少し話あんねんけど、着いてきてくれへんか?」

「…………あの、あと10分で授業が始まるのですが」

「ダイジョーブダイジョーブ! そこまでには終わらす」

 

何故か、獲物を狙うような視線を向けられた気がしたが、気にしたら負けなのかもしれない。

 

 

◇◇◇

 

 

「ふふふ…………けっこー待っとったけど、こないなまでにコケにされるたぁ思わんかったわ」

「…………ふへ?」

 

急に空気の変わった狩野先輩に、思わず変な声が漏れる。

 

「新年度、新入生にリンカーおるかどうか探しとったら、まーさーかー在学生がリンカー、それもあの『禁断の槍』の弟やとは思わんかったでぇ…………あの人マジで《子》つくりはったんやな」

「は、はぁ………」

「お前やお前ェッ!!」

 

ぐるりと振り返られ、そのあまりの剣幕にたじろぐ。

 

「流石に隆介サンから説明くらいは受けとるやろ!? なんで学校のローカルネットワークのマッチングリストを確認せえへんかったんや!?」

「いや、リュー兄から聞いたのは、ほとんど『バーストリンク』ってコマンドだけですけど」

「ハァッ!!?」

 

…………と言うか、

 

「えっと、狩野先輩もバーストリンカーということですか?」

「…………それ以外におらんやろアホウ。まあええ」

 

とここで、聞きなれ始めた加速開始の音と、乱入されたことを示す英文が、目の前に並んだ。

 

「い、いきなり対戦か…………」

 

ローカルネットワークなので、観戦者はおらず、対戦ステージと化した学校の校庭に、レッド・インベーダーを纏った俺は突っ立っていた。

 

「おう、おったおった」

 

どうすれば良いのか途方に暮れていた俺の背中から、先程聞いた声が飛んできた。

振り返るとそこにいたのは、俺と同じ赤いアバター。何かのヘルメットと、背中に担がれている巨大な銃…………と言うよりは砲が目を引いた。

 

「じゃ、自己紹介でもしよか。俺は狩野一鉄。このデュエルアバターは『ヴァーミリオン・デストロイヤー』。これから多分長い付き合いになるやろうけど、よろしゅうな」

「…………多分知ってるとは思いますけど、赤井宗介です。このアバターは、『レッド・インベーダー』です。長い付き合いというのは?」

「おーそうやそうや。いやな? あまりに何にも知らん後輩にレクチャーっつーやつやな」

「レクチャー、ッスか」

 

でも、要らんよーな気がするんだよな…………リュー兄は無意味なことをする質じゃないし、教えなかったのは教えなかったなりの理由があると思うんだ。

 

「成る程成る程…………でもなー、最低限は知っとらんとアカンこともあると思うで? 特に、その『レッド』っつー色に関しては」

「?」

 

そう言えば、いつもグローバル接続で戦う時、なんか観客の方から『純色』だのなんだのって言われてた気がする。

 

「つかそれよりも何よりも、インベーダー。お前は現実世界と加速世界との関係について注意を払うべきやわ。その分やと、リアル割れに関しても無頓着やろうし」

「…………おっしゃるとおりで」

 

多少は気をつけてるつもりだったんだが…………まあ学校で遭遇する可能性について考えなかったというのは確かにその通りだ。反省。

 

「まあとにかく、せめて現実世界での立ち回りぐらいは教えとく。そんでまあ…………同じ学校で、同じ無所属やし、なんかあったら相談ぐらいには乗ったる」

「うーん、ありがとうございます?」

「なんで疑問系やねん…………」

 

口では疑問系にしつつも、信頼できそうな人物の登場に、内心俺は胸を撫で下ろすのだった。

 

一先ず先に聞きたいのは、

 

「リュー兄は、どんなバーストリンカーだったんですか?」

「それは知らん方がええ」

 

バッサリ切られた。

 

 

◇◇◇

 

 

「まあ折角対戦始めたし、噂の『暴走赤バイク』の実力、拝見させてもらおか」

「なんすかその渾名!?」

「え、知らん? レッド・ライダーの後の純色のレッドでけっこー注目浴びてんでお前」

「知らなかった…………」

 

それはそうと、対戦となれば俺のすることは一つだけである。

 

「《レッド》!!」

 

愛車を呼び出して、態勢を整えるまで逃げるのみ。

 

けたたましく音を上げながら、俺は120km/hを超えない速度でその場を離れる。

 

普通ならこの場を見逃す筈も無かろうが、いつもの俺が見たいのか、はたまた携えたその砲と言っても差し支えのないその武器を信頼しているのか。多分、どちらもな気がする。

 

なれば、いつかのような逃げ腰でいるわけにはいかない。ソコソコのスピードが出たところで俺はターンをし、アクセルを全開にする。

 

120km/hを超えて、吹き出し始める炎。そして、メーターは容易くレッドゾーンまで振り始める。

 

ここから先はいつ壊れてもおかしくない、自爆特攻である。

 

そんな速度にも物怖じしない先輩は、不敵な雰囲気を漂わせながら、映画でよく見るスナイパーの構えをとって、その砲口をこちらに向けた。

 

「ウォォォオオオオオオオオッッッ!!!」

「ハッハー!! 熱いのは嫌いやないで!! でも、それでどうにかなると思っとったら大間違いや初心者(ニュービー)ィ!!!!」

 

そしてその砲口が、火を噴く。

 

この時、俺は極度の集中力に支配されていた。

フィジカル・バーストを唱えた時のように、意識だけが加速…………しかし、砲弾を避けるには十分だった…………筈だった。

 

紙一重で避けようと、体を傾けやり過ごそうとしたら、

 

「グ、ゴ…………ア……ッッ!!?」

 

避けたと思ったその砲弾の、放つ衝撃の余波に左腕と《レッド》の一部を持っていかれた。

 

そして、《レッド》が壊れたということは、

 

「ちぐ、しょう…………つえーな、オイ…………ッ!!!」

 

バランスを崩してコケ始め、最近ではもう慣れた、愛車の爆発に飲み込まれ、俺は手も足も出ず負けた。

 

この先輩、めっちゃ強い。

 

 

◇◇◇

 

 

「まぁ、授業料としちゃこんなモンか」

 

構えた『強化外装』《Meteor Smasher》を背中に担いだヴァーミリオン・デストロイヤーは、息を吐きながらそう言った。

 

「にしてもあいつ…………初見で砲弾自体は避けよったで」

 

ヴァーミリオン・デストロイヤーは、正統派赤系の銃器射撃アバター。現実世界の狩野一鉄のスペックと噛み合った、《完全一致(パーフェクトマッチ)》アバターである。故にその強さはかなりのものであり、対戦では2m強もあるその砲身から放たれる砲弾は余程のことが無い限り外してこなかった。

 

だと言うのに、レッド・インベーダーは、ソレを避けた。加速世界に浸かり始めたばかりの初心者が。それも、放たれた後の銃弾を避けるという、ありえない動きで。

 

「く、くくく…………流石は純色ってか。こらえらいオモロいことになるで…………」

 

デストロイヤーが思うに、あの後輩はまだあのアバターの本当の能力(・・・・・)を発揮していない。

いくら色物とはいえ、純色の赤が、純粋な近接戦闘アバターである筈が無いのだ。

 

それも含めると、デストロイヤーは愉快で愉快で仕方なくなる。

 

「流石はアンタの弟や、『KNDN Pulse』…………えらい物騒な輩をこの世界に放りおってからに」

 

加速世界の6大レギオンの一つ、『プロミネンス』の王『レッド・ライダー』が加速世界を退場してから、この世界は停滞気味だ。そのことに多少なりとも嫌気がさしていたデストロイヤーは、嵐の予感に胸を震わせた。

 




どうでもいいけれど、シルバー・クロウの悪堕ち二次をあまり見ないですね。絶対一巻でパイルに負けてたら絶対第二のディザスターになると思うんだ。

…………誰か書きません?

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