Accelerated Red Invader   作:4E/あかいひと

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今回すんごく短い…………でも投稿したかった。


ギア2-劣等生

後に『危険域』と呼ばれるアバターの記念すべき初戦は、対戦者達が顔をあわせることなく決着が着いたということで、いろんな意味で笑いを誘う結果となった。

 

だが、笑えたのはここまでだった。

 

第2戦、レッド・インベーダーの相手は黄色系アバター。トラップを仕掛けるタイプのバーストリンカーだった。

その時のステージは世紀末ステージ、燃えるものもなく(というより、既にステージが燃えている)、苦戦するかと思われた。

 

が、しかし。

 

「加速加速加速加速加速、加速ゥゥゥゥウウウウウッッッ!!!!」

 

インベーダーは、相手のセットしたトラップを文字通り踏み壊し(・・・・)て、地雷原を突破し───────

 

「轢き潰すッ!!!」

 

燃える車輪で文字通り轢き潰し、瞬殺した。

 

黄色系アバターのレベルは1…………とは言え既にレベルアップに必要なポイントは集め終わっていた。つまり、少なくともそれだけの勝利を重ねてきた相手を(初見殺しであることは確かだが)、いとも容易く倒したのだ。

 

3戦目、インベーダーの相手は緑系アバター。レベル3の、物理攻撃耐性に定評のあるバーストリンカーだった。

流石に、前回の様なことはできないだろうということで、観客はインベーダーが負けるのを待っていたのだが、

 

「カミカゼアタァァァアアアアアック!!!!」

 

インベーダーは知ったことかとドッシリ構える相手に突撃し…………爆散した。

ただ爆散しただけならなんの問題もなかった。だが、その余波を喰らった相手の体力が、1/3削れていると言うのだから問題だった。

加速世界のデュエルアバターには、『同レベル同ポテンシャルの原則』が適用されている。つまり、同レベル同士ならばスペックの総合値は同じだが、逆に言えばレベルに差があれば、絶対に低い方が総合値は劣っているということだ。

それなのに、このダメージ。しかも、物理攻撃耐性に定評のあるアバターが、である。

レベルが高くとも、防御力が低ければ間違いなく相討ちに持っていかれることを意味していた。

 

この後も、レッド・インベーダーは沢山の戦闘をこなし、時に自壊、時に自爆、時に相手を轢き潰しながら、白星と黒星、そして引き分けを大量に重ねていった。

 

この時期のレッド・インベーダーは、後に『レッドゾーン安定期』と呼ばれることになる。

 

 

◇◇◇

 

 

『ブレインバースト』のシステム自体は、最後にリュー兄が教えてくれた『加速コマンド:バーストリンク』を唱えることで理解した。基本的な操作は、問題なく網羅したと言えよう。

 

問題は、俺のデュエルアバター:レッド・インベーダー…………と言うよりかは、レッド・インベーダーの『強化外装』である《Red》だった。

 

格ゲーではなくオンラインゲームでのキャラビルド的な考え方になるだろうが、俺のアバターは、その割り振りポイントをこの《レッド》に大半振り込んでいるらしい。確かに、前に放り出されるだけで死ぬなんて格ゲーキャラに有るまじきスペックの低さだ。つか、スッゴい痛かったけど、このゲームのペインアブソーバーどうなってんだろ…………。

 

と、ともかく。俺がこのブレインバーストで勝ち抜くに当たって、この《レッド》を頼りにするしかあらず、その為には《レッド》について深く知ることが重要だと考えた。

 

ポイントをかなり消費することに目をつむり、俺は手当たり次第に(流石に4レベル以上の相手には挑まなかったが)マッチングリストにあるプレイヤーにバトルを挑んで、特性把握に努めた。

 

そうして《レッド》について分かったこと。

 

・120km/hを超えると至る所から炎を吹き出す。

・炎を吹き出した状態だと、悪路走行が気にならなくなり、地面に仕掛けるタイプの罠を踏み潰して無効化できる。

・速度計の針がレッドゾーンを超え始めると、高確率で分解を始めて壊れ、最後に爆破する。

・120km/hを超えてから少しでも減速すると爆破する。

・ぶつかって壊れたら爆破する。

・レバーはあるが、ブレーキとクラッチがない。

・燃料の概念がない。

 

…………つまり、本気で走り始めたら勝つか死ぬしかないカミカゼ仕様のバイクである。

 

確かに強力な『強化外装』だ、当たれば大体の相手は跳ね飛ばしたり轢き潰すことができる。でも、乗ってるだけで死と隣り合わせというピーキーさは、冷や汗モノだ。強力さを死にやすさでバランスとったのかねぇ…………。

 

とにかく、特性を理解していったことで、安定した勝利を拾える様になった為、浪費したポイント、なんとか初期ポイントである100に戻すことができた。多分だが、このポイントが無くなるとゲームオーバー扱いになるだろうから、気をつけなければなるまい。

 

そんな感じで、加速世界では順調だった俺。現実世界では、少々厄介なことになっていた。

 

中学校の新年度開始である。

 

 

◇◇◇

 

 

中学2年生になった俺。無理矢理進学校に通わされた俺は、新しい教室にてとても肩身の狭い思いをしていた。

 

世間一般で見れば、中庸かそれより少し上ぐらいの俺だが、今通っている私立では、下から数えて10に入る程度の劣等生なのである。

 

学力が、校内権力に結びつくこの学校では、劣等生=スクールカースト下層という等式が成り立つ。

 

教師は優秀な生徒にばかり目をかけるから、劣等生は劣等生のまま。努力して抜け出せるやつはいいが、努力しても抜け出せない連中は、這い上がることさえ許されない。…………学校が、この現状を推奨しているということなんでしょう。

 

直接、間接問わず虐めにあったことはない。そんなリスキーなことをする人間はここにはいない。が、向けられる視線が、侮蔑交じりのソレではぶっちゃけ大差ない様に思う。

 

親に相談して、普通の公立に通いたいと言っても知らんぷり。まあ体面を気にする人達だから、そんなことは許せないのだろう。

 

…………あと2年、この牢獄に耐えないといけないと言うのは中々心が折れそうだ。

 

「…………はぁ」

 

溜息をつきながら、ニューロリンカーにある復習に使える勉強アプリの一つを立ち上げる。

学力調査という名目で、初日から全科目のテストを行うウチの学校。休み中も勉強しとけよってことだったのだが…………その休み中、ほとんどブレインバーストに掛かりっきりだった為、全然勉強していなかった。

焼け石に水になるとは思うが、せめて点数を少しでもあげる努力をしないと…………そう思って、復習を始めた。

 

が、

 

(…………アレ、ここで加速したらどうなるんだろう?)

 

そう思って、小声で呟くと。

 

「おお、この状態でもアプリ使える」

 

これは使えると思った俺は、アプリを使っての復習をし、それをあと3回繰り返すことで7.2秒で2時間分の勉強時間に充てることができた。今回は付け焼き刃にしかならないが、定期テストや小テストならば上手いこと点数が上がるかもしれない。

 

…………別の意味で、ポイントは集めないといけないなぁ。

 

 

◇◇◇

 

 

「ふぅん? まさかあの下級生が新しい[赤]とはなぁ」

 

 

◇◇◇

 




リスキーな強キャラってたまらない。紙装甲高火力とか燃える。

なお、赤井君はテスト中に加速をするという発想には至らなかった模様。

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