Accelerated Red Invader 作:4E/あかいひと
ベーダー&マイン→レベル4
フォックス→レベル5
ランチャー→レベル6
世田谷エリアは、レギオンの存在しない無支配領域の一つ。六大レギオンに与することを拒んだバーストリンカー達の吹き溜まりである。
まあそれは置いといて。それぞれの無支配領域には特色があって。
この世田谷エリアは、別名『色詐欺エリア』。バーストリンカーのデュエルアバターの色の特色と、実際の適性、戦闘方法が噛み合ってないアバターが多過ぎるのである。青系統の癖にトリッキーな関節系とか、黄系統の癖にメッサ固いとか。
例えばその筆頭たる俺《レッド・インベーダー》は、赤なのに近接戦闘メインという超絶色詐欺。
んで、まあこの目の前の2人も、その色詐欺リンカー達であるからして。
そして、色詐欺の厄介なところは、どこかでその色の特徴を有しているのが面倒だ。
例えば俺に関して言えば、近接戦闘アバターではあるが、戦闘領域…………射撃アバターで言うところの射程は、速力と脚力のせいで相当広いし、本体は脆い。
目の前の奴らで言えば、遠隔攻撃手段を持つとはいえ、やはり緑系故に固いし、やはり火力に乏しい。
「んで、お得意の不意打ちゲリラ戦闘はいいのかよ?」
「うむ、今日は少し、真っ向な勝負に出ることにしてだな」
ランチャーが、その厳つい顔をしきりに振りながらそう答えた。つか、さっきのは真っ向の内に入るのかね?
「今日は我が同志、エバー・フォックスと共に、タッグマッチを始めようかと思ってな。おそらく、そちらも似たようなものであろう?」
「うん、そうね」
「でもよー、ランチャーの旦那と練習してる内に、気がついたことがあんだよ」
「…………ってーと?」
悲痛そうな表情に歪めながら、ランチャーとフォックスは声を揃えてこう言った。
「「火力が足りない」」
「「…………あー」」
「無論、火力が足りないことを嘆いたりはせん。それを補う為のゲリラ戦法であるからして」
「つっても、奇襲のキモは最初に畳み掛けることだろ? 決定的に決め手に欠ける俺たちゃ、巻き返されて負けることもあるわけよ」
「あー、うん。タイマンだと問題なくても、タッグだといくら相性良くても決め手に欠けるから、向こうが一撃必殺を持ってきた時に脆い、ということか」
「贅沢な悩みねぇ……」
タッグマッチで組むリンカーで、正反対同士で組めば、確かにないところを補えるのかもしれないが、長所を引っ張りかねない。この目の前の奇襲ブラザーズは、それがないに等しい上に、火力不足と言えど遠近共にこなせるのだから、贅沢な悩みだよなぁ。
「故に、連携技を用意した!」
「逃げるとは、言わせねーよ!!」
臨戦態勢をとる2名に、こちらも戦闘の構えを取らざるをえない。
「マインさん」
「分かってるわベーダー」
マッハ55の特徴は、緑系には及びはしないが、近接戦闘をこなせるだけの頑丈さと、そこそこに収まっている基本性能。制限時間が20分と長い代わりに必殺技がない、など、スペックを過剰に抑えて安心設計にしたレッドゾーン。速さが足りなくて些か不安ではあるが、目の前の敵と戦い合うには十分。
さて、まず潰すべきはフォックス。エネミーを出すその能力は面倒の一言に尽きる。
ギュルギュルと全身を駆動させ、急発進ダッシュスタート。設置されている罠、狐エネミーなどを潜り抜け、容易く射程に入る。
「ヒュー、さっすがベーダー! でも──────」
「私を忘れもらっては困るぞッ!!」
視界の端に映っていたランチャーが、持っていた旗を振り、俺の攻撃優先対象を
突き出そうとした拳はダラリと落ち、俺の身体はそのままランチャーの方へと向かわされる。
くそっ、あの旗はヘイト上げに使えるのかっ!!
「だあっ!! ならそのままぶっ飛べ!!」
急加速、そこで得た速度のまま、俺はギュルギュルと唸る脚を突き出す。
が、
「ベーダー避けてッ!! 《パラライズマイン》!!」
「うわっと!!?」
頭上に、狐エネミー。そしてその狐エネミーが、またフォックスへと変わり、そのままライダーキックよろしく落下してきた。そこにマインさんが必殺技を設置しようとするが。
「アンバー・マイン! 貴様にも私を忘れてもらっては困るなッ!!」
「グッ…………何よそれ!?」
またもやランチャーのヘイト上げにより、マインさんの狙いは狂わされてランチャーの近辺に設置してしまう。
だが、設置してくれただけでも十分。
「くっそこの狐野郎!! 痺れやがれッ!!」
「ん、んなっ!?」
脚を掴み、締め上げて、そのままパラライズマインの設置された床に叩きつけるために振り下ろす。その際ボウガンで撃たれても、必要コストと割り切る。
「う、うぉぉぉおおおおっ!!? 《フォックスチェンジ》!!!」
「うげ!?」
叩きつけようとしたフォックスは、狐エネミーへと変わってしまい、エネミーは腕の中からスルリと抜け出し、俺はそのまま…………
「アギギガガガガガガガガッ!!?」
「ベーダー!!」
設置した麻痺罠にかかり、全身が火花を放ち始める。い、痛い…………。
「だ、大丈夫!? ごめんね大丈夫!?」
「ぐっ、慌てないで!! 次来る!!」
ランチャーの肩に担がれてるロケランから放たれたミサイルの内、俺とマインさんに当たる1本をその速さのまま掴み、遠心力を使ってそのまま投げかえしながら、前を向く。
今度は、前方より狐エネミーが三匹…………エネミーを狙っても、フォックス本体を狙っても、ランチャーのヘイト管理で矛先がずらされる。
「くっ、真っ向から戦っても強いとか…………」
と、言いつつ俺は現状を抜け出すための答えを割り出す。
「マインさん、あの狐エネミーの進行方向に設置。俺はこのままフォックスを狙う」
「正気!? あのゴリラに防がれるわよ!?」
「どっちにしろ、どちらかを落とさないとジリ貧だ!! ああ、最悪
「…………ッ!」
言わんとしていることが分かったらしいマインさんは、心配そうな声音でいう。
「…………痛くても、文句言うんじゃないわよ?」
「もちろん」
賭けになるが…………ランチャーのヘイト管理は同時に2人も集められはしない…………ような気がする。
さて、稼働時間も無限ではない。さっさと始めよう。
「アクセル……全・開!!!」
エンジンが、轟音とともに唸りを上げる。ギュルギュルと軋ませながら跳ぶように走り、もう一度フォックスに接近する。
「何度やっても無駄だ、ベーダーよ!」
先程の繰り返し、視界の端でランチャーが旗を振る。
しかし、俺たちはそれを待っていたッ!!
「《ナパームマイン》!!!」
聞き慣れた女の子の声が、背後から鋭く響く。
それは、エバー・フォックスを狙ったものではなく。
「な、なぁッ!!?」
ウッドランド・ランチャーの足下に、琥珀色の警告マークが現れた。
「な、なるほど! 私の《ヘイトフルカラーズ》が一度の行使で1人しか誘導できないことに気がついたか!! しかしッ、狙いが甘かったようだな!! フォックスッ!!」
「応とも旦那!!」
今度は頭上からではなく、背後からフォックスが、襲撃してきた。おそらく、先程のように腕を掴まれないようにするための対策だろう。
さて、今の位置関係をおさらいしよう。
目の前に、ランチャー。
俺とランチャーの間に、《ナパームマイン》。
そして背後、すぐ近くにフォックス。
故に俺は躊躇いなく…………倒れかかりながら、ナパームマインに拳を突き立てた。
さて、ナパームマインは、文字通りナパーム弾を地雷に置き換えたようなもの。粗製ガソリンに増粘剤を加えたものに信管を取り付けた、焼夷弾。まあそれでも必殺技なだけあって、普通のマインマーカーよりも広範囲に爆発してダメージもデカイんだけれど。
で、このナパームマインの何よりもウザいところは、踏み込んだ力が強い程、ナパームが大量に撒き散るということ。
俺は、持てる力を全て振り絞り、ナパームマインを殴ったのだ。それはもう、思いっきり。
であるからして。
「ちょ、光が……」
「あれ、ヤバイ感じ?」
「ようこそ2人とも…………光の世界へ」
結論から言えば、俺たち3人は仲良く飛び散るナパームに焼かれながら死んでいったということ。
フォックスが例の入れ替わり技を使っていたら、どうなっていたか分からないけど。
◇◇◇
「…………後味、すっごく悪いんだけど」
現実に戻ってきた平野さんの最初の一声がこれである。
「後味悪くても一勝は一勝です。今回はアレらが特殊だったので気にしないほうが」
「アンタにまで痛い思いさせたのが問題だってのよ…………バカ」
うーむ、気にしちゃおしまいでは?
「それに、普段のバトルではバンバンに使ってくるじゃないですか。それはそれ、これはこれと言いたいのかもしれませんが、俺としては今更としか思えません」
「むー…………」
そんな感じで、タッグマッチの初戦は、なんとも言えない形で幕を下ろしたのだった。
ヘイト管理って、タッグマッチでもないと使えないんじゃ…………
→攻撃の矛先を変えるのは、牽制射撃とか罠を仕掛けられなくなって、一部のアバターには効く。本来は対巨大エネミー用ではあると思うけど。なお、この能力は原作TCGのゲリランチャーの能力を元に考えました。
フォックスの入れ替わり技、結構チートのような?
→結構縛りがキツイです。フォックスのスペックやその辺りの話は次回に。
ちなみに色詐欺アバター(他の侵略者クリーチャー)は出るの?
→出ます(断言)
以上、今回も読んでいただきありがとうございました!