Accelerated Red Invader   作:4E/あかいひと

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初めましての方、レッドゾーンです。
知ってる方、考えることをやめた結果、こんなことになりました。

よろしくお願いします。


第1章→危険域の覚醒
プロローグ


「宗介、少しいいか?」

 

2歳上の兄…………関西の高専に通うために明日から家を出てしまう兄、歳が離れてるからとてもとまではいかないが、それでも仲の良かった兄、でもかなり無口で自分から話しかけたりすることがほとんどない兄が、珍しいことに俺を呼び止めた。

そして俺は、嫌な予感に駆られながらも兄の方に向く。

 

「…………どーしたリュー(にぃ)

 

それもその筈、過去この兄から話しかけられて良いことがあったことなど、一つもなかったのだ。だから今回も、俺は何か嫌なことに巻き込まれるのでは…………? と、不安になっていた。

とはいえ、明日からは直接顔を合わすことは少なくなる兄だ。腹を括って厄介事に飛び込もう。

 

「なに、しばらく会えないだろうから餞別をやろうと思ってな」

 

リュー兄は笑いながら、自分のニューロリンカーにXSBケーブルを刺して、その反対側の端を、俺に寄越してきた。

 

「…………直結してまでしないと渡せないものなの?」

「ああ、そうだな。いかがわしいとか、そういうのの前に、コレは重たいからな」

 

…………ますますキナ臭い。リュー兄はプログラムの天才だ。今までたくさんの便利なツールやアプリを俺にくれたが、直結してまで何かのアプリを寄こそうとしたことはなかった。

 

「ああ宗介。お前の考えていることは分かる。宣言しておこう。今から渡すアプリは、とてつもなく怪しく、おそらく今のお前を破壊し尽くしてしまうものだ」

「ちょー危険じゃん!?」

 

そんな危険なモノを無理やり寄越される覚えはないんだけど。

 

「だから選択肢を与えよう。今から与えるアプリを受け取るか、それとも受け取らないか。…………だが安心してくれ。仮に受け取らなくても別の形での餞別は用意してある。そちらの方も気に入ってくれるとは思うが」

 

…………待て。待て待て待て。

 

「そちらの方『も』? てことは、その危険臭バリバリのそのアプリも俺は気に入るだろうって?」

「そうだな。間違いなく気に入るだろう。なにせ、」

 

 

 

───────お前の望むモノが、其処で手に入るかもしれない。

 

 

 

「……………………」

 

思わず、息を止める。

その言葉には、俺をその危険なアプリに引き込むだけの力を備えていた。

 

「分かった、リュー兄」

 

端子を、自分のニューロリンカーに差し込む。すると、そうなることを分かっていたかのように、リュー兄は何かを操作し始め…………

 

【BB2039.exe を実行しますか】

【Yes/No】

 

ポン! という音と共に浮かび上がる、ニューロリンカーによってもたらされるARによるウィンドウ。簡潔なソレは、逆に簡潔だからこそ異様な雰囲気を放っていた。…………データなのにオカルト染みた話で例えるのは、滑稽かもだが。

 

だがしかし、俺は戸惑わずにYesのボタンに手を伸ばし、押した。

 

瞬間、視界いっぱいに炎が噴き出す。

拡張現実で、それ自体に大した熱量(と感じる情報)はないのだが、思わず身構えてしまう。

しばらく噴きあがって体の周りを流れていた炎は、次第に眼前に収束し、一つの文字列を作り上げた。

 

《BRAIN BURST》

 

「…………ブレイン、バースト」

「タイトルロゴが見えたか。まあ、お前なら問題ないとは思っていたが」

 

兄曰くタイトルロゴであるその文字列の下に、バーが現れる。最初に0%と出たところを見ると、今からダウンロード開始なのだろうか? ならば先程の演出は…………。

 

と、そんな思考に陥っている間に、100%となった時点で、タイトルロゴが消え、そして新たな文字列を映し出す。

 

《Welcome to the accelerated world.》

 

「『加速世界へようこそ』?」

「良かった。コレで俺は思い残すことはない」

 

そう言って、リュー兄はケーブルを抜く。

 

「ちょ、リュー兄。説明ぐらいしてくれても──────」

「宗介、お前はゲームをする時、攻略サイトを見るか?」

 

唐突に来た質問。其処から察するに。

 

「ブレインバーストは、ゲーム?」

「俺は質問をしているんだ宗介。どうなんだ?」

 

有無を言わせぬ、といった表現がぴったりな兄の声色は、俺をビクつかせるのに十分だった。

 

「い、いや。ズルしてる気分になるし、それじゃあゲームなんて言えないから見ない」

「ならば、尚更俺はそのアプリについての説明を避けるべきだろう」

 

そう言って、リュー兄は自分の部屋に向かっていく。

 

「あ、そうそう言い忘れた。今日寝る時は、何があってもニューロリンカーを外すなよ」

「…………分かった」

「あと、用意した別の餞別も渡そう。俺の使っていた据置コンピュータと同じものを作っておいた。何かと、役に立つだろう」

「…………ありがとう」

 

この兄は、歳の割に大人び過ぎているこの兄は、一体どういう思惑で…………。

 

そう思っても、俺はその意図を訊ねることはできず。そのままその1日を終えることになった。

 

 

◇◇◇

 

 

別段、俺は劣った人間ではないと思いたい。実際、どの面で切り取っても俺は平均的だ。

 

だが、周りが優秀過ぎたせいで劣等扱いだ。

 

嗚呼、今日も俺は抜かされ、突き放されるのだ。

 

悔しい…………悔しい悔しい悔しい悔しい、悔しい。

 

望むモノが手に入るだと?

ならば俺に寄越してくれよ。

 

俺は欲しい…………全てを蹴散らす速さが、欲しいッ!!!

 

 

◇◇◇

 

 

これは、後に『危険域(レッドゾーン)』という二つ名を与えられるバーストリンカー、『赤井宗介/レッド・インベーダー』の物語。

 

 

[Accelerated red invader]

 

 




普通は色被りはない(ブラック・バイスに関しては自称と思われ)のですが、どうしてもレッドゾーンを使う為に色をレッドにせねばなりませんでした。とりあえず、レッド・ライダーが黒い人に全損させられた直後という設定なので、生きてるプレイヤー間での色被りはないということで手打ちにしてくれると助かります(切実)。

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