Accelerated Red Invader 作:4E/あかいひと
↑使ってるやつの台詞
「ふんふん…………成る程、ええ情報圧してんで自分」
「は、はぁ…………」
「おっと、挨拶が遅れたわスマンスマン。俺はヴァーミリオン・デストロイヤー、この赤バイクの師匠みたいなんをやらせてもーてる。気軽にロイとでも呼んでくれたらえーで?」
「で、ではロイさんと。私はアンバー・マインです。そこの間抜け赤バイクの様に、マインと呼んでください」
先程、無様に吹っ飛ばされた先輩は何事もなかったかのように自己紹介。正直なところ、その肝の太さは凄まじいな。
「先輩、とりあえず2本は抜けましたけど…………やらせたかったのって『
「その通りや。まあぶっちゃけ、習得まで漕ぎ着けるとは思わんでな、ちょっとびっくりやで」
…………え?
「ぶっちゃけ正攻法でもどうにかなる類ではあんねん。槍を括り付けて吊り下げるとかな」
「ん、んな馬鹿な!?」
た、単純すぎて思いつけねぇ…………でも、それだと心意習得できねぇし、封印され損になるような気が。まあ槍は便利だけど。
「もしかして、ですが。《封印》には何か、槍習得以外のボーナスのようなものが付いているのですか?」
「マインちゃんせいかーい。正確には刺された本数、近接適性、強化外装を省かれたアバター性能、封印履歴など、諸々をメインサーバーの方が計算して、全部抜ききった後、槍かアビリティの分配を行うんや」
「…………それ、本当なんですか? 封印について目を瞑れば、擬似レベルアップでは」
半ば戦慄したようにマインさんが言う。そしてそれは、俺の胸の内を代弁したものであり…………
「抜きましょう、今すぐ!!」
「ちょ、急に気合い入りすぎよ!?」
「レベルを上げずにレベルアップ…………即ち負けた時のポイント損失が大きくなるというリスクを負わずにレベルを上げることと同意ではありませんか!! それにマインさんだからバラしますが、おそらく《レッド・インベーダー》のアバターは強化外装の強化しかできません!! 本体に付けられるアビリティがもらえる可能性がある以上、単なる擬似レベルアップでは済まされませんッ!!!」
「ちょ、ちょっと待った!!」
「嫌です、待ちませんっ!!!」
なお、ほぼ3時間をかけて禁断の槍は抜けきったが、マインさんの機嫌が直るのはそれと同じくらいの時間を要した。
◇◇◇
全ての《禁断の槍》が、6本抜けたその瞬間本来の輝きを取り戻した上で、奇妙な鼓動を打っていた。
「…………これが、あの黒かった禁断の槍なんですね」
「なんだか、魅入られそうだわ……」
「ガーネットは《実りの象徴》。努力が形を成したこの瞬間の光だけは、何事にも代え難いもんや。それがたとえ、ゲームの中でもな」
確かに、リュー兄は割と『過程を経た上での答』を重視する人間だ。だから、ガーネットの色が配当されたのは、そういうことだったんだろう。
「アレだけ《災禍の鎧》と同列に騒がれるけど…………本当のところは、純粋な想いの塊やったはずなんや…………『期待』っていうな。《封印》という名のソレは、普通のリンカーからしたら、重過ぎるソレでしかないねんけどな」
「それが、あの最もバーストリンカーを退場させた悪夢、《ガーネット・パルス》の真実、ですか」
「そういうことや。そのこと知ってる奴は、そないなことは口が裂けても言わへん。…………まあそうは言っても赦されへんことも結構やっとるけどなあの人」
クックックと昔を懐かしむように嗤う先輩は、とてもとても楽しそうであり…………なんで《ガーネット・パルス》が加速世界を引退したのか、分からなくなってしまった。
「ささ、昔話はこの辺にしとこ。そろそろはじまんでー?」
「「…………!」」
ゴクリ、と息を飲む音が、俺とマインさんのアバターの咽喉元から響く。
槍から放たれる妖しくも綺麗な鼓動の波紋は、徐々にその間隔を狭めながら、力強く広がってゆく。
そして、バチンッ!!! という乾いた音と共に、槍は俺の心意と同じ赤光を放ちながら、消えた。
「…………消えた?」
いや違う。視界のど真ん中に《Reward》……報酬という文字が赤く輝いている。
突き動かされるように、ソレに触れると…………
「うわっ!!?」
上空より、2本の槍が降ってきて、俺の目の前の地面に突き刺さる。そのあまりにもな速さに思わず尻餅をついてしまった。
では、突き刺さったその槍は、《禁断の槍》だったのか?
「…………? なんや、違うな」
それもそのはず、《禁断の槍》は両刃斧の付いた長く重そうな槍だった。
しかし目の前に落ちてきたのは、シンプルで細い形状の柄、一般的なサイズの刃、そして何より…………刃の下に付いているチェッカーフラッグが目を引く、禁断の槍とは似ても似つかぬそれだった。
試しに、掴んでみる。すると、
《You got enhanced armaments《Nitro flag》》
「…………《ニトロフラグ》」
新たに手にしたのは、二本で1セットの強化外装の槍。能力の程は分からないが…………
「シッ!!」
右腕に掴んだ槍を、気合いと共に突き出す。バタバタとフラッグの空気を叩く音と共に、穂先の空気を切り裂く感触が、手元に伝わってくる。
「…………俺としてはこっちの方が使いやすいけど」
かなり期待していた《禁断の槍》の封印能力は、どう足掻いても望めそうになかった。
「うーん、様にはなってるけど、本当にアンタ赤系アバター?」
「そんな酷いこと言わないでよマインさん…………」
近接戦闘をメインとするのは基本的に青系です。では、赤系アバターはなんでしょう? …………なんておふざけも身に入らない。
「ホンマになんでベーダーが《レッド》なんやろな…………1代目レッドとの共通点が赤いことと乗り物付きっちゅーことぐらいやで?」
「ああ、私聞いたことあります。確か、馬の強化外装に乗った西部ガンマンのようなアバターだったとか」
え、何それかっこいい。というか《ザ・レッド》がレッドゾーンにならなきゃ確実にレッド・ライダーの劣化版じゃねーか俺。
「射程なんかも測定不能やったからなぁ…………俺も自分の殺傷距離には自信あるけど、あんのチート相手には張り合おうとは思えへんかったしな」
「その口ぶりから察するに、先輩はレッド・ライダーとの面識が?」
「一時誘われたしな。俺も正統派赤系やし?」
確かに…………ヴァーミリオンはすごく赤に近い緋だし、長距離射程のバケモンだし…………。
「逆に凄いわねアンタ。赤系の貧弱本体晒しながら近接戦して、結構な勝率でしょ? それに例のロボット化だって、《ゼロ・アクター》戦でしか使ってるところ見てないし」
「俺がゆーのもアレやけど、縛りプレイの鬼やな!」
「それを言うならマインさんだって似たようなものじゃないですかもー。あと先輩はマジでおまいう」
ともあれ、余計に近接戦闘化が進み、追加アビリティも無く。ここからしばらくの間は、レベルアップで得た《ザ・レッド》のアビリティの確認とスペックアップによる操作微調整、極めて現実的でない二槍流を習得するための訓練を行う必要がありそうだ。
「まあ何より先に、マインさんと通常対戦がしたいですね」
「…………フン! まあ乗ってやろうじゃないの」
まあ、その後行われた《ベーダーVSマイン》は、麻痺罠を使い始めていたマインさんにボロ負けしてしまったけど、とても楽しい時間が過ごせたことは、言うまでもない。
…………そして、レッドゾーンにならなかった俺に非難の目を向けられたことも、言うまでもない。
◇◇◇
ジ、ジジジ…………
・《Transform-《The Mach》》
・《Transform-《Single》》
・《Z mode》(Output disabled)
・《Down size》(Output disabled)
・《Immortal》(Output disabled)
・《KNDN mode》(Output disabled)
To be continued……
「あの、僕忘れられてる?」
ちょっと待てい!! あのアビリティってまさか!!?
→上からZ、NEO、デッド、禁断轟速となっておりまぁーす!
結局凡人の出てきた意味よ…………
→未来のレギオン幹部だから(今明かされる衝撃の真実)
一鉄さんはもてないの?
→リアルで銃火器扱う上にハッピートリガー気質なところがある彼は危険人物扱いされているため倦厭されてます。
余談ですが、またまたどこかの誰かに悪魔の知恵を吹き込まれて、近々出す予定のあの人がヤバいことになりました。本当、どーしてくれる(八つ当たり)。