Accelerated Red Invader   作:4E/あかいひと

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作者の方のレッドゾーンを語る上で外せないお方が登場。
嗚呼…………もうダメ(白目)


第2章→禁断の槍
ギア8-襲来、無色アバター


 

タレ目の童顔。

小学生に間違えられるほどの低身長。

三つ編みにした髪を、右から前に垂らす幼い少女。

 

「…………はぁ」

 

鏡を見て、溜息。

私『平野(ひらの) 真希(まき)』は、この自分の容姿が好きではなかった。

 

『需要はある』だの、『可愛いからいいじゃん』だの言われるけれど、最終的にどう思うかは、やっぱり自分次第なのだ。

 

こんな見た目をしてるから、私は■■■■■■■…………

 

「…………あーやめやめ。暗くなる」

 

鏡に向き合うとこうなる…………と分かっていても、見ざるを得ないのは、なんというかかんというか。

 

せっかくの日曜だというのに、こんな調子ではいけない。適当に身嗜みを整え、私は街に出る。

 

願わくば、あのマヌケな赤いアバターに会えることを願って。

 

 

◇◇◇

 

 

親戚のケンちゃんが、こっちに遊びに来るなどと言い出した。非常に面倒い。

 

別に家が片付いてないだとか、そういうことではないのだが、今日は一鉄先輩がウチに来ると言うのだ。その旨をケンちゃんに伝えたら、

 

『あ、その先輩が良かったら、一緒にー』

 

なんでほざく始末。

まあ流石に先輩も許可なんて出そうはずもないので、半ば確信を得ながら聞くと、

 

『ん? ええんとちゃう?』

 

とか言い出した。

全く、この人は何を考えていると言うのだ。今日はようやっと許可の出た『レベル1→4』の日だと言うのに。コレではすぐに上げられないではないか。

 

まあいい。今まで結構待ってたのだ。それがたった1日伸びるだけ。

 

そう思うと気が楽だ。そも、ケンちゃんとも偶にしか会えないのだからこういう時こそリアルを優先すべきだうんうん。

 

そう思って待ち合わせ場所の小さな公園で待っていると…………

 

「…………んお?」

 

聞き慣れた空気を叩きつける音。どうやら乱入された様だ。

 

「ステージは《草原》…………幸先いいねぇ」

 

燃えるものがあり尚且つ走りやすいこのステージは、とても助かる。

 

多分だが、日曜日のこの時間なら挑んできたのはマインさんだろう。ついこの間俺に勝ち越してレベル2になった彼女は、何故か空中にもマーキングできる様なアビリティを身につけたらしく、軽〜く俺の天敵になり始めてる様な気がしないでもない。

 

まあしかし、ならばよかろう。こちらも、全力で相手するまで!

 

そう意気込んで、大事な相棒:ザ・レッドに乗り込んで、カーソルの赴くままに走り抜けると…………

 

「やあ、初めましてだねレッド・インベーダー」

 

カーソルの先にいたのは、見知らぬアバターだった。

 

無色の…………滑らかなガラスでできた様な人型が、僕に向かって手を振ってきた。へぇ、こんなアバターもあるのか。

 

「…………えっと、どちら様?」

 

そんなことを思わず口走ると、観戦してるリンカーから言葉が飛んできた。

 

「ベーダー知らねぇの!!? この人、レベル7の《ゼロ・アクター》だよ!!!」

「名前は知らないけれどめっちゃ強いってのはわかったー!」

 

レベル7とかマジ勘弁してくださいよ無理ゲーじゃないすかヤダー。

 

そんなこんなで絶望しつつも、いつでもレッドゾーンになれる準備はしておく。レベル7は、所謂ハイレベルに属するレベルで、レベル4を一つ目の壁とすると、レベル7は二つ目の壁なのだ。ここまで来ると、なれるバーストリンカーとなれないバーストリンカーが表れてくるから、とのこと。

つまり、レベル7と言うのはかなりの経験を積んだ上で勝ち上がってきたマジモンの強者である。レベル1のニュービーが倒すならば、那由多の果てにある砂粒よりも小さい奇跡の欠片を救わなければならないというね。どう足掻けと。

 

「あー待って待って。別に戦おうと思ったわけじゃないんだってば。ほら、噂の新しいレッドに会いたくって♪」

「…………野郎にそんな風に媚び媚びされても、テンション上がる様な奇特な性癖はしとりませんが」

「んーんー? じゃあこれを見ても君はそんなことが言えるのかい?」

 

そう言ってゼロ・アクターは手に持つ、これまた滑らかなガラスでできた様な仮面を被り、呟いた。

 

「それでは開演と参りましょう。《It's show time》!!」

 

すると、その無色透明の、それ以外特筆すべき点のなかったアバターが、ズムズムのその形を変えていき…………。

 

「[ふっふーん! 今日は魔法少女な気分だから赤紫よ!]」

 

星のついたステッキを握った、赤紫色のガラスでできた様な、女性型アバターに変身していた。

 

……………………やべぇ、このアバターの中身に凄く心当たりが出てきた。

 

「[ん? どうしたのかなインベーダーちゃん? あ、もしかしてぇ…………急に可愛い女の子になっちゃってキョドっちゃってるのかなぁ♪]」

 

この、人の心を見透かした様な言動で、ニヤニヤ笑うような(目の前のアバターに口はないから推測だが)ヤツは、俺が知る限り1人しかおらず…………そいつの特技は『変装』だったのだ。

 

「……………………」

「[え、なにその無言。なんだか居心地悪くなってくるんだけど…………]」

 

むしろ悲しくて哀れで仕方なくなる。

 

「…………ゼロ・アクターさん。そもそもActorって時点で貴方の性別男なのは分かりきってますし」

 

程々にしないと、またコウちゃんにぶちのめされますよ?

 

「[…………………]え、え!? ちょい待ち。なんで君がそのこと知ってんのって…………まさか!!!?」

 

演技の仮面がボロボロと崩れていく様を、どこか遠くで眺めているような錯覚を覚えながら、俺はザ・レッドに跨りエンジンをふかす。

 

酷い。あまりにも酷い。だからここで俺が引導を渡すのも、ある種の優しさだろう。

 

本邦初公開、未だ今生きているバーストリンカーでは先輩しか見ていないレッドゾーンモード。

 

あたふたと同様している知り合いを尻目に、距離をとって加速する。

 

限界速度到達、分解していく相棒を纏いながら、俺は拳を突き出し一言。

 

 

 

 

「テメェ未だに女装なんかやってんのかこの演技キチがァァァァァアアアアアアアッッッ!!!!!!!!」

「ギャバーッ!!!?」

 

 

 

 

ふう、スクラップ完了。変態は去った。

 

 

◇◇◇

 

 

「…………頭いてぇ」

 

まさか、知り合いがこんなことになってたとは。

 

ついでに言えば。

 

「[やーねぇそーくん、変態だなんて失礼しちゃうわ]」

 

背後から声をかけてくる存在が、あろうことか俺と間接的に血が繋がってるとか、考えたくもない。

 

「…………あいにく、白黒ゴスロリファッションをする高身長変態野郎(・・)に知り合いはいないのですが」

「[その容赦のない言葉も、ヒ・サ・シ・ブ・リ♡]」

 

きめぇ、マジきめぇ。いや、前情報なしだとマジで美人のおねいさんがフリフリのゴスロリ着て、街を闊歩しているだけに見えないから余計にタチが悪い。

 

「…………で、いつの間にバーストリンカーになってたんですか、ケンちゃん」

「[あら、私は日下部 景子。間違えないでほしいわ]」

 

そう言って寄越されたネームタグは、マジで日下部景子の名でありまして…………え、マジかよ。

 

「従兄弟が女装どころか犯罪を犯すなんて…………よよよ」

「[だまらっしゃい。むしろ私の方がビックリしたわよ。まさかあのそーくんが、あんなことになってたなんて!!]」

 

プンプン( *`ω´)

 

という擬音がサマになっているこの状況に頭を痛めながら、俺は肩を落とすのだった。

 

今更ながらに思い出すけど、母方の姓…………『景山』は変人揃いだったなぁ。

 

「…………ねぇ、景山健太サン?」

 

 

◇◇◇

 

 

「ど、どどど、どーゆーことよアレ!!!?」

 

 

端から見れば、美人と談笑している図にしか見えないレッド・インベーダーの中の人を偶然目撃して、思わず愕然としている少女がいたことを、2人は知らない。

 




というわけで、『異常な普通』景山健太クン参戦!!!

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