キングは1匹! このコイだ!!   作:d.c.2隊長

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インフルエンザから復活しました。その最初の投稿がコイキングなのはどうなんでしょう……?

キングは1匹このお値段、感想で見て爆笑しました。3DSで初期ポケモンが出来るようになりましたし、皆さんお月見山前のポケセンでコイキング買いましょうね(にっこり


コイキングだぞ! じわれくらい起こせなくてどうする!

 レインボーバッジとお嫁さんをゲットしたアンバーが次に目指すのは、セキチクシティという町だ。この町の有名所と言えば、やはりサファリパーク。入場者は決められたルール、道具で中を散策し、ポケモンをゲットしていく。ゲットしたポケモンは自分のモノに出来るという。勿論コイキングも釣れる。でもガルーラ出てきて下さい。

 

 セキチクシティに辿り着く為のルートは3つ。シオンタウンから数多のトレーナーを薙ぎ倒しながら橋沿いに進むか、タマムシシティからサイクリングロードを下るか、グレンタウンから泳いでくるかだ。

 

 アンバーが選んだのは、サイクリングロードを下る道。道中で寝そべっている巨体のカビゴン相手に頑張っている白い帽子を被った女の子のトレーナーをスルーしてサイクリングロードにやってきたアンバーは警備員の目を盗んで通り過ぎ、バイクを走らせている暴走族達を前にこう言った。

 

 「君達には、今から俺とポケモンバトルをしてもらいます」

 

 【は?】

 

 

 

 「はーっはっはっ!! (コイキングを)“投げ付ける”“投げ付ける”“投げ付ける”“投げ付ける”ぅぅぅ!! 格闘タイプには“迷刀鯉王(めいとうコイキング)”で俺が直接“つばめがえし”ぃぃぃぃ!! 敗者はバイク献上じゃゴラァ!!」

 

 「コッ!? ゴッ!? ゴフッ!?」

 

 【ギャアアアア!? こいつ血も涙もねえ!?】

 

 

 

 こうしてアンバーはバイクを手にし、暴走族のチームは壊滅した。尚、被害者である暴走族達はタマムシシティのタマムシジムの用心棒として雇われることになり、真面目に働いているという。何人かはタマムシジムのジムトレーナーと付き合うことになったとか。

 

 

 

 

 

 

 セキチクジムには、毒タイプ使いのジムリーダーがいる。その名はキョウ……由緒正しき忍者の家系であり、服装も忍者ルック。毒タイプ使いである為か、それとも忍者の為か、直接的な戦闘よりも状態異常や素早い動きで相手を翻弄する搦め手を好む。

 

 ジムの中心にて、キョウは正座をしながら挑戦者を待つ。そうしているとジムの扉が開かれ、1人の青年が入ってきた。無論、その青年とはアンバーのことだ。

 

 キョウはゆっくりと閉じていた目を開き、挑戦者の顔を見る。忍者としての高い身体能力はしっかりとアンバーの姿を捉える……ゆっくりとした足取りでキョウへと向かう、その姿を。しかし、まっすぐ歩いていたアンバーは、まるで何かにぶつかったかのように止まった。

 

 (ファファファ……どうやらこのセキチクジムのからくりを知らぬと見える)

 

 額をさするアンバーを見て、キョウは内心で笑う。このセキチクジムは一見ただの広々とした道場のような見た目をしている。しかしその実、渦を描くように見えない透明の壁が張り巡らされているのだ。アンバーがぶつかったのは、その透明な壁である。

 

 壁伝いに歩いていけば、そこにはジムトレーナー達の姿。そうして連戦させて疲弊させる……立派な戦略である。勿論ゲームでは途中でポケセンで回復してから挑めるのでご安心を。

 

 しかし、そこは我らが主人公アンバー。彼が大人しく壁伝いに歩く訳がない。今、アンバーの目には1つの質問が出ている。

 

 Q.目の前に壁があります。どうしますか?

 

 

 

 「壁ごときが俺の道を阻んでんじゃねえ!!」

 

 「コッ!?」

 

 「なにぃっ!?」

 

 A.コイキングで壊す。

 

 

 

 アンバーの“コイキングでかわらわり”!! こうかはばつぐんだ!! 壁が壊れた!! キョウはおどろいている!!

 

 驚愕に目を見開いていたキョウを無視し、アンバーは悠々とした足取りで彼の前に立つ……血塗れのコイキングを肩に担ぎながら。

 

 「チャレンジャーアンバー……あんたのバッジを貰いに来たぜ」

 

 「……ファ……ファファファ。よくぞ参られた。拙者の名はキョウ……お主をチャレンジャーとして認めよう」

 

 アンバーの登場の仕方と肩のコイキングにドン引きしつつも、キョウは体裁を整えて余裕の表情を浮かべる。隠せてないじゃん、どもってるじゃん等とは言ってはいけない。大人は大変なのだ。

 

 キョウが使うポケモンはエリカの時と同様の4体。対するアンバーは当然のようにコイキング1匹(流血中)。まさかのコイキング1匹だというアンバーに失笑しつつ、キョウは最初のポケモンを繰り出す。

 

 「行け、ゴルバット!」

 

 現れたのは青い体の殆どが大きく開いた口で占められているコウモリのようなポケモン、ゴルバット。その素早さは中々に高く、進化すると全ポケモンでも随一の素早さを誇るクロバットとなる。

 

 

 

 「コイキングを、ゴールみたいな相手の大口にシューッ!!」

 

 「コブッ!?」

 

 「オゴェッ!?」

 

 「ご、ゴルバット!?」

 

 

 

 開幕ぶっぱ、いつもの、これがなきゃ始まらない、超! エキサイティンッ!! と叫ばれかねないようなアンバーのコイキングシュート。大口に綺麗に決まり、喉奥でも直撃したのだろうゴルバットは苦しそうな声を出した後にコイキングを口に入れたまま墜落し、目を回す。これぞ約束された勝利のコイキング。

 

 まさか一撃で落ちるとは思っていなかったのだろう、キョウの目に焦りがあった。が、それも直ぐに収まり、忍者としての冷徹な顔を出す。キョウは決して卑怯や不意打ちのような邪道を非難も否定もしない。自分とて忍者、外道邪道には理解があるし有用性も理解しているのだから。

 

 「戻れゴルバット。そして行け、モルフォン!」

 

 「フォーン!」

 

 ゴルバットを戻して新たにキョウが繰り出したのは蛾と蝶を合わせて2で割ったようなポケモン、モルフォン。毒・虫タイプと見た目を裏切らない2つのタイプを持ち合わせ、様々な状態異常を引き起こすことが出来るポケモンである。

 

 そしてもう1つ、モルフォンにはある特技がある。

 

 「コイキング、俺に向かって“はねて”こい!」

 

 「させん! モルフォン、“ねんりき”!」

 

 「ココッ!?」

 

 「フォーン……!」

 

 アンバーの指示に従って“はねた”コイキングの身体が空中で停止する。これがモルフォンの特技である“ねんりき”。アニメにおいては相手の意思に関係なく身体の自由を奪い、投げ飛ばしたり叩き付けたりと正しくやりたい放題出来るあのエスパータイプの技である。勿論、本作にも適応されます。こんなんチートや! でもエスパーってそういうもんだと思うんだ。

 

 では、そのチートのようなエスパー技を切り抜けるにはどうすればいいのだろうか? 見も蓋もなく悪タイプを使う? “10まんボルト”のような放出する技で迎撃する? 同じエスパー技を使う? なるほど、全て正しい。では、それら全てに当てはめられないコイキングはどうすればいいのだろうか?

 

 

 

 

 「俺が来いっつったら来い!! たらたらしてんじゃねえ!!」

 

 「コッ!?」

 

 「フォーン!?」

 

 「むう!? な、なんという気迫!」

 

 

 

 結論、トレーナーが頑張る。やったことはいいキズぐすりの吹き掛ける部分を取り外してコイキングに投げ付け、中身をぶっかけただけだが。どうやら“ねんりき”の対象に衝撃が加わったからか、それともアンバーの妙な気迫に負けたのか“ねんりき”は解けたらしい。しかもダメージを負って直ぐに回復したコイキング。3歩進んで2歩下がるとはこのことだろう。

 

 「あ、容器取りに行っていい?」

 

 「む? あ、ああ……」

 

 さらりとキョウに確認を取り、投げた容器を拾いに行くアンバー。キョウもまあジムにゴミが落ちているのも……なんて呑気に考えていたせいで戦闘中なのにも関わらず了承する。普段のキョウならば絶対にしないだろうが、彼も彼で常軌を逸しているアンバーに混乱しているらしい。

 

 そんなこんなで空の容器とコイキングを持って元の位置に戻るアンバー。さあ仕切り直しだと気持ちを切り替えるキョウだったが、何か違和感を感じて目の前のフィールドを良く観察してみる……とそこで気付いた。モルフォンの前に居たハズのコイキングがいつの間にかいなくなっていることに。

 

 「ば、馬鹿な! コイキングはどこに……」

 

 「探しモノはコイツか?」

 

 「な……いつのまに!?」

 

 驚愕するキョウに、アンバーはコイキングの尾びれを掴んで剣のように持ちながら見せ付ける。あれだけ酷い目にあったにも関わらず、コイキングはピンと立っていた。実に活きがいい。そして答え合わせとばかりに、アンバーはポツリと呟いた。

 

 「容器拾いに行ったとき」

 

 「盲点だったぁっ!!」

 

 「隙ありぃっ!!」

 

 「コッ!?」

 

 「フォブッ!?」

 

 「しまった! モルフォン!!」

 

 キョウががっくりと思わず膝をついた瞬間、それはもう悪い顔をしたアンバーがコイキングをモルフォンに槍投げのように投げ付ける。コイキングはさながら弾丸のように横に回転を加えられ、突き破るんじゃないかと言わんばかりにモルフォン腹にめり込んだ。モルフォンが血を吐いたように見えたが気のせいだろう。

 

 当然、モルフォンは戦闘不能。これでキョウのポケモンは残り2体となった……が、切り札と呼ぶポケモンはまだ残っていた。しかもそのポケモンは物理攻撃に滅法強い。いや、それよりも次のポケモンで終わらせることも出来るだろうと考えていた。

 

 「……正直申して、コイキング1匹にここまでやられるとは思っていなかった」

 

 「ハッ、見た目で侮ったらケガするって教訓になったじゃないか」

 

 「そうだな……故に、もう出し惜しみも手段も選ばん。行け、マタドガス!」

 

 キリッと表情を真剣なモノに変えたキョウはモルフォンを戻し、マタドガスを繰り出す。まるでドガースという球状の体のポケモンが2匹と同じような球状のモノが1つくっついたようなマタドガス……その体は、現れた瞬間から光輝き始めた。

 

 「っ! コイキング! 限界まで“とびはねろ”!!」

 

 「もう気付いたか! だが僅かに遅い!!」

 

 何かに気付き、今までに無いほど慌てて指示を出すアンバー。その指示を出す速さに驚くキョウだが、直ぐに笑みを浮かべ……瞬間、マタドガスが盛大に爆発した。

 

 “じばく”。文字通りポケモン自身が自爆するわざで、己が瀕死となる代わりに周りにも特大のダメージを与えるわざだ。その威力は凄まじく、防御力の低いポケモンならば即座に戦闘不能となるだろう。それがコイキングのようにステータスが低いポケモンならば尚更である。

 

 「いくらお主のコイキングであっても、流石に“じばく”は耐えられまい」

 

 

 

 「そいつはどうかな?」

 

 

 

 「なに……? っ!? ば……バカな!!」

 

 アンバーが意味深に笑いながら言った言葉にキョウは訝しげな顔をするが、次の瞬間には今日何度目かの驚愕の表情を浮かべた。それもそのはず……何故なら彼の目線の先には、“とびはねる”が間に合わず“じばく”を受けて瀕死になったと思っていたコイキングがアンバーの足下で体が深く凹んでおり、ぴくぴくと痙攣しながら横たわっていたからだ。決して瀕死にはなっていない。

 

 「まさか、“じばく”が当たらなかったというのか!? あのタイミングで!?」

 

 「その答えはアンタの足下と後ろの壁にある」

 

 「拙者の足下……?」

 

 アンバーに言われた通りに足下を見るキョウ。そこには、先程アンバーが回収した筈の空の容器。そして後ろを見れば、そこはまるで空間そのものにヒビが入っているように見える……が、実際は見えない壁にヒビが入っているだけ。当然、先程まではそんなモノはなかった。

 

 回収した筈の空の容器、後ろの見えない壁のヒビ、そして体が凹んでいるコイキング……そこまで考えて、キョウはハッとした。

 

 「お主……まさか」

 

 「ようやく気付いたか……そうさ、俺はマタドガスの“じばく”が決まる瞬間……」

 

 

 

 「コイキングに空の容器の投げ付けて弾き飛ばすことで“じばく”から逃がした。そして容器に当たったコイキングは見えない壁にぶち当たり、俺の足下に跳ね返ってきたって訳だ」

 

 「空の容器を当てて頑丈な壁にヒビ入れるってどんな腕力しとるんだお主」

 

 

 

 因みに、ルール的にはアンバーは“自分のポケモンに道具を使った”という扱いの為、何の問題もない。コイキングを道具のように投げ付けるのは何の問題もないのか? 知らん、そんなものは私の管轄外だ。

 

 「ならば真っ向から倒すのみ! 出よ、ベトベトン!!」

 

 「ベ~ト~」

 

 キョウが繰り出す最後のポケモンは紫色の毒々しいヘドロの体を持つベトベトン。流動体と呼べるその体は、物理攻撃に対して非常に強い。物理攻撃しか出来ないコイキングには苦しい相手だろう。ヘドロの体に突っ込みでもすれば抜け出せなくなってしまうのだから。

 

 かといって今までのような“おいしいみずハイドロポンプ”や“ギャグでありがちな辛いもの口にしてかえんほうしゃ”なんかも相性が悪い。そもそもベトベトンは耐久力が高いポケモンなのだ。それこそ弱点となるエスパーわざや地面わざを使わなければまともにダメージを与えられない程に。

 

 「はっ! ベトベトンねえ……そんな奴ぁ俺のコイキングの敵じゃねぇな」

 

 「なに……?」

 

 余裕綽々……キョウの最強の僕(しもべ)であり、今のアンバーにとって最も相性が悪い筈のポケモンに対して、アンバーは鼻で笑い飛ばす。そしておもむろに足下にいるコイキングをまるで野球のボールのように掴み上げ、天高く掲げる。それはまるでコイキングが仰ぎ見る王のようで、キョウとベトベトンは自然とコイキングを見上げる。そして気付いた……コイキングがまるで、今から起きることを楽しみにしているかのようにわくわくしている雰囲気を出していることに。

 

 それが意味することをキョウは知らない。そして、それこそが致命的だった。今まで散々見てきたアンバーによるコイキングへの暴行……それでも尚、キョウは思い至らない。コイキングがドMであることに、アンバーが今から行おうとしていることに。故に……気付いた時には全てが遅い。

 

 

 

 「コイキングの分際で高いところから見下してんじゃねえ!!」

 

 「コッ!?」

 

 「ちょっとお前理不尽過ぎるぞ!?」

 

 「ベ、ベトー!?」

 

 「ベトベトオオオオン!?」

 

 

 

 怒りを込めて、アンバーはコイキングを力一杯地面に叩き付ける。すると叩き付けられた地面を基点に地面が裂けて“じわれ”を作り出し、ベトベトンはそのまままっ逆さまに落ちていった……いちげきひっさつ。キョウのキャラは強制的に破壊され、忍者っぽさなどどこかへ行ってしまった。

 

 ベトベトンが倒れた(というか落ちた)為、キョウの敗北が決定し、アンバーは無事にピンクバッジを手に入れた。その間にキョウは身一つでベトベトンの救出に向かい、戻ってきた頃にはアンバーは既に出ていった後。キョウはジムの修繕費とアンバーの行動に頭を抱え、しばらくジムリーダー業に支障を来したそうな。

 

 

 

 

 

 

 こうして、アンバー第5の戦いは終わった。敵は忍者らしい素早さとトリッキーな戦術で翻弄してきたが、アンバーは辛くも勝利を納める。しかし、敵はどんどん強力になっていっている。だが、アンバーもコイキングもそれよりも強くなるのだ。何故ならば、王に負けは許されないのだから。

 

 頑張れアンバー! 負けるなコイキング! 500円の魂を引っ提げて、目指すはポケモンマスター! さあ! 右手の人差し指を伸ばし、天高く掲げて叫べ!

 

 

 

 キングは1匹! このコイだ!!

 

 

 

 「この後、ポケセンの宿泊施設にいた俺に“父上の仇!!”と叫びながらくの一っぽい服装のアンズと名乗った少女が襲い掛かって来たが返り討ちにして“お仕置き”をしたところ、即落ち2コマばりの速度で従順になり、なんか殿とか呼んできたのでエリカの護衛にすることにした」

 

 『ジムトレーナー以外の同性のお友達ができました♪』

 

 『父上……拙者、一生を身も心も捧げられる殿を見つけました……(ぽっ』

 

 「信じて送り出した愛娘が……」




連戦だとネタがなくなる……これサカキ戦とか四天王とかどうなるのか。

今回はじわれを使いました。本格的に人間やめてるアンバーと耐久力がおかしいコイキングです……今更か←

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