俺の相棒は最強の遺伝子ポケモン   作:吾輩がネコである

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長らくお待たせしました。最新話です。


第九話 初バトル

「なあ、ミュウツーさんや。こりゃあ一体、どないな状況やねん?」

 

『あのルカリオと言うポケモンがトレーナーの言う事を聞かずに暴れているようですね』

 

 突如目の前で発生した特殊イベントに、ミナトは似非っぽい関西弁――この世界で言うならばコガネ弁だろうか――で隣に佇む相棒に問いかける。

 その問いにミュウツーは普通に返答してくる。口調に関してはガン無視。完全なスルーを決め込んだ模様。ミナトは内心ちょっとガッカリした。

 そんなやり取りをしていると、メガルカリオのトレーナーと思しき金髪ポニーテールの少女がミナト達の存在に気が付いた。

 

「え、人……ッ!?」

 

 少女は自分以外の人間が来た事に驚いたような声を上げるが、ミナト達に視線を向けた事でその表情には更に驚きの色が濃く浮かび上がった。

 恐らく、と言うよりは十中八九ミュウツーの存在によるものだろう。ミュウツーはその特殊な生い立ちから世間一般には認知されていない存在だ。少女がどれほどのポケモン知識を有しているのかは不明だが、彼女とってミュウツーは正体不明の未知のポケモンであるはずだ。

 故に驚愕していた。そしてほんの一瞬だが、少女は無意識の内に殆どの思考を頭の隅に追いやってしまっていた。

 

 現在、自分がどのような状況にあるのかさえも……。

 

「グルウアアアアアアアアッ!!」

 

「ッ!?危ねえ!!!」

 

 そして、そのホンの一瞬の隙を突くかのようにメガルカリオが少女に向かって両手をかざし、そこから青いエネルギー弾を発射した。

 そのメガルカリオの挙動の一部始終を見ていたミナトは、叫ぶ様に声を張り上げると、少女に向かって突進した。

 

「え……きゃあ!?」

 

 ミナトの声によって現状を思い出した少女がメガルカリオに視線を向けた時には、エネルギー弾は既にすぐ近くまで接近していた。

 

「なんとおおおおおおおおお!?」

 

 少女にエネルギー弾が被弾する、その直前にどこぞのガンダムパイロットのような雄たけびを上げながら突撃してきたミナトが間一髪、少女に飛び掛かって抱え込む事で救出に成功した。

 ずさあ、と勢い良く地面に左肩からぶつかりながらスライディング。その影響で少し砂埃が舞った。

 

『ミナト!無事ですか?』

 

「ひゃあー……危なかったー!【はどうだん】が俺のすぐそばをバビュって通り過ぎてったよぉー。弾でタマがヒュンってなったぁ……」

 

『大丈夫そうですね』

 

 ミナトを心配したミュウツーが近寄って声を掛けるが、その後に続いたミナトの平常運転である事が確認できる発言を聞いて無事だと判断した。それからミナト達を庇う様に立ち、手のひらを翳して【まもる】を使用し、続けて放たれたメガルカリオの攻撃を防ぎ始めた。

 一方で、ミナトに助けられた少女はあの一瞬で何が起きたのか理解が追い付いていないのかミナトの腕の中でミナトの顔を見つめながら目をぱちくりさせている。

 少女の表情に可愛いと内心悶えながら、ミナトは視線を暴走しているメガルカリオに向けた。

 

「ったく、こんな可愛いトレーナーちゃんを攻撃するなんてふてえ野郎だな。野郎かどうかは知らんけど。ともかく、あの様子じゃあ完全に自分が何しているかも解っちゃいないな」

 

『ええ。あのルカリオと言うポケモンの中で【はどうだん】と類似したエネルギーが荒れ狂う嵐の様に暴れているのが感じられます。恐らく、体内の波導の力を制御できずに暴走しているのでしょう』

 

 ミュウツーがメガルカリオの攻撃を防ぐ間に持ち前のサイコパワーを使ったのか、メガルカリオの暴走の原因を分析する。それを聞いたミナトはミュウツーに問いかけた。

 

「なるほどな。で、あの暴走を止める方法は分かるか?」

 

『理性が殆ど無いあの様子では、サイコパワーで深層意識に問いかけるのも難しいでしょう。力で叩き伏せて、戦闘不能に追い込めば治るでしょう』

 

「昔のテレビかよ。まあ、メガシンカの影響なら戦闘不能にするのも確かに有効だな……」

 

 ミュウツーの分析の結果、武力制圧が効果的であるという判断を下したミナトは未だに自分の腕に抱かれている少女に問いかけた。

 

「ってなわけで、この状況を打開する為にあのメガルカリオを大人しくさせる為に一度アイツを戦闘不能状態にするべきだと判断した。それでも良いか?」

 

 先程までの男子高校生のような軽いノリとは一転して、真剣な声色と視線で少女を見つめる。その鋭さを増した視線を正面から受けた少女は、顔を伏せてわずかにその体を震わせた。金髪の前髪の間から垣間見える表情は苦渋に満ちており、ミナト達の下した判断を肯定したくないと言う気持ちが伺い知れた。

 ミナトにもその気持ちは分かる。状況が状況とは言え、ミナト達の提案を肯定する事は自分の大切な仲間を攻撃して倒して下さいと言う事なのだから。ミナト自身が同じ立場になったら、恐らく一度は嫌だと言う、あるいは他の方法は無いのかと抵抗する事だろう。

 ひとまず、いつまでも抱き合ったまま寝そべって居る訳にもいかないので苦悩する少女の肩をポンポンと叩き、ジェスチャーで起き上がる様に促す。

 少女は依然として判断に迷っていたが、ついに覚悟を決めたのか、目尻にうっすらと涙を溜めながらも決意を感じる表情で立ち上がり、ミナトの目をしっかりと見つめて口を開いた。

 

「ルカリオを……頼みます」

 

「良いんだな?」

 

 立ち上がりながら再度確認する。すると、少女は再び目を伏せつつ言った。

 

「あの子がこうなったのはあたしが未熟だったから。ルカリオは、メガシンカで生まれた膨大な波導の力で苦しんでる。これが最善かどうかなんてわからないけど、今のあたしに出来る事はただあの子の無事を祈る事だけ……だから、お願いします。ルカリオを助けてあげて下さい!」

 

「……君、名前は?」

 

「え?……あ、こ、コルニ、です」

 

 少女の名を聞いたミナトは、「そうか」と呟くと少女……コルニに背を向けながら言った。

 

「任せとけ!」

 

  ☆

 

『交渉は済みましたね?』

 

「ああ、時間稼ぎありがとうな。コルニの為にもアイツの目を覚まさせるぞ」

 

『了解です』

 

 コルニとの会話の間、ずっとメガルカリオの攻撃を防いでくれていた相棒に労いと感謝を込めた言葉を掛けながら、ミナトはその隣に立ってメガルカリオを見据えた。

 

「グルルルルルル……」

 

 依然、理性が感じられない敵意を込めた血走った眼でこちらを見つめながらも、先程までと異なり攻撃の手を止めていた。どうやら警戒しているようだった。

 

「ミュウツー。思えば、これが俺達が旅立ってからの“初バトル”になるんだよな」

 

『そう言われてみれば、そうですね』

 

 ミナトの言葉に、初めて気が付いたと言うニュアンスの声色でミュウツーが肯定した。ミナトはその返答に苦笑しながら言葉を続ける。

 

「初バトルの相手が暴走したメガルカリオか……。俺達の出会いからして普通じゃあ無かったが、なんつーか特殊イベントに事欠かないと言うか、色んな意味で先が思いやられるな」

 

『それでも、我々はそれを乗り越えて行くまでです』

 

「そうだな」

 

 ミナトは目を閉じ一度深呼吸をすると、閉じた目をカッと見開いて声を張り上げた。

 

「じゃ、いっちょ始めますか!!ミュウツー、まずは相手の周囲を高速で動き回って、メガルカリオを撹乱するんだ!」

 

『了解!』

 

 ミナトが指示を飛ばすと、ミュウツーは展開していた【まもる】を解除して持ち前のスピードを活かしてメガルカリオに接近。メガルカリオはそれに対抗しようと若干の溜め動作から、【はどうだん】をミュウツー目掛けて発射。

 しかし、ミュウツーは飛来した【はどうだん】をひらりと回避し、メガルカリオをおちょくるかのように左右前後、足元を除く全方位を飛び回る。

 ミュウツーを視界に収める為にキョロキョロと周囲を見回すが、ちょこまかと動き回るミュウツーを完全には視界に捉え切れず、メガルカリオがイラつきを隠し切れずに目に付く場所に【はどうだん】をばらまき始めた。

 

「ミュウツー、こっちも【はどうだん】だ!攻撃を回避しながらエネルギーを集中させるんだ!」

 

 ミナトの指示に頷いたミュウツーは、相手の【はどうだん】を回避する様に飛び回りながら右手に波導のエネルギーを集中させる。一方で、ミナトはメガルカリオをじっと見つめ、隙を伺った。

 少しの間だが攻撃の機会を伺っていると、メガルカリオがついに隙を見せた。【はどうだん】を撃ち過ぎて疲労したのか、発射しようとした【はどうだん】が発射寸前で霧散し、不発に終わったのだ。

 これを好機と見たミナトはすかさず指示を飛ばした。

 

「今だ!【はどうだん】発射ぁ!」

 

 指示を合図にミュウツーが【はどうだん】を発射。隙だらけとなったメガルカリオに真正面から高速発射された【はどうだん】がクリティカルヒットした。

 

「よし。格闘・鋼タイプのメガルカリオに今のは効果抜群だっただろ」

 

『まだですよ、ミナト』

 

 効果が抜群だった技が急所に決まった事もあって、バトルは終了だと思ったミナトだったがミュウツーの言葉を受けて気を引き締める。

 すると、【はどうだん】がヒットした事によって発生した砂煙の中から、橙色のオーラを纏った右の拳を振りかぶりながらメガルカリオがすごいスピードで飛び出してきた。

 

『甘い!』

 

 しかし、ミュウツーにとっては見切れない速さではなかった。メガルカリオの拳が迫った所で、持ち前のスピードを活かしてメガルカリオの右側をすり抜ける様に回避した。

 

「気を付けて。あれは【グロウパンチ】って言う格闘タイプの技で、攻撃が成功すると攻撃力を高める効果を持った技なの!」

 

 と、そこでミナトの後ろにいたコルニが注意するように情報を提供してくれた。

 その情報が確かなら、いかに効果が今ひとつとは言え、その技を食らえば相手を強化して自分達を追い詰める事になってしまう。

 

「だが、接近さえしなければ……!」

 

 そう呟いたミナトはミュウツーに更なる指示を発した。

 

「ミュウツー、【サイコキネシス】だ。メガルカリオの動きを封じて、地面に叩き伏せろ!」

 

 ミュウツーはそれに頷き、右手をメガルカリオにかざす。すると、メガルカリオの体を覆うように紫やピンクなどの色が入り混じった淡い光を放つオーラの様なものが出現する。

 それと同時に、メガルカリオが歯軋りしながらもがき始める。【サイコキネシス】によって体の自由を奪われてしまい、それから抜け出そうと暴れているのだ。

 

『大人しくなさい』

 

 静かにそう告げたミュウツーが右手をスッと上に向かって持ち上げると、メガルカリオも宙に持ち上げられる。そうなると、メガルカリオの方も相手が何をしようとしているのかを理解し、何としてでも抜け出そうとさらに暴れもがく。しかし、強力なサイコパワーを持つミュウツーの【サイコキネシス】から逃れる事は出来なかった。

 

『貴方にならこう言うべきでしょうか。……伏せ!』

 

 まるで飼い犬に芸の指示を出すかの様に告げたミュウツーは、その右手を一気に振り下ろした。そして、メガルカリオもまた、その動きに追従するように急降下して地面に叩き付けられた。

 

「ルカリオ!!」

 

 地面に叩き付けられたパートナーの姿を見て、コルニが思わずその名を叫ぶ。

 そのパートナーはと言えば地面に叩きつけられ、僅かに地面を陥没させながら気絶していた。同時に、メガルカリオの体を虹色の光が覆い、そして弾けた。

 するとそこには、本来の姿に戻ったルカリオの姿があった。

 

「ルカリオ、ルカリオ!!」

 

 コルニがルカリオの名を叫びながら駆け出していく。

 ミナトはミュウツーにお疲れ様と労い、涙を浮かべ謝りながら愛おしそうに相棒を抱きしめるコルニの元へ回復用の傷薬を片手に歩み寄るのだった。




次回更新は未定。出来るだけ早く上げたいと思っとります。前回もそんな事言ってた気がするけど、頑張ります。



要るかどうか分からないうp主の近況報告。
・仕事忙しい。終わって帰って食っちゃ寝する日々。
・余命一月以内を宣告された我が愛しきオンボロ車。必要とはいえ痛い出費で泣きそう。
・執筆中にPCに異常発生で執筆データ爆散。やったぜ(テンションダダ下がり)
・サトシ君準優勝で微妙な心境に。個人的にMVPはピカ様一択。
・艦これアーケードにハマる。が、一度変な男(恐らく同年代)に絡まれ一方的に巨乳の話題で相手が盛り上がる。うp主は「お、おう……」的な反応でドン引き。一般の耳目があるところで初対面の相手に何言ってるんだとメダパニ状態になる。今作のネタにでもしたろうかと思ったり思わなかったり。

以上、最近のうp主の必要性をあまり感じない主な近況報告でした。

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