もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

39 / 66
第三十九話 「トラブル」

「んぐっ――!?」

 

 

目が覚めると何故か口いっぱいに大量のお菓子。その量は窒息しかねない凶悪なもの。このままでは命が危ない。そう思いあたふたするも不思議と全く苦しさはなかった。

 

 

(な、何だ……? なんでオレ、お菓子なんか食べてるんだ……? ま、待てよ……この感じ、まさか……!?)

 

 

混乱していたのはほんの数秒。悲しいかな、自分には突然の事態に対する耐性ができてしまっている。何よりもこの状態には覚えがある。ララに寝ながらとらぶるを起こしてしまった時にも全く同じ夢を見た。ただあの時とはお菓子の味が違う。それが何を意味するか悟り、戦慄しながらもすぐさま夢の中から目覚めるとそこには

 

 

「こ、これ……やばっ……リトお兄ちゃ……スゴすぎぃ……!!」

 

 

汗だくで焦点の合ってない目のまま、体をビクンビクンと痙攣させているメアの姿があった。

 

 

「――メ、メアっ!? お、お前どうしてここに……じゃなくて、何やってるんだ!?」

 

 

飛び跳ねるようにその場から離れて、辺りを確認する。ここは夢の中ではない自分の部屋。メアは自分のベッドの上に横たわり、完全にダウン中。そして当然のように全裸。おそらくは自分が脱がせたであろう制服は床に散らばっている。悪夢だと思いたくなるような惨状だった。

 

 

「ふぅ……おはよう、リトお兄ちゃん。まさか本当に寝ながらでもとらぶるできるなんて……ハレンチ♪」

「ハ、ハレンチなのはお互い様だろ!? それよりもどうしてここにいるんだ!?」

「どうしてって、お兄ちゃんを起こしに来たに決まってるじゃない……あ、あれ? あは、すごい……腰が抜けちゃったみたい♪」

 

 

息を乱しながら立ち上がろうとするも、メアはベッドから起き上がることができない。同じ光景をいつか見たことがある。かつてララに五回連続でとらぶるした時も、足腰が立たなくなってしまっていた。

 

 

「だ、大丈夫かメア……? その、オレ、もしかしてキスしちゃったりしてないか……?」

「キスはしてないけど、体中をぺろぺろしてくれたよ? 起きてる時よりもスゴかったんだから!」

「そ、そうか……とりあえずごめん。それと、もう起こしに来るのは勘弁してくれ……」

「あは、残念だけどそうしようかな。毎朝これじゃあ、学校どころじゃなくなっちゃうしね」

 

 

ようやく絶頂から帰ってきたのか。胡坐をかきながら満足気なメア。対して自分はそれを決して直視しないように顔を背けるしかない。正面から見れば、見えてはいけないところが丸見え。自分のベッドが何かで濡れているように見えたのは気のせいだと思いたい。

 

 

「と、とにかく早く服着ろって! こんなところ誰かに見られでもした」

「おはようリト! 朝のとらぶるしにきたよー!」

 

 

言い終わるよりも早く完璧最悪のタイミングでピンクのプリンセスがやってくる。相変わらずノックもせずに入ってくることを注意するところなのだが今はそんな余裕はない。なぜなら

 

 

「お、おはようララ……その、こ、これはだな……」

「……♪」

 

 

トランクス一丁の自分と全裸でベッドに座っているメア。どっからどう見ても致した後のような有様。もしこの状況を誤魔化せる方法があったら教えてほしい。まるで浮気の現場を見られてしまったような気持ち。それが面白かったのか、メアはどこか妖艶な笑みを浮かべている。ようやくそのことに気づいたのか、ララは一瞬ポカンとするも

 

 

「あ、おはようメアちゃん! もしかしてリトのとらぶる消費してくれてたの?」

 

 

すぐに花の咲いたような笑顔とともにこちらにやってくる。そんなララに喜べばいいのか悲しめばいいのか分からない。夏休みの性教育で少しはマシになったかと思ったが、どうやらこのお姫様には通じてないらしい。

 

 

「……はい。ですからもういいですよ。これからもリトお兄ちゃんの面倒はあたしが見るから」

 

 

どこか挑発するようにメアはララに突っかかっていく。自分を起こしに来たのも、もしかしたらララに対抗するためだったのかもしれない。だが悲しいかな

 

 

「ほんと? よかった! じゃあ一緒によろしくね、メアちゃん! ヤミちゃんにもお願いしたことがあったんだけど、断られちゃって困ってたの!」

 

 

ララには全く通じない。というか当てつけをされていることすら気づいていない。分かってはいたがそれでも目の前にするとすごい。本当に一緒にとらぶるしてくれる仲間が増えたことに喜んでいる。その前提からしてどうかと思うのだが自分に突っ込む権利などあるはずがない。

 

 

「……ふん。リトお兄ちゃん、あたし先に降りてるから」

 

 

毒気が抜かれてしまったのか、それでも精一杯に対抗心を見せながら服を着てメアは一階に行ってしまう。そこだけ見れば拗ねている子供そのもの。

 

 

「その、あんまり気にするなよララ? メアも悪気があってしてるわけじゃ……」

「うん、分かってる! 今はまだだけど、メアちゃんとも仲直りしてみせるんだから!」

 

 

おー! とやる気満々のララの姿にとりあえず一安心。そもそもララが誰かを嫌いになることなどあるのだろうか。怒るのは一度見たがどうにも想像できない。

 

 

「あ、そうだ。メアちゃんもいいけど、わたしにもとらぶるさせてね、リト?」

「え? あ、ああ……いいけど……じゃなくて、お願いします……」

「よかった! わたしととらぶるするの嫌になっちゃったのかと思ってたの! じゃあ、明日はもっと早く来ようかなー……あ! こっちに住んじゃダメ? そしたらもっと早く来れるし、学校にもすぐ行けるよ!」

「な、なんでそうなる!? ちゃんと家には帰らないとデビ……ナナ達も心配するだろ?」

「うーん、そうかなー?」

 

 

どうにかこうにかしてララを納得させる。学校に行くようになっただけでもあの騒ぎ。こっちに居候するようになったらどうなるか想像もつかない。最悪ナナやモモまで来かねない。あの夏休みの忙しさが毎日なんて流石に耐えられない。デビルーク王なら面白がって許可するのは目に見えているので何とかここで最終防衛線を死守しなければ。

 

 

「はあ……とりあえず、朝ごはんを食べに降りるか」

「うん、美柑のごはん美味しいから楽しみ♪」

 

 

げんなりしながらララと一緒に一階へと向かう。だがどういうわけか自分は頭にパンツ(もちろんメアの)を被っていたらしく、美柑とヤミから絶対零度の視線を浴びることに。絶賛ノーパン中のメアはそれを見て大笑いし、ララに至ってはパンツを被っていた自分に全く違和感を感じていなかったらしい。それがメアも加わった新しい結城家の朝の始まりだった――――

 

 

 

ヤミ、ララ、メアと自分というある意味宇宙でもめったにお目にかかれない豪華メンバーで登校し、学校に到着。朝の出来事のせいで若干ヤミは刺々している。やはり妹は可愛いのか、メアには甘いところがあるのでお叱りを受けるのは主に自分。護衛としてそれはどうなのかと思うも怖くて口にはできない。

 

 

(ララ達が転入してきてからもう一週間か……とにかく、とらぶるだけはしないように気を付けないと!)

 

 

自分にとっては勉強云々よりもそっちの方が重要。とりあえず高校に上がってから、学校ではヤミにしかとらぶるしていなかった。二学期になってからはララとメアも増えたが基本身内だけ済んでいる。能力の応用として逆ラッキースケベを習得したがあれは人前でとらぶるしそうになったときに使う緊急避難のようなもの。普段のとらぶるで使うと後が怖い。きっと股間を見られるだけでなく、それを相手に押し付けるように進化しかねない。そんなこんなで決意を新たにしてると

 

 

「あ……お、おはよう結城君」

「え……? お、おはよう……西蓮寺」

 

 

教室に入ると同時にクラスメイトで学級委員の西蓮寺春菜と目が合ってしまう。いつもならお互いそのままスルーするのだが、ぎこちなく挨拶されたのでこちらも慌てながら返事する。だがそれがどれだけ自分にとってはあり得ない出来事なのか。

 

 

(ク、クラスの女の子から挨拶されるなんて……これって、夢じゃないよな……?)

 

 

思わず自分の首筋にメアのおさげが繋がっていないか確認するも問題なし。でもまだ信じられない。古手川は一学期の終わり頃から何故か挨拶してくれるようになったが、他のクラスメイトの対応は変わらなかった。しかし二学期になってから徐々に、自分に話しかけてくれる人が増えてきている。その理由はたった一つ。

 

 

「あ、おはよう春菜! 今日もよろしくね!」

 

 

二学期になって転入してきたララの存在。転校初日にやらかしてくれたとらぶると宇宙人カミングアウトが影響したのか、自分に対する風当たりが急激に弱くなってきている。その天真爛漫さと相まってクラスのムードメーカー兼トラブルメーカー(とらぶるではない)の地位を確立。あっという間にクラスに馴染んでしまっている。

 

 

「お、また今日も愛しの王子様と一緒に登校かな、ララちぃ?」

「おはよう、里紗! 王子様って何のこと?」

「とぼけちゃって~結城のことだよ。相変わらず仲がいいことで」

「リトが王子様? わたしはお姫様だけど……うん、結婚したらリトはデビルークの王様にはなるよ」

 

 

いつの間にかクラスメイトの籾岡がやってきて自分とララをいじってくる。籾岡も西蓮寺と同じくララと仲がいい友達。その影響もあって自分にも普通に接してくるようになった。少し馴れ馴れしすぎるような気もするが、今までに比べたら雲泥の差だろう。

 

 

「そういえばどっかの星のお姫様なんだっけ、ララちぃ。よかったね、結城。逆玉の輿だよ?」

「も、もう里紗ったら……結城君も困ってるよ」

「はいはい、分かってるって。そういえばララちぃ、今日の数学の宿題見せてくれない? 実はすっかり忘れててさ」

「いいよ。じゃあ代わりに国語の宿題教えてくれない? まだ慣れてないの」

「え? あ、ああ……そうだね、それは春菜に教えてもらった方がいいかも」

 

 

そのままララ達は楽しそうにおしゃべりし始める。心配はしていなかったが学校生活も楽しめているようで一安心。ララ曰く、自分がしたいことをしているだけなのだろうが、そのおかげで自分の学校生活もどんどん良くなっていく。とらぶるのことに加えて本当に頭が上がらない。

 

 

(そういえば……一学期はヤミとずっと一緒に行動してたっけ。最近はあんまりだけど……)

 

 

ふと思い出す一学期の学校生活。ほとんど四六時中自分はヤミと一緒に行動していた。護衛なのだから当たり前と言えば当たり前。流石にトイレの前で出待ちするのは勘弁してほしかったのだが。しかし二学期になってからは二人きりになることはほとんどない。ララに加えてメアもいるのだから。護衛という面でもララがいるので常に自分ついている必要もない。メアに関しては不安もあるが、ヤミにとっても負担は少なくなっている。良いことのはず。

 

 

「…………なんですか、結城リト?」

「い、いや……何でもない」

 

 

知らず見つめていたことに気づかれたのか、ヤミが怪訝そうな顔をしている。咄嗟に誤魔化すも動揺は隠しきれてない。どうにもおかしい。一学期の時は全く気にしていなかったのに、ヤミとの付き合い方が分からなくなってしまっている。

 

よく分からないもやもやを抱えながら、騒がしい学校が開始されたのだった――――

 

 

 

「いただきまーす!」

「いただきます」

 

 

ララとヤミは対照的な声でいただきますと言いながら弁当を食べ始める。今は昼休み。場所は屋上。今までは自分とヤミの二人だけだったのが今はララとメアも加わり賑やかさが段違い。もっとも女の子三人と自分は若干距離を空けて座っている。なんだがハブられているようだがいかんせん自分の能力対策。むしろララとメアがちゃんと距離を取ってくれていることに感謝するべきかもしれない。しかし

 

 

「そうだ、リトお兄ちゃんこのお菓子美味しいんだよ。分けてあげる♪」

 

 

もう一つの心配事がこの空間にはある。メアはさも当然のようにチョコのようなものをこちらに差し出してくる。本当に気持ちは嬉しいのだが弁当を食べながらお菓子は勘弁してほしい。最初はお菓子しか持ってきていなかった転入初日に比べればマシになったのだが甘いもの好きは変わらない。ヤミも含めて、変身兵器は甘いもの好きなのかもしれない。

 

 

(あとはララと仲良くしてくれたらいいんだけど……なんであんなに毛嫌いしてるんだろう……?)

 

 

こうして顔を合わせても二人はほとんど会話をしていない。自分やヤミが伝言役になっているような状態。ヤミにも相談したのだが時間が解決してくれるでしょうとしか答えてくれなかった。確かにそれは間違いない。しかしどうにも分からない。マスターであるネメシスはララと仲直りしていることはメアも知っているはず。なのにどうしてここまで頑なに対抗意識を燃やしてるのか。

 

 

「? どうしたのお兄ちゃん? もしかしてやっぱりお菓子が欲しくなった?」

「そうじゃないんだけど……えーっと、あれだ! メア、学校来るの初めてなのにすぐに慣れたなって。ララなんか夏休みの間にいろいろ教えてようやくだったのに」

「あ、ひどいリト! わたしだって頑張ったんだから!」

 

 

誤魔化すついでに疑問に思っていたことを尋ねてみる。転入するのは簡単だがそれに慣れるのは簡単にいかない。ララは学校などいったことないのだから当たり前。だからこそ夏休みの間に学校がどんなところで、どんなルールがあるのか必死に教えたのにメアは完全に学校生活を熟知している。一体どうなっているのか。

 

 

「簡単だよ。だってあたし、リトお兄ちゃんの記憶で学校がどんなところか知ってたんだもん♪」

 

 

どこか自慢げにメアはそんな種明かしをしてくれる。だがそれは自分にとっては悪夢でしかない。それはつまり

 

 

「じゃ、じゃあ……オレがどんな生活してたか……全部知ってるのか……?」

「もちろん♪ 一週間、毎日繋がってたんだから当たり前でしょ? リトお兄ちゃんのことで、あたしが知らないことなんてないんだから」

 

 

明かされる衝撃の事実。少し考えれば分かること。メアの精神侵入は相手との精神接続を可能とする能力。なら記憶を覗き見るなんて朝飯前。実際、起きる前につながっていたのだからジャレにならない。ようするに、メアに対してはプライバシーもなにもあったものではないということ。

 

 

「だからお兄ちゃんがここでヤミお姉ちゃんのパンツを覗いてたことも知ってるよ?」

「なっ――!?」

 

 

思わず体がのけ反ってしまう。言われて思い出すのは最初の頃の出来事。まだヤミが貯水タンクの上で食事をしていたころの話。確かに覗いてしまったこともあるがあれは不可抗力。ちゃんとそれ以来は上を向かないようにしていたのだからセーフのはず。

 

 

「……そういえばそうでしたね。やはり貴方はとらぶるがなくてもえっちぃです」

「ご、誤解だ!? 大体あんなところで食事するヤミが悪いんだろ!」

「なんでパンツを見られただけでそんなに怒ってるのヤミちゃん? とらぶるの時にはいつも見られてるか脱がされてるのに」

「ララ……お前な……」

 

 

火に油どころかガソリンを撒いているララに言葉もない。悪気がないのは分かるがもう少しオブラートに包んでほしい。久しぶりのヤミの急所を貫くような視線と言葉に戦慄しているも

 

 

「あは、ヤミお姉ちゃんだってお兄ちゃんのこと言えないでしょ? ここでお兄ちゃんのとらぶる消費してあげてたんだから♪」

「……え?」

 

 

それはメアの言葉によってなくなってしまう。自分だけでなく、ヤミも固まってしまっている。まるで秘密がバレてしまったかのような表情。

 

 

「それって……オレがここでヤミをとらぶるに巻き込んじゃったことか? でもあれはオレが間違えて巻き込んじゃっただけで」

「くすっ、そんなわけないでしょ? ヤミお姉ちゃんがリトお兄ちゃんの間合いを見誤るわけないもん。あれはヤミお姉ちゃんがとらぶるの四回目を防ぐためにわざとやってたんだから。ね、ヤミお姉ちゃん?」

 

 

飴をなめながらメアはヤミに向かってウインクしている。だが当の本人は未だにフリーズしたまま。それがメアの言っていることが嘘ではないことを物語っている。

 

 

「ヤ、ヤミ……? じゃあ、今までとらぶるしちゃってたのは……」

「~~~~っ!? ち、違います……! あれはただ、油断していただけで……その……メア! ちょっと一緒に来てください!」

「え? なんで?」

 

 

いつかの時を上回りかねないほど顔を真っ赤にして目を泳がせながらヤミは神速でメアを引っ張りながら屋上からいなくなってしまう。あとには茫然とした自分と、どこか楽しそうに弁当を食べているララだけが残されたのだった――――

 

 

 

「――どういうつもりですか、メア?」

 

 

人気がない廊下の隅でヤミはメアに詰め寄っていく。無意識なのか、髪が変身でざわついている。メドゥーサもかくやという威圧感。ただその瞳は羞恥と動揺でぐるぐるになってしまっている。

 

 

「――あは、素敵な眼♪ だって本当のことでしょ? それにちゃんとリトお兄ちゃんにアピールしないと」

「アピール……? いったい何の話ですか?」

 

 

そんなヤミの権幕にも全く動じることなく、むしろ楽し気にメアはそんなことを告げてくる。ヤミには全く理解できない状況。それを見越したのか

 

 

「えーだって~好きなんでしょ? リトお兄ちゃんのこと」

 

 

さも当然のようにメアはヤミの心を言葉にしてしまった。

 

 

「な、なにを言っているんんですか!? 結城リトは私の護衛対象で……そ、そんなことを誰が言っていたんです!?」

「誰も言ってないよ? でもあたしは知ってるよ。だって、喧嘩したときにお姉ちゃんの心が伝わってきたから」

「け、喧嘩した時……?」

「うん♪ ヤミお姉ちゃん、暴走したあたしを止めてくれたでしょ? あの時、変身の共鳴でお姉ちゃんの記憶と感情が流れ込んできたの。ヤミお姉ちゃんがリトお兄ちゃんを『好き』だって気持ちも。これって『恋』っていうんでしょ? 素敵♪」

 

 

胸の前で手を組みながら、どこかうっとりした表情でメアは明かす。精神侵入という第二世代変身兵器であるメアだからこそ感じ取ることができたヤミの心。恋という人間でなければ持つことができない素敵な感情。それがメアが地球人ごっこをしている理由。自分もいつかその感情を持ちたいという願いと姉の恋路を応援するために。

 

 

「と、とにかく余計なことはしないように! もしこの約束を破るようなら、宇宙に送り返しますから!」

 

 

もはや誤魔化すのは無理だと悟ったのか、ぷいっと振り返りそのままヤミは屋上に戻ろうとするも全く逆方向に行ってしまい、慌てて戻ってきている。普段のヤミからは考えられない恋する少女の姿。そんな自らの姉の後姿を見ながらも

 

 

「……早くしないとデビルークにお兄ちゃん取られちゃうよ、お姉ちゃん?」

 

 

聞こえないようにぽつりとメアは呟く。リトの知らないところでとらぶるではない、もう一つのトラブルが始まろうとしていた――――

 

 

 

 




第三十九話を投稿させていただきました。今回はタイトルにもあるようにもう一つのトラブル、リトとララ、ヤミの三角関係の始まりとなります。原作では春菜とララの三角関係? ですがこのSSではヤミが候補になっています。そのことを意識してこのSSではララとヤミを対になるように描いています。

ララは太陽。純粋、天真爛漫さで相手を振り回しながら幸せにするタイプ。対してヤミは月。寡黙で表には出ず、影で相手を支えるタイプ。学校でリトのために二人がどういう風に動いたかを見直してもらえると分かりやすいです。メアがララに対抗心を持っているのはデビルークなのもありますが、ララがヤミにとっての恋敵だと思っているから。

リトがどちらを選ぶのか予想しながら読んでいただければ嬉しいです。では。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。