もし結城リトのラッキースケベが限界突破していたら 【完結】   作:HAJI

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第二十五話 「矛盾」

月明りがあたりを照らしている人気のない夜道で二人の少女が向かい合っている。金と赤。互いに変身能力という力を持つ姉妹。だがその態度は正反対。ヤミはただ無表情に、メアは興奮した笑みを浮かべている。一触即発。そんな空気の中で一人その場に場違いな、ある意味この状況の中心となる少年がいた。

 

 

「お、落ち着けってヤミ! 何も戦うことはないだろ……!? ほら、ちゃんと話し合いをするとか……」

 

 

リトは慌てて二人の間に割って入りながら何とか仲裁しようと試みる。確かにヤミの立場からすれば当然の反応かもしれないが流石に街中で戦闘するのはまずい。加えて短い時間の関わりだがメアが悪い娘ではないことは感じ取れた。何より姉妹で戦うなんて間違っている。だが

 

 

「……黙っていてください、結城リト。大体誰のせいでこんなことになったと思ってるんですか?」

「そ、それは……」

「勝手に一人で出歩いたこと、帰ったらしっかり聞かせてもらうのでそのつもりで」

 

 

確実にこちらの急所を貫くヤミの反論にぐうの音も出ない。間違いなくこの状況を招いてしまっているのは自分のせいなのだから。帰ってからの説教もだがとにかく穏便にこの場を収める方法はないものか。

 

 

「あはは、二人とも仲がいいんだね。心配しなくてもいいよ、リトお兄ちゃん。これは姉妹喧嘩みたいなものなんだから、家族なら喧嘩ぐらいするものなんでしょ? 素敵♪」

 

 

自分達のやり取りがお気に召したのか、楽しそうに笑みを見せながらメアはそんなよく分からないことを口にしている。確かに家族なら喧嘩ぐらいはするかもしれないが、今から喧嘩をすると嬉しそうに宣言する妹がどこにいるのか。そもそも変身能力を使っての喧嘩なんて洒落にならない。何より

 

 

「と、とにかくやめろって! 前のデビルーク王の時みたいなことになったらどうするんだ!?」

 

 

心配しているのはその一点。デビルーク王との喧嘩の時のように歯止めが利かなくなってしまうのではないか。ヤミに危険が及ぶのではないか。いくら護衛と言ってもヤミは女の子。危険なことにはできるだけ巻き込みたくはない。だがそれは

 

 

「…………そこから動かないように。以前のように貴方を庇いながら戦う余裕はなさそうなので」

 

 

逆にヤミのプライドに傷をつけてしまっただけ。先ほど以上に意固地になってヤミは自分から離れ、メアに近づいていく。それを止める力は今の自分にはない。無理やりとらぶるに巻き込んで空気を殺す手も考えたがもう四回目は消費してしまっている。自分の意志でヤミにえっちぃことをするほど今の自分には覚悟がない。そんなことしたらヤミに殺されかねない。

 

 

「ようやくその気になってくれたんだね、ヤミお姉ちゃん。じゃあ、行くよ♪」

 

 

プレゼントを待ちかねていた子供のように無邪気な笑みを見せながらメアは動き出す。それに合わせるようにヤミもまた動き出す。その瞬間、二人の変身兵器の戦いの火蓋が切って落とされたのだった――――

 

 

 

先制したのはヤミだった。間髪入れずに変身によって髪を拳に変化させメアへと叩き込む。本気ではないが、並みの相手であればそれで勝負がつくような一撃。だが

 

 

「あは、残念♪」

「っ!」

 

 

それは同じく赤毛によって編まれた拳によって受け止められる。どころかそのまま反撃に転じてくる。その速度も重さも自らの全力と遜色ない。一瞬体勢が崩れかけるもすぐさまこちらも変身を駆使し、無数の拳で応戦する。変身を使った打撃戦。

 

 

(間違いない……本当に私と同じ、変身能力……!)

 

 

目まぐるしい戦闘の中でも冷静に敵の戦力を分析する。半信半疑だったがもはや確信した。間違いなく目の前の少女、メアは変身兵器。まさか本当に自分以外にも成功体がいたとは。姉妹というのはあながち間違いではないらしい。本当なら戦闘ではなく結城リトが言っていたように話し合いで解決したいところだがおそらくは無理だろう。

 

 

(あの瞳……戦うことを愉しんでいる……)

 

 

それはメアの瞳。先ほどまでとは違う明らかな悦びがある。変身兵器としての本能かそれともヒトとしての闘争本能か。どちらにせよ話し合いだけでどうにかなる相手ではないのはこれまでの経験で明らか。何よりも結城リトを狙ってきている以上、対立は避けられない。

 

 

「どうしたのヤミお姉ちゃん? 戦いの最中に考え事?」

「……貴方こそ、戦闘中に話しかけてくるとは余裕ですね」

「む、あなたじゃなくてメアだよ! それに手加減しているのはヤミお姉ちゃんも同じでしょ? お姉ちゃんが本気にならないならわたしのほうが先に本気を出すよ?」

 

 

こちらの思考が読まれたのか、それとも名前で呼ばれなかったことが不満なのか。メアは若干不機嫌そうな表情を見せながらそんなことを口にしてくる。どうやらこちらが手を抜いていたこともバレていたらしい。同時に確信する。メアもまた、変身の最も効果的な在り方を知っているのだと。

 

 

「……いいでしょう。怪我をしても知りませんよ」

「もちろん♪ これは喧嘩なんだもん。ちょっとぐらい怪我したって仕方ないよね!」

 

 

拳の衝突によって、互いに距離ができた瞬間、同時に変身によって新たな武器が生み出される。刃。髪の穂先から無数の刃が生み出される。鏡合わせのように自分とメアは共に変身にとって最も効率的な攻撃形態をとる。違うのは私の刃が複数だとすれば、メアの刃は長いおさげの一本だけということ。

 

 

合図もなく互いに同時に動き出し、刃を合わせる。それが宇宙で初めての変身兵器同士の戦いの真骨頂だった――――

 

 

 

(す、すげえ……!)

 

 

ただ目の前の光景に圧倒されるしかない。それはまるでダンスのようだった。ヤミとメア。金と赤の髪と刃が目にも止まらない速度で絡み合い弾け合っていく。同時に金属音と火花が響き合う。もしあれに巻き込まれたらどうなるか。考えるだけでぞっとする。幸いにもあたりには人気がない場所で助かっているがそれでも騒ぎを聞きつけていつ誰がやってくるかも分からない。自分だけこの場を離れて助けを呼んでくることも考えたが難しいだろう。位置関係的にメアのほうが先に気づいてしまう。下手に動いたら戦いの余波に巻き込まれてしまうかもしれない。それを見越したうえでヤミも自分にじっとしているように言ってきたのだろう。

 

 

(でもやっぱりヤミって強かったんだな……やっぱりデビルーク王が強すぎるだけなのかな……)

 

 

改めて自分の護衛であるヤミの強さに驚くしかない。自分がヤミが戦っているのを見にしたのは二度だけ。学校で賞金稼ぎの襲撃を受けた時とデビルーク王との喧嘩の時。賞金稼ぎについては一瞬で決着がついたこと、デビルーク王の時は最後の攻防だけだったので実感が湧きにくかったが今は違う。宇宙一の殺し屋の異名は伊達ではない。だが

 

 

(な、何だ……? もしかして……ヤミが押されてきてる……?)

 

 

徐々にだが、変化が生じてくる。刃での攻防になってからは攻勢で押していたはずのヤミが少しずつだが押され始めている。その証拠にヤミの表情はだんだんと険しくなってきている。対してメアは熱に浮かされているかのように喜悦の表情を浮かべている。自分はただその光景を見守ることしかできなかった――—―

 

 

 

「久しぶり……この感覚、素敵♪」

 

 

息を乱し、頬を染めながらメアは髪を振り乱し、刃を繰り出していく。興奮が隠し切れないのか体の震えを抑えきれていない。まるでえっちぃことに興奮しているかのような有様。だがその攻撃を徐々に押され始めている。受け止められていた斬撃が受けきれず、体の動きで回避する必要が出てきた。紙一重のところに刃が走っていく感覚に冷たさを感じる。

 

 

(これは……!? 私が鈍ってきている……? いや、違う!)

 

 

初めは自分が三か月の地球の生活の中で鈍ってしまったせいかと考えるもそれは違うと思い出す。確かに以前は鈍っていたが、デビルーク王とのいざこざによってそれは解消されている。それ以降戦闘訓練も欠かしていない。だとすれば答えは一つだけ。

 

 

(性能で私がメアに劣っている……? 第二世代との性能差、ということですか……)

 

 

生体兵器としての性能差。自分よりも後に生み出された第二世代変身兵器であれば確かにそれは納得がいく。数値でいえば僅かな差だが実際の戦闘においてそれは大きなアドバンテージとなり得る。現に自分は徐々ではあるが押され始めている。メアが戦闘によってギアが上がってきているのもあるだろう。このまま馬鹿正直に正面から刃を合わせるのは得策ではない。

 

 

「どうしたのヤミお姉ちゃん!? まだまだこれからだよ!」

 

 

メアが興奮しながら一気に攻勢を仕掛けてくる。その刃が自分の僅かにできた隙を狙ってくる。いや、狙わせる。

 

 

「――――っ!」

 

 

瞬間、初めてメアの表情から笑みが消える。確実な隙を狙った攻撃を防がれてしまった驚き。速さと重さは劣るが、数でそれを補うように操っている髪の大部分でメアの斬撃を防ぐ。同時に止まっていた状態から最高速でメアに肉薄する。静と動。緩急による速度差で相手をとらえる。性能で劣っていても経験ではこちらが勝る。

 

 

「――――終わりです」

 

 

間髪入れずに自らの手を刃に変身させながらメアに突き出す。完全に捉えた回避も防御も不可能な攻撃。だがそれは見たことのない黒いナニカによって砕かれてしまった――――

 

 

 

「びっくりしたー……さすがヤミお姉ちゃんだね。これを使うことになるんて」

 

 

(あれは……盾……?)

 

 

瞬時にメアから距離を取りながら何が起きたのか状況を確認する。まずは自分の右手。刃に変化させた部分は粉々に砕けてしまっている。今まで経験したことのない事態。最高の硬度まで高めている変身の刃が通じないなんてありえない。対してメアの腕は黒い盾のようなものに変身している。それで自分の攻撃を防いだのだろう。だが分からない。同じ変身ならメアの盾も砕けていてしかるべき。にも関わらずメアの盾は全くの無傷。

 

 

「ふふっ、驚いてくれたみたいだね。これはオリハルコンっていう物質を変身で再現してるの♪」

「オリハルコン……?」

 

 

子供がおもちゃを見せびらかすようにメアはその黒い盾を晒してくる。だが自分にはその知識がない。口ぶりからすると盾を構成している物質の名称だろうか。だが

 

 

「オ、オリハルコンって……あのデビルーク王が殴っても壊れないって奴か……!?」

 

 

何故かこちらの世界には全く無関係のはずの結城リトが反応している。瞬間、それまでの戦闘の緊張感が一時的に霧散してしまう。あれだろうか。私の主人はシリアスには耐えられない体質なのかもしれない。

 

 

「……なんで貴方がそんなことを知っているんですか。というかなんですかその変なフレーズは……通販番組か何かの真似事ですか?」

「え!? そ、それは……デビルークの通販番組で見たことがあるんだ。めちゃくちゃ固い物質で、その、デビルーク王が殴っても壊れないとか何とか……」

「…………色々と突っ込みたいことはありますが、黙っていてください。気が散ります」

「はい……」

 

 

デビルークでも俗世にまみれまくっている結城リトに呆れるしかない。通販番組とはいえそんなフレーズに使われるなんていったいデビルーク王はどんな統治しているのか。

 

 

「デビルーク王はどうかわからないけど、リトお兄ちゃんが言ってるのは本当だよ。このオリハルコンは宇宙で一番固い物質で希少なの。宇宙のダイヤモンドだって言われてるくらいなんだから♪」

「とりあえず通販で売られているようなものではないことは分かりましたが……まるで誰かに教わったような物言いですね」

「マスターに教えてもらったんだ。変身を最大限に生かすためだって。変身にはイメージもだけど、正確な知識が必要なんだってね」

「なるほど……そういうことですか」

 

 

親の自慢をするようなメアを見ながらも納得がいった。どうやらマスターと呼ばれる何者かがメアに知識を与えているらしい。なんにせよあの盾は厄介なのは間違いない。あれを掻い潜りながらメアに攻撃を加えるにはどうするか。思考を巡らせるも

 

 

「じゃあ再開するよ。見せてあげる。経験は劣るけど、性能はヤミお姉ちゃんよりも上なんだから♪」

 

 

メアは弾けるように動き出す。同時に自らの髪を刃に変化させる。経験を活かし、隙を生み出し、あの盾を攻略する。しかしすぐにそれが間違いだったのだと気づく。

 

 

瞬間、自分の変身が、刃が全て粉々に砕け散ってしまう。まるで硝子のように。分からない。一体何が起こったのか。確かにメアの攻撃を捌いたはずなのに。

 

 

「――――っ!?」

 

 

それは一本の黒い刃だった。何物にも砕けない絶対物質。それがメアの真の武器。そう、自分は勘違いしていた。オリハルコンは防御だけではない。攻撃にも転じれる、矛盾の存在だったのだと。

 

 

「――――おしまいだね、ヤミお姉ちゃん?」

 

 

さっきのお返しだととばかりにその黒い斬撃が私に襲い掛かってくる。それを防ぐことも躱すこともできない。何とか体を硬質化させるもオリハルコンの刃に前では焼け石に水。そのまま吹き飛ばされてしまう。

 

 

「っ!? ヤ、ヤミ大丈夫か!? 怪我が……!?」

「っ……大丈夫です。それよりも離れてください」

 

 

何とか立ち上がった自分に向かって走り寄ってくる結城リトを制止しながらすぐさま治癒開始する。体の傷はナノマシンによって瞬時に回復し、破れていた服も修復可能。これが自分が生体兵器だといわれるもう一つの理由。たとえ腕が切り落とされても再生できる不死身性。それを彼に見られるのは嫌だったが仕方ない。何よりもこんな無様な姿を見せて、あんな心配そうな顔をされていることのほうがずっと辛い。

 

 

「無理しちゃダメだよお姉ちゃん。再生はエネルギーを消費するんだから。でも喧嘩はわたしの勝ちでいいよね? じゃあそろそろ行こう! マスターも待ちかねてるし」

 

 

先ほどまで戦っていたとは思えない無邪気さでメアは変身を解除し、こちらに微笑みかけてくる。こちらの毒気が抜けてしまうような在り方。きっとこの娘には悪意はないのだろう。良い娘だというのは何となく分かる。

 

 

「いいえ、まだです……」

 

 

だがわたしはまだここで屈するわけにはいかない。変身兵器としても、護衛としても。このままでは何一つ守れない。

 

 

「ヤミ、もう止めろって……!? メアももう止めてくれ……オレが一緒に行けばいいんだろ?」

「そうだけど……ヤミお姉ちゃんももう分かってるんでしょ、負けちゃった理由。お姉ちゃんとわたしにはほとんど強さに差はないんだって。性能はわたしの方が上だけど、お姉ちゃんの方が経験もあるし、(ダークネス)もあるんだから」

 

 

メアはただ事実だけを述べてくる。兵器としての自分とメアには優劣はないと。分かっている。そんなことは私が誰よりも分かっている。自分が追い詰められている理由も、こんな醜態をさらしている理由も。でもそれを認めるわけにはいかなかった。それは今の自分を否定することになってしまうから。なのに

 

 

「地球人ごっこをしている間はわたし達には勝てないよ、ヤミお姉ちゃん?」

 

 

メアははっきりと宣告する。致命的な矛盾を抱えた自身の心の闇。デビルーク王との戦いから棚上げにしていた、逃げていた自分の弱さ。

 

 

「――――」

 

 

気が付けば駆けていた。自分を制止する結城リトの声も聞こえない。ただメアの言葉に反発する一心で向かっていく。同時に黒い刃が襲い掛かってくる。だが防げなかったその攻撃に晒されながらも、自分はただ走り続ける。

 

メアが息を飲むのが分かる。オリハルコンの刃は今の自分では防ぎきれない。なら、防がなければいい。致命傷となる物だけを避け、それ以外は無視する。肉を切らせて骨を断つ。機械のように自分の身体を操作ししながらただ標的を狙う。止められないと判断したのか、メアは再び盾を作り出し自分を止めようとしてくる。それでも自分は止まらない。確かに自分にはオリハルコンは作れない。だが、メアも持ちえないもう一つの矛を自分は持っているのだから。

 

 

瞬間、矛盾は崩壊した。

 

 

「――――何か言いたいことはありますか、メア?」

 

 

刃をメアに突き付けながら問いかける。自分の手は光の刃となっている。変身のエネルギーを剣へと変身させる奥義。デビルーク王との戦いの中で思い出したもの。メアのオリハルコンの盾は光の剣によって両断されている。その衝撃で髪留めも壊れ、おさげはなくなり髪がはためいている姿は確かに自分と姉妹だといわれてもおかしくない。

 

 

「――――素敵♪ それに初めて名前で呼んでくれたね、お姉ちゃん」

 

 

追い詰められているはずなのに、どこか光悦とした表情でこちらを見つめてくるメア。本当に状況が理解できているのか疑わしい。まだ戦う気なのだろうか。とにもかくにも拘束か、戦闘不能にまで標的を追い詰めなくては。ヒトではない、兵器としての私の思考。だが

 

 

「でも残念、言ったでしょお姉ちゃん? そのままじゃ『わたし達』には勝てないって」

 

 

すぐに思い知らされることになる。自分は兵器としてすら欠陥品だったのだと。

 

 

「な、何だこれ!? く、黒い霧が……!?」

 

 

自分の背後にいる結城リトの悲鳴によって振り返る。そこには黒い霧のような物に襲われ、捕まってしまっている結城リトの姿がある。瞬時に理解する。メアの言葉の意味。わたし達という言葉の意味。同時に自分の愚かさ。本当の守るべき標的を忘れてしまうほど、自分が我を失ってしまっていたのだと。

 

 

「隙だらけだよ、お姉ちゃん?」

「く――っ!?」

 

 

すぐさま結城リトを救出しに行こうとするもそれを待っていたかのようにメアの髪が体に絡みつき、そのままはるか後方に投げ飛ばされてしまう。それに続くようにメアは逆に結城リトと黒い霧の傍まで移動してしまう。

 

 

「じゃあね、楽しかったよお姉ちゃん。またすぐ迎えに来るから。先にお兄ちゃんは連れていくね」

 

 

ばいばい、と手を振りながらメアの姿が消えていく。ワープをしようとしている前兆。その証拠にその後ろにいる結城リトも消えかかっていく。

 

 

「リト――――!!」

 

 

なりふり構わずただ必死に手を伸ばす。変身ではない自分自身の手。届かないと分かっているのに。自分には手に入らないものを求めるように。だがあとには何も残らない。残されたのは戦いの爪痕とヒトにも兵器にもなり切れなかった一人の少女だけ。

 

 

 

それが結城リトが彩南町から姿を消した瞬間だった――――

 

 

 

 


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