女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

61 / 66
明けましておめでとうございます(今更ですが…)

今年の二月頃には本編を終わらせて、続編と短編みたいなのをやる予定になると思います。


2017年、初投稿!


第60話 ルナティック・カームその③

 「神田明神」から少し離れらた場所にあるビルの屋上に一人の人物がいる。

その手には双眼鏡を持ち、ある一点を見続けながら頭をしきりに掻き落ち着かない様子であった。

 

 

「くそッ!あのガキ、仲間がいたのか…!」

 

 

双眼鏡から目を離し、空いている右手で懐から赤いパッケージが施された袋を取出し、中にあるキャンディーを掴みとる。

それを口に放り込むと、奥歯で噛み砕きながら食べ再び双眼鏡を覗く。

 

 

「まぁいいさ…どのみち奴の「恐怖」は俺の物になった。

 が、問題は…」

 

 

男の視線の先にいるのは、制服姿の少女であった。

その少女は臆することもなく男のスタンドと相対している。その事が男が落ち着けない理由になっていた。

 

 

「何者だ…?スタンド使いにしろ「恐怖」が一遍も感じられないとはッ…」

 

 

関係ないーー何者であっても俺が身に付けたスタンド「ルナティック・カーム」に、死角はない!

その確固たる自信を持って男は落ち着きを取り戻し始めた、そして二個目のキャンディーを口に含む。

 

 

 

 

~~~~******~~~~

 

 

 

 

神田明神の大社殿の裏では奇妙な構図があった。

二人の学生、「出水英雄」と「東條希」から数メートル離れた所に、立っているスタンド…それは少しの間動かなかったと思うと、こちらに向いて前進し始めた。

耳にこびり付く様な不快な音を出し、そこまでスピードはなかったが確実に迫ってきていた。

 

出水は引け腰になっているが希は凛とした表情を崩さず、目の前の敵を見据えていた。

 

 

「と、東條さん……」

 

「そこまで早くはないんやね…なら何とかなるかな」

 

 

心配そうに呟く出水とは対照的に冷静に分析している希であるが、敵は迫り続けていた。

そんな中、希はスタンド「パープル・ヴァローナ」を発現し、近くにいた鳩に憑依させる。

 

 

『ウォォォバァァァァ!!!』

 

「「パープル・ヴァローナ」!」

 

 

希の動きとスタンドの攻撃が交差する…繰り出されるラッシュが当たる直前、鳩に憑依した「パープル・ヴァローナ」が敵の眼前で羽ばたく。

それに不意をつかれ、一瞬だが顔を横に逸らしてしまう。それを待っていたと言わんばかりに希は行動を起こす。

 

 

「出水君!」

 

「え…?わッ!」

 

 

彼女は出水の手を取り、素早く建物の影に飛び込む。

数秒遅れてスタンドが隠れたと思われる場所を覗き込むが、そこには人影すらなかった。

 

 

 

 

「み、見失った…だと」

 

男の双眼鏡を持つ手が力を増していく…ほんの一瞬だけ目を離しただけで姿を見失ってしまうとは考えもよらなかったからだ。

一回り離れた子供を始末するだけの簡単な仕事のはずだったが、ここまで苦労したり予期せぬ乱入があったりなどとして、男は再び落ち着きがなくなっていた。

キャンディーを取り出そうとするが上手く取れず、袋ごと無理矢理引っ張りだして中に手を入れるが。既に空になっていた。

 

 

「くそがぁッ!!!クソッ!クソッ!クソッ!!」

 

 

空になった袋を床に叩きつけ、足で何度も踏みつける。

それだけでは抑えられなかったのか歯軋りをして、横の壁を殴りつける。

 

 

「…いや、まだ大丈夫か…

 能力はまだ奴らには掴まれていない、それに自衛手段もなくはないさ…」

 

 

不敵な笑みを浮かべて、男は屋上にある柵へと近づいていく。

そして、眼前の景色を見下ろしながら囁く様に言う。

 

 

「精々足掻きな、逃げることなんて…できはしないぜ」

 

 

 

 

 

一方、出水と希は大社殿の屋根、その軒先部分にしがみ付いていた。

出水はスタンド「アイム・ヒーロー」を発現させ、片手で軒先をもう片手で希の手を取っていた。

二人は敵スタンドが見えなくなったことを確認すると、地面に降りてきた。

 

 

「…行ったみたいやね」

 

「そうみたい…ですね

 でも、これからどうしますか?」

 

 

何かを考える素振りを見せた後、希は出水の手を取る。

彼女の突然の行動に戸惑いながらも、しっかりと見据えながら聞く。

 

 

「二手に分かれようか

 うちが本体を探して、出水君がスタンドを足止めをするんや

 幸い、本体の位置は検討がついてるからね」

 

「え!?ぼ、僕が…あれを」

 

「うん、これは君にしか任せられないことだから…」

 

 

出水の心は揺れ動いていた…

また「アレ」と対峙しなくてはならない「恐怖」、

任かせたと言ってくれた東條さんの期待を裏切ってはいけない「正義の心」、

揺れながらも、少年は答えを出す。

 

 

「……分かりました、僕にしか出来ないなら…やります!」

 

 

希は無言で頷き、近くの障害物を利用しながらその場から離れた。

一人残された出水は震えている拳を手で押さえていた。

今になって恐怖が戻りつつあり、冷や汗も出てきた……唯一先ほどと違うのは彼の心に、一筋の光があることだろう。

その正体は希の言葉だった。

 

『自分にしかできないをやる』

 

この言葉を聞いた時、自分はあのスタンドに恐怖していた訳ではなく…

情けない自分の心に怖気づいていた事に気付いた。

 

ーー僕は…自分が逃げてしまったから…もう一度同じ結果になってしまうことになるのが怖かったんだ…

今でも脚が震えている…けど逃げたいなんて思ってない…だって、

 

 

「僕にしかできないことを…

  僕ができることを…やるんだ、やらなきゃ何も守れないからッ!!」

 

 

勇気を持ち、自分を奮い立たせ…少年は三度「怪物(スタンド)」と相対する。

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ルナティック・カーム」
   本体:霧島 洸九郎

破壊力-?、スピード-C、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-B、成長性-E

能力
対象の「恐怖」の根源となっている「記憶」を読み取り、それを再現させることやその「恐怖」を自らのパワー変えることができる能力。
「誰か」を恐れているのなら…「その人物」に
「何か物体」を恐れているのなら…「その物体」になれる。
但し、対象に取れるのは一人であり、他の対象にしてしまうと能力はリセットされてしまう。

名前の元ネタは、イギリスの電子音楽グループ「ルナティック・カーム」から



感想・ご意見お待ちしています!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。