女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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久々の投稿です…


第55話 メタル・フリックその①

5月6日

 

落合楓が承一のマンションへ訪れた時刻と同じ頃…

 

 

大阪は岸和田市内を一台の車が南下しながら進んでいた、メタリックレッドの色にウイングを取り付けた三菱製「ランサーエボリューションⅹ」である。運転をするのは「島 秀二」、その隣の座席に座っているのが「比屋定承一」である。

その車内で承一は……気持ち良さそうに寝ていた。

つい数分前に島の奢りという事でお好み焼きを腹一杯食べて、さらには快適な運転も相まって睡魔に襲われてしまい、うたた寝状態になってしまったのだ。

 

「…はっ!」

 

自分が寝てしまったことに気付いたのか、慌てて起きて頭を左右に振る。

 

 

「おはよーさん!良く寝れたかい?」

 

「ぼちぼちですね…」

 

 

寝起きの為か瞼を擦りながら答える、そんな承一の姿に島は微笑みつつ運転を続ける。

承一は一息つき、これからのルートについて今一度思い浮かべる。

 

まず、岸和田市内から四号湾岸線に乗って「助松JCT」に行き、そこから再び一般道に戻り「堺JCT」を目指し今度は阪和自動車道に乗り「松原JCT」まで行った所で西名阪自動車道に乗り換え、ようやく「天理PA」に到着することができる。

ここまで何事もなければ(・・・・・・・)一時間半ぐらいで着けるのだが…

 

(起きる訳…はあるか)

 

不測の事態が起きない様に神経を尖らせて警戒はしている…が今の所は順調に進んでいた。

そんな中、島の携帯が鳴りだした。

 

 

「承一はん、ちょっと電話をするから路肩に止めるよ」

 

「ええ…」

 

車を止め、島は電話を手に取り通話を始める。

 

「おう、何やお前か…で何の用や」

「…ああ、はぁ!?消えたってどういう事や!」

「ええから!早く返して貰わないとこっちにも示しがつかへんのや!」

「お前は聞き込むなりなんなりして、探しだしな!こっちはまだ来れへんからな」

「…見つかったらお前が取り立ててくれや…おうじゃあな…」

 

そこで通話は終わり、携帯を置くと車を発進させた。

 

承一が島の本業を知ることになったのは楓に連絡を終え、彼のアパートに帰った時のことである。

島の本業は簡単に言えば、金融会社に勤める「借金取り立て人」である。と言ったものの高金利で貸しているや暴力団関係者などと言ったことはなく、真っ当な金利で貸している所に勤めている。

それでも返済を踏み倒す人は少なからずいて、その場合に限って活躍をするのが「島 秀二」率いる「取り立て人」の存在であった。(因みにこれまで取り立てられ無かったことは一度たりともないというのが、彼の自慢であったりする)

 

 

しばらく走っている景色を横目で眺めていると島が話しかけてきた。

 

 

「詮索するつもりはないけど、一つ聞いていいかい?」

 

「ええ、いいですよ」

 

「奈良の天理に行きたいって言ってたけど、何かあるん?」

 

「…荷物が届くんです、今の俺に必要な…」

 

 

楓さんと連絡を取ったのは数十分前…ここから指定された場所までは一時間以上は掛かると島さんから聞いている、それならなるべく早く行った方が得策と思って無理を承知で直ぐに車をだして貰ったけど…

 

(…思ったよりも早く着いてしまうな…)

 

車は一般道から四号湾岸線に入り、北上して最初の目的地である助松JCTを目指すことになる。

承一はここまでの道のりで何もない事が逆に気が気でなかった…同化人間達のことから既に仕掛けてきてもおかしくなかったからだ。

 

(まさか…もう仕掛けてきて…いや、もしそうだったら異変は出ているはず…)

 

嫌な考えが頭の中に浮かんでは消えるを繰り返している、それらを振り払うように一旦両目を閉じる。

すると運転席にいた島が小さい声で何かを言っているのが聞こえてきた。

 

 

「…島さん?どうかしたんですか?」

 

「ああ、さっきから後ろで煽ってくる車がいるんだよ…」

 

 

承一は車のバックミラーを見てみると、青い色の乗用車がかなり近い距離まで接近しているのが確認できた。

 

「ったく…二車線しかないんだから、追い越せばいいだろ…全く」

 

「…」

 

承一が後ろの車を確認したのを合図にしたかのように右のウィンカーを出し、追い越し車線に移動して並走するかの如く横に張り付いてきた。

真横に付くと承一の視線の先にはピカピカに磨かれた青色の車体が目に入った、しかしその中に何やら小さくて黒い点(・・・・・・・)の様な物が動いているのが分かった。

 

(…?何だ、あれ…?)

 

目を細めて良く見てみると「それ」は徐々に大きくなっていき……そしてーー

 

右腕が機械化して左手には大きく伸びた鎌の様な物が付いていて体の所々は配線みたいなものが見え隠れしており、銀色の仮面が顔全体を覆っている人型が現れた。

 

 

「こ、こいつは…「スタンド」!」

 

 

承一はすぐさま目の前のドアガラスを半分ほど開け、開けた瞬間と同時に「アウタースローン」を出現させ左拳を振りぬく。

 

 

「オラッ!」

 

 

敵「スタンド」に向かっていく拳は直撃するはず……だった、実際に捉えたのは並走をする車の車体だった。

しかも、当たった個所がまるで湿地帯にある沼の如く柔らかくズブズブと音を発しながら拳が飲み込まれていく、それに引っ張られる様に承一自身も車から身を乗りだす姿勢になっていく。

 

(…このままだと、ヤバい!)

「「アウタースローン・ジ・インフィニティ」!、五秒前に時を戻す!!」

 

 

時が一瞬止まり、巻き戻されていく……

 

時が戻り、「スタンド」と対峙している頃になり承一は敵を睨む…すると突如として「声」が聞こえた。

 

 

(それがし)を認識したな?』

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?久しぶりの投稿で申し訳なかったです(仕事に忙殺されたり、クトゥルフ神話のシナリオの制作などが主です)
11月にかけては週に三~四日ぐらいを目途に投稿していきたいです!


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