女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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第53話 ミセス・オールグリーンその②

(…流石に早すぎるな…)

 

楓自身は自らが動くことによって敵に察知されることは覚悟の上で来ていたが、ここまで早いことに驚愕が隠せなかった。

 

(私の読み込みが甘かったか…それとも、彼等が早いだけか…)

 

そう考えている間に何処からともなく現れたツタ状の植物達がエレベーターの前を覆いつくそうとしていた。

 

(考える暇なし…か、上等!)

 

一瞬、周りを見る…すると自身の左前方に上階へ続く階段があるのに気付けた。

しかし、そこに行くまでは目の前にいる植物を退けなくてはいけなかった、楓は普段の呼吸から「波紋」を生み出す呼吸に変える。

 

(勝負は一瞬で済ませる…!)

 

足に踏み込みをかけると同時に植物は一斉に襲い掛かってくる。

 

 

波紋疾走(オーバードライブ)!!」

 

 

両手に「波紋」を発生させ、向かってくる植物に次々と打ち込んでいく。

内部に放たれた「波紋」によってバラバラになっている植物達を尻目に階段へ向かい、駆ける。

 

(「波紋」が流れる…つまり普通の植物なのか、だけど…

  あれだけ巨大なツタを育てるのがスタンド能力か…?)

 

敵の能力を考えながら、二階へと上がりきるとそこは日が出ているといえ若干薄暗かった。

罠を警戒して慎重に三階への階段へ行こうとするとその足が何かを踏みつける感覚がした。

 

(?何だ…?)

 

下を見ようとした時、耳に何かが風を切る音がした。

 

そしてーー

 

体の両サイドから痛みが走り、同時に視界が真っ暗になる。

 

 

「これは…!!?」

 

 

自身の上から覆い被さったそれは、手から伝わる感触から植物だと分かる。

 

 

「まさか、植物のトラップなんてね…だが、問題はない!!」

 

 「「ツヴァイ」!」

 

楓のスタンド「ツヴァイヘンダー」が被さった植物を切り刻んでいく。

挟んでいる力が弱くなったのを確認して頭に乗った物を払いのけると、その正体が分かった。

 

 

「確か…「オジギソウ」だったか、この葉っぱは

 なら、さっきのはこの植物特有の性質か…」

 

 

「オジギソウ」とは偶数羽状複葉と呼ばれる形状をした葉を持つ植物であり、その葉に接触や風、振動を受けると先端から一対ずつ順番に閉じていく性質がある。

この性質は特定の部位の細胞が膨圧と呼ばれる水分の移動によって行われる。(蛇足になるが、この膨圧によって閉じた状態の葉がお辞儀しているように見えるから「オジギソウ」と呼ばれるのである)

 

 

「しかし、これが敵のスタンド能力…」

 

 

普通の「オジギソウ」なら人体を包むのは到底不可能…しかし、楓の目に映ったのは異常(・・)に大きくなっている姿であった。

 

 

三階へと登り、早速目の前に現れた植物群にやれやれといった表情を見せる。

 

 

「今度は「鳳仙花」か…

 となるとあの状態は…ヤバイ!」

 

 

「鳳仙花」は種を蓄えている果皮と言う部分が、これまた膨圧によってその種を遠くへと勢い良く飛ばす性質を持っている。

そして、楓の目の前にある「鳳仙花」は果皮が相当膨らんでいる状態だった。

 

 

(間に合え!)

「「ツヴァイ」!!!」

 

 

スタンドを出すのと同時に勢いがついた種が、まるで弾丸の様に飛んできた。

「ツヴァイヘンダー」も負けじと凄まじい斬撃の幕を作り出す、種はそれに触れただけで切り刻まれていくが、一部はそれをすり抜け楓に向かっていく。

 

ーーだが、それは予定通りだった。

 

 

波紋疾走(オーバードライブ)!!!」

 

 

拳に集中させた「波紋」で種を受け流すように弾いていく。

 

しかし、向かってくる種は一向に減る様子はない…それに対して疑問を持った楓がとある事を思い出してしまう。

 

(…確か鳳仙花の種は大体9~10個あたりだと聞いたことがある、なら今…あそこにあるのは見えるだけで10本以上…いや、もっとある

 だとしたら、約百発以上になる!!)

 

「うおおおあああああっ!!」

 

 

楓は「ツヴァイヘンダー」の斬撃のスピードを上げられる限界まで上げ、全てを斬ろうとするが斬り漏らしたものが遂に直撃してしまう。

 

 

「が…はっ!!」

 

 

咄嗟に腕を交差させ頭を守るがそこ以外の部分に当たってしまい骨が軋む音が体中に響く、そして勢いのまま廊下の先から向こう側…つまり空中へ放り出されてしまう。

 

(…やりたくはなかったが、仕方がない…)

「「ツヴァイ」!!」

 

 

「ツヴァイヘンダー」の後ろ足で楓自身の背中を思いっ切り蹴り上げ、上階へ飛ばす。

手を伸ばし、何とか手すりに捕まりよじ登って到着する。

 

(残る痛みは「波紋」で和らげるとしても、自分の「スタンド」に蹴らすなんて今回限りにしよう…)

 

四階の辺りを見渡すが二階・三階みたいに目立った植物はなかった、しかし何もないのが余計に不気味が際立つ

 

 

「何もない…?そんなはずは…」

 

 

警戒をしながら、五階へ続く階段に足を踏み入れようとした時とあろものが目につく。

 

 

「こいつは…確か食虫植物の…」

 

 

そこにあったのは、光りに反射して輝く粘液を持つ食虫植物「モウセンゴケ」であった。それが階段を至る所を埋め付くしていた。

 

 

「今度は食虫植物かよ…全く冗談が過ぎるな」

 

 

階段が埋まり、手すりは足場とは言えがたい…しかし楓にはまだ策があった。

 

(あまり嘗めては…困る。

  それに、ここまできたのなら…一気に行かせて貰う!!)

 

 

すると、隠し持っていたある物を取り出す。

 

(ここで役に立ってもらうことにするか…)

 

それは一階で「ツヴァイヘンダー」によって切られたツタ状の植物の一部であった、それを一つや二つではなくいくつも持ってきたのである。

それらに「波紋」を流し、交互にくっつけていく…結果出来上がったのはロープに似た長い物質であった。

 

その先端はツタの尖った先であり、それを階段脇から五階の壁に突き刺す。

それを伝って登っていく…登り切り五階に到達すると同じ方法で六階…屋上へと登る。

 

 

「私の勘なら、おそらくここにいるはず…」

 

 

見回すと屋上の手すりにもたれ掛り、何処からか持ってきたのかティーカップを優雅に口に運んでいる女性の姿があった。

 

 

「あら…意外に早く来ましたわね」

 

「戦闘前にティータイムを楽しんでいる方が意外だと思うけどね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です。


スタンド名:「ミセス・オールグリーン」
   本体:海江田 静葉
破壊力-E、スピード-A、射程距離-A
持続力-B、精密動作性-D、成長性-E

樹皮の様な身体に肩から枝が突き出ている人型スタンド
能力
実物の「種子」と少量の「水分」を使い、「植物」を異常に成長させることができる能力
「四季」に関係なく育てることができ、場所も関係ない。
成長スピードも速く、成長度合いも操作が可能


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