女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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第47話 スーパーチャージャーその⑤

 

 

神場崎が話した過去に承一は驚きを隠せなかった。それは自らの「スタンド」を進化させた「弓と矢」の鏃のみが、かつて父が所有していた物だったからだ。

そんな承一の様子を見た神場崎は短く微笑えむ。

 

「・・何がおかしい・・?」

 

「いや・・・運命とは皮肉なものだなと思ってしまったのだよ」

 

「仗世也は家族を巻き込まない為に自らが鏃を持っていたが、それが死んだことによって私の手に渡り、そして谷ヶ崎に渡して「東京」での「スタンド使い」達を生み出す計画を担わせた」

 

「その谷ヶ崎が、東京で総合病院の院長になる予定だったとある医者に渡して計画の増大を図ったのだ」

 

その言葉に承一の脳裏に数週間前に西木野邸で起こった出来事が蘇る。

 

(とある医者・・・「柏原」の事か・・・!)

 

「病院なら患者やそこで働く医者とか、様々な人間に出会えるからな・・・もしかしたら「スタンド使い」が生まれるかもしれなかったからな、そしてなりより・・・・」

 

「そこで死んでも・・・「死亡証明書」とかの面倒な書類達を偽装できるしね・・!」

 

 

戦慄が走る・・・というのはまさしくこのことだろう、承一の本能が「コイツは危険だ!」と叫んでいる。

 

「だが・・・そんな計画を狂わせたのも、運命の皮肉を完結させたのも全てお前なのだ!比屋定承一!!」

 

「どういう・・・事だ?」

 

「ある日から谷ヶ崎が消息不明となり、それを調査していた座井部、川和が揃って行方不明となったのだ。貴様が倒したのだろうな」

 

「しかし、鏃の行方が貴様にあると知った時は思わず笑ってしまったよ・・・仗世也が遠ざけたはずの運命が巡り巡って息子に到達してしまったのだからな!」

 

 

承一は思う・・・父があまり自分の事を話したがらなかったのか、故郷である「東京」をわざわざ離れていったのか・・・その答えは家族に自分の過酷な運命を背負わさない為だった、ただ普通の生活を送って欲しかったのであると・・・なら今自分がすべきことは・・・・

 

 

「そんな話を聞かされたら・・・お前を倒さなくてはいけない!今!ここで!!」

 

「貴様も父と同じ運命を辿るがいい!!」

 

承一は「スタンド」を出す、神場崎は指先に対して「スタンド能力」を使う。

しかし、その間に割り込むように一つの影が現れる。

 

 

「神場崎渚!!お前をここで処分する!!我が平穏の為に!」

 

「小蠅如きが!!図に乗るんじゃない!!!」

 

後から追いかけてきた「三枝三機哉」が追いつき、三つ巴の戦いが始まる。

 

 

 

三枝はどこからか拾ってきた鋭く尖った木の枝を神場崎に向かって投擲する。それを難なく避けるが、避けた先に承一の「アウタースローン」が待ち受けていた。

 

「何っ!!」

 

「オラァ!!」

 

神場崎は「スーパーチャージャー」を使い、手のひら全体にエネルギーを放出させた。それによって拳は弾かれ、その反動で体勢が崩れる。

不安定な体勢になった承一を狙おうとするが、三枝が自身の後方から迫っていた。

 

「貰ったぁ!!」

 

しかし、その攻撃は地面に放った「スーパーチャージャー」によって発生した砂埃によって視界が封じられた為、不発に終わった。

 

その隙に神場崎は「同化」を行い、周りの景色と同化する。

 

「またっ!・・・」

 

「・・・っ!」

 

二人ともその場から動かずに、神場崎の居場所を探そうとするが・・・

 

 

「ぐ・・・あ!」

 

「うぐ・・・!」

 

 

次の瞬間、承一は右足を三枝は左腕を貫かれていた。

 

「思い込みとは恐ろしいものだな・・・私が「同化」して直ぐに移動をするとでも思ったのか?」

 

その問いには、二人は答えられることはできなかった。

 

「フン、まぁいい・・・次はとっておきで始末をしてやろう・・・」

 

それを言うと、右手の人差し指に光り輝く小さな「球体」が除々に作りだされていった。それは水風船ぐらいの大きさになったところで承一に向かって投げる。

早くも遅くもないスピードで近づく球体に焦りを感じたか、「スタンド」で落とそうとする。

 

「オラオラオラッ!!」

 

放たれた拳は球体を確かに捉えるが、その刹那輝きが一層増したかと思うと轟音と共に大爆発を起こした!

 

 

「今の球体はこれまでと一緒でエネルギーを溜めた物だが、一つ違うのは「崩壊寸前までエネルギーを溜めた」ということだな、これでちょっとした外部からの刺激で爆発するようにエネルギーが拡散したのだ・・・と言ってももう聞こえていないかな」

 

「・・・・はぁ・・・はぁ」

 

承一はかろうじて直撃は免れたが、ダメージが大きく立ち上がることができなかった。

 

 

「承一は虫の息・・・トドメは後にするとして、まずはお前から始末しようぞ!」

 

そう言って三枝の方を向く、当の本人は腕のダメージを堪えていたがそれをもろともしない目つきでこちらを睨んでいた。

 

 

「良い目をするな・・・だがお前では私を倒すことは不可能・・・」

 

「その・・・上から目線の態度・・・実に不愉快だ、お前は必ず消す!」

 

「そんな強気な発言をしても、もう無意味だぞ・・・」

 

再び指先にエネルギーが溜まっていく、そして先ほどと同じような球体が出来上がってそれを投げる。

 

「お前にこれを躱せるかぁーー!!」

 

球体が迫ってくる・・・だが三枝は不敵に微笑む。

 

 

「躱す?そんな事はしない・・・むしろ」

 

 

そう呟き、三枝は球体に向かうとおもむろに「スタンド」で鷲掴みにする。

 

 

「敵わないと思って自暴自棄になったか・・・そのまま死ね!」

 

 

だが、爆発は起きず球体は原型を保たれたままであった。

 

 

「そんなはずは・・・!まさか・・・貴様の「スタンド能力」!」

 

「正解だ・・我が「キング・ロマネスク」は俺が不要と思った全ての情報を消すことができる・・・エネルギーにある「拡散する」という情報を消させて貰った」

 

「拡散ができないことで爆発自体を阻止するとは・・・」

 

 

三枝は手にした球体を前方に放り投げると、神場崎に向かい歩いていく・・・・そして距離は二メートルほどまで近づいた。

 

 

「この距離ならお互い外す心配は無くなったな・・・さぁ、死ぬ用意はいいか?・・・」

 

「面白い・・・だがここからなら致命傷となる部分はいくらでもあるぞ・・・」

 

 

互いに睨みあい、沈黙が流れる・・・・・

 

 

その時、吹き続けた風が一瞬だけ止む・・・・それを合図にするかのように二人が同時に、動いた・・・・!

 

 


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