女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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第45話 スーパーチャージャーその③

??? 

 

周りには視界を遮るほどのもやがかかっていて、ここが何処なのかは分からない状況である。そこに二人の男が立っているが両者とも呼吸がひどく荒れ、脚は小刻みに震えており、立っているのは精一杯だというのが窺える。

 

一呼吸を置いた後、両者の背後から「スタンド」が飛び出しお互いの拳がぶつかる。

 

 

「オオオオッ!!!」

 

 

黒髪でオールバックの髪型が特徴的な男の「スタンド」がもう一方の男の「スタンド」の拳を砕き、そのままの勢いで顔面を捉える。

 

 

「う・・・ぐっ!!!」

 

 

顔面に直撃し男の「スタンド」は右目辺りからひび割れ、そのひびは首を通り胴体へ到達しそこからの出血もひどいものになっていく・・・その最中、男は必死の叫びをあげる。

 

 

「ぐがあ・・!ま、まさか・・・!この私が!・・・・この・・・私が!」

 

 

男は自らの視界が三等分される中、自分を倒した憎むべき相手を見る・・そいつは何も言わずただこちらを見つめているだけであった。

 

 

「よ、よくも・・・!貴様さえ・・・邪魔をしなければ・・・・!!!我が愚息「仗世也」よ・・・」

 

「・・・・永遠の眠りにつけ、親父・・・・」

 

 

男の裂傷が腰にまで到達した時、噴水の様な血を出し空を仰ぐように倒れ絶命した。その姿を見てもう一人の男「空条仗世也」はそう呟いた。

 

 

 

ーーーーーーー

 

ーーーーー

 

ーー

 

 

五年前・・・西暦2010年6月24日

 

 

「・・・・はっ!」

 

ベットから飛び起き、荒く息をしながら起きたのは「空条仗世也」(当時42歳)である。

 

 

「夢・・・・か」

(それにしても「あの時」の事を夢に見るなんて・・・・)

 

寝汗で濡れた額を拭いながらベットから降り、シャワーを浴びる為一階に向かうことにした。

 

「おはよう、奈美」

 

「あら!おはよう、あなた」

 

一階に降りるとキッチンで朝食の準備をしていた妻の「比屋定奈美」の姿があった。そしてもう一人の家族が二階から降りてきた。

 

 

「おはよ~~」

 

「おはよう、承一!」

 

「おはよう・・・また寝不足なのか・・?」

 

 

眠そうな目をこすりながら降りてきたのは、当時小学生であった「比屋定承一」だ。

 

 

「うん、だって明後日の遠足が楽しみなんだから!」

 

「はは、分からなくはないな」

 

「ふふ、そうね」

 

そんなやり取りをして父と子は洗面所に向かい、妻は出来上がった朝食をテーブルへ運んでいた。

二人がリビングに戻る頃には既に出揃っていていつでも食べられる状態にあった。

 

 

「うわ~~美味しそう!」

 

「盛り付けも綺麗だ、流石だな!」

 

「も、もう、二人してそんなに褒めないでよ・・・ちょっと恥ずかしいから」

 

そう言って少し顔を赤くする奈美を見てほほ笑む仗世也と承一・・・これが彼等の日常であった、これから起こる事が想像を絶することになるとは誰しも思っていなかった・・・

 

始まりは食事中に掛かってきた一本の電話であった。

 

 

「・・・ん?誰からだろう・・・?」

 

席を外し、通話ボタンを押す。

 

「もしもし、ああ舟木さんか・・・・え?隣の島に・・・構いませんよ、では後で」

 

「どうかしたの?」

 

「ああ、隣の島の連絡が昨日から無いらしくて、これから様子を見に行こうと」

 

「・・・大丈夫なの?」

 

「心配ないよ、多分電波を受信するアンテナとかの故障か何かだと思うから」

 

優しく妻を諭した後、身支度をして家を後にする。外に出た時空がどんよりとした曇り模様であった。

 

 

「予報では雨だったからこの後降るかもしれないな・・・」

 

 

車を走らせ、「我那覇港」へ行きそこに泊めていたクルーザーに乗り込み発進させる。

港から約五分の所にある島に問題なく着いた。だが・・・

 

 

(問題が無かった・・・だと?)

 

 

島の村長と状況を確認した所、全く問題は見られなかったとのことであった。今は念の為にと電波やそれを受信するアンテナを確認した後、自らの船の元に帰る途中であった。

 

 

(アンテナもおかしな所は無かった、電波状況も変わっていることも無かった・・・となれば昨日の事は何だったんだ・・?)

(いや、問題が起こらなかったんだ・・・それならそれでいいんだ)

 

そう自問していると目的の船に到着し、乗り込むと同時に小雨が降ってきた。

 

(降り始めたか・・・急いで帰ろうか)

 

船体を停めている係留綱を外そうとした時、不意に声が聞こえてきた。

 

 

「2010年6月24日・・・ここまで来るのに随分な時間を要してしまったな・・・」

 

声のする方を見ると、操舵室の所に一人の男が座っていた。蒸し暑い時期にも関わらずロングコートを羽織ったソフトモヒカンの男だった。

 

「!?何者だ?お前は・・・」

 

「君の知り合いの友人と言った所かな?・・・・いや「実父」と言ったのが正しいかな」

 

「ば、ばかな・・・!!?」

(こいつ・・・「あの男」の仲間だと言うのか?!・・・まさか・・!)

 

「驚くのも無理はないか・・何せ「始末した男」が生きてるかもしれないのだからな」

 

その一言を聞いた時、今まで漠然とあった不安が現実のものとなった瞬間だった。それと同時に仗世也の心にある決意が灯った。

 

刹那と同時に仗世也の背後から「スタンド」が出る!

 

 

「「アウタースローン」!!!」

 

 

出現した人型スタンドは、目の前の男にラッシュを入れる・・・・・はずだった。

 

 

「「レイニーデイズ」!」

 

 

その言葉と共に現れた仮面を被ったスタンドが現れ、両手足を薄い紙状に変えられてしまい、力なく倒れてしまう。

 

 

「うぐ・・・あああ」

 

男が立ち上がり、ゆっくりと歩を進めてくる。

 

「仲間がいないと思っていたのか?・・・・・・舐めるなよ「空条仗世也」、ここでお前を始末する」

 

 

 

 




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