女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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第42話 母「比屋定奈美」

5月4日 我那覇市内 早朝

 

 

陽が上り始め、明るくなりつつある市内の海岸線に一人の女性が佇んでいた。その人は大きく背伸びした後、深呼吸をした。

 

 

「フゥ・・・気持ちいい朝だね」

 

 

亜麻色の長髪を風に靡かせながら波打ち際を歩く、しばらく歩いた所である人物に出会う。

 

「おはようございます、今日は大漁ですか・・・・舟木さん?」

 

「相変わらず早起きだな、それに今日「は」じゃなくて今日「も」だよ」

 

そう答えたのが地元の漁師の「舟木」である、そして舟木の答えに対して微笑する女性

 

「フフ、相変わらずなのはお互い様ですよ」

 

「そうか、所で・・・」

 

そう言って、訝しげな顔をする。

 

「わしに「息子」の様子を見に行かせるのはもうやめておくれよ」

 

「そんな事を言っても引き受けてくれた舟木さんには、感謝してますよ」

 

「全く・・・奈美嬢には困ったものだ・・・」

 

女性は微笑むとその場から立ち去る。

 

 

 

 

 

同日 9時

 

比屋定承一は市内の公園で時計を見ながらとある人物を待っている、もちろん「μ’s」の面々も揃っている。

 

「遅いな・・・」

 

時間を見ると約束の9時を過ぎていた。そんな承一の姿を心配してか真姫が話しかけてくる。

 

「大丈夫なの?約束の時間になっても来ないなんて・・」

 

「ああ、まさかだとは思うけど」

 

「「スタンド攻撃」・・・・」

 

その言葉に反応して彼女の方を見る。

 

「有り得ない訳はないでしょ、穂乃果や私達が襲われたから」

 

承一の脳裏に嫌な推測が浮かび上がる、一昨日と昨日で「スタンド」がこの島にやって来たのだからその可能性はあるかもしれない・・・・

 

「みんな!、少し家の方に行くからここで・・・・・」

 

「ひゃあ!!」

 

家の様子を見に行く旨を伝えようとした所、妙な声が聞こえたのでそちらの方に目をやると穂乃果の背後に何者かがおり、がっしりと両腕で彼女の胸辺りを押さえていた。

 

「ん~~?あら・・・」

 

その人物は何かに気づいた様子でその腕を脇腹や腕周りにやった。

 

「お腹周りに少しばかり余計な脂肪はついているけど、あまり問題はないみたいね。それに脚周りの筋肉が鍛えられているのを見ると・・・・」

 

「く、くすぐったいよ~~!!」

 

「アイドルみたいな事をやっているのかしら」

 

「へ・・・?!」

 

まだ自分の事を話していないはずなのにズバリと言い当てられたことで穂乃果は固まってしまった。

 

「それは置いといて・・・次は」

 

それだけ言うと今度は海未の方に移動する。

 

「こっちの大和撫子ちゃんだね~♪」

 

「な、何ですか!あなたは!?」

 

海未も穂乃果同様、全身を弄られてしまう。その光景に呆気にとられていた真姫はようやく現実に戻った。

 

「ちょっと何やっているの!?」

 

するとさっきから黙っていた承一が小さな声で言った。

 

「・・・俺の母さんだよ」

 

「・・・・え?」

 

 

公園から移動して一行はカフェにやってきた。

 

「・・・という訳で改めて紹介するよ、俺の母の」

 

「「比屋定奈美」だよ、宜しくね!「μ’s」の皆さん♪」

 

「「「「「「「「「よ、宜しくお願いします」」」」」」」」」

 

「どうしたの?疲れているみたいだけど」

 

「スキンシップと称して弄られたら誰だって疲れるだろ・・・」

 

「そうかな~~?」

 

全く悪びれず「テヘペロ♪」と言いたそうな顔をしている母に対してため息をついて頭を抱える息子だった。

 

「そんな事より、まさか承一がアイドルの手伝いをやっているなんてね・・・・これも血筋なのかしらね」

 

「そうかも・・・・」

 

二人の会話に疑問を抱いた穂乃果が承一に聞く

 

「ねぇ今の血筋ってどういう事なの?」

 

「ん?それはな・・・母は昔アイドルをやっていたんだよ」

 

「へぇ~~って、ええ!!?」

 

あまりの衝撃で公共の場だということを忘れて大声で驚いてしまった。

 

「そううよ~「トライエンジェルズ」って聞いたこと無い?」

 

「「トライエンジェルズ」・・?」

 

「き、聞いたことありますよ!」

 

そう言ったのは、先ほどのスキンシップでお腹周りを弄られ過ぎた花陽だった。

 

「知ってるの?花陽ちゃん?」

 

「知っているも何も・・「トライエンジェルズ」と言えばアイドル黎明期を支えたグループとして業界として有名ですよ!」

 

花陽の言葉に続ける様に、にこが言う。

 

「当時は女性アイドルは陽の目が当たらなかったから歌詞や作曲、振り付けも全て自分達でこなしていたことでも有名よ」

 

「今のアイドルブームの起源と言っても過言ではないですよ!」

 

花陽のあまりの饒舌ぶりに呆気にとられていた奈美だったが話を聞き終えた後、少し笑みの表情を浮かべる。

 

「君はとてもアイドルが好きなんだね、その話し方からよく分かる」

 

「へ!?・・・あ、あの・・・」

 

「嫌な気分とかじゃないんだ・・・ただ・・・嬉しくてね、そんな人に出会ったのは久し振りだから・・・」

 

「母さん・・・」

 

奈美の表情はどこか遠くの記憶を懐かしむように見えた。

 

 

「さぁ!辛気臭い空気は置いといて、我が家に行こうか!ご馳走も作ってあるから~」

 

その声と共に奈美は席から立ち上がりカフェの会計を済ませる為にレジに向かう、承一達はやれやれと思いつつ、各々席から立ち上がり、彼女の後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~******~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は同じくして 那覇国際空港 国内線到着ロビー

 

 

東京発那覇行きの飛行機が到着し、手荷物を受け取る為ロビー内の「ターンテーブル」と呼ばれる個所に人が集まり始める。

その中で一際目立つ金髪で後ろ髪を真っ赤で大きなリボンで結んでいる女性がいた、彼女は手荷物を受け取ると出口に向かって歩き出す。その道中で携帯電話を取出し、とある人物に電話をかける。

 

 

「もしもし、10時35分24秒那覇市に定刻通り到着、これより我那覇島へ向かいます」

「ええ、それでは同志・・・後ほど」

 

そう言って通話を終了する、通話相手の名前に「空条 丞一郎」とあった。

 

女性は出口を出てタクシーに乗り込み、そのまま市内へと消えていった・・・・・




いかがだったでしょうか?今回はスタンド紹介はないです。

次回、長らくお待たせしました・・・応募スタンド最後の登場となりますので楽しみにしてください!

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