沖縄 我那覇市
不敵な笑みを浮かべ「ミサゴ」は柱から飛び立ち、両翼を羽ばたかせこちらへ向かって来る。
真姫はそれに応戦すべく自身のスタンドを呼ぶ
「「ノヴァ・マスター」!!」
彼女の身体から出た「スタンド」に臆することなく、黒色の鳥型スタンドを出す。
(・・・ッ!やっぱり「スタンド使い」!!)
六枚の羽根を靡かせ、こちらに向かってくるかと思いきや突如進路を変更し、自らの左斜めの方に逸れた。
「・・?」
頭に疑問符を浮かべた所で、車のブレーキ音が聞こえてきた為そちらの方に目をやると乗用車が車線を外れ、歩道に乗り上げ来るのが見えた。
(このままだとこっちへ来る!?)
それを避けようと左方向へ行こうとするがそちらには先ほどの「スタンド」が待ち受けていて退路が塞がれいた。
その為、次の回避手段を考えようとするがその間にも車が接近し続けていた。
それを避けきれないと感じた真姫は「スタンド」能力を使い、右手に約一メートルほどの竹製の棒を創り出し、それを目の前の地面に突き立て棒高跳びの要領で飛び上がり車を躱す。
着地と同時に周りを見渡すと、町の地図が載っている立て看板の上にこちらを睨みつけているかの様に見ていた。
「ゲゲ」
鳥とは思えない不気味な笑い声(?)を発すると垂直に飛び上がり、「スタンド」から何かをこちらに向け発射させてきた。
「っ!・・・」
「ノヴァ・マスター」で何とか弾き返すもその直後弾いた指の表面が少し切れ、血が滲んできた。
(この羽根みたいな物がこんなに固いなんて・・)
そう思っていた所、間髪を入れず再び硬質化した羽根を飛ばしてきた。
(あれを受け続けてたら、こっちが持たない・・!)
バックステップで避けた後、柵を飛び越え砂浜に着地しようとするが、
「な!?」
真姫の目に映った物・・・それは自分の着地地点に突き刺さった無数の羽根だった。
(まさかこれを狙って撃ったのか!、今からだと向こうには戻れないし柵にしがみついたら狙い撃ちにされてしまう・・・・だったら)
自分の背中側にある壁を蹴り、その衝撃で前方に押し出される形となって着地するが、その際地面に手をついてしまう。
すると、地面から泥状の物質が飛び出し真姫の右腕に絡みつく。
(くっ!これは希の腕についたのと同じ奴か)
外そうと手をかけるがその瞬間、体全体に衝撃みたいなのが走った後、痛みが襲ってきた。
(か・・・はっ!・・)
一瞬だけ意識が飛びそうになるが気力で何とか持ちこたえた。
(希が触ってはいけないって言ったのはこれが理由か・・・それに体中から力が抜けている感覚がする)
今はまだ立っていられるがその状態がいつまで続くかは分からない。
(早めに決着をつけないとね・・・)
その時、目の前にある柵の上に降りる敵の姿が見えた。
「ゲッゲゲ、ギギ・・!」
その鳴き声はまるでこれから獲物を仕留めることに喜びを感じている様に聞こえていた。
(さしずめ私は狩られる側てことになるのかしら・・・でも状況は不味いことになっているわね)
・・・・・・・「ミサゴ」が柵から飛び上がり、自分の所まで到達するのに約十数秒の間、彼女は過去の事を思い返していた。
自身び「スタンド能力」を発現した時のこと・・・「比屋定承一」という少年が助けてきてくれて、彼を「守りたい」気持ちで「スタンド」に目覚めたことを・・・・・・
(不思議な気持ち・・・・「彼」の事を思うと「勇気」が湧いてくる・・・・・!)
「ミサゴ」と自分との距離が半分ぐらいになるまで来ている、だが彼女はとても落ち着いていた・・・・波が一つもない海の様に心の中に「恐怖」や「焦り」は無かった。
(そう・・この感覚は・・・これが「成長」した感覚・・・!)
眼前まで迫った敵を見据えて、真姫は「スタンド」を使う。
ーーーその瞬間、彼女の周りを白い煙みたいなものが覆った。
「ゲ!」
突然のことに状況の整理が追いつけず、時が止まったかの如くその場で固まってしまう。するとどこからか声が聞こえてくる。
「今の「煙」は「ドライアイスの煙」よ・・・まぁ「鳥」に言っても解るかどうか・・・」
「ギィ!・・・・ガガ・・!」
声のする方角が分からない為、首を左右に振って確認しようとするが姿は見えなかった。
「そっちじゃないわ・・・あんたのほぼ真後ろよ!」
「ゲ?!」
「「ノヴァ・マスター」--!!!」
鋭く早い一発の拳が腹部に直撃した、その影響か胃の中にあった物を吐き出してしまう
「グ・・・ゲェェェェーー!!」
そして、そのまま重力に従って落ちていく。真姫はゆっくりと近づいていき腰を下ろして「ミサゴ」を見る。
「鳥だからこれ以上の攻撃はしない・・・・・けど」
突然、「ノヴァ・マスター」で目の前の地面を勢いよく殴りつけた。
「次に私の前に姿を現したら・・・今の拳があんたの顔面を貫く!!」
そう言った彼女の表情は一切迷いがなく、今言ったことは必ずやると動物的な直感が囁いた。
「ギィアーーー!」
それを感じたか、甲高い悲鳴にも聞こえる声をあげるとそのまま気絶してしまった。
「ふぅ・・・」
一息つくと確かな足取りで希がいる休憩所まで向かう、すると携帯に着信が届いた。
「しまった・・・もう17時を過ぎている、・・・・みんなへの説明が必要ね」
~~~~~~*******~~~~~~
東京 大日本薬学研究所 所内
(ま、まずい・・・・この人は!!)
「「あの人」から、妙な事が起こっていると言われて来てみたが・・・・」
目の前にいる人物に目をやる。
「本ッッ当に!厄介な事が起きたな!!!まさか俺達を嗅ぎ回っている奴がいたとは!」
久井は全身が震える感覚に襲われながらも、この状況を打破する策を考えていた。
だがーーーー
(だ、だめだ・・!今は逃げるしかない!)
「「ストゥーム」!!!」
「やれ・・我が「人形」達よ!、八つ裂きにしろ!!」
黒須の掛け声と共に後ろにいた人達が久井に向かって襲い掛かってくる。それを「気流」を使い上手く避けて行く時には廊下に置かれている観葉植物の鉢を飛ばしたりしていた。
エレベーターホールに着き、下の階へのボタンを押す。
「は、早くッ!早く来て!!!」
運が良かったのか、エレベーターはすぐに来て扉がゆっくり開いてくる。
(早くここから出て、楓さんと合流を・・・)
開ききったドアの光景を目の当たりにする、そこには沢山の生気がない「人間」達が待ち構えていた。
「う・・・うわあああああああ!!」
そして、追いついてきた黒須率いる数十体の「人間」達がホールの出口を固めた。
「これが本当の・・・四面楚歌って奴だな。貴様はもう終わりだ!」
迫りくる「人間」達を見て久井は絶望の中に落ちる。
(---もう終わりだ・・・・何もできないまま・・・・ここで・・)
しかし、この時誰も気づいてなかった・・・・久井も・・・黒須と「人間」達も・・・・・背後からゆっくりと近づく一つの影に・・・・
ある程度来たところでその影は、手にしたものを構える。
その気配に気づいたか、黒須が後ろを振り向く・・・・・・・そして
「はっ!」
振り向く動作と同時に発砲音がし、それと共に一発の弾丸が黒須の下あごを貫く。
「ぐあ・・・!う・・がっ・・!」
続けざまに五~六発の弾丸を放つ、その内二発は右腕と左足に命中する。
「ぐあう・・・!、何をやってる「人形」共!!!早く俺を守れよ!!!!!!!」
黒須の叫びと共に、複数人が彼の周りに集まる。それを確認するとその影は走り出し、座り込んでいた久井の腕を掴み、エレベーターの中に入り素早い動作で扉を閉め、一階のボタンを押す。
突然のことで状況の整理ができていない久井は助けてくれた人にお礼を言おうと顔を上げたところ、その姿に驚いてしまった、その人・・いや「スタンド」は全身黒スーツでピエロのマスクを被っていたからだ。
「あ、あなたは・・・・」
「ン?・・・コレハ失敬、私ハ「ギャング・クラウンズ」トイウ者デス。以後オ見知リオキヲ」
丁寧に挨拶をし、頭を下げる。
「はぁ・・(ん・・・「ズ」が付いているってことは他にもいるのかな?)」
「ドウカシマシタカ?」
「い、いえ・・・助けてもらいありがとうございます」
「礼ニハ及ビマセン・・・」
エレベーターが一階へ着いたことを示すランプが光る。久井はすぐに降りるとそこには一人の男の姿があった。
「こんな可愛い娘が「スタンド使い」とはな」
男は金髪で、髑髏のアクセサリーを付けている者だった、肩には鞄をかけてそこから何枚か紙が見えていた。
「あなたは・・・・」
「俺の名前は「海山 イデヤ」っていう者だ、よろしく~」
「・・・・・」
(まさか、比屋定先輩達や楓さん以外にも「スタンド使い」がいるなんて・・)
「こんな所で話すのもなんだから、さっさと行こうぜ!」
「え、ええ・・・・」
(でも・・悪い人じゃない・・・かな?)
イデヤが先行してホールから走って出て行く、久井はそれに続いて行く。通路を通り正面出入り口があるエントランスに着くまでは誰とも出会うこともなかった。
(おかしい・・・階段でも追いつけると思っていたけど・・・誰もいないなんて)
そう思っていると目の前を行くイデヤの足が止まる。そこはエントランスの所だった。
「ど、どうしたんですか?」
「こりゃ・・・中々ハードな状況だな」
恐る恐る見てみると、出口を塞ぐように大量の「人間」達がいた・・・そしてその中心に黒須の姿がいた。
「援護を頼むぜ~・・・ええと名前は」
「久井って言います」
「流石に下の名前まで教えてもらえないか・・・・」
そう話している間に「人間」達はこちらに向かってくる。それを確認した二人は「スタンド」を出す。
「「ギャング・クラウンズ」!!」
「「ストゥーム」!」
クラウンズがそれぞれの武器で応戦しながら、次々となぎ倒していくがうじ虫の様に湧いて出てくる。
「くそっ!キリがないぜ!!」
(どうすればいい・・・・このままだといずれは・・・・・)
久井は考えるが、どれも決定的な解決はできない・・・それどころか不安や焦りが募るばかりだった。
(僕がなんとかしないと、でも楓さんみたいに経験はない、比屋定先輩みたく「スタンド」が強力なものでもない・・・本当に無力だ・・・僕は・・・・)
負の感情が積もっていき、そのプレッシャーに押しつぶされようとした時だった・・・・ふと黒須の言葉が聞こえてきた。
「お前等はもう終わりなんだよ!そこの金髪野郎と「子供」みたく縮こまっている女は!!」
「は・・・・?」
そこにいる誰しもが耳を疑うような低い声が久井の口から出た。
「・・・・誰が「子供」みたいだって?・・・・誰がガタガタ震えている子羊みたいだって・・・・・?」
「え?・・・そ、そこまでは・・・言ってない・・・・」
その異様な雰囲気に呑まれ、黒須は情けない声でそう言ったが・・・・・
「確かに聞いた・・・・ぞ!!!!」
その言葉を言ったのと同時に彼の指から弾丸みたいなものが発射され、それが黒須の喉元を貫いた。
「げふっ!!!!」
口から血を吐き出し、苦しむ・・・その光景を目の当たりにしながら久井の眼はしっかりと前を見据えていた。
(これが噂に聞く「スタンドの成長」って奴か・・・こんなとこで見れるとはな)
イデヤの視線の先には、半透明の身体に青色の中世の騎士風の鎧を身に着けた人型のスタンドがいた。
「海山さん」
「お、おう・・・どうした?」
不意に声をかけられたか、拍子抜けした返事をする。
「このまま、スタンド本体を直接叩きます・・・付いてきてください」
「・・・・!」
(さっきまでとはまるで別人・・・キレると逆に落ち着くタイプだな、いい・・・)
(実にいい!俺は惚れた女には惜しみなく協力する性質だからな、だからもちろん・・・)
「OK!いくぜ!!」
それを合図かの様に二人が同時に走り出す。
「人間」達はその進行を阻止しようと立ちはだかるが、クラウンズの援護があった影響で本体である黒須への接近を許してしまう。
そして、二人がほぼ同時に構える。
「「ストゥーム」!!!」
「「クラウンズNo、2」!!」
「・・・・ひ!」
「「これで終わり(だ)!!!」」
同時に発射された空気弾と弾丸は黒須の胸や腹部に全て命中し、そこから体にひびが入る。
「良し、「No、6」!」
そう呼ばれたクラウンズがほぼ動かなくなった黒須に近づき、手にしてた「スレッジハンマー」を思いっきりスイングした。
「ぐが・・・・はぁ・・・」
当たった個所からひびが大きくなり、そのまま首だけを残して砕け散った。
その瞬間、周りにいた「人間」達は跡形もなく消えてしまい、その場にはイデヤと久井だけとなった。
「やったな!久井ちゃん!!」
「は、はい・・・・」
ーー「黒須 雷鳴」(同化人間)スタンド名:「ドール・スタンプ」・・・消滅
「久井 武臣」スタンド名:「ストゥームAct2」発現
「海山 イデヤ」・・・この後連絡先を交換しようと提案するも、即断れて帰宅後一人で泣いた
いかがっだでしょうか?ここでスタンド紹介です。
スタンド名:「ストゥーム・Act2」
本体:久井 武臣
破壊力-B、スピード-B、射程距離-C
持続力-D、精密動作性-C、成長性-A
能力
気流を操るのに加えて両手の指から空気を圧縮して生成した「空気弾」を発射する能力、弾数に制限はないが、一度の連射で最大五発までが限度である
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