女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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お待たせしました、それではどうぞ!


第40話 フラッシュ・バックその②

(・・・はぁ、どうしてこうなった・・・)

 

ため息交じりの呼吸をして女性用スーツを着ている「久井武臣」はそう思った。

 

(でもスカートじゃなくてズボンタイプだったのが唯一の救いかな・・・でも)

 

改めて今朝の事を思い返してみる、以前学校で会った「落合 楓」さんから連絡があり「スピードワゴン財団日本支部」まで来るように言われ、そこへ行った時だ・・・・

 

ーーーー

 

ーー

 

 

階段を上り、二階にある喫茶店(確かSPWってとこだった)に入り目的に人物を探す。

すると奥の方の席にいる人が手を振っているのが見えた為、そちらに近寄る。

 

「やぁ、待っていたよ!久井君」

 

「はい、楓さん」

 

ふと席を見ると自分と同じような色の黒髪をしており、髪形は短髪をしている男の子が座っていた。すると楓さんがその彼を紹介してくれた。

 

「彼は「出水 英雄」君、私達と同じ「スタンド使い」で、穂乃果さんが知り合った学生さんだよ」

 

「初めまして・・・「出水」と言います・・・」

 

「僕は「久井武臣」、宜しく」

 

挨拶を済まし、彼の真向かいの席に座るとタイミング良くアイスコーヒーが運ばれてきた、それを一口飲み彼女の方に向き直る。

 

「集まってもらったのは他でもない・・・この町で今起きていることの原因を突き止めることだ」

 

「比屋定先輩が戦っているんですよね・・」

 

「ええ、そうよ」

 

そこまで聞いた出水君が少しばかり俯いてしまった。

 

「怖いか・・?出水君?」

 

「し、正直に言うと・・・・ちょっとだけ」

 

「無理もないね・・だけど大丈夫よ、私があなた達の支えになるから!」

 

そう言った楓さんの横顔はとても神々しかった・・・落ち着きがあり、その瞳の奥には恐怖というものは感じられないほどに・・・

出水君の方を見ると、顔が若干赤くなっておりその姿に見惚れている。気持ちは分からなくないけどね。

 

「さて、私達にしかできないことをやらないとね!」

 

そう言って、鞄から数枚の紙とある模様がついた金属製のバッジを出し、机の上に広げた。

 

「これは・・・?」

 

「バッジの方は大企業「オデュッセウス・インダストリー社」の社員に配られるもので以前、比屋定君と共に戦った際に敵が持っていたものだ」

 

「我々が敵対しているものにその会社が関わってくるのは確かだか・・・今の所は手掛かりはこれしかなく、これ以上バッジからは情報を得ることは難しいだろう」

 

「だからここに潜入するしかない」

 

指差した紙には「大日本薬学研究所」と書かれており、そこに関する情報が載っていた。

 

「この会社がその大企業と関係があるんですか?」

 

「ここは三年前に買収され、「オデュッセウス」の傘下の企業となっているのだ、まずはここに潜入して情報を得る」

 

「・・・・!」

 

「敵がどのくらいの規模で何人いるのか?、そして何が目的なのか?それを知らなくてはいけない」

 

「で、でもどうやって・・・?」

 

「それはここに書いてある」

 

そこには大きい赤文字で「短期契約社員、募集中!!」と書かれており、その下には詳細が記されていた。

 

「も、もしかして・・・」

 

「そう、これに応募して潜入を果たす。後は必要な情報を抜き取り脱出すればいい」

 

「でも誰が・・・まさか楓さんが?」

 

「いや、多分私は顔が知られているかもしれないからね、潜入は難しいだろう」

 

「だから行くのは君だよ、久井君・・」

 

「ぼ、僕がですか?!」

 

突然の指名が来て、驚く僕に楓さんは言葉を続ける。

 

「君が私の仲間だとはまだ知られていない、ましてや「スタンド使い」であることも」

 

「な、なら・・僕も行った方が・・!」

 

「いや、二人はマズい・・・確かに成功する確率は上がるがその分バレるリスクも上がってしまう、だからこれは一人ではなくてはいけない・・」

 

ここまでの事を聞いて体の震えが収まらない。理由は自分でも分かっているのかもしれない・・・これが無謀であり、危険な事でもあると・・・・でも

 

(比屋定先輩や高坂さん達は今まで戦ってきた、だけどその人達がいない今自分にできることをするんだ。だから・・・)

 

「・・・分かりました、僕が行きます!それが今できることなら!」

 

「久井君・・・ありがとう」

 

楓さんは一息つくと、鞄からカツラみたいなのときっちり折りたたまれたスーツ一式を取り出した。

 

「あ、あの・・・これは?」

 

「ん?、勿論君の変装道具だよ!」

 

「こ、このままでいいんじゃ・・」

 

「まぁ、男よりも女性で潜入した方が相手にもバレにくいからね!」

 

凄い満面な笑みでそう言われると、とても断りづらいからな・・・仕方がない

 

「分かりました・・・ところで研修はいつからになるんですか?」

 

「今日からだね、それに着替えたら車をだすから」

 

「・・・・・」

(何か話がトントン拍子で決まってる感じがするのは、気のせいかな・・?)

 

 

ーー

 

ーーーー

 

 

 

(多分、気のせいじゃないかも・・・)

 

「黒須」と名乗った男性社員の部署説明やら今後の予定等を一時間近く聞かされた後、十分の休憩を貰い今は楓さん達と連絡すべくトイレ(勿論女子トイレ)の個室に入っている。

 

(それにしても、随分長い説明だったな・・・でも真面目でまともな感じがしたな)

 

先ほどの説明の感想を思いながら、ポケットから通話状態になっているスマートフォンを取り出す。

 

「もしもし、楓さん?」

 

「はぁーい!そっちの首尾はどう?」

 

「まぁまぁです、それより・・・・」

 

「ええ、さっきのは聞こえていたわ。けど特に変わったことはなかったね」

 

「そう・・・ですか・・」

 

「焦らなくても大丈夫、それに相手もすぐには正体を現さないだろうからね」

 

「・・・はい、それでは」

 

そう言い、電話を切りそれをポケットにしまう。

 

 

「ふぅ、さてそろそろ戻らないと・・・・」

 

トイレから出て、先ほどまでいた会議室に戻ろうとした時、妙な違和感を覚えた。

 

(・・?、やけに静かだな・・・物音一つしないなんて)

 

不思議に思いつつ会議室のドアを開ける、すると・・・・

 

「な、何これ・・・何で誰もいないの・・?」

 

さっきまで十数人いたはずの室内は人影一つもなく、静まり返りそれが一層不気味さを醸し出していた。そんな状況に立ちすくしていると後ろから声がした。

 

「なるほど・・・本当に海老で鯛が釣れるとはな」

 

「・・・ッ!!」

 

振り返ると、赤褐色の体色をした「スタンド」と後ろには数十人の人と共に「黒須 雷鳴」の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~~******~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

沖縄 我那覇市市内

 

 

「この組み合わせも久々やね♪」

 

「・・・・」

 

東條希と西木野真姫はまだ太陽が照りつける中、近くにあるドラッグストアで買い物をした後ホテルへ帰ろうとしている所である。

 

「希が日焼け止めを買いに行っただけじゃない・・・」

 

「まぁ、それもあるけど・・・・」

 

そう言って視線を上げると、そこには紫色の烏の姿があった。

 

「うちの「パープル・ヴァローナ」でこの島全体の確認をしときたかったからな」

 

「私はその護衛みたいなもの?」

 

「そ、うちのは攻撃手段が乏しいからね、自分の身を守ることが難しくてな」

 

「でも、何も起きなかったわね」

 

真姫はこれまでの事を思い返してみたが、これといった異変は無かった。昨日の穂乃果への襲撃が嘘みたいに

 

「そうやね、でも何が起こったら視野を広くして周りを見ることが大事になるよ」

 

「そ、そう・・・」

 

その言葉の真意は分からなかったが、過去に的確なアドバイスをくれたことを思い出し今のも胸にしまっておくことにした。

 

しばらく進んでいる途中にて、信号待ちをしていた時だった。

希との会話をしている際、何気なく視線を落とすと誰かがポイ捨てしたのか「空き缶」があるのを発見した。

 

(全く、ちゃんと捨てなさいよ・・・)

 

心の中で不満をこぼしながら、その空き缶に手を伸ばそうと腰を屈めようとすると、

 

「真姫ちゃん!!」

 

何かに気付いたのか希が急いでその空き缶に手を伸ばし、掴む

 

「な、何を・・・ッ!」

 

突然の事で驚き、何のつもりか聞こうとした時その口が止まった。何故なら真姫が見たものは掴んだはずの「空き缶」がグニャグニャに変形しそれが希の右腕に絡まっていたからである。

 

「の、希ッ!!?」

 

それを外そうと手をかけようとした所、希に止められる。

 

「これに触れるのは危険なんよ、それにこれは外せそうにない・・・の・・・かも」

 

そう言った彼女は何故か息が途切れ途切れになっており、今にも倒れそうになっていた。

 

(す、「スタンド攻撃」!・・・でも何処から?!)

 

周りを見渡すがそれらしき人影を発見することはできなかった。

 

(とにかく、ここから離れないと!)

「希!ここから移動するわよ!」

 

「う・・・真・・姫ちゃ・・ん・・・え」

 

事態を上手く整理しきれず、混乱する真姫には今の声は聞き取れなかった。

 

交差点を渡らず、島の海岸線を目指して歩き始める。

 

海岸線に着くと、すぐ近くにある休憩所に行きそこで希を休ませることにした。

 

「とりあえずはこれで・・・・でも」

 

状況を整理しようと考えるが、すぐ近くで悲鳴があがる。

 

「え・・?」

 

なにが起こったか確認しようと見てみると、希と同じような物質が腕や胴体に絡まっている町の人達の姿だった。

 

「な・・!、他の人達まで・・!」

 

それが一人ではなく、複数人にも見られた。

 

(何とかしないと・・!でもどうすれば・・・)

 

焦りと不安が押し寄せ、それに飲み込まれそうになった時だった。さっきの希の言葉を思い出す。

 

「視野を広く持って・・・周りを見る・・・・」

 

「・・・え・・・・たいは・・・・に・・る」

 

彼女の途切れる言葉に耳を傾ける、焦らずゆっくりと紐解くように・・・・

 

(周りにいない本体・・・希の言葉・・・「・・え・・たいは」・・・・「う・・え・・・ほん・・たいは」・・・!「上に本体は」!!)

 

一つの結論に達し、上を見渡す。すると道路を挟んだ反対側の電信柱の上に一羽の「ミサゴ」がこちらを見つめていた。

 

「まさか・・・あの鳥が・・・「スタンド使い」!」

 

「ミサゴ」の方は自分に気付いたことにご満悦なのか、口角をニッと上げた。

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?ここでスタンド紹介です

スタンド名:「ドール・スタンプ」
   本体:黒須 雷鳴(同化人間)

破壊力-C、スピード-C、射程距離-E
持続力-∞、精密動作性-なし、成長性-なし

赤褐色の体色をした人型スタンド
能力
スタンドが触れた生物限定で、それと全く同じ姿形をした「人形」を作りだす能力、一度作りだせば本体が自分の意思で消すか消滅しない限り、その存在は消えない。作りだした「人形」は体温等などといったものも持っている。本体の命令のみを実行する。


「ゴールデン・リング」
種族:ミサゴ、スタンド使い、全長:63cm、体重:約1.7kg

左脚に黄金の輪のようなものを付けているためそう名付けられた。「弓と矢」によって「スタンド」が目覚めたことにより、凶暴性と知能が増した「ミサゴ」である。

スタンド名:「フラッシュ・バック」
   本体:ゴールデン・リング

破壊力-B、スピード-B、射程距離-A
持続力-A、精密動作性-E、成長性-E

本体より二回り大きく六枚の翼と黒色の体色をした鳥型スタンド
能力
射程距離内にいる者達が地面に手や胴体をつけた場合に発動する、地面から泥状の物質が絡みつきそのものの栄養を吸収する能力
泥状の物質に触れると蓄えられた栄養を元に衝撃波を与える。精密な動作が出来ない為非スタンド使いでも無差別に発動してしまう


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