ーー翌日
昨日の穂乃果の一件があったからどうするべきか考えたが、せっかく来てくれたのだから島の案内をすることになった。勿論襲撃に備えて九人全員での移動となる訳だが・・・・
「ここが、島の唯一の観光名所「我那覇城跡」になるよ、ここで昼にでもしようか」
「そ、そうしよっか!」
「う、うん!」
穂乃果とことりの会話が少しぎこちない・・・・まぁ理由は分かっているけど
「何もないからって遠慮することはないぞ」
「え!・・・そ、そう?」
ここは一応「城跡」と名乗っているが、本当に「跡」しかなく、かろうじて城の石垣部分が残っている程度で、ほかはただの広い公園みたいなものになっているから「何もない」とも言われても仕方がないな
「でもここからの眺めはいいわね!」
「ありがとう、ここは綺麗な夕日が見られることでも有名だからな」
「ハラショー!、それも見てみたいわ!」
絵里との会話で出てきたが、ここは山の中腹に位置している為市内を一望でき、さらに夕日も綺麗なので一部界隈では人気らしい。
すると、穂乃果が俺の裾を掴んで尋ねてきた。
「ねぇ、承君・・あれって何て言う鳥なの?」
彼女が指さす方にいた鳥は、全長が60cmほどあり背中と翼の上面は黒褐色で、腹と翼の下部と顔は白色をしていて後頭部に小さな冠羽をつけているものだった。
「あれは、「ミサゴ」という猛禽類だな」
「へぇ~~」
「大きな鳥だね・・・」
花陽が小さな声でそう呟く
「大丈夫だよ、ああ見えて人は襲わないから平気だよ」
そう言うと安堵の表情を見せてくれた。しかし妙な事に、やけにこちらを見ている様な気がするな・・・気のせいか?
昼飯を食べ、「城跡」を後にした俺達は海岸までやってきて目の前に広がる海を見ていた。
「綺麗な海ですね」
海未が海を見ている・・・・別にかけた訳じゃないからな、そんな事を思っていたら穂乃果も同じ様に思っていたらしく、お互いに顔を見合わせて少し笑みを浮かべた。
そんな一時を過ごしていると、不意に後ろから声をかけられた。
「誰かと見れば、比屋定の坊主じゃないか」
振り返ると、白のタンクトップに黒の短パンというラフな格好で目つきが鋭い老人が漁網を抱えて立っていた。
「舟木さん、お久しぶりです」
「島を出て行ったから、一生戻ってこないかと思ってたが」
「いくら何でも大袈裟ですよ・・・」
「ふん、所でそっちにいるのは?」
「転校先の同級生ですよ、この島に来たから案内を・・・」
「そうかい・・・」
そう言うと穂乃果達を一瞥してそのまま去って行った。
「何・・?今の人は?」
にこが若干不機嫌そうに尋ねてきた。
「この島で漁師をしている「舟木」さんだよ、大の余所者嫌いだから気にしなくていいよ」
だけど、いつも以上に機嫌が悪いように見えたけど何かあったのか?
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同時刻 東京
ここはあるビルの一室、ここでは短期契約社員の為の研修が行われようとしており、室内に集められた二十名の研修員を出入り口から見ている男がいた。
(まさか、「矢」の事を調べに来たら面倒な仕事を押し付けられるとは・・・)
その男、「海山 イデヤ」は頭を掻きながら室内を見渡し俯く。
(三枝の旦那に何かしらの有益な情報を与えないと俺の首が飛ぶ!(物理的に))
イデヤが悶々と悩んでいると、扉が開きそこから灰色のスーツを着こなし黒の髪色と天に突き刺す様な髪型をした丸メガネの男が入ってくる。
(何だ~、いかにも「エリート」です!みたいなキザ野郎は・・・)
その男はイデヤの事を横目で見ると、何も言わず通り過ぎ前の方へ移動する。
「本日はお集まりいただき、誠に有難うございます。私は本日皆様をご案内させていただく「黒須 雷鳴(くろす らいめい)」と申します」
そう言って深々と頭を下げる彼を尻目に、イデヤは下を向いて腹を押さえている。これは決して腹の調子が悪い訳ではなく・・・
(変な名前だな~~!、あんな名前でよく恥ずかしいと思わないよな!ププッ!)
腹を抱えて笑っているだけである、そんな彼を置いておくとしてここにも下を向いているスーツ姿の女性がいた。
いや、
女装した男子と言った方が正解のようだ。
(か、楓さんに言われて来たけど・・・・)
(やっぱり無理だよ~~~~~)
その女性もとい男子の「久井武臣」は15年の人生で最大の汚点を作りだそうとしていた。
二人の異なる状況に置かれた「スタンド使い」はそれぞれの目的で潜入を果たしていた・・・・ここは「オデュッセウス・インダストリー社」傘下の会社「大日本薬学研究所」、運命の邂逅が間もなく訪れる。
いかがだったでしょうか?スタンド紹介はないです。
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