承一達が下す決断は?そして六人が出す答えとは?、見守っていただければ幸いです。
それではどうぞ
「・・・・・はぁ」
ここは学院から少し離れた場所にある喫茶店だ、そこである考え事をしていたら自然にため息がでた。というのも・・・・
(どうすれば、園田さん達に信じてもらえるだろうか・・?)
数十分前、園田さんに呼び出されそこで「何か隠しているのでは?」と言われてしまったからである・・・・「隠し事」とは言わずもがな、「スタンド」のことであり、昨日の出来事について不信感をもたれたことがそう思われた原因だろう。
・・・・確かに今まで言わなかった俺達に落ち度があるにしても、あんな危険な事にみんなを巻き込みたくなかったのも事実だ。だからこそ言っていいものなのか分からなくなってくる。
仮に言ったとしても、「スタンド」は「スタンド使い」にしか見えないものだから「非スタンド使い」である園田さん達に言っても信じてくれるかは保証できない上に最悪の場合、ふざけているのではと思われるかもしれない・・・・・
そして言わなかった時は、今までの信用を全部失う可能性はある・・・いや可能性ではなく絶対に失うな、しかも「μ’s」というグループの存続にも関わるかもしれない・・・それだけはダメだ、元は俺が原因なのかもしれないから
俺が学院に転校してきて穂乃果達に出会い、成り行きでボディーガードをしそこで自分以外の「スタンド」を初めて見た。それを撃退して彼女達九人と関わりあいを持った。
その後は真姫の実家である病院で世話になり、彼女の父親に恨みを持つ「スタンド使い」と戦闘になりそこで、真姫が「スタンド使い」として覚醒した・・・驚き以上に嬉しかった、「スタンド」の事について話せる友人ができたことに俺は浮かれてしまったのかもしれない
それを皮切りに東條先輩にも「スタンド使い」であったことを知り、そして穂乃果にも「スタンド」が目覚めた・・・全て俺が来てからの出来事だ、俺が今の状況を作りだしたと言っても過言ではない、あの時浮かれずちゃんと対応していれば・・・・こんなことにはならなかったかもしれない・・・
「そんなこと言っても仕方がない・・・よな」
今さら自分を責めた所で状況が好転するわけもないので・・・そう思い、気分転換に頼んだアイスコーヒーを一口飲む・・・シロップを入れ忘れたな
中々強い苦みを舌の上で感じつつ、改めてどうするか考え込む・・・
そんな時、喫茶店の扉が開く音が聞こえた。
「いらっしゃいませ、一名様ですか?お好きな席へどうぞ」
そんなマスターの声が聞こえてきた、俺はそれに構わず思考を巡らせようとした所・・
「あれ?承一君じゃない、奇遇だね」
「へ・・?」
突然声をかけられた為、間が抜けた声で返事をしてしまう。視線をテーブルから声のした方へ向けると、そこにはつい最近知り合ったスタンド使い「落合 楓」さんがいた。
「相席いいかな?」
「は、はい・・・どうぞ」
そう言うと楓さんは席に着き、アイスウィンナコーヒーを注文した。
「楓さん・・どうしてここに・・?」
「ん?いや、散歩がてらこの辺を歩いていたら偶々見つけてね」
「そうなんですか・・・」
「もしかして、何か悩んでいるこでもあるの?」
「え・・・?」
心の中を読まれたような感じだった、まだ何も言っていないはずなのに適格に当てられてしまったからだ。
「ど、どうして・・・?」
「そんな深刻な顔をされては・・・・ね?」
誰だって分かるよと言わんばかりの顔をしていた・・・・表情にそんなに出ていたとは気づかなかった。
「もし、話せることなら遠慮せず言ってくれても構わないよ」
「・・・・・はい、実は・・・・」
俺と同じ「スタンド使い」の楓さんなら・・・・そう思い、今日あった事を全て話した。
「なるほど・・・そんな事があったのね・・・」
「はい・・・それでどうすればいいのか分からなくなって」
話を聞き終え、楓さんはしばらく考える素振りを見せた後に静かに口を開いた。
「私個人の意見をすると、それは正直に話した方がいいと思うよ」
「そ、それは・・・」
意外な答えに少し戸惑ったがすぐに反論しようと思い口を開いたが、楓さんは俺の言葉を遮ってこう言った。
「「スタンド」は彼女達に見えないから、それは無理だと言いたいんだね」
「現実はそうですから・・・」
楓さんはため息をすると、やれやれといった感じでこう続けた。
「君は見えるか見えないかで悩んでいるようだけど、私に言わせればそれは些細なことだと思うよ」
「え・・・な、何で・・?」
「私が所属するスピードワゴン財団で「スタンド使い」は私だけだからね」
「・・!!」
衝撃的だった・・・てっきり楓さん以外にもいるかと思っていたから・・・
「じゃあ他の人達は・・?」
「うん、ただの普通の人だよ。でもスタンドについての知識はある程度のことを理解しているよ」
「見えないはずなのに?!」
「そして私がスタンド使いであることも承知の上だよ」
「・・・・・!」
ただ驚くばかりで何も言えなかった、見えないものを理解するだなんて・・・・
「承一君、確かに見えないものを理解するのは難しいよ・・・だけど「お互いの信頼」があれば乗り越えるのは難しくはないと思うよ」
「「お互いの・・・・信頼」・・・・」
「私も財団の皆とは強固な信頼関係がある・・・だから目に見えない力であっても築き上げた信じあう心で理解をすることができる!」
「他人を信じることは、自分を信じてないとできないよ・・・君は自分の中にある彼女達を信じてないのかい・・?」
・・・・・俺の中にある「彼女達」・・・・・
思い出されるのは、最初の「スタンド」戦の後・・・みんなが心配しそして感謝してくれたこと、名古屋に行った時絢瀬先輩の言ってくれたこと・・・・
そうだ・・・みんなは俺を信じてくれていた、だから俺はその想いに応えようとした・・・・!俺はみんなの事を・・・・
「・・・・馬鹿だったな俺、そんな事で悩んでいたなんて」
「決まったみたいだね・・・」
「はい、楓さん!ありがとうございます!」
俺の決意は決まった・・・後は伝えるだけだ・・・!
その時、ふと思ったことを口にしてみた。
「楓さん、明日みんなに紹介したいので一緒にいて貰ってもいいですか?」
「う~ん、まぁ明日はやることがないからな・・・分かった!」
「それじゃ、明日俺が迎えに行きますので」
「ええ、待ってるよ」
会計を済ませ、喫茶店を出る・・・・決意は変わらない、後は信じるだけだ。
~~~~~*****~~~~~
ーー翌日 AM10:00 音ノ木坂学院
この日、南さんのお母さん(理事長)から特別に許可を得て学院に来ている・・・・因みに今いるのは学院の屋上である。
そして俺を含めた六人は全員揃っており、園田さん達の到着を待っている・・・
「承君・・・大丈夫かな・・・?」
穂乃果が不安そうな声で聞いてくる、だけど俺は・・
「大丈夫さ、きっと皆なら・・・」
そう言った所で、屋上の扉がゆっくり開き園田さん達六人が姿を見せる。
「・・・・約束通りですね」
「勿論、破る訳がないだろう」
「・・?そちらの方は?」
そう言って屋上のフェンスに寄りかかっている楓さんの方を見る。
「ああ、彼女は「落合 楓」さん・・・俺達の事について関係のある人だから来てもらったんだよ・・」
「そう・・・なのですか」
少しの間だけ静寂が流れる、そして園田さんが切り出した。
「では、聞かせてください・・・昨日の問いの答えを」
改めて質問されると少し萎縮してしまうが、これに答えないとみんなの今後に関わる・・・俺は意を決した。
「園田さん・・それに皆、俺がこれから言うことは真実であることを頭に入れてもらいたい・・」
「確かに俺達は隠していることはある・・・・・それは」
「・・・・・・」
全員が固唾を飲んで見守る・・・・
「・・・「スタンド」と呼ばれる力の一種みたいなものだ」
「「スタ・・・ンド」?何ですか?それは・・?」
「「スタンド」とは、それを持っているものにしか見えない精神エネルギーの塊みたいなものなんだ」
「俺を含めこの五人全員が持っている・・・これが俺達の隠していることなんだ」
正直に全てを話す・・・・これが俺の決断だった、おそらく今ので信じてもらえるかは微妙な所だ。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
現に六人全員が俺の言ったことを理解しようとしているのか分からないが、皆押し黙ってしまう・・・
そんな中、口を開いたのは絢瀬先輩だった。
「正直、信じられないし信じられる証拠はないけど・・・・私は信じてみようと思うの」
「・・・・・!」
「ちょっと、絵里!本気なの!?」
「エリち・・・・」
「それはあくまで比屋定君達自身を信じていることだから、その力に関してはまだ信じられない・・」
「けど・・・昨日別れてからずっと考えていたの、本当に大事なことを黙っているのかって、もしかしたら話せない事情が少なからずあるのかもしれないと」
「絢瀬先輩・・・・」
「それに今まで一緒にいた仲なのに、それを信じないなんて・・・私にはできないわ」
胸が打たれる思いだった、それと同時に熱い何かがこみ上げてくる感覚があった・・・
「・・・実は私も絵里と同じ気持ちなのですよ・・・」
「・・・私も」
「海未ちゃん・・・ことりちゃん・・・」
「幼なじみである穂乃果を信じないのは、私には考えられないことですから」
「うん、それにそんな事情じゃ言えないのも仕方がないよ」
(園田さん・・・南さん・・・)
「凛達も・・・真姫ちゃんの事を信じるよ!一人の友達として「μ’s」の一人としてにゃ!」
「真姫ちゃん達のことを少しでも疑ってごめんなさい・・・友達なのに信じないのはダメなことだから」
「凛・・・花陽・・・」
(星空さん・・・小泉さん・・・)
「に、にこはまだ信じてないわよ・・!だけど信じようとは思っているわ・・・あんた達の事・・・」
「にこっち~、あんまり素直じゃないんやね~」
「べ、別に・・!そんなんじゃないわよ!!」
(矢澤先輩・・・・)
俺は・・・・本当に彼女達と出会って・・・・本当に良かった、信じてもらえることがこんなに嬉しいなんて・・・・
気が付くと、頬に一筋の涙が零れていたのが分かった。そんな俺に楓さんがそっと近づいてきた
「どうしたの?もしかして感極まったの?」
「あ!い、いや・・・・これは」
楓さんは何も言わず、ハンカチを差し出してくれた・・・・・俺はそれを受け取ると静かに俯き、溢れる涙をそれで堪えた。
いかがだったでしょうか?今回はちょっと長くなってしまいましたね・・・
次回からは「第二章」最終話の話になります!ご期待ください!
感想・ご意見お待ちしています。