4月25日 土曜日 AM9:00
夢を見る、今でも父と母が揃っている夢を・・・・・・・
だけどそれはもう叶わない・・・・あの日、あの時の出来事によって・・・・・
父は優しく時に厳しかった、家族にも自分にも・・・特に悪い事をした時はより一層だった。
けど、それは本当にその人の事を思って言っていることであり、怒られて嫌に思うことはなかった。
そんな事からか父は地元の人からの信頼が厚く、町内会の長を任されたこともあり、さらに島内のパトロールボランティアにも参加しており何度か警察の方から表彰された事もあった・・・・俺はそんな父の背中を見続けていて自分自身いつかこんな大人になりたいと子供ながらそう思ったものだ。
そして・・・忘れないあの日がやってきた・・・・・
五年前、六月の蒸し暑く少しばかり強い雨が降っていた日の事だった・・・・父は自主的に島のパトロールをしており、その日も何事もなく帰ってくるだろうと思っていたが・・・
「隣の島で何かあったみたいだ、ちょっと様子を見てくる」
父から家にそう電話がかかってきた・・・それが父の最期の言葉となってしまった。
一・二時間で戻ってくるだろうと俺は思っていたが、夜になっても帰ってく気配がなく心配した母が、翌日警察に捜索願を出し島の人達も総出で探し尽くした・・・・そして見つかった・・・・もの言わぬ遺体となって・・・
母と俺は最初は全く何が起こったのか理解できず、ただただ呆然とするしかなかった。けど葬式があって火葬場に行き、骨壷を持った時初めて父が死んだことを理解し、その場で泣き崩れてしまった・・・・・
父の死について、警察は事故と断定したが俺は今でも事故じゃなく誰かに殺されたと思っている・・・あの穏やかな海域で父が事故を起こす訳がない、しかも乗り慣れている船で・・・だから俺は自分なりに犯人を捜し出してやると決意をした。
それからは自分なりに調べ続けたがめぼしい物は見つからず諦めかけた頃、父の日記から「東京、神田」にいた頃の様々な体験が書かれていた。具体的な内容はほぼ伏せられていて分からなかったが、そこで何かがあったのは確実だった・・・・・
(「東京」に行けば何かが分かる・・・)
そう確信し東京へ行くための方法を模索していた所、高校で成績優秀者に対して東京の高校からの勧誘がいくつか来ており、そこに「神田」に近い「音ノ木坂学院」があった・・・・
「・・・・・運命・・・かな」
土曜日の朝、俺は寝室で横になりながら数ヶ月前の事を思い出しそんな言葉を口にした。
(そしてようやく掴んだ手かがり・・・・昨日出会った「同化人間」はあの日の出来事を知っていた・・・・・だけど俺は・・・!)
昨日の出来事を思い出し、体が震える。
(あの感じは何だった?!奴の言葉を聞いていく内に上手く口が動かせず何も考えられなくなった・・・・・ただ一つだけ除いては・・・)
それはーーーー相手への「憎しみ」の感情だった。
(まるで自分ではなかった感じだった、心の中に違う自分がいるみた・・・ッ!)
そんな事を考えていると、突如スマフォからメールの着信音が聞こえた。
「びっくりした・・・・、誰からだろう?」
メールの差出人を見ると、穂乃果からだった。
「えっと・・・今日学校に集まれるかだって?急に何だろう・・?」
急な呼び出しに戸惑いながらも、身支度をして家をでる。
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学校に着き、取り敢えず部室に行ってみるとそこには「μ’s」のメンバー全員と久井が揃っていた。
「承君!」
「穂乃果、急に呼び出すなんて珍しいな。それにみんなもいるけど」
「あ、あのね・・・実は」
「呼び出しをしたのは、私達なんです」
穂乃果の言葉を遮って、そう言ったのは園田さんだった・・・
「え?そうなんだ・・・でもどうして?」
「それは・・・・あなた達にどうしても聞きたいことがあるからです」
聞きたい事・・?改まって何だろう?昨日の事は何とか誤魔化せたから大丈夫だろうけど
「比屋定君、穂乃果、真姫、希、久井君・・・・・私達に何か隠している事はありませんか?」
一瞬だけあたりに静寂が訪れる・・・・その空気の中で最初に開口したのは穂乃果だった。
「う、海未ちゃん・・・私達は隠している事なんてないよ・・・」
「それは本当ですか・・・?穂乃果」
園田さんが今まで見せた事もない悲しさと若干の怒りが混ざった表情をしていた。さらによく見ると南さん、小泉さん、星空さん、絢瀬先輩、矢澤先輩までも同じ様な表情を見せていた。
「穂乃果だけじゃないわ、真姫に希もそうでしょ?」
「それに比屋定に久井もそうでしょ!?」
絢瀬先輩と矢澤先輩の言葉が突き刺さる、確かに言っていない事はある・・・しかしそれは・・・
「で、でも昨日事は・・・・」
「昨日の事は一旦置いて、気になったのはあなた達のあまりにも冷静なことなのです!」
「そうね、海未の言うとおりよ」
「あんた達が昨日の出来事をどうしたかは知らないわ、ただそれをにこ達に説明をしないことがよく分からないし気にいらないのよ!」
「そうだにゃ、せめて一言ぐらいあってもいいのに・・・」
「何も言わないと、私達はどうすればいいのか分からなくなっちゃうよ・・・」
俺達五人は何も言わなかった・・・いや言えなかった、「せめて一言」それがなかったからみんなが不安と猜疑心にかられてしまったのだろう・・・・
しかし、「スタンド」の事を言っても信じてくれるかは分からない・・・・仮に信じてくれたとしても「スタンド攻撃」に巻き込まれてしまうかもしれない・・・そう思うと話すのを躊躇ってしまう。
そんな時、今まで黙って聞いてた東條先輩が切り出した。
「確かにみんなに何も言わなかったことはウチらが悪いことだと思うんよ・・」
「ただ、言いたくても言えない事情というものもあってな」
「希・・・・」
「ちょっと!じゃあ言わない気?!」
「ううん、けど言わないとこんなギクシャクした空気のままになってしまう・・・それはウチも嫌や」
「じゃあ、どうするのですか?」
「ウチらに一日考える時間を貰えんかな?明日、今日と同じ時間に集まってそこで答えを聞いてほしいんよ」
先輩が提案したのは、考える時間を貰って明日になって話すという事だった。
確かにそれなら、こちらは決心がつくし向こうも落ち着いて話を聞くことができるな。
「・・・・・」
六人を代表して、園田さんが考えている。無理もないか今までの事があったからな
「・・・・分かりました、明日まで待ちます」
「海未ちゃん・・・・」
「海未!あんた・・・!?」
「ただし!納得いく答えを・・・・必ず聞かせてください!」
「うん・・・・もちろん!」
そして、その場は取り敢えず解散となり園田さん達六人は部室から去って行った。
俺達は今試練の時なのかもしれない・・・・いつかは来ると思っていたこの出来事、明日までに答えを見つけられることができのだろうか・・・?
いかがだったでしょうか?
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