女神達の奇妙な冒険   作:戒 昇

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お待たせしました、それではどうぞ!


第29話 来訪者-漆黒の意思-その③

「・・・・・」

 

誰もいなくなった廊下で一人の男「座井部 強」は無言で立っていた、さきほどまでいた女生徒が消したので、すぐにでも移動すべきなのだがそれはしなかったのは・・・

 

(・・・・やはり思い過ごしか、何か仕掛けているかと思ったのだがな)

 

そう、そこにいた女生徒は自身のスタンド能力に気付いたのだ。

 

(少ないヒントで能力の目星をつけた奴は初めて会ったからな、正直不安は残るが「目的」を済ませよう・・・)

 

男は踵を返し、その場を後にした

 

 

 

 

時刻は東條希が消される直後に遡る、比屋定承一と高坂穂乃果は職員室に向かって走っていた。

承一は表情には表さなかったが、心の内では怒りと焦りで満ちていた・・・

 

(くそッ!!まさか学院で事を起こす奴が出てくるなんて!)

 

自分が予想していた最悪の出来事が現実となったことへの憤りと、相手の能力が分からないことへの不安で心の中に黒い沈殿物が溜まろうとした時だった

 

「・・!承君!!あれは・・」

 

穂乃果が指差す方を見ると、三階へと続く階段の傍に何かが丸まっているのが見えた。

承一がそれに近づく・・・

 

「こ、これは・・・東條先輩のスタンド!」

 

それは確かに東條希のスタンド「パープルヴァローナ」であった、しかし動きは弱弱しくここまでやってくるのが精一杯と見えた。

 

「何でここに・・?それにこんなに弱っているのかな?」

 

「分からないが、スタンドがこんなに弱っているのを見ると東條先輩の身に何かが起こったのかもしれない」

 

すると、抱えられていた「パープル・ヴァローナ」が僅かに動き、羽についてた雨粒を使って途切れ途切れだが文字を書いていく・・・

しかし、ある程度書いた所でその姿が消えてしまう。

 

(くッ・・・!先輩、仇はとります・・)

 

「残った文字は・・・」

 

「えっと、ア・・メ・・?それと、ノウ・・・リョ・・・ク?でいいのかな?」

 

「雨・・・能力・・か」

 

(雨を使う能力は誰もいない・・・まさか敵の能力か!)

(雨に触れるかしたら発動する能力か・・?なら)

 

「穂乃果、とりあえず一年生の教室へ行くぞ!!」

 

「え?!でも・・・」

 

「今は味方が多いほうがいい!真姫と久井にもこのことを伝えないと!」

 

そう言って承一は走り出した。

 

 

 

 

~~~~~*****~~~~~~

 

 

 

同時刻 職員室前

 

 

誰もいない職員室という異様な光景を目の当たりにして、立ちすくんでいた真姫だがすぐさま自分の教室に戻る為走り出した。

 

(これが「スタンド攻撃」なら、教室にいるみんながあぶない!それに早く承一に伝えないと!)

 

廊下を進み、一階へ続く階段の手前まで来た所で階段を登ってきた久井と鉢合わせになる

 

「西木野さん!!」

 

「久井!?どうしてここに?!」

 

「それが・・教室にいた時妙なスタンドに襲われて・・・それで僕以外は・・・」

 

「・・・・そう」

(あの様子だと凛と花陽達は・・・)

 

「・・・・今は他のみんなと合流をするわよ」

 

「は、はい・・!」

 

そう言って二年生の教室に行こうとした時だった

 

 

「残念だが、それは叶わないことだな」

 

 

「・・ッ!誰?!」

 

声のした方を見ると黒いスーツ姿の男が三階へ続く階段からこちらを見下ろしていた。

 

 

「驚いたな、スタンド使いがまたいるとは・・・」

 

「・・!まさか、あんたがこんなことを!」

 

「悪く思わないでくれ、これも我が計画の為だからな」

 

 

 

そう言うと男は、自身のスタンドを出してきた、そしてーーー

 

 

二人にスタンドが迫る。

 

 

 

その刹那、真姫は思う

(私のスタンドでは倒せないけど・・・・承一達に伝えなくては・・・!)

 

久井は思う

(西木野さんは僕が守らなくちゃ!その為には・・・・!)

 

同時に二人の体が動いた。

 

 

 

久井は真姫の前までスタンド能力で移動し盾となり相手の攻撃を自身の体で受け止め、全身が極薄い紙状になってしまう。しかしほんの数秒だけ隙が生まれた・・・

真姫はその数秒で自身の能力を使って「固体」である「鉄」を創り出し、それを思いっきり床に叩きつけた。

 

その一連の行動に男は真意を見出せなかったが、構わず攻撃を再度行う

 

 

「何の意図かはわからんが、無意味だ!」

 

 

しかしその攻撃に真姫は躱さず、その身で受け止める。男はあえて両手足だけに能力をかけ、疑問をぶつける。

 

 

「何故・・?さっきもそうだが君の考えがまるで分からん。何故躱さなかったのか?」

 

「・・・・・」

 

男の問いに真姫は何も答えず、それどころか澄ました顔をしていた。

 

 

 

「・・・ッ!!!」

 

その態度に苛立ちを覚え、男は真姫の首根っこを掴むとそのまま壁に押し付ける

 

 

「何故さっきから黙っているッ!!何故答えん!!」

 

 

真姫は首からの圧迫感の為表情を歪めるが、無言を貫いていた。

 

「くッ!・・・人間風情が」

 

男の苛立ちが頂点に達しようとした時だった、これまで無言だった真姫が一言呟いた。

 

 

「やっと来たわね・・・・遅いわよ全く」

 

「何・・・?」

 

真姫の不可解な言動に一瞬動きと思考が止まる。その時背後から迫ってくる一つの拳があった。

 

 

「オラッッ!!」

 

 

「ぐ・・・がぁ・・!」

 

拳は男の顔面を完璧に捉え、そのまま吹き飛ばした!

 

 

「悪いな真姫、遅くなったよ」

 

「大丈夫?!真姫ちゃん!」

 

 

現れたのは比屋定承一と高坂穂乃果の二人だった。

 

 

「穂乃果、真姫の事を頼む!」

 

「うん!」

 

そう言うと承一は、先ほど自分が吹き飛ばした男の元まで行く

 

「ようやく見つけた・・・お前が・・みんなを・・・」

 

男の元まで来ると、手を固く握りしめそう呟いた。

 

 

「全く予想外だよ・・・消えた仲間と「矢」の行方を追っていたら懐かしの顔に出会うとはな・・・」

 

「何・・・・?」

(こいつの言っている事がまるで分からない、懐かしい・・?会ったことはないはずだが・・)

 

 

「覚えてないのか?あの日・・・「蒸し暑い雨の日、ヨットでの出来事」だよ・・」

 

 

 

 

その言葉で、承一は五年前の事を思い出す・・・尊敬し愛してた父親が亡くなった出来事を・・・

承一の心が、ざわついた・・

 

「・・・お前が・・・あの時・・・・ッ!」

 

息が荒くなり、言葉が上手く回らなくなり様々な感情が渦巻く・・・・・怒り、悲しみ、そして憎悪・・・・

 

 

 

そしてーーー

 

 

承一の中に「漆黒の意思」が芽生える・・・・

 

 

「・・・・・ッ!!!」

 

承一は走り出した!憎き敵に向かって・・・!

 

 

 

「死にきれなかったか、また殺してやるよ!!」

 

「「レイニーデイズ」!!!!」

 

男がスタンドを発現し、その魔手を伸ばす!!

 

承一も、自身のスタンドを出し応戦の構えをとる。

 

 

(愚かな・・・私のスタンドの方がスピードは上回っている・・・終わったな・・・)

 

男は内心で勝利を確信した・・・・・だが

 

 

 

ドグシャァァ!!!

 

 

男の顔面に「アウタースローン」の拳が命中する。

 

(なッ・・・・!バカな・・・・何故・・・?)

 

「何故当たるゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」

 

 

 

「オラオラオラオラオラオラァ!!」

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!!!、オラッ!!!」

 

 

 

凄まじい速度で放たれたラッシュは、男に全て当たりさらにダメ押しの一発で廊下のガラスを突き抜け、そのまま地面に落ち絶命した。

 

承一は割れたガラスの一部が額に当たりそこから血が出たものの、それに構わず外を見つめていた。

 

 

「承君!、大丈・・・夫?」

 

穂乃果がやってきたが、彼の事を見て驚愕する・・・いや正確に言えばその「瞳」が今まで見たことがないぐらいに冷酷で暗いものだったから・・・・

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?スタンド紹介はないです。


感想・ご意見お待ちしています。


追記

音ノ木坂学院の内部があまりよく分かってないので、作者の創造でこうなっているだろうなと思って書いてますので、おかしな点があると指摘してくだされば幸いです。

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