「うう…つ、疲れた」
あれから「お礼」という名目で、色んな場所に連れ回された挙句「この町に引っ越してきたばかり」と言ったら「秋葉原周辺の案内」に切り替わってしまい余計に歩くハメに…不用意に相手に情報を与えてはいけないこと身をもって知ることになるとは、それで今どこにいるかというと…
「お待たせ~お茶とお饅頭持って来たよ~」
「ありがとう、早速頂くよ」
彼女、高坂穂乃果さんの家に来ている。女の子の家に行くのは初めてだし、何より知り合って間もない男子を家に上げるのはどうかと思ったので最初は断ったけど、これまた強引に押し切られ今に至るという。
それにしても…
「美味しいなぁ、饅頭は初めて食べたけどこれほど美味しいなんて」
「え!?初めてなの?」
「うん、地元にはあまりなかったからな」
「そうなんだ~でも沖縄出身ていいなぁ、海とか綺麗そうだもんね」
自慢じゃないけど海の綺麗さならどこにも負けないけどね!と危うく言いかけてしまう。
「でも、高坂さんの方が羨ましいよ、こんな美味しい和菓子を毎日食べれるなんて」
「ムム~~」
ハムスターよろしく両頬を膨らまさせてジト目で睨まれてしまう…何か気を悪くする事でも言ってしまっただろうか…
「高坂さんじゃなくて、穂乃果でいいよ!」
「で、でも知り合ってばかりなのに名前呼びは・・」
「じゃあ、私も承君て呼ぶから穂乃果て呼んで!」
「え!?わ、分かったよ・・・穂乃果」
「うん!これからよろしくね!」
押しが非常に強い彼女だけど、不思議と嫌な気分にならないのはなんでだろうな・・・そこが良い所なのかな。
それから穂乃果のお母さんにお土産として饅頭の詰め合わせもらい、自分の家に帰った。
~~~~~~****~~~~~
翌日
音ノ木坂学院に初登校する日、真新しい男子用の制服に身を包み家を出る、因みに朝食は済ませてある。
「7時半前か、これなら大丈夫だな」
昨日のように時間ギリギリは大変だからな、いつもより早く出たのだ…!
心の中でドヤ顔を決めた所で目的の場所に着いた。
校門をくぐると、桜の木が並ぶ道が眼前に広がり、心が踊り若干浮き足気味で校舎の中に入る。
職員室へ行き、そこで担任となる先生が自己紹介をしてくれた。
「2‐Aの担任の「山田博子」だ、これから宜しくな」
「比屋定承一です、宜しくお願いします!」
「うむ、元気がいいのはなりよりだ」
先生もいい人だな、やっぱりこの学校で良かったなと思っていると、山田先生が立ち上がる。
「さて、そろそろ教室へ行くか」
「はい」
職員室を出て、すぐに目的の教室へ着いた。
「じゃあここで待ってくれ、呼んだら入ってきてくれ」
「分かりました」
そう言って、先生が先に教室に入る。
「お前ら、早く席につけよ」
「さて、知っているとおもうがこのクラスに転校生が来るぞ!」
そう言った時、教室内がざわつき始める。
「どんな人だろう~」
「カッコイイ人かな~?」
今ハードルが凄く上がった様な気がする…この状況ではとても入りにくいと思っていたら先生の声が聞こえた。
「じゃあ、入ってきていいぞ!」
…この状況で入れとは鬼畜の所業でしかないと思う、しかし呼ばれてしまったから仕方ない、意を決し扉を開け教室に入ると…
「カッコイイ~!!」
「スラっとしてる~~!」
顔から火どころかマグマが吹き出そうなくらい恥ずかしかったが、入った以上逃げる訳にはいかない…
ぎこちなく歩き、先生の横まで移動する。
「静かにしろ~とりあえず自己紹介してくれ」
「は、はい!」
「えーと、この度音ノ木坂学院に転入した「比屋定承一」と言います、体を動かすことが趣味です!
これから卒業まで宜しくお願いします!」
そう言うと教室から拍手が送られてきた、何とか第一印象は大丈夫そうだな、拍手に混じって「二の腕見せて欲しい…」や「腹筋が板チョコみたいになっているかな…」て聞こえたきたが気のせいだろう。
「じゃあ席は・・と、高坂の後ろが空いているからそこだな」
(・・ん?高坂?、ま、まさかな)
「あーーーー!、承君だーー!」
(やっぱりだ・・・この先やっていけるか早速不安だ)
~~~~~~~****~~~~~
予鈴の音が鳴り、一時間の昼休みが始まる。
「半分ぐらいしか終わってないのに疲れたなぁ~」
あれから休み時間になる度に、穂乃果や他のクラスメイトから質問攻めにされ、それをかわすのに精一杯で授業に全く集中できなかった。でもこんなことは初めてで新鮮だからある意味良かったかも…一つ気がかりなのは質問攻めの中で俺のことを遠巻きで見ていた二人組がいたぐらいかな…
「ちょっと良いですか?」
噂をすれば何とかだな、その二人組みの青い髪の子が俺に話しかけてきた。
「良いよ、何だい?」
「いえ、ここでは場所を移しましょう」
「・・・?、分かった」
よく見ると後ろに穂乃果とグレーの髪色の女の子がいるんが見える。
しばらく青い髪の子に着いていき、到着したのは学院の屋上だった。
「そろそろ理由を聞かせてもらってもいいかな?」
「単刀直入に聞きますが、あなたと穂乃果はどういった関係ですか?」
「へ…?どうって」
「何故穂乃果があなたのことを名前で呼んでいるのですか?!」
「それは、昨日彼女がそう呼んでくれって言われてから・・・」
それを聞いた瞬間、その娘は俯いてしまい頭を抱えて小声で何か呟くと、勢い良く顔をあげる。何故か頬が赤くなっていたが…
「まさか…あの「ストーカー」の仲間か何かですか…?」
「…?」
突如として発せられた言葉に理解が追い付けず、何も言えないでいると、その娘は笑顔になり静かにゆっくりと近づいて来る。
「無言は肯定と受け取らせて貰いますよ…フフ
…覚悟はできていますか…?」
RPGに出てくるボスの様な雰囲気を出し、目が全く笑っていない笑顔で距離を詰めてくる。
後退りしようにも屋上の鉄柵に当たり、逃げることが出来なくなってしまう。
その時、穂乃果さんが俺たちの間に割り入ってきた。
「待って待って、海未ちゃんストップ~~!」
「穂乃果?!何故庇うのですか!?今から制裁を・・・」
「承君は昨日、穂乃果を助けてくれたんだよ!」
「え…?」
それから、穂乃果さんは昨日あったことをすべて二人に説明してくれて誤解が解けたらしく、今は四人でお昼を食べている。
「すいません、比屋定君、誤解とはいえあやうく危害を加えてしまう所でした」
「気にしなくていいよ、すぐに説明しなかった俺にも非があるわけだし」
「ことりも、誤解しちゃってて・・」
この二人は「園田海未」さんと「南ことり」さんといって、穂乃果の幼なじみらしくさっきの行動は彼女を心配してのことらしい、だからあんなに怒っていたのか…
「正直、友達の為に怒れるのはとっても羨ましいよ」
「そ、そうですか・・?」
「ああ、ところで一ついいかな?」
「はい、何でしょう?」
「あの「ストーカー」て言ってたけど、どういう事なの?」
その言葉を発した時、穂乃果も園田さんや南さんも不安気な表情が見えたのだ、思い出したくない…そんな声も聞こえそうな程だったのだ。
「そ、それは・・・」
「海未ちゃん、思い切って承君に話してもみても良いんじゃないかな?」
「しかし、関係のない彼を巻き込むのは…」
「私も承一君なら、話してもいいと思うよ」
「ことりまで…」
「……分かりました」
そう言って俺の方に3人とも向き直る。
「実はね、私たちあるグループにいるんだよ」
「あるグループ?」
「聞いたことありませんか?一年前に起きた震災の復興の為に歌っているグループを」
「聞いたことはあるな…確か…」
「「μ’s」だよ、承君」
これが俺の数奇な運命が始まりであり、この都市…東京を蝕む巨悪との戦いの序章ともなる……
~~~~~~~******~~~~~~
某所
とあるマンションの一室…電気もつけず真っ暗な室内に一人の人物が壁を前にして座り込んでいた。
「ククク…おもしろい力が手に入ったぞ、これで彼女を…いや彼女達を俺の物とすることができる。
ああ愛しの「μ's」…待っててくれ…今迎えに行くよ……」
虚ろな男の瞳は、壁一面を覆い尽くすほどの「μ's」のメンバーが写る写真に向けられていた。
いかがだったでしょうか?今回は2000字越えになりましたね・・・疲れました、三話の内容は九割完成しましたので早い内に投稿したいと思います
感想、ご意見等引き続きお持ちしています!