東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
チョコチョコ降れ降れチョコよ降れ
槍槍降れ降れ槍よ降れ
同志にチョコを、リア充に槍を
by作者
目的無き旅の先に
「……もう行くのか」
「ああ、悪いな。最後まで自分勝手で」
「よい。それが我ら妖怪というものじゃ。どうせいずれ会えるじゃろう」
「……違いねえな」
現在、俺は妖怪の山のふもとにいた。
剛との戦いから数ヶ月の時がたった。
ここに来た頃には積もっていた雪も、既に消えておりあたりに力溢れる緑が生い茂っていた。
前を見れば、そこには剛を中心とした俺と仲がよかった連中が集まっていた。
ーー今日、俺は再び旅に出る。
これは前から決めていたことだ。どっちにしろ、今の俺に目的というものはない。何かでかいことをしようにも、その力さえない。
「体の調子は大丈夫?無理してない?」
心配だ、というような表情で紫が俺の顔を覗き込む。
「ああ、大丈夫だ。
そっと紫の頭を撫でながら、反対の手で自分の頭に触れた。そこには真っ黒なヘッドホンのようなものがつけられていた。右側から逆側に桃色のラインが描かれており、自然と俺の髪に馴染む。
これは、俺の脳の働きをサポートするために作られたものだ。
これには、つけているだけで思考などを補助する機能がある。演算装置、いわゆるもう一つの擬似的な脳なのだ。
もちろん構造は狂夢、術式は俺が作った。とはいえ俺の脳は働いてくれないので、いつもは頭の中でやるような計算をわざわざ紙に書かなければいけなくなったのだが。それにより消費された紙は小さくビッチリ書いても百を余裕に超えていた。
そんなこんなで作られたこのヘッドホンだが、実はもう一つ機能があった。
それは、右につけられているボタンを押すと、俺の脳を戦闘可能な状態まで戻すことができるのであった。流石に神解などはできないが、舞姫を開放させるところまではできるようだ。
ただし、もちろんそんな素敵な機能にも制限がある。それは、その機能が十分しか発動できない、ということだ。
制限時間が過ぎれば、一時間のクールタイムが必要になる。
そして今の俺は、この機能を使わなければ狐火の一つも出せないのだ。体も、歩くことが限界で走ると転んでしまう。なので今も杖は左手に握ったままだ。
何が言いたいのかというと、俺は戦闘になれば必ずこの機能を使わなくてはならない、ということだ。
なので俺はあまり戦闘に参加することはできない。そこら辺は娘たちに頑張ってもらおう。
「またいつでも来るがいい。妖怪の山はお主たちを歓迎するぞ」
「たまには遊びに来なさいよね」
天魔と文が天狗を代表してそう言った。
後ろにいた俺と交流があった天狗たちも、それと同時に大歓声をあげた。
それに応えながら、ふと横を見ると、娘たちが萃香と勇義に挨拶をしていた。
「またいつでも来いよー。戦いだったらいつでも歓迎さー」
「次にお前たちと戦えるのを、アタシは楽しみにしとくぞ」
「ええ、いつかまたお胸を借りさせてもらいますよ」
「……私は許可出してないんですが。まあこれも修行の一貫なんですかね」
「じゃあね萃香!また今度遊ぼうねー!」
そう言って元気に手を振る清音。
彼女たちは修行ということで萃香と勇義と戦っており、それで仲良くなったらしい。
ちなみに俺が強すぎて影が薄いが、彼女たちは曲がりなりにも立派な大妖怪である。そんな彼女たちと修行することで、娘たちはより一段と強くなれたようだ。
これで俺の旅の安全は守られたということだ。
「さて、これで全員に挨拶したかな?それじゃあ行くぞ!」
「「「「「おうっ!!!」」」」」
山に背を向け、俺たちは歩き出した。向かう先はランダム。気分で西へ東へ気ままに歩く。
ふと振り向けば、そこには天狗や鬼たちが手を振っていた。手を振り返して、俺は歩を進める。
「さあ、目指すは安眠出来る場所へ、レッツゴー!」
こうして、本当の意味で自由な俺の旅が、始まった……
「ーーーーって、なんだテメエがいるんだ火神!」
「いや、暇だし特にやることもないからまたお前についていくことにした。というわけで行くぜ!」
駆け足で走り去っていく火神と、その後ろを楽しそうに追う娘たち。
「ま、待ちやがれこっちは怪我人なんだぞ!」
そして、それらを転ばないように必死に追いかける俺の姿があった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
そしてあれから数十年、俺たちは様々な大陸を渡り歩き、そして今も旅を続けていた。
現在の位置は日本、そのどこかの山の中である。確か京都あたりだったはずだ。
「ったく、まさか道に迷うとはなァ。ついてねェぜ、まったく……」
「元々お前が地図なくしたんだろうがこのバカ野郎!」
そう、俺たちの現在地がわからないのはこのバカが地図をなくしたからである。前の村を出る時には持っていたのだが、それをなくしたことに気づいたのはそれから一週間後であった。気づくの遅すぎである。
「……地図なんてほとんど見ないんだし、大丈夫でしょう。それよりも先にやることがあるようですよ」
美夜がそう前を見ながら言い放つと、あたりの木々から蛇の形の妖怪、熊の妖怪、狼の妖怪など、様々な魑魅魍魎が現れた。
美夜、清音、舞花がそれぞれの武器を取り出した。もちろん俺は待機、火神は正座しながら高速でお茶を入れ、それをズズッと飲み干した。ご丁寧に座布団まで敷いてある。どこぞの殺○んせーだよ。
「さて、除菌の時間といきましょうか」
「……血が服につくから遠慮します。と言っても聞かないと思いますが」
「久しぶりに暴れるよー!」
それぞれの妖力が跳ね上がる。それは大妖怪の持つ妖力量と、ほぼ同じだった。
それをいち早く察知し、妖怪たちは一歩二歩と後ろに下がる。だがそれを見逃す彼女たちではない。
「まずは先制攻撃!……と言ってももう終わりですが」
初撃は美夜だった。雷のような速度!……とまではいかないが、文に匹敵する速さで敵を一刀両断した。
「おーやるね!じゃあこっちもいくよ!」
次に清音。両手で刀、というより太刀を天にかかげると、炎の蛇が刃にまとわりついた。
「『
声とともに刃を振り下ろすと、そこから炎の大蛇が地面をえぐりながら放たれ、射線の先にあるものを消し炭にした。
「グガァァァァッ!!!」
「無駄です。そして大人しく死んでください」
逃げきれないと悟ったのか、妖怪たちはヤケになって一斉に舞花に襲いかかる。だがそれを杖でなぎ払うと、それを地面に突き刺した。
「『
静かに、冷たい瞳を輝かせながらそう呟く。瞬間
「グギャァァァァ!?」
「ゴオォォォォォォ!!!」
「キシャァァァ!?」
地面から突き出た巨大な氷柱が、全ての妖怪を貫き、凍らせた。
その範囲はかなり広く、今回の戦闘では一番目立ったものだった。
あたりに冷たい冷気が漂う。だが俺は火神の張った結界の中にいるので、わからないのだが。まあ外の二人が体を震わせていることから、相当な寒さなのだろう。
「ちょちょ舞花!あんまり周囲の温度下げないでよ……」
「さ、寒い!あーもー我慢できない、狐火っ!」
「……いいじゃないですか。ちょうどいい寒さになりました」
寒さに耐え切れず、清音が目の前に狐火を作り出す。それを見て、美夜も狐火を出す。だがそれでも寒いようで、震えながら必死に耐えようとしていた。
もちろん舞花自身には被害はない。むしろこの状況でかき氷を食べれるほど、彼女の氷耐性は高かった。
……彼女と戦う時はメラ系の魔法が必須だな。
「終わったか……。んじゃ先行くぞ」
俺たちは再び山を登りながら、とうとう山頂にたどり着いた。幸いさっきの戦いで妖怪たちが実力差を理解してくれたので、道中戦闘はなかった。
そしてーーーー
「こ、ここは……?」
山頂の景色。そこに俺は見覚えがあった。
そう、そこはーーーー
かつての俺の前世の家、白咲神社が建っていた場所だった。
~~今日の狂夢『様』~~
「よーすお前ら!今日はちょっと遅れたバレンタインスペシャルだ!そして俺にチョコをくれ!狂夢だ」
「とある人が『昔はよかったな……。この日になると、毎年俺の家の前に女の子の行列ができていたよ』というセリフを影で笑った作者です」
「今回はスペシャルだけど、ゲストは誰がいるんだ?」
「俺だ。……と火神だ」
「……なんだ楼夢か。毎回スペシャルに出てきやがって……」
「うっさい。それに火神もちょくちょく出てんだろ」
「いや、本編にもいつも出てくるお前よりは出番少ないぞ」
「ちっ、主人公ってずるいな。んでこんだけか?」
「いえ、後は女子陣だけです」
「女子陣?……なっ!?」
「お、紫に剛じゃん。お前らも呼ばれたのか?」
「その……楼夢……これ、チョコなんだけど……、よければ受け取ってっ!」
「ほれ、儂もじゃ。それぞれ儂たちの手作りだから、大切に食うのじゃぞ」
「おう、サンキュー!後で食べさせてもらうぜ」
「あのヤロー!抜けがけしやがって!潰すぞ火神!……って火神は?」
「んで、ルーミアどうしたんだ?わざわざ作者たちから離れて」
「そ、その……」
「その?」
「こっ、これ……あげる……。た、たまたま作っただけなんだからね!けっして火神のために作ったんじゃないからね!」ダッ
「……行っちまった。……悪いが俺は巫女服ピンク頭のように鈍くはないんでね、めっちゃバレバレだわ。どこぞのツンデレだよ……」
「あんにゃろー殺す!俺たちを裏切った罪、死してあがなえや!!」
「す、ストップ狂夢さん!そのロケラン下ろせ!今攻撃したら確実にこっちが殺される!」
「それでも俺は、同志たちのために、あいつらを討たなくちゃならねぇんだァァァァァ!!」
……今日もバレンタインは平和です。