東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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名は人を作らない

人の歩いた足跡に刻まれるだけである


by白咲楼夢


神名

楼夢side

 

 

「........平和だねえ、どうも」

 

 

あの宴会から軽く数ヶ月の時が流れた。現在の季節は春である。

あの後、俺は女扱いしてくる神共を吹き飛ばした。余談だが、俺が踊れる理由は元々巫女(男)だった為神事などは得意なのだ。

 

 

俺はそこら中に咲いた桜の花を縁側でごろんと寝転びながら眺めている。

手には勿論“奈落落とし“と団子がそれぞれ握られていた。

 

あれから、特に珍しい事は起きていない。小さい事件なら多々あるもの、珍しいと呼べる物はなかった。

 

 

「楼夢さーん、お客さんですよー!」

 

 

早奈が呼んでいるので、俺は立ち上がり、酒などを片付け始める。

そして片付け終えると同時に居間へと向かった。

 

 

「早奈ー、来てやった........ぞ........?」

 

「あらあら、お久しぶりですね、楼夢」

 

「よっす楼夢。来てやったぞ」

 

 

居間にはなんと大和の主神の天照と須佐之男が座っていた。

おいコラてめえら大和の国はどうした?

 

 

「国なら部下に任せています」

 

「........いいのかそれで」

 

「まあ、暇潰しに来ただけだ。そう警戒するな。それより神力前より増えてねえか?」

 

「してねえよ。........はぁ....めんどい客が来たもんだぜ。後神力が増えたのはお前らを倒したせいで妖怪達の信者が増えたからだと思う」

 

 

これは俺の推測だがな、と俺は付け足しておく。すると天照が何か思い付いたような表情で俺を見つめた。

 

 

「そういえば楼夢は神名とかないんですか?」

 

「神名?んなもん必要あるのか?」

 

「格好だけでも付けておいた方がいいかと」

 

「かと言ってすぐ思い付くかよ」

 

「んじゃ今から考えようぜ」

 

「「「それ賛成!!」」」

 

 

突然扉が開き中から丁度いいタイミングで神奈子、諏訪子、早奈が飛び出して来る。というか盗み聞きしてんじゃねえよ。

 

 

「というわけで良い名前があったらすぐに言ってください」

 

 

天照が微笑みながら言う。だが、その目からは彼女が遊び半分である事が分かった。いや、恐らく天照だけではなく俺以外の全員が遊び半分なのだろう。........一言言わせてくれ........

 

 

 

ーーどうしてこうなった?

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「うーん、イマイチしっくり来ないですね」

 

「こんなのどう?『女垂らしクソ野郎』」

 

「却下に決まってんだろうが!!ていうかてめえらはなんでそういう系の名前ばっかしか考えられねえんだよゴミクズ共ォ!!」

 

 

そう、今まで出てきたのは全部『桃髪男の娘』とか『女落とし』などの巫山戯た名前しかない。若干俺の心が傷ついているが、あいつらはお構いなしに傷跡を抉ってくる。

 

 

「え、楼夢は気付いてないのか?今のお前は縁結びの神として人間達に信仰されているんだぞ」

 

「は!?何だよそれ!誰の仕業だ!!」

 

「あの宴会の後楼夢は色々な神々に何十回以上も求婚されたでしょ?それを聞いた一部の人間達が楼夢のことを縁結びの神様と勘違いしたらしいよ。その噂が広まって、現在ってわけ」

 

「通りで最近神力がやけに増えるわけだ。ていうか俺を信仰して何の利益があるんだよ........」

 

 

俺はハァっとため息をついた。取り敢えず諏訪子とかは期待してはいけない為、俺が考える事になった。が、俺に良いアイディアなど無く、しばらくの間静寂が部屋を支配した。その時

 

 

「閃いた!!」

 

 

早奈が大きな声を出して叫んだのだ。そういえば早奈はまだ一回も案を出していない。俺は早奈に微かな期待を抱いた。

 

 

「『産霊桃神美(ムスヒノトガミ)』と言うのはどうでしょうか?」

 

「名前の意味は何だ?」

 

「楼夢さんは縁結びの神様なので結びと掛けて産霊(ムスヒ)にしました。意味は万物を生み出す神と言う意味です。つまり、これは楼夢さんの能力を指しています。

そして桃神美は楼夢さんの外見の事ですね。つまり桃色の髪を持った美しい神と言う意味です」

 

「いいね、流石私の子だ。それで楼夢はどうなの?」

 

 

諏訪子が早奈を撫でながら俺に問う。私的には今までの中で最もまともだったので良しとしよう。

 

 

「異議なし。まあ、今日から神としてはこの名を名乗ろう」

 

「ふむ、なんとか終わったわね」

 

 

神奈子はそう言うと欠伸をした。流石に疲れたのだろう。

 

 

「ああ、そういえば一つ言ってなかったな。俺はもうそろそろ旅に出る」

 

 

この言葉に俺以外の全員が目を見開いた。まあ、突然言えばこうなるか。

 

 

「........納得行かないって顔だな」

 

「当たり前だよ。急にどうしたの?もしかして此処での生活が嫌になったの?」

 

「嫌になったわけじゃない。ただ、俺は神であると同時に妖怪でもある。それがバレたらお前らの立場が危ないだろ?それにそろそろ旅を再開したいと思っていたからな」

 

 

「........分かった。そこまで言うなら引き止めはしないよ」

 

 

多くの者が諏訪子の意見に賛成のようだ。だが、その中で一人だけ反対する者がいた。

 

 

「私は........反対です!」

 

 

それは早奈だった。彼女は息を荒げて叫んだ。

 

 

「私は楼夢さんと一緒にいたいです!楼夢さんがいなければ前回の戦争で私は助かりませんでした!楼夢さんがいなければ........うぅ、うわぁぁぁぁん!!」

 

「ちょっ泣くな早奈!?一応俺はあと一年ぐらいは此処にいるつもりだ!!」

 

 

俺がそのことを伝えると早奈はすぐに泣き止んだ。ただその顔はトマトのように真っ赤に染まっていた。

隣を見れば諏訪子達がニヤニヤしながら俺と早奈を見ていた。

 

 

「良かったね~早奈。愛しの王子様が出て行かなくて」

 

 

その言葉を聞くと、早奈は遂に耐えきれなくなり勢いよく居間から走り去った。

 

 

「もう諏訪子様なんて知りません!!」

 

「あちゃ~どうやら怒らせちゃったみたいだね」

 

「だけど楼夢。もし早奈があんたに告白した時あんたはどうするんだい?」

 

 

神奈子の問いに俺はしばらく考え込む。そして再び口を開いた。

 

 

「いくら情があれど俺は妖怪。そして早奈は人間だ。超えてはいけない一線を踏み越せば彼女に害が及ぶ」

 

「........分かってるならそれで良い」

 

 

その後、俺達はしばらく話し合った所で解散となった。

 

俺は先程神奈子に言われた事を思い出した。

 

 

「人間と........妖怪の差か........」

 

 

俺は神社の屋根まで飛んだ後、そのまま仰向けになって星空を見上げた。

 

 

俺は夜の星空が好きだ。闇の中でも無数に輝く星は、まるで人間達のそれぞれの思いを描いているようで綺麗だからだ。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「フフーン、気持ちいい~」

 

 

現在俺は風呂に入っている。守矢神社の風呂は普通より大きいので此処は俺の好きな場所の一つとなっていた。

 

俺は肩まで湯に浸かる。すると溶け込むかのように身体から力が抜けていった。

 

その時、風呂場の扉が勢いよく開かれた。そしてそこからーーーー

 

 

「お背中お流しします!!」

 

 

ーーーー早奈がタオルを胸の高さまで巻いて飛び出して来た。........マジかよ........。

 

 

「えーと、早奈。状況が理解出来てないんだけど」

 

「だからお背中流しに来ました」

 

「いやいや何故そうなった?」

 

「お昼の仕返しです。大人しくしてください」

 

「何故昼の仕返しが背中を流すことなんだ?」

 

「はい、流しますよー」

 

「聞けやゴラ」

 

 

俺の話を無視して早奈は俺の背中を流す。彼女の顔をこっそり覗いてみると、その顔は少し真っ赤に染まっていた。恐らくは恥ずかしいのだろう。

 

無理もない。早奈は元々胸が大きいのに、そこへタオル一枚となるとそういう物に興味がない俺でも自然と目が行ってしまう。これが俺じゃなくて普通の男だったら問答無用で襲っていただろう。

 

 

「あれ、楼夢さんの右腕に描かれた紋章みたいな物は何ですか?」

 

 

そう言って早奈は俺の右腕を凝視する。何時もは袖で隠されて見えないが、俺の右腕には入れ墨で描かれた紋章が刻まれている。形は花にも、見方を変えれば太陽のようにも見える形をしている。

 

 

「俺の家系は全員この紋章を刻まれるんだよ。まあ、その者によって変わるけどな」

 

 

もうこの際説明してしまおう。俺の右腕の紋章。これは“白塗の紋章“だ。

俺の家系では“一閃“になった時に初めて紋章を刻まれる。だが、その時の紋章は未完成だ。

その後は、階級が上がる事に少しずつ付け足されて行くのだ。

 

俺は白塗なのでこの紋章は既に完成されている。まあ、紋章の話はここまでにしよう。

 

 

「へえー、楼夢さんにも家族っていたんですね」

 

「........今はもういないけどな」

 

「........なんだか嫌な事を思い出させちゃったみたいですね」

 

「いや、大丈夫だ。そんなことよりさっさと背中流してくれ」

 

 

早奈はすぐに俺の背中を流す。うむ、意外と気持ちいい。

 

 

「楼夢さんの髪って長いから背中流す時に邪魔ですね」

 

「切ろうと思っても切れないのは知ってんだろ。........聞いてんのか?」

 

 

俺は早奈の方に振り返ると俺の髪を犬のように嗅いでる早奈の姿があった。

その顔は先程よりも赤くなっており息も荒い。

 

 

「ちょ、おま、何やってんだよ!?」

 

「だって~、楼夢さんの髪を嗅ぐと身体が熱くなるんだもん~」

 

「俺の髪は媚薬か何かか!?」

 

 

早奈は立ち上がり一気に俺との距離を詰める。そしてあろうことか自分に巻いてあるタオルを脱ぎ始めたのだ。

 

 

「ほらぁ~楼夢さんのせいで下の方もグチョグチョですよ。責任取ってくれますよね?」

 

「え、ちょ、何するつもり!?」

 

「それは始まってからのお☆た☆の☆死☆み☆ですよ」

 

「や、やめてェェェェェェェェェ!!!」

 

 

 

 

ーーこの後、殺る気満々の早奈を諏訪子と神奈子がなんとか止めたそうな........

 

 

 

 

 

 


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