東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
「む、
魔理沙は驚愕で震える口からそんな言葉を絞り出した。他のやつらも俺の名乗りを聞いて唖然としている。
だが、もうそんなことは関係なしだ。こうなった以上は派手に暴れてやる。
「さーて、改めて自己紹介が終わったところで選べよ。即死か安楽死、どっちがお好みだ?」
「ふ……っ、ふふふっ……! 最高よっ、あの伝説の大妖怪と遊べるなんて……!」
「はぁ……どっちも選べなかったってことで、特別に限界まで苦しませたうえで殺してやるよ」
「そういうのは、これを受けてから言いなさい! 『気炎万丈の剣』ッ!!」
天子は接近し、炎を纏った剣を連続で繰り出してきた。
だが、遅い。
ほとんど棒立ちの状態のまま、俺はその全てを素手で受け流した。
「なっ……!?」
「剣をそらすのに力はいらねぇ。側面を正確に叩けばいいだけだ」
「ちっ……まだまだぁ! 『非想非非想の剣』ッ!!」
「……だから、無駄だって言ってんだよ」
今度はさらに威力がありそうな斬撃が振るわれた。しかしそれが当たるかどうかは別問題。ギリギリまで引きつけたうえで俺は彼女の背後に一瞬で回り込み、回避した。
「ど、どこに……っ!?」
先ほどまで目の前にいた人物が急に消えたことに驚く天子。
その隙に頭部めがけて凄まじい速度で拳を叩き込む。前後左右斜め合わせての八方からほぼ同時に。
その結果、吊るされた鐘のように頭部が小刻みに震えた。そして脳震盪を起こしたのか、彼女はその場に膝から崩れ落ちたのちにピクリとも動かなくなった。
「な……っ、にが……っ!?」
「理解できたか? これが圧倒的な実力差ってやつだクソ野郎」
空き缶を蹴るような感覚で繰り出された蹴りが彼女の鼻っ面をへし折る。口や鼻から血を噴き出させて表現通り空き缶のように石畳の上を転がっていくが、それで終わりじゃぁねぇんだよ。
先回りし、仰向けになって浮き出た彼女の顔面を踏み潰す。
「テメェのせいでよぉっ! 俺の孫が泣いてよぉっ! こっちは胸糞悪くてしょうがねぇんだっ! どう責任とってくれるんだああんっ!?」
感情のままに潰された彼女の顔を蹴り、踏み、蹴り続ける。
そのたびに小汚いペンキが出来の悪い噴水みたいに噴き出してくるがお構いなしだ。赤に染まったブーツをそのまま彼女に叩きつける。
その残酷な光景は見る者全ての体を凍りつかせた。
最初は天子も手を伸ばして助けを求めていたが、氷の彫刻たちは当然動くことなどできない。そのままなぶられ続けること数分、彼女が寝ていた場所が血の池になったころくらいになると、天子は伸ばしていた腕をぐったりとさせ、無反応になっていた。
「あ……ぁぁ……ッ!」
「うーし、ようやく大人しくなったか。じゃあこっち向いてはい注目ー!」
血の匂いが漂う中、場違いにもほどがあるほど明るい声で彼女に手を振る。だが案の定反応はなかったので蹴飛ばして無理矢理意識を戻してやった。
「実はよぉ。俺、始めてお前と会う前に天界の真下に魔法陣を設置してたんだよ。いやー衣玖ちゃんがあまりにも強かったから大慌てで作ったんだよなー。で、困ったことに、それを俺消し忘れてちゃってたのよ」
今のセリフを聞いて復興式を見に来てた衣玖の顔が真っ青に染め上がる。どうやらこれから俺が何をするつもりなのか理解してしまったらしい。
俺はぐちゃりと口を三日月に歪めると、話を続ける。
「話は変わるが、お前は霊夢の帰るべき場所を一度とならず二度も壊したんだろ? じゃあ俺もそれ相応の報いを受けさせなきゃなぁ」
「ま……さか……! やめ……っ!」
「——『
そう唱えた瞬間、山全体を飲み込む規模の光の柱が突如妖怪の山から出現した。それはほぼ一瞬でここからじゃ見えないところ——天空まで登ると、やがて役目を終えたのか地上の方から消えていった。
「今ので比那名居家の屋敷と、その所有する土地全てを
「……はっ……? いま、なんて……?」
「だーかーらー。
その言葉を聞いて、無反応になっていた天子の体が小刻みに震え始める。
紫は今のを確かめようと天界へとスキマをつなげる。そして覗いた時、目の前に広がっていた光景を見て思わず口を押さえた。
「な、なくなってる……。天界がなくなってる……っ!」
あーあ。紫の様子じゃ、思ったよりも比那名居家が所有する土地が広かったらしい。俺の方もスキマを開いて確認してみたが、天界の領土の三分の一くらいが消し飛んで残った大地が無数の
紫の無慈悲な現実を告げる声を聞いて、天子が真っ青を通り越して死人のような顔になる。
「嘘……うそよ……っ。そんなの……!」
「はっはっは! こりゃ笑えねぇなぁ! おい見てみろって! 最っ高にアートな景色が出来上がってんぜぇ!」
「い、いや……いやァァァァァァッ!!!」
髪を引っ張って視線を無理やりあげ、親切に綺麗にバルスされたラピュタを見せてあげる。すると興奮したのか、甲高い声を上げて喜びを表現し出した。
「おーおー、いい声で鳴くじゃねえか。好みだぜぇ!」
掴んだ髪ごと彼女をゴミのように地面に放り投げる。
冷たい石畳の上に寝かされた彼女はまるで芋虫のように地を這い、神社から脱出しようとする。しかし伸ばした手は境内から出る直前に、空から降って来た半透明な壁によって阻まれた。
希望が一転して絶望に変わる。
「こんな……こんなのって……」
「バカが。呑気に脱出させると思ってたのか? テメェが隅っこにたどり着くのを待ってたに決まってんだろうがぁ!」
「……ぁ、ぁぁっ、ぁぁあああああああああッ!!!」
もはや思考すら捨て去ったらしい。
天子は恐怖をかき消すために獣のような咆哮をあげると、血が滲むほど強く握りしめた剣をむちゃくちゃに振るいながら突っ込んでくる。
とうとう剣術すら地に落ちたか……。こうしてみると実に哀れなものだ。
舞姫を抜刀。そして鞘に納める。
はたから見れば何も斬っていなかったように見えるだろう。
だが次の瞬間、数百を超える斬撃の突風が発生し、天子の背後に並ぶ木々や辺りの石畳がサイコロステーキのように細かくスライスされて崩れた。
「ぁ……ぁぁ……っ」
「おー良かったなぁそれ以上前に進まなくて。止まってなかったら今ごろミンチだったぜ」
一振りの間に数百もの斬撃を突風のように飛ばすこの技。せっかくだから『白疾風』と名付けよう。
そんなどうでもいいことを考えながら天子の目の前まで歩み寄る。彼女は腰を抜かしたのか、恐怖で動けないのか、はたまた両方なのか、手が触れる距離にまで近づいたにも関わらず自我亡失していた。
そんなこと切れた人形を前にして、右手をかざす。そして手のひらに膨大な妖力によって発生した光を集中させた。
「や……やめ……て……っ!」
「それが辞世の句ってことでいいんだな? 安心しろ。遺言はきっちりテメェのご家族の元に伝えてやるよ。……ああ、そういえばついさっき死んでたんだっけか。参ったなぁ」
「こ……っ、ころ……っ、す……っ!」
「……その言葉が聞きたかった」
彼女の腹部に掌底を打ち込み、そのまま手のひらの光を彼女に押し当てる。
「そんじゃあばよゴミクズ野郎。地獄を楽しめよ」
そして溜まりに溜まったエネルギーを一気に解放し、そこから目も開けられないほど眩しくて巨大な閃光を放った。
それは天子の体をやすやすと呑み込み、張ってあった結界を突き破って——遥か彼方の山を消滅させることで消え去った。
♦︎
博麗神社の復興式は誰もが予想できなかった形で終わった。
本殿は倒壊。おまけに境内は残骸やら血やら斬撃やらの跡で大変ボロボロになっている。だがさすがに今日からすぐに再建を目指す……というやる気は湧いてはこなかった。
ということなので。
月が輝く夜の下。
慣れしたんだ我が家、白咲神社本殿。広大な庭と巨大な屋敷をいつも手に余らせていたのだが、今日はかつてないほどの喧騒が響き渡っている。
理由は簡単、俺が白咲神社でお詫びもかねて宴会を開いたからだ。復興式に参加していたメンバー全員が来ているので見たこともないほど神社が賑わっている。
そんな表の喧騒を耳にしながら縁側にて寝転がる。
普段ならこういう宴会の時には霊夢に話しかけに行ったりもするのだが、今は必要ない。なぜならその霊夢本人が隣に座っているのだから。
「はぁ……今日はなんか疲れたわ」
「まああれだけのことがあったんだ。疲れてないって方が怖い」
「でもお前は疲れてるようには見えないんだぜ」
「それは俺が妖怪だからだ。基本スペックが違うんだよ基本スペックが」
霊夢の隣にさらに座っていた魔理沙がそう問いかけてきたので、適当に答えといてやった。
そして手に持つ盃の上に月を浮かべると、それごと呑むように酒を口の中に入れる。霊夢はそんな俺の顔をずっと見ていた。
「……ん? どうしたんだ霊夢?」
「いえ、あなたってやっぱ楼夢なのよねって思っただけ」
「……ま、そう思っても仕方ない。なんせお前らが知ってる方とはキャラが違いすぎるもんな」
「というか男なのによくあんなに子供っぽく振る舞えたのね。ちょっと軽蔑するわ」
「あれは一時的に精神が幼くなってるだけだ。だからそんな目で見るんじゃない」
はぁ……毎度のことながら幼体化を解くと精神が一気に成長するから、自分の行いが恥ずかしくなって仕方がない。特に最近のことで一番きてるのは衣玖に対しての発言だ。
なにが風俗店で働かせてあげるだよ。テメェが犯されてろこのゴミクズ野郎が。ほんと、なんであんなセリフ言ったのかがマジでわからない。それでも謝ったら許してくれるのだから衣玖は良いやつだ。俺だったら半殺しにして山に埋めてたな。
「ハロー、そこの三人組。宴会は楽しんでるかしら?」
「なに主催者ぶってんだよ紫。それは俺のセリフだろうが」
しばらく飲んでいると、俺たちの前にスキマが開いて紫が中から登場してくる。彼女はそのまま上機嫌に霊夢が座ってない方の俺のとなりに座った。そして俺の腕に抱きついてくる。
「おい、ちょっ、放せっ。霊夢がいるんだぞっ」
「なによぉ……楼夢は私より霊夢がいいって言うのぉ!?」
「くそっ、さてはこいつ酔ってやがんな!?」
「え、なに、あんたら……もしかしてそういう関係だったの?」
「誤解だからな霊夢!」
紫は別に酒に弱くはないはずなんだがな。むしろ強い方のはずだ。ならこんなにベロンベロンになってるのには理由があるはず……。
そう思い本殿前に目を凝らすと、視界の端で他の妖怪たちに酒を配ってる萃香の姿があった。
あいつが原因か……!
「そもそもぉ……なんで霊夢は良くて私はダメなのよぉ!」
「いや別にダメとは……」
「あ、一応言っとくけど私あんたとのお付き合いなんてお断りだから。変態が移りそうで嫌だし」
「即刻否定!?」
ゴハッ!!
俺のハートからパキンという音が聞こえてきた。
「って、違う! 俺はあくまで孫としてお前のことを……」
「……孫?」
「あっ……」
しまった、失言だった。
金属製の針のように冷たくて鋭い視線が俺を張り付けにする。まるで逃がさないとでも言わんばかりに。
「今の言葉、詳しく説明してもらうわよ」
「あ、はい……」
結局、俺は彼女の迫力に負けて、なぜ俺が今まで霊夢に関わってきたのかを白状した。
「はーいどうも久しぶり! 作者です!」
「最近このあとがきコーナーも書くことがなくなってきたからな……。本格的に俺の出番がなくなって来そうです心配な狂夢だ」
「ついに楼夢さんの正体がバレてしまいましたね」
「俺としては楼夢なんかよりも今回の天子の扱いが気になるんだが。あんなにボコボコにして大丈夫なのか?」
「前にあとがきに書いたと思いますが、作者は東方の中で嫌いなキャラはいません! だから作者が個人的に嫌いだからこんな描写にしたというわけではありませんので、どうかご了承ください! というか、どちらかというと私天子ってけっこう好みな方です!」
「まああれか。ストーリーの展開上仕方なくってやつだな」
「そうでもしないと楼夢さんが怒る理由がありませんからね。というわけで今回はここまでです。次回もお楽しみに」