東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
「土着神『手長足長さま』ってね」
そう言った瞬間、諏訪子の両手両足の先に光が集まる。
それは人一人潰せるぐらいの大きさの手や足の形になると、美夜を捻り潰さんとかなりの速度で伸びて来た。
美夜は思いっきり横へ飛んで回避を試みる。が、そんな彼女のほおを弾幕がかすった。
見れば諏訪子は光の手足を操作しながらも、移動の妨害になるように辺りに弾幕を散りばめている。これによって美夜は大きく動き回ることがしづらくなってしまった。
迫り来る両足を避け、左手を刀で弾いたがそれが限界だった。思ったよりも質量があってバランスを崩したところで刀ごと残った右手が美夜に覆いかぶさる。
しかしその時、美夜の刀が黄色に輝いた。
「霊刃『森羅万象斬』っ!」
ゼロ距離からの森羅万象斬を受け、右手は手首にかけてから先までもが消し飛んだ。そして手の中から脱出すると、美夜は今度その右腕の上に乗り、諏訪子めがけて走る。
当然そんなことを許す諏訪子ではない。先のなくなった光の右腕を思いっきりぶん回し、美夜をふるい落とそうとする。が、その振動が伝わる前に美夜は諏訪子の真上に飛び移っていた。
天へと掲げられた刀には再び黄色の光が宿っている。
二つ目の森羅万象斬。
とっさに諏訪子は光でできた両足を目の前でクロスさせ、斬撃を受け止めようとする。結果的にそれは成功したが、両足は真ん中辺りから先が切り落とされていた。
完全に無防備となった諏訪子。
とどめを刺すべく、落下しながらもう一度刀を振り上げようとする。
が、そうは上手くいかず。
怪しげな笑みを浮かべながら、諏訪子が口を開いた。
「言ってなかったけど、この両手両足って再生するんだよね」
その声とともに両足の切断面から先が生え、再生しながら美夜を襲った。
彼女は刀を掲げるのを中止し、大急ぎでそれを眼前に構える。そしてその数秒後、彼女に凄まじい衝撃が襲いかかった。
それを吸収できずに美夜は弾かれるように後方へ吹き飛ばされる。が、空中で何かが背中にぶつかり、その場に押しとどめられた。
「ふぅ、危なかった……へっ?」
幸運だと思いながら後ろを振り返る。だがそこで自分を受け止めたものの正体を知り、思考が一瞬停止してしまった。
彼女の視界に映ったのは巨大な右手。そう、
「さーて、これでワンヒットかな?」
そこから先は言うまでもなかった。
右手が美夜を握りつぶし、ある一定の力が込められたところで手が爆発を起こした。
「ぐあああああっ!!」
当然中にいた美夜は避けることができず、爆風をもろに受けてしまう。
幸い諏訪子からの追撃が来ることはなかった。しかしそのかわり時間を与えてしまった。次のスペルカードを作るための時間を。
「うーん、次はこれかな? 神具『洩矢の鉄の輪』」
光り輝きながら誕生した新たなスペカが早速唱えられる。
すると諏訪子の両手にチャクラムにも似た鉄の輪が出現する。それを彼女は思いっきり美夜へと投げつけた。
だがしかし、その程度の攻撃が美夜に当たるはずもない。
二つの鉄の輪は美夜の刀とぶつかると甲高い音を立て、全く見当違いの方向へ弾かれた。
だが鉄の輪はしばらくすると進む向きを緩やかに変えて、再び美夜を襲った。
「なっ……!?」
「ほーらほーら。鉄の輪はまだまだあるよっ!」
それらを防いでる間に鉄の輪は追加され、計4つの輪が美夜を追うことになる。そして同じようなことを繰り返しているうちに、いつのまにか鉄の輪の数は十数個にも増えていた。
このままじゃラチがあかない。
美夜はそう判断すると腹をくくり、一気に諏訪子の元へと一直線に飛んでいった。
だがそう出ることは諏訪子も予想済みだった。二つの輪をすぐには投げず、美夜の刃を受け止めるために出現させ、構える。
「楼華閃『雷光一閃——」
美夜は一度納刀すると、鞘の中で刀身に電流を纏わせる。
『雷光一閃』。雷を纏った高速の抜刀切り。楼夢が最も多用する技の一つ。
もちろん諏訪子も見たことがあった。そのため美夜の動きは完璧に読まれており、ベストなタイミングで諏訪子は両手に持つ輪っかを交差させて防御の姿勢をとる。
しかしこの後、美夜が続けて言った言葉にギョッとした。
「——突き』ッ!」
通常の雷光一閃が横薙ぎの斬撃に対して今美夜が放ったのは一直線の斬撃。
その接触面積は当然のことながら通常のものよりも小さく、輪っかなんかで受け止めることは難しい。
そして完全に読みが外れた諏訪子の鉄の輪の間をすり抜け、雷の刃が彼女を貫いた。
「ぐくぅぅぅ……ッ! やるねぇ、結構痺れたよ……!」
「手加減はもちろんしてあるのでご安心を。痛いのなら降参してもいいんですよ?」
「冗談を。ここまでやってやめるわけないじゃん!」
諏訪子はまたスペルカードに神力を込めて掲げ始める。だがそのカードはまだ白紙だ。
わざわざそれが完成するのを待ってやるほど美夜はできた性格の持ち主じゃない。少なくともここ戦場では。
白紙のカードごと切り裂く勢いで美夜は霊力で固められた斬撃を飛ばす。しかしそれはどこからともなく突然現れた岩の盾によって防がれてしまった。
おそらくこうなることを警戒して事前に術式を組んでいたのだろう。
だがまだだ。
カードを投げ捨て、美夜は刀を振りかぶりながら叫ぶ。
「楼華閃『氷結乱舞』ッ!」
氷を纏った刀を美夜は岩の盾に叩きつけた。それでも岩は壊れることはなく、刃は止められてしまったがこれで終わりではない。
表面を滑るような軌道を描きながら再び刃が振るわれる。それも一度だけではなく、何度もだ。
その連撃に岩は耐えきれず、六回目の斬撃を受けた時に諏訪子を守っていた盾は粉々に砕け散った。
そしてその奥に見えたのは。
諏訪子が美しい絵面が浮かび上がったカードを空に掲げている姿だった。
出来上がったばっかりのそれを投げ捨てて諏訪子は四枚目のスペカを発動させる。
「土着神『ケロちゃん風雨に負けず』!」
突如空から弾幕が降り注ぐ。
水色という外観も相まって、それはまるで雨のようであった。いや弾幕の数からして雨という表現は正しくはないだろう。豪雨と言った方が正解か。
だがそんなものが上から降ってきたとわかっても、氷結乱舞の最後の斬撃のモーションに入ってしまっている美夜は止まることなどできない。できるとしたらただ刀をこのまま振り切ることだけだ。
そして斬撃が諏訪子に当たるのと、弾幕の雨が美夜に降り注いだのはほぼ同時だった。
二人はそれぞれのスペカを受けて吹き飛ばされる。
なんとか態勢を美夜は立て直したが、諏訪子を追撃しに行く体力はもう残ってはいなかった。ところどころが焦げて肌が露出してしまっている着物を翻し、ただただ向こうの攻撃に備えるために刀を構えるので精一杯だった。
それは諏訪子にも言えたことだろう。
幻想郷に来て神力が回復してきたとはいえまだ一日も経っていない。完全とは程遠い状態だろう。
そんな体で弾幕ごっことはいえダメージを受けたのだ。神力の消耗は激しく、もはや十分に体を動かせなくなってしまっている。
「や、やばいかもこりゃ……っ。久しぶりに張り切り過ぎちゃって、完全に引き際を見誤ったね……」
「どうっ、しますか……? 私も体が痛いので、そろそろやめたいのですが……」
「はははっ、そりゃないよ。ただ流石にもう動くことはできなさそうだしね。次で終わりにさせてもらうね」
諏訪子は今までと同じように白紙のカードを掲げ、神力を込め始める。
今度は美夜は妨害することはなかった。それだけの体力がもうないからだ。
代わりに愛刀の柄を両手で力強く握ると、諏訪子と同じように刃に妖力を込める。
「——崇符『ミシャグジさま』!」
「——楼華閃『桃色桜吹雪』!」
諏訪子から出た巨大な白蛇と、美夜の刀から繰り出された斬撃の桜吹雪が衝突する。
白蛇が目の前の花びらに噛みつき絡みつき、桜たちがその鱗に纏わり付いて切傷を負わせていく。
二つの大技は最初は均衡していたが、徐々に白蛇が桜吹雪を推していくのが二人にはわかった。
そしてそれを見て諏訪子は笑みを。美夜は——同じように、不敵な笑みを浮かべていた。
「『桃色桜吹雪』は確かに完成度の高い技です。ですが生物に進化があるように、どんな技だって工夫次第で強化することができるんですよ。——こんな風に」
美夜は刀に再び妖力を込める。すると火花が散り、刀身がまばゆい光とともにスパークした。
その色は黄色を超えて黄金に。
黄金の雷が、美夜の黒刀に宿った。
美夜は黄金の刃を天高く掲げる。するとそれに呼応するかのようにいくつにも枝分かれした電撃が放たれ、斬撃の桜吹雪に命中。すると桜の花びらの一枚一枚が電流を纏い、あっという間に白蛇を押し戻した。
「名付けて——『
白蛇は黄金の桜吹雪に呑み込まれ、バラバラに分解された。
そして桜吹雪は次の獲物——諏訪子に向かって飛んでいく。
彼女は動かなかった。いや驚きのあまり動けなかったが正しいか。
その呆けた表情ごと桜吹雪は彼女を呑み込み、最後の残機を切り裂いた。
「龍が如く0達成目録100%到達! これでしばらくは小説に専念できそうです。作者です」
「残念ながらしばらくはまだ無理だな。連休明けでテストがあるんだし、さっさと勉強しろや。狂夢だ」
「ふぅ、やっと諏訪子戦終わりましたよ」
「今回は結構短いんだな」
「まあ戦闘パートだけだったらこんなもんですよ。前期とかのマジ戦闘パートだったらもっと長くなるんでしょうけどね」
「あれ酷い場合は戦闘だけで10000文字超えるもんな」
「その分描写は楽なんですけどね。弾幕ごっこの方が正直表現するの難しいです。全部遠距離攻撃だから似たような文になりやすいですし」
「そういえば諏訪子のスペカの描写ってけっこう原作と違ってたよな。手長足長もそうだが、本当のミシャグジ様は緑色の弾幕が延々と続くだけだしな」
「さすがにそのまま出したら印象が薄れますよあれは。それにラストの技が緑色の弾幕を大量に出すだけってのも味気ないと思っての変更でした」
「まあスペカの描写変更なんてもう何回もやってるから今さらなんだがな。もう弾幕ごっこやめたらどうだ? 正直お前遠距離戦ってただ書きづらいだけだろ」
「大丈夫ですよ。風神録が終わったら次はあれですからね。しばらくは久々の近距離戦が書けそうです」
「……そうか。もうそこまでいったのか。こりゃ今年こそ本当に最終回が来そうだな」
「来ればいいんですけどね。なんとなくこの作品も終わりに近づいてると思うと少ししんみりとしてしまいます」
「……最終回までに俺の出番ってあるよな?」
「……では次回もお楽しみに! それじゃあ!」
「おい答えろ作者ァ! ふざけるなァ!」