東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
「罪符『彷徨える大罪』」
突如弾幕が円を描くようにしてばら撒かれる。
それを掻い潜りながら、私は静かに舞姫を抜刀した。
普段ならこの弾幕ごっこを楽しみたいけど、さすがに悪条件すぎるからね。付き合ってられっか。
持ち前のスピードと機動力でぐんぐん四季ちゃんに近づいていく。そして刀が届く距離に入ると、私はためらいなくそれを振るった。
もちろんこれは当てるつもりがなく、四季ちゃんの前をギリギリ通過するように調整されている。しかし刀から弾幕を放つことは禁止されていないので、結果的にゼロ距離被弾になろうとルール違反にはならない。
本当は霊夢みたいななりふり構っていないと喰らいつけないようなやつと戦う時以外は禁止しているんだけど……。
しかし四季ちゃんは恐ろしいことに、涼しげな顔で前に一歩踏み出してきやがった。
この野郎、当たりどころ悪ければ死ぬのが弾幕ごっこなんだぞ! なんて命知らずな行動取ってきやがる!
しかしそうは言っても、このまま振り切れば確実に刀が彼女を切り裂いてしまう。それだけは絶対にダメなので、仕方なく私は刃の軌道を逸らすと、大きく後ろへ飛び退いた。
そしてそれは正解だったようで、一拍遅れて弾幕が四季ちゃんの目の前に展開される。あのままあそこにとどまっていたら、被弾の一つはしていたかもね。
「あなたは早く決着をつけたくて普段使わない手を使ったのでしょうけど、無駄ですよ。私は地獄に生きる者。生への渇望もなければ死への恐怖もない。いえ、死などは存在しない。故に、あなたの刃を体で受け止めることにためらいはありません」
まあ言っちゃえば四季ちゃんも神様の一種だ。だからこそ肉体が消滅しても蘇ることができる。唯一の違いは、地獄の連中は神奈子や諏訪子とかの純粋な神と違って、信仰が消える可能性が限りなく低い、ということぐらいか。
なんせ地獄という思想は昔からどこの国でも存在するものだ。それは今でも変わらないし、今後も変わっていくことはない。
それにしても、いざ私が霊夢用に考えた策をこうも簡単に破られるとちょっとショックだね。
まあ今の突撃で一枚目のスペカは見切った。ここから反撃といかせてもらおうか。
「氷華『フロストブロソム』」
まずはこちらもスペルカードだ。
氷の薔薇を四季ちゃんの真下に出現させ、破裂させていく。
そして彼女のスペカ対策なんだけど……あのスペルには致命的な弱点がある。
それは弾幕をコンパスのように円を描きながらばらまく際、中心点となる部分に光でできた花が一瞬だけ浮かび上がることだ。おそらくは座標指定とかそういうの目的であれはあるのだろう。
しかし、敵に見破られてちゃ意味がない。光の花が咲いた場所から離れるだけで、私は難なく弾幕を避け続けることに成功した。
しかし、私のスペカもさほど役には立ってないようだね。
舞い散る薔薇の花弁が余裕の表情のまま避けられていく。これは、お互い決定打に欠けてるね。
結局、二つのスペカはその後はなんの成果も得ることなく消えていった。
さすがは地獄の最高裁判長。見た目からは信じられないほどの戦闘力である。……私が言えたことじゃないが。
「嘘言『タン・オブ・ウルフ』」
「通常弾幕の差し合いもなしに二枚目とは無粋だねっ!」
くそったれ。こうもセオリーを無視されちゃやりにくったらありゃしない。考えなしのバカとは違って、今は畳み掛けたほうが良いという判断からの行動。四季ちゃんのやつめ、なんていやらしんだ。
二枚目のスペカを一言で表すなら、弾幕の檻だ。
超高速で青色の弾幕が、四季ちゃんを中心に大量に放たれる。
それらを避けるのは簡単だ。観察してみてわかったんだけど、なんせこの弾幕、ランダム制じゃないのだ。つまりは固定砲台。私の動きに合わせて銃口が調整されるわけでもなく、ただ銃口が向く場所めがけてにしか、弾幕は飛んでいかない。
銃口と銃口の間の安全地帯と言える場所に入り込む。いや、誘導されたと言った方がいいか。
たしかに、ここにいれば青の弾幕は当たることはない。しかし逆に言えば、前後左右に弾幕が飛び交っているため、動くこともできない。
まさに弾幕の檻。
そうして身動きが取れなくなった私めがけて——赤の弾幕が、スナイパーライフルの弾丸のように飛んでくる。
「のわっ!?」
刀をとっさに縦にして、体の前に構える。
次の瞬間、脱臼しそうなほどの衝撃が前から加わってきた。
あまりの威力に吹き飛ばされそうになりながらも、なんとか空気を固めた足場で踏ん張って耐える。
ここはさっきも言った通り身動き一つすら取ることが困難な檻の中だ。体が流されれば、たちまち被弾してしまう。
スペルカードで応戦しようにも、手札じゃ今の状況をどれも突破できないことだろう。
『狐火鬼火』と『プリズムプリズン』は論外。使い勝手のいい『森羅万象斬』ならこの弾幕の檻も消し去ることができるだろうけど、それも一瞬だ。どうせまた同じように復元されてしまう。『空拳』も同じようなもんだ。『ドラゴニックサンダーツリー』じゃそもそも質量負けしちゃうからな。かと言って切り札の『大紅蓮飛翔昇竜撃』をこんな序盤で使うわけにはいかない。
はっきりと今ここでできることは何もないってわかるんだね。
「ぐぅっ!」
赤の弾幕は二度目、三度目と私を襲ってくる。
その度に私は刀で馬鹿正直に受け止めているんだけど、それも限界が近いわこれ。
そもそもフランみたいな馬鹿力があるならともかく、私の腕力はごく一般並みだ。体重も見た目通り軽いので、どう考えてもこう真っ向から相手の攻撃を受け止めるのには向いていない。いや、この際言えば苦手も同然だ。
「ガッ……!」
六回目ぐらいか。とうとう私が耐えきれなくなり、体が後方へ吹っ飛んでしまう。そして弾幕の鉄格子に背中をぶつけてしまった。
そこでようやく四季ちゃんのスペカが終了し、私は空気の床に大量の汗とともに思わず膝をつく。
やばい、身体中の筋肉がガタガタ言っちゃってる。服も衝撃波で一部ボロボロだし、はっきり言ってこの弾幕ごっこ中に回避能力とかに影響が出るのは間違いないだろう。
四季ちゃんはおそらく、私のそういった弱点を全て見抜いた上で、確実に潰しにきているのだ。
「見通しが甘かった。計算違いだった。そう思っていますか?」
「……」
その問いに私は無言の返答を返す。なぜならそれは、私がたった今思っていたことだから。
「万全な状態で戦っていたら、私があなたに勝てる道理はないでしょう。私は所詮地蔵上がりの者。あなたの身に宿る経験には及びません」
「……まるで私が万全な状態じゃないと言ってるようじゃん」
「ええ、そう言っているのです。はっきり言えば、
……参ったね。まさかそこまで見通されているとは。
私は力なく笑みを浮かべて強がるので精一杯だった。
「風見幽香との激戦。今は中級上位程度の妖力しかないあなたが彼女を倒すのは、決して楽なことじゃない。そして仮に後のことを考えて温存でもしてたら、彼女の性格上速攻で殺されていたでしょう」
「そうだね。私は出し惜しみはしていなかった」
「正しい選択でしたね。しかしその後が迂闊すぎました。ポーションのおかげで回復したとはいえ、半分程度の妖力しかない状況であなたは小町と戦い、勝った。しかしその代償はかなり大きい。現に、あなた今二割程度しか妖力が残ってないのでしょう?」
「……言いたいことはそれだけ?」
歯を食いしばり、震える足で立ち上がる。
まったく、やんなっちゃうよこうなめられてちゃ。
たしかに今の私は妖力も体力もボロボロだ。だけど、それで負ける要素がどこにある?
「私は最強! 私が一番強い! そんでもって四季ちゃんは私より弱い! その差がたかだか妖力がない程度で埋まると思ったら、大間違いだ!」
「……やはり、今のあなたはあまりにも幼すぎる。その姿になる前のあなたなら引き際を間違えないだろうし、今のように癇癪を起こすこともなかった」
「御託はいいんだよ御託は! 私を黙らすなら、私よりも強いと証明してみせろ!」
「……では、そうするとしましょうか」
四季ちゃんが三枚目のスペカを唱える。
「審判『十王裁判』」
放たれたのはばら撒きによる移動制限からの自機狙いという、ごく一般的な青色の弾幕だ。
たしかに面倒くさくてよく使われる部類のスペカだけど、逆に言えばこんなものはいくらでもある。弾幕慣れした私の敵じゃない。
自機狙い弾を前進しながらギリギリのところで避ける。そして四季ちゃんに接近したところで左手でスペカを構えて。
——突如私の横を通り過ぎた緑色のレーザーによって、それは撃ち落とされた。
「なにっ!?」
くそっ、私の『空拳』のスペルカードが!
黒い炭と化したカードに構う間も無く、次の弾幕が放たれる。
放たれた弾幕の構造は先ほどと同じ。だが、その色は緑色となっており、密度と速度がかなり上がっていた。
さっきまでの余裕を全て消し去り、回避に全力を尽くす。そして第二陣も乗り越えられたのだが……。
「無駄ですよ。このカードは時間をかければかけるほど強くなる」
今度放たれたのは水色の弾幕。四季ちゃんの言葉通り、緑色のよりも量も速度もさらにパワーアップしていた。
だけど、二つも弾幕群を超えたおかげでだいぶ四季ちゃんとの距離が縮まっている。
正直言って、手持ちのスペカを普通に使うだけじゃ絶対に彼女には当たらない。それこそ、限界まで距離を詰めるぐらいじゃないと。
おそらく、今放たれたのを含めてあと二回ほど弾幕群をくぐれば、その距離となるだろう。そしてそこが勝機だ。
この『十王裁判』というスペカはたしかに強力だけど、一つ弱点がある。それは、弾幕群の構成が変わらないことだ。
自機狙い系の弾幕は放たれる前までにターゲットがいた場所向かって直進する。それ故に放たれてから方向転換できないので左右への移動に弱いのだ。
それを補うために他の弾幕をばらまいているのだろうけど、こうも同じ光景ばっかだとルートを見つけるのは容易い。それは、いくら量や速度が変わったって変わらないことだ。
水色の弾幕が終わり、今度は紫色の弾幕が放たれる。
もちろんこれもパワーアップしているが、基本的には先ほどと同じ。左右に動き回りながら、じっくりと距離を詰める。
そして第四陣突破。この時四季ちゃんとの距離はわずか数メートル。
ここだ!
スペルカードを左手に掲げ、宣言のために大きく口を開く。
だが、この時私は気づいてしまった。
四季ちゃんの周りに浮かんでいるものが、通常の弾幕ではなく全て細長い形をしていたことに。
思考を停止させ、スペカすらも投げ出してその場を思いっきり後退する。
そして——。
——四季ちゃんを中心とした全方位へと、無数のレーザーが解き放たれた。
「ああ、もう少しで新学期か……。このまま引きこもっていたい作者です」
「最近は特にネット通販と動画しか見てないからな。というかそんなのしてるんだったら小説書けや。狂夢だ」
「はぁ……学校いきたくなぁい……」
「というか何がそこまで嫌なんだ。勉強はまあしょうがないと思うが」
「友達作れる自信ないからです」
「……まあ、お前と同年代で東方好きなやつなんてあんまいないからな……」
「卒業した学校では私の知る限り学年で三人くらいしかいませんでしたからね。というか東方以外に関しても、話す内容がほとんどクラスメイトとマッチしない」
「まあ今時二次元ロリコン属性持ちで人生のほとんどをRPG(主にドラクエ)となろう作のラノベと東方に費やしてきたやつと友達になろうってやつの方が凄えよ」
「特に三年の時のクラスなんて、男子は全員漫画派で、ワンピースと進撃の巨人の話ができない奴は相手にされない、さらに全員バリバリのスポーツ系ばっかでしたから。東方どころかラノベの話すらできませんでした。アニメ愛好家を語るんだったら、せめて『まるで将棋だな』くらいは知ってて欲しいものです」
「……お前も漫画多少は読めよ」
「はじめの一歩なら110巻ぐらいまで全部持ってます」
「だからなんでお前はそういう今時の奴らが話題にしないようなもんばっかりしか見ねえんだよ!」