東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
ひらひらと桜の花弁が落ちてくる。
それを盃で受け止め、中の酒をグビリと一口。
途端に口の中に美味みと熱気が広がった。
「ん〜、
香霖堂に訪れた日の夜。魔理沙の言った通り、博麗神社では異変解決と花見のために宴会が行われていた。
目に映るのは騒がしく宴会を楽しむ人々……というより妖怪々。
妖精たちが空で弾幕をばらまいて美しい花火を咲かせ、天空にある結界前で出会った
そんな騒ぎの中心地より少し離れたところで、私こと白咲楼夢は一人酒を呑んでいる。
別に騒ぎが嫌いなわけじゃない。ただ、今は近くに人がいない方が都合が良かっただけ。
「ふふ、みんな馬鹿みたいに騒いじゃってるなぁ。この歳になると若者の雰囲気に合わせるのも大変だよ」
そんな私の言葉は虚空に消えていった。返事は来るはずもない。それなのに、私は続けて愛用の瓢箪を何もない空間に差し出す。
「あなたも呑む? せっかくこんな場所に来てるんだから、楽しまなくちゃ損よ損」
「……そうね。じゃあ頂こうかしら」
今度は返事が返ってきた。それも隣の空間からだ。
そこには先ほどまで何もなかったはず。しかし今では空間ごとパックリ割れており、そこから黄金の髪を持つ美しい少女—–—–八雲紫が現れて私の隣に座った。
「……服、変えたの?」
「え、ええ、ちょっとね。……どう思うかしら?」
紫の服は普段のフリル付き中華ドレスを改造したようなものとは違っていた。
いつものナイトキャップ状の帽子は健在だが、それ以外はガラリと変わっている。具体的に言うと中華から近代的になったというか。
白いフリル付きのインナーの上に胸上部から下が開かれた紫色のワンピースを着ている。そのワンピースも袖が長袖に切れ込みを入れたかのような感じになっており、下部分に至っては膝下まで長いという、もはや羽織りものにも似た形状になっている。
はっきり言ってすんごいこだわってるのがわかる。今言ったこと以外にも特徴的なものなんて数え切れないほどある。単なる巫女服で済ませてる私とは大違いだ。……私は女子ではないからいいんだけど。
「うん、すごい似合ってるよ。イメージカラーはそのままで紫らしさがすごい出てる。はっきり言って可愛いよ」
「ふ、ふふっ! ありがとうね楼夢!」
私の想像力で出来る限りの最高の言葉を言ってみたんだけど、彼女は喜んでくれたようだ。恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、今にも飛んでいきそうなほど上機嫌になっている。
でも、そんな紫を私はあまり直視することができなかった。
なぜかって? それは彼女がその……すごいエロいからだ。
おかしなところはないんだけど、服の背面、つまりは鎖骨部分が丸見えになっていて白い肌が見えていたり、隠されているはずの胸が大きさ故に逆に強調されていたり……。
つまりはエロ可愛い。彼女自身の美貌と合わさって光り輝いて見える。これが私じゃない男性だったら、理性をなくして飛びついてしまいそうだ。たとえそれが修行を積んだ坊さんだったとしても同じことだろう。
ようやく私も紫も落ち着いてきたころ、彼女は私にスキマから取り出した盃を差し出してきた。
へいへい、注いでやりますよっと。元々は私が誘ったんだからね。
薄めてある奈落落としを呑んだことで彼女の体はほんのりと日照ってる。それがまたエロさを醸し出し……いや、これ以上はやめておこう。
「紫、一応聞くけどべろんべろんに酔ってはないよね? いくら薄めてあるからっていっても
「大丈夫よ。私はこう見えてお酒に強いんだから。それよりも楼夢、あなたは私と一緒にいて大丈夫なの?」
紫は『私と一緒にいるところを見られて大丈夫なの?』と心配しているのだろう。
だがご安心を。すでにここら一帯に認識阻害の結界を張っておきました! この姿なのであまり強いのは使えなかったけど、それでも姿を隠すだけなら十分だろう。
そのことを伝えると、紫は安心したのか完全にスキマを消して私に近づいてくる。
「ふふ、せっかくの二人だけの宴会なんだし、楽しみましょう?」
「それだったらみんなが居る所にでも行く? もちろん私も別方向から偶然を装って合流という形で付き添ってあげてもいいけど」
「やめておくわ。今は何か気になることが起きてるし……その時になったら、あの子たちの前に姿を表そうかしら」
「いかにも悪役っぽいね」
「悪役ですから」
気になること? はて、一体なんのことだろうか。紫はそう言うと扇で顔を隠し、妖しく微笑む。でもね、そうやって大人の雰囲気を見せつけようとしたり努力してる所が、逆に子供っぽく見えてることに彼女は気づいていない。
どうせどこかでボロが出るんだろうなぁ……なんて、不謹慎なことを考えていると。
「お姉さーん! どこにいるのー?」
そんな可愛らしい子供の声が聞こえてきた。
これは……フランのだね。でも結界が張ってあるはずなのに、どうやってここに来たんだろう。……いや、それよりもだ!
「ヤバイ紫! 一旦スキマに隠れて!」
「へっ? ……キャッ!?」
突然の私の言葉に一瞬硬直してしまう紫。スキマは反射的に開かれていたのだけれど、驚きのあまり体がついていっていないようだ。
ああもう、こうなりゃ仕方ない!
モタモタしてる紫を掴み、私はスキマへ無造作に彼女を投げ入れた。と同時に、物陰から紫とはまた違った黄金の髪を持つ幼女が飛び出してきた。
「やっと見つけた! もー、探したんだよ?」
「ごめんごめん。でもフラン、よくここがわかったね。どうやったの?」
「うーん……桃みたいに甘い匂いを追って来たの!」
ああ……それ私の匂いや。
どうやら認識阻害の結界は姿や妖力を消せても、体臭までは消せなかったようだ。
でもいくら私のがいい匂いだったとしても、所詮は体臭だ。吸血鬼には幼獣並みの嗅覚はないはずなんだどなぁ。
フランは嬉しそうにニコニコ笑うと、私の体に突進するように抱きついてくる。
「ぐふっ……!」
「えへへ、やっぱりお姉さんはいい匂いがするね! くんかくんか」
「ちょっ、フランっ、髪をそんなにに嗅いじゃ……ああっ、舐めちゃダメぇ!」
「ふふ、すごいサラサラしてる。それにやっぱりすごい甘い……」
フランは抱きついた状態のまま猫のように顔を私の服に擦り付ける。そこまでは良かったのだけど、彼女はその後あろうことか私の髪に顔を近づけると、それを美味しそうに舐め始めたのだ。
そのまま彼女は舌を突き出すと……。
ひやんっ!? ちょっ、耳はっ、耳だけはぁ!
「んっ! くっ……!」
「ふふ、可愛い声。もっと舐めたくなっちゃうよ……」
ヤバイ。足腰がガクガクして来た。
フランによる唐突な責めはさらにヒートアップしていく。力が抜けていく腰に手を回し、獣耳をペロペロペロペロ……。
あっ、意識が暗転して……。
そして私がとうとう耐えきれなくなったその時、突如何もない空から降ってきたタライが私を正気に戻した。
痛っ!? ……じゃなくて今がチャンスだ!
飛ぶように後ろにバックステップし、間一髪フランの元から逃れることに成功する。
「ハァッ、ハァッ……小さいくせにテクニシャン……!」
「えっ、なんのこと?」
彼女はなぜ私が急に離れたのか理解していないようだ。
ということは、今までのは全て無意識で行ってたって言うの!? 何という才能だ……。タライが落ちて来なければ今ごろ私は堕とされていただろう。今回は紫に感謝だ。
っと、そうだ。フランを教育してあげないと。
「ふ、フラン……今度からああいうことはやっちゃいけないよ? わかった?」
「えー、なんで?」
「とにかくダメなものはダメなの! 大人になったらわかるから!」
「私495歳だもん!」
「あと1000年は出直して来なさい!」
ほっぺを膨らませて、いかにも不満ですという顔をするフラン。
でもね、ダメなものはダメなの!
「むー、お姉さんの髪はいい匂いだから、ああすればもっと嗅げると思ってたのに……」
彼女のこの異常な興奮状態。
……思い出した。これは『桜ドラッグ現象』だ。
桜ドラッグとは、私の髪、というよりも頭に生えている桜の花のことを指す。鬼の頭領である剛がこれの匂いを嗅ぐと性的な興奮状態に陥ることから、鬼たちの間でそう呼ばれていた。
さっきのフランはこれの症状によく似ていた。
私自身も調べてみたんだけど、よくわからないんだよねこれが。いたずらにほかの女の子に嗅がせて麻薬依存状態になられても困るし。
でも霊夢とか魔理沙とか、色んな女の子とある程度接近しても何も起こらなかったから、すっかり忘れてたよ。でもフランもちゃんと言うこと聞いてくれるし、依存性がなさそうなのは救いかな。
とりあえず不機嫌そうなフランをなだめるため、私は一旦彼女と宴会の中心に戻ることにした。
するとなぜかフランは急に機嫌を取り戻した。
私といっしょに歩くことがそんなに楽しいのか? 女の子とは実に不思議な生き物である。
♦︎
宴会場に戻ってさっそく目に入ったのは、二人の金髪魔法使いが仲良く会話している姿だった。
片方はみんなご存知霧雨魔理沙。そしてもう一人はその魔理沙に家の屋根を吹き飛ばされたらしいアリス・マーガトロイドだ。
美夜から聞いた話とは打って変わって二人は和解したように見える。とりあえずアリスの方とは私は出会ってないので、挨拶でもしておこうかな。
魔法使いたちの方に向かって歩いていく。その後ろをフランがついてくる。
小さい歩幅(私が言えたことではないが)でトテトテと歩く姿を見ると、思わず本来の姿に戻って肩車でもしてやりたくなる。正体をバラすわけにもいかないので当然そんなことはできないけどさ。
でも、せめてフランが大人になる前にはしてみたいなぁ。
なんて思っていると、あっという間に目的の人物の側までたどり着いた。
「あ、魔理沙だ!」
「ヤッホー魔理沙。となりのお嬢さんは彼女さんかな?」
「ようフラン! ……そしていきなりだな楼夢。私は女だぜ? 作るなら普通彼氏だろうが」
「わ、私が魔理沙の彼女……」
残念ながら魔理沙、君には百合の才能があるそうだ。現にとなりの子はほおを赤く染めて、まんざらでもなさそうな顔をしてるし。
しかしそんな顔をしたのは一瞬だけ。彼女は魔理沙の視線が私たちに向いているうちに冷静さを取り戻し、顔を人形のような無表情に戻した。
「そうだ、お前には紹介してなかったな。こいつはアリス、魔法の森に住む魔女だ」
「ちょっと魔理沙、勝手に私の自己紹介を取らないでくれるかしら?」
「おっと、すまんすまん」
「……はあ、まあいいわ。アリス・マーガトロイドよ。よろしく」
魔理沙よ、さっきの百合っぷりのせいであなたが自分の彼女自慢してるようにしか見えないんですけど。
そして先ほどの乙女な顔とは打って変わって、冷たい表情で彼女を叱るアリス。どうやら魔理沙の前ではクールビューティのキャラを通すつもりらしい。
側から見ればバレバレだが、そういうのに鈍感な魔理沙は全く気づいてないようだ。もしかして大人状態の私も別の人から見ればこんなものなのかな?
と、自己紹介が遅れちゃった。私は彼女のことをあらかじめ知ってたけど、向こうはそうじゃないしね。ちゃんと挨拶しておかないと。
「自己紹介ありがとね。私は楼夢、見ての通りしがない妖狐だよ。これからよろしくね?」
「フランドール・スカーレット! フランって呼んでね?」
「ええ、よろしく。子供は無邪気だから好きよ」
ごめんな、フランはともかく、中身はおっさんなんだわ。
とはいえ私の身長は140程度と、フランやチルノらとそう変わらない。彼女からすれば私は十分子供なのだろう。
それから彼女は自分がどのような魔法を使うのかを教えてくれた。主に魔理沙が色々言って、アリスが渋々補足するような感じだったけど。
美夜の報告ではあまり他人と関わるのは苦手らしいけど、今彼女が話してくれるのは私が子供の姿だからか、はたまた隣にいる正反対な魔法使いのおかげなのか。
まあどっちでもいいや。
話は戻すけど、彼女は主に人形や糸を操る魔法を使うらしい。彼女が作る人形の多くはマジックアイテムで、戦闘用にも使えるのだとか。
そんでもって目標は完全に自立した人形を作ることらしい。私の経験から言わせてもらうと、不可能では決してないと思う。もっとも楽なのはそこらの魂を人形にぶち込むことだけど、それじゃあただの人形型妖怪と変わりないしね。果たして彼女がどうやってこの難題を達成するのかが、ちょっと楽しみになってきた。
フランはアリスの魔法に興味があったのか、彼女の説明を熱心に聞いている。この子は姉のレミリアに負けず劣らずの才を持っている。今は地下室にいた分知識がなくて卵のような状態だけど、いつかは強大な魔法使いになることだろう。
それに比べて……。
私は横であくびをかいている脳筋魔法使いをジトっとした目で見る。
彼女もそれに気づいたのか、バツの悪そうな顔をしていた。
「全く魔理沙は……少しはフランの態度でも見習ったらどうなのかな?」
「し、仕方ないだろ! あいつは魔法の話になるとパチュリーと同じで妙に長ったらしくなるんだ! 最後まで聞いてられっかっつーの」
「それでも魔法の話なんだし、ためにならないとは思わない?」
「私にとっては火力こそが魔法だから必要ないんだぜ!」
いや、そこ自慢げに語るとこじゃないから。私は呆れた目線を彼女に送る。
すると魔理沙は今のでムッとしたのか、今度は私に問いかけてきた。
「だったらよ。そういうお前はアリスの魔法が理解できるのか?」
「できるよ。そもそもアリスの魔法はさほど難しいものではないからね」
「どういうことだぜ?」
「こういうこと」
私は手のひらを開いて魔理沙に見せると、そこに魔力を流す。そしてそれを凝縮させ、目に見えるかどうかわからないほどの細い魔力糸を作り出した。
いきなりのことで驚く魔理沙を尻目に、私は解説をする。
「これがアリスの魔法の正体。アリスは魔力で編んだ無数の糸を操って、人形を動かしてるんだよ。あんな風にね」
私の視線の先には、フランのために、見えない糸を操って人形劇を繰り広げているアリスの姿があった。
それにしてもすごい出来だよありゃ。指一つ動かさずに糸を操るもんだから、何も知らない人から見たら人形が勝手に動いているようにしか見えないだろうね。
「ふーん。じゃあアリスのやってることは誰でも出来るもんなのか?」
「いや、原理は簡単でも熟練度が違うんだよ。私がやろうとしてもせいぜい数体、しかもあそこまでスムーズにはできないかな」
「なるほどな。勉強になったのぜ」
仕組みはちっとも理解してなかったようだけど、魔理沙は今の私の説明で満足したらしい。しばらくすると彼女は未だに人形劇をしているアリスを置いて霊夢の方へ行ってしまった。
さて、フランも人形劇に熱中していることだし、私も別のところへ行こうかな。ちょうど会いたかった人たちも来てることだし。
私はフランをアリスに預けることにして、この場を去った。
♦︎
「ヤッホー幽々子! 宴会は楽しんでる?」
「あらあら、誰かと思えば楼夢じゃない。会いにきてくれて嬉しいわ〜」
差し出した両手に幽々子は自分の両手を合わせ、ハイタッチをする。
うん、どうやら私のことは覚えててくれたようだ。前とは姿が違ってるし、誰だかわからないかもしれないと思ってたけど、そんな心配は杞憂だったようだね。
幽々子は小さくなった私が面白珍しいのか、妙に体のあちこちを触っては楽しそうに微笑む。
ふむ、何が何だかわからないけど楽しそうならそれでいいか。
「ふふ、小さくなると性格も若干変わるのね。面白いわ」
「あれ、なんでそんなことまでわかるの?」
「大人のあなたは綺麗っていうイメージだけど、今のあなたは可愛いってイメージしか湧かないのよね〜。実際最初の挨拶とか大人状態じゃ絶対に言わないでしょ? こうやって女の子にやたらと肌を触らせることもないだろうし」
「……まあ確かに」
普段から気をつけているつもりなんだけど、やっぱり幼児退行には勝てないということか。現に大人状態に戻ってしばらくすると、今までの幼体化している時の自分の行動や言動を思い出しては赤面することも多々あったし。
さっき普通に使ってたけど、よくよく考えたらなんだよ『ヤッホー』って。もちっといい挨拶はなかったのかよ私。そして今さらながら異性に身体中を触られたことに若干の恥ずかしさを覚えてきたぞ。
しかしこれに関してはもう対策しようがないと思うんだよね。
というわけであまり気にせず生きていきたいと思います! 負担は全部大人の私持ちだから問題ナッシング!
人、それを問題の先延ばしとも言う。
「ゆ、幽々子様ぁ……! おまたせ、しました……!」
ふと、幽々子にそんな声がかけられた。
二刀流の白髪少女。間違いなく、妖忌の孫である妖夢だろう。
彼女は両手いっぱいに大きな皿に乗せられた大量の料理を重たそうに持っており、それを幽々子の前へ置く。
おおう……今ズシンって聞こえたぞズシンって……。
両手にかけられていた負担から解放され、地面にへたれこむ妖夢。それとは逆に、幽々子は瞳を輝かせながら料理の山に手を突っ込んでいた。
ああ幽々子……少食だったお前がなぜそんな風になってしまったんだ……。
私がそう黄昏ていると、ふと妖夢と目があった。
彼女は幽々子のとなりに自然に座っている妖怪が気になったのか、自分の主人へと問いかける。
「……あの、幽々子様……この方は……?」
「んふぉふぇのふぁふぁへふぁふぇ」
「おーい幽々子、なに言ってるかさっぱりだよー」
リスのようにほおを膨らませながら喋られてもねぇ。
幽々子は私の注意を聞いたのか、喋ることを一旦中止する。そして一拍おいてごくんっという音がした後、彼女の口の中に詰め込まれていた食べ物は全て消え去っていた。
おう、ジーザス……まさか地上でブラックホールを見ることになるとは思わなかったよ。そのうち二つ名が本当にピンクの悪魔になりそうだからこわい。
「それで、どうかしたのかしら妖夢?」
「あ、いえ、そこの妖怪が気になったものですので……」
……この子、すっごいシャイだわ。
さっきも幽々子に聞かれた時、妖夢ったら露骨に私と顔を合わそうとしないんだもん。要は私は顔だけそっぽを向いたまま、指を指されたのだ。
というか目の前に私がいるんだし、幽々子を通さなくても直接自己紹介を交わせばいいものを。まあそれができないからこそのシャイなのかな。
面倒くさいんで、ここは二人の会話にこちらから強引に割り込んでやるとしよう。
「ああ、彼は……」
「はいはーい! 私は楼夢です! よろしくね!」
「こ、魂魄妖夢です……よろしくお願いします……」
突然された自己紹介に若干驚きながらも、妖夢は名乗り返してくれた。
というか幽々子! 今さっき『彼』って言ったよね『彼』って! 幸い私の割り込みのおかげで妖夢には聞こえてなかったようだけど、どこに人の耳があるかわからないからそういうのは隠してもらわないと。
そんな意味を込めてジト目で睨んだのだけれど、彼女は理解したのかしてないのか微笑むだけ。化けの皮を剥がせば分かりやすい紫と違って表裏がないから逆に分かりにくい。
頼むから伝わっててくれよ……。
私の願いが通じたのかは置いておいて、幽々子は両手に持った真っ白な……真っ白!?
いや、もう驚かないぞ……とにかく、空の皿を妖夢に渡した。それだけで妖夢の顔が絶望に染まったのが伺える。
「妖夢〜。おかわりお願いね?」
「は、はい……」
「それと、さっき黒い九尾の妖怪を見かけたから、話してきたらどうかしら?」
「美夜さんが……? 分かりました。ご飯を持ってくるついでに探してみます」
そう言うがいなや、駆け足で妖夢はこの場を離れていった。
そういえばあの子も宴会に来てたんだね。他の姉妹たちが来てないのは接点がないからと、単に面倒くさいだけであろう。
しかし、それよりも……。
私は呆れた目で幽々子を見つめる。
「幽々子……まだ食べるの?」
「当たり前じゃない。今日は宴会なのよ? 羽目を外してお腹いっぱい食べなきゃ」
「まったく、問題事は起こさないでよ? せっかくの平和な宴会なんだから」
「平和、ねぇ……」
その言葉に反応して、幽々子はこんな意味深なことを言ってくる。
「本当に平和かどうかは、まだわからないわよ?」
「……それは、どういう……」
「さあ? 博麗の巫女風に言えば……ただの勘、ね」
そこから先は特に変わったことがなく、宴会は幕を閉じた。
いや、幽々子の大食いや別の妖怪たちが起こした馬鹿騒ぎなどなど、問題事は色々あったけどさ。
少なくとも博麗の巫女が出動するような事態には陥ってはいなかった。幽々子の言葉も、ただの杞憂に終わったようだ。
そう、宴会当日の私は思っていた。
しかし……。
三日後、博麗神社でのんびりしていた時に現れた白黒の魔法使いからこんな言葉が飛び出た。
「よう楼夢! 宴会しようぜ!」
魔理沙……宴会はサッカー感覚でやるもんじゃないんだよ?
「テスト週間ですけど投稿です!九月の後半くらいまでペースは遅くなるのでご了承ください! 作者です」
「どうせ勉強してもお前の脳みそじゃ意味なさそうだけどな。狂夢だ」
「そういえばよ。紫の服が変わったって本編で書かれてたんだけどよ、お前の説明が下手なせいでイメージができないんだが。具体的にどんな感じになったんだ?」
「この小説の紫さんのファッションは茨歌仙の服をモデルにしております。わからない人はググればすぐに出てくるので見に行ってください」
「なお、服を変えても肝心の楼夢は紫そっちのけでロリコンになりかけてる件について」
「百合は美しい。ロリ百合は正義……」
「片方男だけどな」
「可愛ければいいんですよ!」