東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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初宴会一の巻

 

 

 

 

「宴会だぁぁぁぁぁ!!」

 

  博麗神社、その境内で、高らかな叫びが木霊した。

  もちろん、私こと白咲楼夢のである。

 

「うるさい!」

「もんぶらんっ!?」

 

  そしてすぐさま霊夢の空中横回転チョップが私の頭をカチ割った。

  すぐさま地面に倒れこむと、転がりながら悶える。

  ……お、おぉ……痛いっ……。

 

「ひ、酷い……っ。空中で回転加えてからの高速チョップなんて芸当、普通だったら死んじゃうよ……っ!」

「自業自得だぜ」

 

  あまりの痛さに涙目になってる私を見て、白黒魔法使いの魔理沙が笑った。

  おのれ、貴様にはわからんのだ! マジで気絶すると思ったんだぞ!

  というか、正直ちょっと死にかけた。

  だって三途の川らしき場所で小町が手振ってるのが見えたんだぞ!? また四季ちゃんのところに逆戻りなんて嫌だからね!

 

「ていうか、気が早いわよ。宴会は夜、今はまだ昼よ」

「まあ知ってたけどさ。それにしても、この神社に宴会を開く予算があったのが驚きだね」

「それはどういう意味かしら?」

「あっ、マジすんませんほんと悪気はなかったというか……ァァアアア!?」

 

  ちょっ、また頭がぁっ!

  霊夢が私の頭部を両拳でグリグリと圧迫してきた。

  というかそのまま持ち上げないでっ!? 体重プラスグリグリで死んじゃう、死んじゃうよぉぉ!

 

  結局、このグリグリ攻撃は霊夢が疲れるまで続いた。

  地獄だった……。一分一分がこれほど長く感じたことはない。

 

  すっかり伸びきってる私を尻目に、魔理沙が話を戻してきた。

 

「でもよ霊夢、本当に宴会用の食材は足りてるのか? とはいえ、宴会開くって言ってるんだから流石に——」

「あら、もちろんあるわけないじゃない」

「……へっ?」

 

  一瞬の静寂が訪れた。

  そして、

 

「おい霊夢ぅ!? どうするんだぜ宴会は!? 言っとくが塩しか出ない宴会は宴会じゃないからな!」

「そもそも、開こうって言ってきたのはあいつらよ。なら食材くらい用意するのが筋でしょうに」

 

  残念ながら、紅魔館はその食材を用意してはいないようだよ。

  あのときフランの部屋に仕込んでおいた極小の蛇型式神の視界から上の様子を観察してみたけど、必要最低限の物しか用意してなかったんだもん。

 

  ……ほんと、仕方ないなぁ。

  私は巫女袖からありったけの野菜を取り出す。

  その量と、何もない空間から突如野菜が出たことの二つに二人は驚き、目を見開いた。

 

「今回だけ、特別にこれ全部あげる。ただし、次からはちゃんと準備してきてね?」

「え、ええ。……ありがとう」

 

  お、珍しく霊夢が素直に礼を言ってくれた。

  いや、よく見ると微妙に恥ずかしがって顔を赤くしてる。

  狂夢ゥ! スクショ撮れスクショ!

 

『あいよ!』

 

  ……ぐえっへっへ。

  孫の恥じらう写真、ゲットだぜ。これは私の秘蔵コレクションに入れておかなければ。

 

  と、私の脳内でそんな高速のやり取りが行われていると、すかさず魔理沙がツッコンだ。

 

「……いやいやそれどっから取り出したんだよ!?」

「それは企業秘密」

「今思いっきり袖から出してたわよね?」

「霊夢のにもできるようにしてあげようか?」

「企業秘密じゃなかったのかしら?」

「霊夢は別だよ。ただし、お代金の代わりはちょこっと払ってもらいやしょうか」

「遠慮しとくわ。妖怪相手に取り引きすると、後々面倒なことになりそうだから」

 

  ちぇっ、残念。

  これで霊夢が頷いてくれたら、『にっこにっこにー』を笑顔満開のフルでやってもらうつもりだったのに。

  さしずめ、笑顔届ける博麗にこにこってところか。

  ……可愛い! ぜひ見てみたかった!

 

「ん、どうしたのぜ? なんか鼻血が出てないか?」

「気のせい気のせい。……ほら、そんなことよりも早く料理でも手伝わなきゃ。なんか足りないものある?」

「そうね。魔理沙、酒頼んだわよ」

「なんで宴会なのに酒すらないんだ!?」

「あ、じゃあこれも追加ね」

「おおっ!」

「楼夢も霊夢を甘やかすな!」

 

  肝心の酒すらなかったので出してみたところ、魔理沙に怒られちゃった。まあ確かに、流石に今回は手出し過ぎたかもしれない。食材を渡すのはこれくらいで、後は神社の掃除でもしてよっと。

  でも、掃除用具がないなぁ。……あっ、あそこにいいものが。

 

  私は縁側にかけてあった箒を取ると、それで境内の掃除を始めた。

  しばらくして、暇そうにしてる魔理沙がやって来て声をかけてきた。

 

「……お前って、妖怪のくせに随分と世話好きなんだな」

「それは違うよ魔理沙。私がこうして掃除をしてあげたりしてるのは、霊夢だからだよ」

 

  そもそも、他の人間、いや妖怪でも私がここまですることはないだろう。やったとしても、永林か紫か剛くらいだ。

  なぜなら、私の誇りが傷つくから。この私がただの人間の手伝いをしてるなんて知られたら笑いものだよ。

  そんな誇りをぶん投げてまで霊夢の世話をしてあげているのは、彼女が血の繋がりはないとしても私の孫だから。

  ……いや、それもあるけど違うか。

  単純に、『博麗霊夢』っていう人間が面白いからやってるのだと思う。それに遊戯だとしても、私に勝ったのは事実。私が彼女の世話を焼く理由にこれ以上の不遜(ふそん)はない。

 

「そうか……」

 

  魔理沙はそう短く言うと、私の方を見つめてきた。

  ……ん、どうやら何か言いたげな様子。魔女帽子を深く被って顔を隠してることから、何か恥ずかしいことなのかな?

 

「その……紅魔館のときはありがとな。礼を言うのが遅くなっちまったが」

「なんだ、そんなことだったの。あれは結果的に魔理沙を守ったことになっただけで、戦った目的は別にあったから気にしなくていいよ」

 

  というか単なる意地だ。

  この私が年下から挑戦されて、逃げるわけにはいかないでしょうが。

  それでも魔理沙にとっては大きかったらしく、先ほどから礼を言うのをやめない。

 

「そういえば、あの後って結局どうなったの? 私は姉とやらに見つかる前に逃げたからそこんところ知らないんだよね」

「あの後か? まず地下室にボロッボロのフラン……だっけ? あいつが寝てるのが発見されて、パチュリー以外の紅魔勢がカンカンに怒ってたな。『犯人見つけたら八つ裂きにしてやる』だってよ」

「よく言うよ。……フランがああなった元凶は姉のくせに」

「ん、なんか言ったか?」

「いや、なんにも。それと情報ありがとね。宴会では気をつけるとするよ」

 

  むきゅリー……じゃなくてパチュリーと小悪魔に顔バレしてるから無駄だと思うけど。

  それに、私からもフランのことで一言言ってやらないと気が済まない。あそこまでフランの闇に踏み込んだ以上、ここで引き下がるわけにはいかない。

 

  でもまあ、全ては夜だ。あっちが突っかかってくるならこっちも相応の対応をしてやるけど、無干渉を貫くなら私は何も言わない。もっとも、魔理沙の話だとその線はなさそうだけど。

  とにかく、今考えても仕方ない。今は自分の仕事をやろう。

  そう思い、箒を気合一閃。一つ遅れて落ち葉が宙を舞う。

  すると、魔理沙が何かに気づいたようだ。

 

「……なあ楼夢。私の箒が見当たらないんだが、どこにあるか知らないか?」

「いや、知らないよ」

「ちょうど縁側に立てかけて置いたやつなんだよ。でもどこにもなくてだな」

「……知らないよ」

「……ちょっと貸すのぜ」

 

  魔理沙はそう言って私が持っていた箒をヒョイっと取り上げる。そして、私に向けて微笑みを浮かべた。

 

「ど、どうやら見つかったようだね。あは、あはは……」

「お前が使ってただけじゃないかぁぁぁぁ!!」

 

  魔理沙の叫びと同時に、マスタースパークがぶっ放たれた。

  ……オワタ。

 

「あぎゃああああああっ!!」

 

  雑魚敵が言いそうな断末魔をあげながら、私は空の彼方に吹き飛ばされるのであった。

 

 

  ♦︎

 

 

「……うう、近距離マスパはダメだって……死んじゃう」

「まだ言ってるのか?というかもう宴会始まってるぞ」

 

  その夜。

  私は未だに痛む体を撫でながら、口をとんがらせた。

 

「それにしても、そのマジックアイテムはなんなの? マスパの大砲みたいになってるようだけど」

「ああこれか。これは『ミニ八卦炉』って言って、古い知り合いに作ってもらった私の宝物なんだぜ」

「いや、これレベルのマジックアイテムを作ったとか、その人何者よ?」

 

  いやだってこれ、私の魔眼【スカーレット・テレスコープ】で解析してみたところ、最大で山一つ焼き払えるほどの火力を放つことができるんだぞ?

  火神が使ったら最悪幻想郷が滅ぶレベルの熱光線が発射されることだろう。もっとも、そこまでの威力にミニ八卦炉自体が耐えられないと思うけど。

 

  私が気になって魔理沙に聞いてみたところ、どうやらその人物は【香霖堂】なる店を営んでいるらしい。

  魔法の森にあるらしいので、今度ぜひとも寄ってみたいところだ。

 

 

  その後魔理沙と数十分駄弁ったところで、私は宴会を見て回ることにした。

  今回来てるのは紅魔館勢と妖精が何匹か。後は……ん、見たことがあるような影が。

  でもまああの子との挨拶は後でにしておこう。何やら紅魔館勢と話し合ってるようだし。

 

  私は霊夢を見つけると、歩いて行って声をかけた。

 

「霊夢ー、宴会はどんな感じ?」

「どうもこうもないわよ。好きに飲んで好きに騒ぐ。それが宴会でしょ?」

「それ外の世界で言ったらぶん殴られるからね? でもまあ、霊夢らしい宴会だ」

「私らしいって何よ」

「そりゃ、自由で楽しいってこと」

 

  そう言って、私は盃を霊夢に差し出した。

  そして霊夢がそれを受け取ると、【奈落落とし〜very easy〜】と書かれたラベルが貼られた瓶を取り出した。

  そしてそれを、霊夢の盃に注ぐ。

 

「さ、これは私からのご褒美だよ。たんと味わってね?」

「頂くわ。……美味いわね、これ」

 

  そりゃよかった。わざわざ狂夢の工場に引きこもって人間用に改良した甲斐がある。

  私は人間用の奈落落としが入った瓶を霊夢に渡した。

 

「それじゃあ、私は宴会を楽しんでこよっかな。その酒は全部あげるから、遠慮しないで飲んでね」

「ええ、ありがたく飲ませてもらうわ」

「お気に召したようで何より。じゃあまた後でね」

 

  そう言って私は霊夢から離れ、次の場所へ向かった。

  とは言っても、目的地は魔理沙のとこなんだけど。

  まあ、魔理沙が二人の妖精たちと話してたから、紹介してもらおうって魂胆だ。

  こちらと目があったので、手を挙げて近づいていく。

 

「魔理沙、そっちの妖精は?」

「ああ、こいつは……」

 

  そのとき、魔理沙の言葉を遮って、水色の髪と氷柱のような翼を持った妖精が高らかな声で自己紹介してきた。

 

「やいお前! あたいはチルノ! あたいとサイキョーの名をかけて勝負しろ!」

「ち、チルノちゃん、いきなり失礼だよ!」

 

  ……うわぁ、こりゃまた随分と濃いやつが出てきた。

  チルノと名乗った妖精がキャンキャン騒いでるのを、隣の緑髪の大人しそうな妖精がなだめている。

  二人の会話を聞く限り、大妖精こと大ちゃんと言うらしい。

 

  しかし、それはどうでもいい。重要なのはその後だ。

 

「……ほう、この私と勝負すると言ってるの?」

「そうだ! さあ、さっさとスペカを構えなさい! あたいのサイキョーの弾幕で氷漬けにしてやる!」

「……いいよ。三枚と二機でいいね?」

 

  よかろう、受けて立とう!

  スペカを取り出した私を見て、魔理沙がお前もかといった顔をしてくる。

 

「勘違いしないでよ。私にだってあの子がただの馬鹿ってのはわかる」

「……じゃあなんで受けるんだぜ?」

「逆に聞こう。挑戦状を差し出されて、魔理沙はそれから逃げることが正しいと思うの?」

「……思わないぜ」

 

  そう、最強というのは逃げてはいけないのだ。

  ゆえに、たとえ相手がライオンだろうが兎だろうが殺す。……いや、比喩だからね? 殺したら私が問題になるわ。

 

「話は終わったみたいね。それじゃ、始めるよ!」

「来なさいチルノ。貴方の挑戦、受けてあげるわ!」

 

 

  そうやってかっこよく弾幕ごっこを始めて一分後。

 

「や、やられたぁ……」

 

  目の前には服がボロボロになって倒れ伏しているチルノの姿が。

  ……いや、確かに私はどんな相手からも挑戦は受けるよ?

  でもこれは……弱すぎでしょ。

 

「ち、チルノちゃん!?」

「大ちゃん……あたいは、もう、駄目みたい、だ……っ」

「チルノちゃぁぁぁぁん!!」

 

  ……ナニコレ。

  なんで御涙頂戴の感動劇になっちゃってるわけ? というか魔理沙も感動のあまり泣くのやめい。いや演技だってのはわかってるけどさ。

  ……はぁっ。

 

「これからは戦う相手を選ぼっかな……」

「それがいいぜ」

 

  私はあまりに酷い弾幕ごっこの結果に、少し無口になってしまった。

  いやでもさ。私スペカ使わないで一分で終わったんだよ? それがどれほど酷い内容だったのは語らなくてもわかるだろう。

 

「……別の場所に行ってくるね」

「ああ。まあその……頑張れ」

 

  すっかりダダ落ちしたテンションのまま、私はここを去るのであった。

 





「春休み終了間際! おそらく次の投稿はもっと緩やかになってると思います。作者です」

「そして未だに宿題が終わってないってすごいな。狂夢だ」


「オー●ーロード終わっちゃったぁぁぁぁ!」

「やかましい! 三期決定したんだからいいだろ」

「これから私は何を見れば……」

「そろそろ春アニメがやってくるだろ。GGOとか。というかその前に宿題しやがれ」

「はーい……」

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