東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~   作:キメラテックパチスロ屋

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魂は、煙のようなもの

昇っていき、昇っていき、パッと消え去る

だけど昇らぬ魂もある

それが私たち、蓬莱人


by藤原妹紅


竹林の大騒乱

 

「……腹減ったなぁ……」

 

  とある満月が出ている夜の中、少女はそう言いながら両手をぶらぶらと下げて、ゆらゆらと歩いていた。

  白い服に赤いもんぺを着用しており、白髪とするどい紅の瞳はどこかの灼炎王を思い浮かばせるものがあった。

 

  彼女こそ、その灼炎王の一番弟子である藤原妹紅であった。

  彼女は、自分の師匠と別れた後、全国各地で陰陽師として路銀を稼ぎながら旅をしていた。

  なぜ旅をしているのかというと、師匠との別れ際に「面白ェことでも探せばいいんじゃねェの? どうせこの先まだまだなんだし」と言われたからだ。なので、旅をして過ごしながら、あわよくば月にいるはずの輝夜を殺す方法を考えることにした。

 

  だが現在、彼女は道なき大地で食い倒れている。

 

「……こんなことなら、この前の街で酒を飲まなければよかった……」

 

  はぁっ、とげっそりした顔でため息をつく。どうやら無計画なところも、食糧難におちいるところも師匠と似てしまったようだ。

  蓬莱人は死ななくても、腹は減るものなのだ。このままでは餓死、リザレクション、餓死、リザレクションの無限コンボになってしまう。それだけはどうしても防がなければならない。

 

「せめて動物か、最悪それに似た妖怪でも出ればなぁ……んっ?」

 

  ギュルギュルと鳴る腹を押さえて妹紅が見たもの。それは草むらから飛び出た真っ白な尻尾であった。動いていることから、これは新鮮な動物or妖怪だということは間違いないだろう。

  高鳴る心に合わせて、腹が一段と大きくなった。それを聞いて、妹紅は草むらに飛びついた。

 

「久しぶりの肉だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ッ!? ふぇっ!? ……あっぶなァッ!!」

 

  だが、本能で身の危険を察した()()は、いち早くそこから飛び出した。直後、妹紅がそこに飛び込み、草むらが爆発を起こす。

 

「……あっ」

 

  その一連の出来事に口をあんぐりと開ける()()。言葉を話すことから、妖怪であることは確定だが、不幸なことに妹紅の中ではそれも食材に含まれていた。よって、彼女を説得するのは無理ゲーになり上がった。

 

「……とりあえず、逃げろォォォォォ!!!」

「逃がすか肉めぇぇぇぇ!!!」

 

  全速力で逃げる白い何かと、それを追いかける悪魔のような妹紅。

  そこから約三十分、命がけの鬼ごっこが幕をあげるのであった。

 

 

 ♦︎

 

 

  ……どれほど走っただろうか?

  気がつけば妹紅は竹林の中に迷い込んでしまった。

  見渡す限り、竹、竹、竹。帰り道すらもわからない。

 

「……くっそぉ……逃したかぁ……」

 

  外見に似合わず、妹紅の身体能力は蓬莱人となった影響と、火神の地獄の修行のおかげでかなり高い。単純な妖力量も、術式の技術も同じ。単体で大妖怪上位と殴り会えるほどの力を手にしていた。

  そんな彼女をまいたということは、先ほどの食料はそうとう逃げるのに慣れている。足だけではなく、逃げるルートなどを正確に、追い詰める方が迷うように走っていた。

  だが、妹紅が見失ってからさほど時間は経っていない。まだ近くにいるはずだ。

 

  そして、しばらく歩いて、彼女の目に、揺れる白い尻尾が見えた。

 

「見つけた! 今度は逃がさないぞ!」

 

  食料はまだ自分に気がついていないようだ。

  いける。

  凄まじい脚力で一気に接近し、揺れ動く影を掴もうと手を伸ばした。

 

  その時、カチッ、という妙な音が妹紅の足元から鳴った。

  そして、隠されていたロープが、彼女の足首に絡みついた。

 

「へっ?」

 

  一瞬、呆けたような表情を浮かべる妹紅。だが、次にはそれは恐怖の表情に変わった。

 

「キャァァァァァァア!?」

 

  ロープがそのまま足を逆さに釣り上げてしまい、妹紅は普段聞けない可愛らしい声で叫んだ。

  いくら男っぽくても中身は女、ということだろう。一瞬で視界が逆さになった恐怖で、彼女はしばらく硬直してしまった。

  そして、陽気で馬鹿にしているような声が、妹紅の耳に届いた。

 

「わーい! 引っかかった引っかかった! 馬鹿な奴、こんなのも避けれないなんて」

 

  声の元は、先ほど妹紅が逃した食料候補であった。竹の陰から飛び出して、妹紅を馬鹿にし始める。

  容姿は幼い女の子であった。特徴的なのは真っ白な長い耳と小さな尻尾。黒髪で、ピンクの涼しげな服を着ている。その全てを総合的に見て、兎の妖怪というところだろう。

  一見可愛らしいのだが、「ニシシ……」と笑っている姿から、いたずらっ子のイメージがよく似合っていた。

 

「おい、そこの兎! さっさとこれを外して私に食われろ!」

「外すわけないじゃーん。それよりもなんか面白いもん持ってないかなぁ……おやっ?」

 

  妖怪兎は、妹紅を馬鹿にしながら彼女の周りをグルグルと回る。どうやら手ぶらな妹紅が、何か持っていないか探しているようだ。

  そして、彼女の目は、妹紅が首からぶら下げていた、青い宝石にとまった。

 

「へぇ〜、なんか綺麗だねー。んじゃこれもらいっとっ!」

「ああ! 返せよ、それは師匠からもらった大切なものだ!」

「返せと言われて返す泥棒はいないよ! 悔しかった追ってみなー!」

「……あいつ、私を本気で怒らせたなぁ」

 

  ゴゴゴ、と燃え上がる妹紅。すでにロープは燃やしており、彼女の拘束は解かれていた。

  妹紅は一気に体に力を込める。すると、不死鳥のように大きく、美しい炎の羽が、妹紅の背中に出来上がる。それを使い、妹紅は兎が逃げた方向に飛翔した。

 

「な、なんだありゃ!? いつから人間は背中に羽が生えるようになったんだよ!?」

 

  余裕をかまして後ろを振り向く。だが、視界に入ってきた現象に、驚きを隠せなかったようだ。

 

「……だけど、この『迷いの竹林』は私の庭。ふふふ、盛大に迷い狂うがいいわ!」

 

  自信満々にそう言うと、先ほどのように、見事な動きでジグザグに竹を避けていく。

  確かに、これが普通の人間なら、到底追いつけないだろう。だが妹紅は竹だらけの普通ではない人間『蓬莱人』であった。

 

「邪魔だ邪魔だ邪魔だァァァァ!! 粉砕玉砕大喝采ッ!!! フハハハハハッ!!!」

 

  妹紅は炎の塊と化し、兎は避けていた複雑な道に突っ込んでいった。全力で飛べば、普通ならここで竹に邪魔されるのだが、炎を纏った妹紅は、あろうことか目の前にあるもの全てを燃やしながら突き進んでいったのだ。

  実は、竹は燃えやすい。そして中の空洞にある空気が熱されると、次々と爆発を起こしていった。

  そんな突破方法をされては、せっかくの障害物も意味がない。そして速度では、走っている兎よりも、飛んでいる妹紅の方が速いのは明白だった。

 

「捕まえた!」

 

  そしてとうとう、妹紅の手が兎型の妖怪の首根っこを掴んだ。

  ジタバタと必死に抵抗するが、凄まじい握力で首を絞められると、たまらず声をあげた。

 

「まっ、待って待って!! お願い私を殺さないで! 人間の餌として生涯を終えるなんて嫌だー!」

「とは言っても私も腹が減ったからな。それにお前には石を取られた恨みもあるし、ここで生かしとく理由はないよ」

「わかった、交渉しよう! 私を生かしてくれれば、宝石も返すし飯もたらふく食える場所を教えるからっ!」

「……本当だな? 逃げないようにお前を縛っておくが、約束を守るなら目的の後に解放してやる」

「交渉成立だね。じゃあまずこれを」

 

  兎は、先ほど盗んだ宝石を、妹紅に手渡した。

  傷が入ってないのに安心すると、妹紅はそれを再び首にかける。

 

  この青い宝石は、師匠からの旅立ち前の餞別としてもらったものだ。

  彼曰く、これには何か不思議な力があるようだが、どうやってもその何かを解き明かすことができず、要らない物扱いになっていたらしい。

  だが、宝石としてはちょうど良かったので、妹紅の旅立ちにプレゼントしたというわけだ。

  彼らしい理由だが、純粋に尊敬している師匠からのプレゼントは、妹紅にとっては嬉しいものだった。なので、これが選ばれた理由に不満を持ったことはない。むしろ、常に持ち歩ける大きさだったことに感謝したくらいだ。

 

「じゃあ次に、その飯がたらふく食えるってところに連れてってくれ」

「あいあいさー。じゃあまずそこをまっすぐに」

 

  兎の指示に従い、妹紅は竹林の中を迷わず進んでいく。もちろん、兎はまだ解放しておらず、縛ったままだ。しかしこのままでは歩くことすらできないので、仕方なく首を掴んで持ち上げて進むことにした。

 

「……そういえば兎。お前、名はあるのか?」

「あのーすいませんー、首話してもらえないでしょうか? もうそろそろ息が続か、ない……っ」

 

  本当に顔を青くしていたので、一旦地面に放り投げて解放してやった。この兎の性格上、何しやがる的な発言を言うかと思ったが、本人はそんなことより空気を吸うことの方が大事みたいだ。

  しばらくして、兎は先ほどの妹紅の質問に答えた。

 

「それで、私の名前だっけ? そういえば名乗ってなかったっけ。私は因幡てゐ。この竹林の、一応管理人的なものをやってるよ」

「そうかい。私は藤原妹紅。単なる暇人な旅人さ」

「いや、狂気の笑みを浮かべながら飛んでくる人を、単なるで済ませようとするな!? こっちは死にかけたんだからね?」

「そりゃ、お互い様ってことで。ちなみに目的地はどんな場所なんだ?」

「結構前にこの竹林に住み込んだ人間の屋敷だよ。私とも面識があるから、ある程度は優遇してくれるはずだよ」

「そうなのかなぁ……?」

 

  妹紅は、自分が一歩進むたび、心臓が震える錯覚におちいっていた。

  おかしい。

  何かが近づいてくる。気配はわからないが、本能がそれを感じていた。

  胸の鼓動が止まらない。恐怖ではない。死んでまた生き返ることで、妹紅にはとっくに死の恐怖とやら消え去ってしまった。だが、それがあったころ以上に、心臓はバクバクと動いていた。

  まるで、その何かを自分が待ち望んでいたような。

  そして、私は出会った。

 

  竹林の陰から見えたのは、美しい着物に長い黒髪。そして忘れもしない、あの時と変わらない顔。

 

  父を奪った人物。宿敵である、輝夜が、そこにいた。

 

「……あっ……」

 

  驚きのあまり、思わず声が出てしまった。それを聞いた彼女は、こちらに視線を向けると、ゆっくり近づいてきた。

 

  一歩、一歩奴が進んでくるごとに殺気が増していく。まだ、彼女が自分の知っている『かぐや姫』という確証はないのに、その憎いほどに美しい顔を見ていると、憎しみで腹がはち切れそうになる。

 

「あ、運が良いね。姫様、こちらはーーーー」

「……一つ聞きたい。あんたの名前はなんだ?」

 

  妹紅が身にまとっている殺気に気づかず、陽気な声で輝夜らしき女性に話しかけようとするてゐ。だがそれを、妹紅の質問が遮った。

 

「……誰だか知らないけど、名を聞くならまずは自分の名を語るのがルールじゃない?」

「……私の名は藤原妹紅。……これでいいか?」

「……まあいいわ。私の名は蓬莱山輝夜ーーーーッ!?」

 

  その名を聞いた瞬間、全てが爆発した。

  気づけば、全力の一撃で、輝夜の頭を壊していた。

  バラバラに砕け散る輝夜の頭。一撃だけで終わらせてしまったことに、妹紅は不完全燃焼で若干の後悔を感じていた。

  だがまあ、終わったことである。となりの兎が何やらうるさいが、無視しようと踵を返した時、

 

  今度は、妹紅の頭が砕け散った。

  あたりはすでに鮮血が飛び散り、地面は赤い池と化している。

  普通ならここで死ぬが、あいにくと妹紅は不死身だ。すぐに頭を再生して、顔をじっくりと見据える。

 

  両者は、心の中で困惑していた。それは、なぜ頭を潰しても生きているのか、という点についてだ。だが、先ほどの再生方法を見ると、両者は簡単にその理由と原理を理解した。

 

「……いきなり殺しに来るなんて酷いじゃない。でも、まさか永林以外の蓬莱人と会うなんてね。……どうやったのかしら?」

「ふんっ、あなたの家に隠してあったのものを飲んだんだよ。おかげで、じっくりお前を殺すことができる……!」

「なぜ私を殺そうと思うのかしら? 私たちは初対面のはずだけど?」

「黙れ! 父を奪ったお前を、私は絶対に許さないッ!!」

 

  いつの間にか、妹紅の体からは炎が溢れていた。そしてそれは怒りの感情が上がっていくにつれて、勢いを増していく。

  対して輝夜は、そんな妹紅を見ると、こちらも力を全開にした。

 

  そしてついに、殺し合いが始まった。

  それは、とても残酷で、醜い争いであった。

 

  妹紅は一撃が当たるたびに、輝夜の体は弾けとび、絶命する。だが、それで戦いが終わることはない。

  逆に、輝夜の一撃が当たるたびに、妹紅の体も死体と化していった。

  不死身と不死身の決戦。どちらかが死ぬことはなく、またどちらもとも勝利することはない。まさに、意味のない戦いであった。

 

  常人では理解できない戦い。だが、それが自分の胸を満たしていくのを、妹紅は感じていた。輝夜もまたしかり。

 

「「アハハハハハハハッ!!!」」

 

  気づけば、両者は夢中になって戦っていた。だからこそ、気がつかなかった。

  ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

  だが、もしそれに気づいたとしても、二人は放っておいただろう。そんなものに構っていたら、あっという間に殺されてしまうからだ。

  それほどまでに、二人の実力は近郊していた。……いや、徐々に差が表れ始めた。

 

「ハァッ、ハァッ……アハッ、アハハハハハハハッ!!!」

「……往生際が、悪い、わよ……っ! でも、それでこそ、殺りがいがあるってものよ!」

 

  再び、渾身の一撃同士がぶつかり合う。いつの間にか、黒い影たちも消えていた。

  爆発、そしてまた爆発。だが徐々に、妹紅の方が吹き飛ばされることが多くなっていった。

  同じ蓬莱人でも、輝夜の方が有利な理由。それは、蓬莱人同士の殺し合いの経験の差であった。

  妹紅の本来の戦い方は、炎の弾幕をばらまいて相手の行動を制限し、体術を用いた接近戦で直接叩き潰すという方法だ。だが、今回妹紅は怒りに任せて、全ての攻撃に全力の力を加えている。

  これはいわば、戦闘が始まってからずっと全力で走っているようなものだ。長引けば長引くほど、体力はどんどん消耗していき、最終的には動けなくなる。

  対して輝夜は、暇つぶしという面目で彼女の従者であり、同じ蓬莱人である永林と何度か殺し合ったことがある。その経験が今生きており、妹紅を必然的に体力不足に陥れたのだ。

 

  そして、とうとう妹紅の動きが止まった。だが、動けないわけではない。これを最後にしようと、力を溜めているのだ。

 

「……いいわ。これで最後にするわよ」

 

  妹紅の意図を感じ取った輝夜も、同じように動きを止め、力を溜め始める。

  そして、

 

  ゴガァァァァァァアンッ!!! という轟音とともに、輝夜と妹紅の拳がぶつかり合う。直後、今までの中で一際大きな大爆発が、竹林に起こった。

 

  煙が徐々に晴れ始める。そして、生き残ったのは

 

「……負けちゃった、かぁ……くそぅ……っ」

「私の、勝ち、よ……っ!」

 

  高々と、己の拳を振り上げる。そう、生き残ったのは輝夜だった。

  妹紅は悔しそうに一言呟くと、事切れて瞳を閉じた。ここまで殺ったんだ。おそらく再生には数分ほど必要だろう。それまでに起きることはなさそうだ。

 

「……つ、疲れた……っ。もう駄目、動きたくないぃ〜」

 

  緊張が解けて、輝夜もその場に崩れ落ち、いつもの引きこもりモードに戻る。両者の衣服はただの布切れと化し、もはや使い物にならない。幸いなのが、ここが迷いの竹林だったことだろう。

  新しい衣服が欲しいところだが、この蓬莱人に逃げられては困る。だが、こいつをわざわざ運ぶのも面倒くさい。

  どうしようか迷っていると、数分経ち、ようやく妹紅が目を覚ました。

 

「……っ、ここは……?」

「起きたかしら? ならさっさと立ちなさい」

「輝夜……っ、そうか、私は負けたのか……」

 

  輝夜の顔を見た後、一瞬殺意が湧いたが、何が起きたのか思い出すと、うつむいたまま、ゆっくり立ち上がった。

  そして、感情を押し殺して、小さく喋った。

 

「……いきなり襲って悪かったな。それじゃあ……」

「待ちなさい」

 

  自分が負けたという事実を隠すため、すぐさまここから去ろうとする妹紅。だが、それを輝夜が呼び止めた。

 

「そっちから喧嘩売っておいて、そのまま逃げるってのはないんじゃない?」

「……じゃあどうしろと?」

「……はぁっ、あのねぇ。何を生き急いでいるのかは知らないけど、一度負けたならまたここに来ればいいじゃない? 少なくとも、私はそう思うわ」

「……またここに来い、だと……?」

「そうよ。……そ、それに……貴方との殺し合いは中々楽しかったし、暇さえあれば付き合ってあげても……いいわよ?」

 

  若干顔を赤くしながら、なんとかそう言葉に出す輝夜。妹紅を慰めるため、普段使い慣れない風に喋ったせいだろうが、それを見て妹紅はクスリと笑った。

  そして、理解した。今までこの女を何か化け物のように見ていたけど、実際は同じただの少女なんだと。

 

「……そうだよな。やられっぱなしじゃ悔しいもんな。見てろよ、今度こそは、お前に勝ってみせる」

「ふふ、やれるものならやってみなさい」

 

  二人は互いに挑発し合うと、手を差し出した。

  そして今、この二人に新たな友情がーーーー

 

「ーーーーあああああああああああああああっ!!!」

「ヒャッ!? なっ、何よ、どうしたのよ!?」

「か、輝夜……私の首にあった青い宝石を知らないか?」

「し、知らないわよ! だいたい、あんたが倒れた時にはもうなかったわよ」

「あれは師匠との思い出の品なんだぞ! どうしてくれるんだ!?」

「私に押し付けないでよ! だいたいあんたがドジして落としたのが悪いんでしょ!?」

「ああ、もう頭にきた! やっぱ今すぐテメェをぶっ殺してやる!」

「やれるもんならやってみなさい!」

 

  ーーーー友情が、芽生えた……?気がした。

 

  ちなみにこの後、二人は竹林をメチャクチャにした罪で、永林の研究の実験体をやらされたとか。

  とにかく、真相を知っている者は、本人たちと、白い兎妖怪だけであった。

 

 

 ♦︎

 

 

  そして、誰もいなくなった竹林の中。

  現代で使うような手帳が、ひっそりと地面に落ちていた。

  特に高くもないものであるため、いずれ風化して消え去るだろう。

  だが、その表紙には、

 

  『マエリベリー・ハーン』そう、書かれていた。


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