東方蛇狐録~超古代に転生した俺のハードライフな冒険記~ 作:キメラテックパチスロ屋
それは意思ではなく、本能だ
ではなぜ、人を食らうのか? それを求めてはいけない
それを求めるということは、自分は誰だと問いかけるようなものだからだ
byルーミア
伝説の大妖怪、火神矢陽が西洋に旅立って数日。とある十代後半あたりの容姿の少女が、夜の村の門をぼんやりと眺めていた。
だが、しばらくすると、村に入ろうと歩き出した。当然のように門番が寄ってきて、素性を問う。
「すまないが、この村を通るには交通量を払ってもらわなければならなーーーー」
「あっ?」
できるだけ敵意を持たせないように柔和な笑顔で近づいた門番。だが、次の瞬間、彼の腰から上が丸ごと
「き、貴様ァ! 何をしたんだ!?」
「ギャーギャーうっさい。こちとら腹が減ってんのよ!」
当然のように複数の門番が駆け寄ってくるが、彼女には関係ない。
月の光で少女の金色の髪が照らされた。直後、彼女の正面に立っていた門番たちが、漆黒の闇に飲み込まれ、食われた。
「ちっ、腹の足しにもなんないわ。雑魚はもうちょっと数を食べないと」
「うっ、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
一人の門番が叫ぶと、一目散に村に逃げ出す。それを見た他の門番たちは、一斉に村に駆け込んだ。
「助けてくれぇ!」、「怪物だぁ!」、「逃げろぉ!」などという、情け無い悲鳴があちこちで響き渡る。それを聞いた少女はーーーー
「ふふっ、ものすごく無様。虐めたくなっちゃう」
ーーーー悪魔のような、快楽で埋め尽くされた笑顔を浮かべた。
「まずはゆっくりとね。一瞬で終わらせちゃぁつまらないわ」
「き、来たぞ! 全員突撃ィ!!」
「「「ウォォォォォォォォッ!!!」」」
村の男たちが、雄叫びをあげて各々の武器を持って突撃する。だが、少女からしたら恐怖を押さえ込んで向かってくる姿が滑稽なだけだった。
「ちょうどいい実験体だわ。『底なし怨霊沼』」
彼女はそう口にすると、地面をかかとでトンっ、と叩く。すると、彼女を中心に半径百メートルほどの地面が、黒に染まった。
そのフィールド内に突撃していく村人たち。だが、黒く侵食された大地は名前の通り、底なし沼に変わっていた。
次々と足を絡められ、動けなくなっていく。だが、これで終わりではなかった。
「ヒィッ!? 何かに足を掴まれた!」
「ぐ、この……放せェ!」
彼らの真下の地面から、
それは、無数に伸びてくる黒い手だった。
それらは一人につき五秒置きほどで増え、ついには胴体や首にまで伸びてきた。
そして、そのまま手は人間たちを、底なしの闇に引きずり込んだ。
「や、やだ! やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだやだァァァァア!!!」
「お願いだ! 俺には娘がァァ!!」
「死にたくない! 死にたくないよォォォォォ!!!」
「聞いてるかはともかく、解説すると、この地面は私の闇、つまりは腹につながっていまーす。要するに、私は腹が満たせてハッピー、あなたたちは私に食われてハッピー、さらには引きずり込む速度を落とすことでさらに恐怖が倍増でまたハッピー。ウィンウィンを超えてウィンウィンウィンな関係だね!」
明るい狂気の笑顔で、少女は微笑む。そして、
「それでは皆さん、
パチン、と指を鳴らした。直後、この場の全ての人間が闇に引きずり込まれ、その肉体を少女に食われた。
「まずまずね。次は逃げてる奴らでも食おうかしら。まっ、追う必要ないか。
少女の言っていることは事実だった。
なぜなら、今現在、村は巨大な闇の壁に囲われて、脱出不可能の監獄へと変わり果てていたからだ。
そのことを認識した村人たちは、必死に壁を叩く。だが、それに触れたものは、先ほどの『底なし怨霊沼』のように、体を壁に吸い込まれて消えるのであった。
「さて、そろそろSAN値が削り切れそうな頃合いね。人間の恐怖は美味しいから、我慢したかいがあったわ。では、いただきます」
それから数分、その村の住人は、肉体を闇に食われ、誰一人助からなかった。
腹を空かせていた少女ーーーールーミアは、満足げに笑うと、そこを後にするのであった。
♦︎
一方その頃、西洋大陸。そこでは、伝説の大妖怪、火神矢陽が大量の妖怪を惨殺していた。
(……ったく、あのバカがいないせいでマズイ料理を押し付けることができなくなっちまった。やっぱアイツを帰したのは失敗だったか)
「何よそ見してんだコラァッ!」
「うるさい。黒光りするGは黙ってろ! 今俺様は今日の夕飯のことで忙しいんだ!」
飛びかかってきた妖怪は、うるさいハエを払うような感覚で振るわれた火神の腕によって両断される。
次々と襲いかかってくる妖怪。だが、彼にとっては、今日の夕飯をどうやって堪えるかの方がはるかに重要だった。
そんなこんなで十秒後。周りにいた妖怪は全て絶命していた。
近くの木に座り、火神は必死に思考する。だがやはり、良いアイデアは浮かばなかった。
「ちっ、しゃーない。今日も黒パンで我慢すっか」
バリバリの黒パンを噛み砕き、必死に飲み込む。
ルーミアが西洋から帰った理由。それは圧倒的な飯の不味さであった。
もちろん、この大陸にも上手い料理はある。だがそれは貴族などの肩書きを持った者にしか売ってくれなく、いくら金を持っていても旅人である彼らは、黒パンを買うことしかできなかった。
そして、その現実に、グルメ好きなルーミアが耐えられるわけなかった。結果、彼女はとうとう置き手紙だけ残して日本に帰ってしまった。
だが、あまり心配はしていない。ルーミアと火神は見えないパスでつながっているので、その気になれば、今何をしているのか、手に取るように知ることもできる。
万が一、ルーミアがやられるとしたら八雲紫あたりだろう。だが、一人では到底勝てる相手ではないので、百年ほど前に手に入れた式とともに来るだろう。
ルーミアに勝つには、最低でも大妖怪最上位クラスが二人か三人いないと話にならないだろう。事実、彼女は火神の妖魔刀になることで、大妖怪最上位の力に加え、火神自身の力も得ている。つまり、彼女は火神が知る辺りで最強の大妖怪最上位なのだ。
ルーミアが帰ったら、さっそく島中の里や街を喰らい尽くすだろう。そうなれば、さまざまな国から討伐依頼が出るだろうが、負ける条件はないはずだ。
だがもし、誰かがルーミアを倒したのなら、面白い罰ゲームを彼女にしてやろう。
楽しいことを考えることで、空腹を忘れながら、火神は元の道に進むのであった。
♦︎
ルーミアが帰ってきてから一ヶ月。日本全土は、火神の予想した通り、大混乱が起こっていた。
原因は、さまざまな里や街の住人が全て消える事件。これは無差別に行われていたので、各国は守備をガチッガチに固めて、討伐依頼の紙をばら撒くのであった。
ちょうどその頃、ルーミアは数分ほど前に滅ぼした中規模な街の屋根に座っていた。
月が昇る中、あちこちで煙が舞い上がっている。彼女の主人、火神矢陽の一部の力を暇つぶしに使用したところ、たちまちその箇所は紅蓮地獄と化した。
相変わらず、化け物のような力だと思う。いくら、広範囲に及ぶ破壊が、伝説の大妖怪一得意だとしても、この威力は反則だ。
思えば、自分も昔は叩き伏せられたな、と思考しながら、ルーミアは後ろに向けて声をかける。
「出て来なさい。そこにいるのは分かっているわ」
「……あらあら、ばれちゃったわね」
グモンッ、と空間が裂ける。そしてそのスキマから、中華ドレス姿の少女が現れた。
「ごきげんよう、闇の大妖怪にして灼炎王の犬」
「こんにちわ、合法紫ロリババア」
一瞬、世界が止まったかのような錯覚に、後から現れた従者ーー八雲藍はとらわれた。そして、次の瞬間、
「あなたも合法ロリババアじゃない!」
「黙りなさい! アンタとは気品が違うのよ! 気品が!」
ギャーギャーと、二つのうるさい暴言の嵐がぶつかり合う。そこには大妖怪最上位としての態度も、気品もあったものじゃない。こんなのが大妖怪であっていいのだろうか、と密かに藍は思うのであった。
「ギャーギャーうるさいわよ、このババア共」
そんな声が響いた直後、二人の尻は一人の女性によって蹴り飛ばされていた。
「ひっどい! 何するのよ
紫は自分たちを蹴飛ばした人物が睨む。
博麗霊羅。それが彼女の名であった。
彼女はため息をつくと、ゆっくり口を開く。
「あんたはなに敵とじゃれあってるのよ? どうせ二人共ババアなんだから、醜い争いはしないでちょうだい」
「「なんだとゴラァ!?」」
「紫様も霊羅も貴様も落ち着けェ!」
……五分後。
「さて、ルーミア。単刀直入に言うわ。無差別に人間を襲うのを今すぐ止めなさい。あなたの行為はこちらも迷惑してるのよ」
「断るわ。私は腹が減ってるから食べるだけ。あなたの言うことを聞く義務はないわ」
「……交渉決裂、ね。藍、霊羅」
「分かりました、紫様」
「三対一になるけど悪く思わないでよ。恨むなら、愚かな自分を恨みなさい」
「……ふふっ、別に気にしなくてもいいわ。三対一でも、戦力差は変わることはないのだから」
「減らず口をっ!」
霊羅の怒号と共に、戦闘が始まった。
霊羅はホーミング性能がある赤の札と、拡散する青の札をルーミアに向けて放った。
だが、今の時刻は夜だ。闇に満ちた地面から、巨大な針が剣山のように伸び、全ての弾幕を貫いた。
ふいに、横から炎が飛んできた。藍の、大妖怪クラスの巨大狐火だ。
それはルーミアに直撃し……無傷のまま終わった。
「そんなっ!」
「何も学習してないようね負け犬ちゃん! 灼炎王の愛剣である私に、炎が通じるわけないじゃない。そしてこれは、お返しよ!」
ルーミアが手を藍に向けて振るう。すると、先ほどの狐火より一回り大きな炎が、藍に向かっていった。
「……くっ!」
とっさに結界を張り、防ごうとする。だが、それを炎はやすやすと破壊し、藍に襲いかかった。
ドゴオォォォォン!!! 轟音と共に、徐々に煙が晴れていく。そこにあったものは、四重に張られた強硬な結界と、肩で息をしている紫だった。
「へぇ、よく止めたじゃない。パチパチ」
「紫様、申し訳ございません……っ」
「……いいわ、藍。あれを相手に死なないだけでも上出来よ。……でも、ちょっときついかしら」
紫が小さく苦言を漏らす。
紫が張った四重結界は、その内の三枚が破壊されていた。ただの炎でこの威力では、直撃したら無事ではすまないだろう。
「なにゴチャゴチャ話してるのかしら? 話したって無駄よっ!」
「まずはその減らない口を潰してやるわ!」
霊羅とルーミアが空中でぶつかり、乱打戦が始まる。
高速で繰り出される突きの嵐を、ルーミアは左手だけで受け止め、受け流した。そして一瞬の隙を突いて、霊羅の腹めがけてアッパーを放つ。
それを、霊羅は宙返りしながら後ろに飛ぶことで、ギリギリ回避する。だが、掠ってチリチリと焼けた髪から、その威力が十分にわかった。
さらにルーミアの追撃は続く。破壊の暴風のような拳を、霊羅は回避に専念することでなんとかしのぐ。だが、このままではジリ貧だ。
「ぶっ飛びなさい!」
「……ガッ!? ハァ……ッ!」
とうとうルーミアの拳が、霊羅の体をとらえた。腕をクロスすることで直撃は防ぐが、そのあまりの威力に地面に吹き飛び、小さなクレーターを作ってしまった。
だが、霊羅は諦めない。すぐに立ち上がると、再びルーミアに突撃し、その腕を振るった。
「バカの一つ覚えね。 学習能力はないのかしら?」
「まずは周りを見ることをおすすめするわ」
「……? ……ッ!?」
ルーミアはちらりと左右を確認する。そして、とっさに能力を発動しようとした。
彼女の左右、そこからは霊羅と全く同じタイミングで、紫と藍が接近してきていたのだ。
いつの間に、とルーミアは意識を一瞬目の前の存在から離してしまう。それが、彼女たちのチャンスとなった。
霊羅は、霊力で強化した拳で、藍は、自慢の爪で。そして紫は、いつの間にか持っていた曲刀を振るい、ルーミアに同時に攻撃をしかけた。
「悪あがきが!」
ルーミアの能力が発動する。とっさに現れた闇の壁が、藍と霊羅の攻撃を弾いた。
だが、紫はさらに加速し、壁が出来上がる前に、その刃でルーミアの右腕を切り裂いた。
驚くルーミア。それと同時に壁が崩壊した。
それを見て、霊羅はニヤリと笑う。
「その時を待っていたわ! 『夢想封印』!!」
霊羅の周りに、さまざまな色をした巨大弾幕が、七つ浮かび上がる。
それはルーミアに向かって飛んでいきーーーー
ーーーードゴオォォォォンッ!!! と、大爆発を起こした。
「ドラクエ11発売したぞォォォォォ!!! 新作ゲームやりすぎで宿題忘れる部類の人間、狂夢だ」
「ドラクエ11発売したぞォォォォォ!!! ついついやりすぎて朝手に入れた時から次の朝の六時までやり続けてた引きこもり(リアルです)作者です」
「朝六時までやってたって言ってたが、今どれくらい進んだんだ?」
「今はだいたい中盤ですかね。これ以上はネタバレしそうなのでやめときましょう」
「それにしても、今回はルーミアのパートだな」
「はい。ルーミアさんのパートは、終始紫さんとの戦闘で終わる予定です。そして新キャラとして霊羅さんが登場しました。それではステータスオープン」
博麗霊羅:
総合戦闘能力:2万
「そういえば、ルーミアは伝説の大妖怪と俺を抜かすと最強なんだっけな?」
「そうです。つまり紫さんは、彼女にとって珍しい格上との戦いになるんですね」
「ちなみに火神はどうしてんだ?」
「バレないようにワイン片手に観戦しています」
「最低のクズだろアイツ」