俺は今ある女神と酒を飲んでいる。
「それでね〜サイタマくん! ベルちゃんはね〜かわいいんだよ〜」
俺の片腕に抱き付きながらそんな事を言っているのはヘスティア。…まだ飲み始めて30分もしてないんだが、まぁ初めて眷属ができたから嬉しくてはしゃいでしまったんだろう。しばらくヘスティアの話を聞きながら酒を飲んでいると、ふと腕に感じていた重さが無くなり隣を見ると
「えへへーベルちゃーん大好きだよー」
そんな寝言を言っているヘスティアにお前は親父かと思いながらもう寝てしまっている彼女を背負う。ヘスティアを起こさない様に彼女のホームである教会に向かった。
ヘスティアを送り届けた後(ベルちゃんとやらには合わなかった)、日も落ちて暗くなってきたので俺もホームへ向かっていた。しばらくしてホームに着くと門の目の前にアイズが下を見つめながらどこかつまらなそうに地面を蹴っていた。そんな子どもっぽい仕草をしているアイズを見て苦笑をしていると、俺に気付いたのかバッっと顔を上げ此方に向ける。一瞬、喜んだと思ったら次の瞬間には頬を膨らませながら、いかにも私怒ってます! といった表情に変わっていた。
「…何処行ってたの」
「少し友達と飲んでただけだよ」
「心配した」
と服の裾を握ってくるアイズ。そんなアイズにすまんすまんと言いながら頭を撫でてやると段々怒っている表情が和らいでいき最終的には笑顔になっていた。
「サイタマ先生ーーーー!」
俺の事を呼ぶ大きな声が聞こえてきた。まぁ俺を先生と呼ぶ奴は1人くらいしかいない。
「ベートか」
「サイタマ先生、ご無事だったんですね!」
ベートの勢いに若干引いているとアイズが俯きながらベートに近づいて行く。ベートもそれに気付いたようだ。
「どうしたんだアイズ? 俺は今、先生にだな…」
「…えい」
え?
「え?」
心の声が思わず出てしまうくらいの衝撃を俺は受けた。ベートが蹴られて物凄い勢いで壁に激突して現代アートの様になっているからだ。Lv.5の力で蹴られるとこんな事になるのかと関心しながら、ベートを助け出そうと近づこうとしたときアイズに手を捕まれた。
「アイズ?」
「そろそろご飯の時間だから行こ」
「でも、ベートは?」
アイズはチラッと現代アートの様になっているベートを見て
「ベートさんなら大丈夫」
…一体ベートはどんな扱いなのだろうか? まぁベートもアイズと同じLv.5だから大丈夫だろうと無理矢理自分を納得させ、頭の隅に追いやり、俺はアイズと一緒に食堂に向かった。
やたら甘えてくるアイズの相手をしながらの夕食を終え、団員が明日に行うダンジョンの遠征のため就寝している頃、俺は眠れなかったため酒を持ってホームの屋根の上にいた。
「何やサイタマこんなとこにおったんか」
俺が月を見ながらちびちびと呑んでいるとロキがやってきた。
「月見酒なんて風情やなー」
「あぁそうだな」
ちゃっかり俺の隣にやってきて酒を催促するロキに酒を渡し暫くの間、酒を二人で飲む。
「明日からの遠征…何か嫌な予感がするんだ」
「それはサイタマの勘か?」
肯定の意志を示すために俺は首を縦に降る。そうかと言いながら顎に手をあてながら何かを考えているロキ。
「でも、大丈夫や」
何故? と問いかけると
「ウチはな、家族の皆の事を信じとる。ウチラが力を合わせたら越えられん壁なんてない」
それでも不安なんか? そう満面の笑みを此方に向けてくる。俺はいやと答えた。
「ロキが俺達の主神でよかったよ」
少し頬を染めながらそうやろと言いながら何度も俺の背中を叩いてくる。…急に酔いが回ってきたのだろうか? その後凄い勢いで酒を飲んでいたロキはすぐにダウンしてしまい、俺の膝を枕にしながら眠ってしまった。そんなロキの頭をなでながら俺は酒を飲み続けた。