腐った世界で強者を求め戦う少女   作:抹殺完了

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第9話 The paradox of"tell and apple"

「そんな⁉︎」

 

次々と放たれるレーザーを光は躱し躱し躱せなかったら盾でレーザーを防ぐ

 

「そんな…4機のビットの一斉射撃をこうも⁉︎」

 

「さてそろそろ……此方から行くぞ?セシリア・オルコット」

 

ゾクリとセシリアの背筋が凍り

 

「ブルーティアーズッッ‼︎」

 

其れを掻き消すように自律型ビットの名前を叫ぶ

 

呼ばれたビットは直ぐに行動を開始し光の死角に潜り込もうとするが潜り込むよりも先に光はその場から全速で後退

 

「さぁセシリア・オルコット、俺の射程内にビットが全機入っているぞ。」

 

そう言いながらガチャリと盾一体型のクロスボウをビット群に向けるが

 

「ふん!其れが如何したのと言うのですの!所詮たった一本の矢位‼︎」

 

たった一本の矢位どうて事は無い、そう自分に言い聞かせる。

 

が其れを嘲笑うの様に光は

 

「分散射撃(ディスパーションショット)」

 

そう言いウィリアム・バロウズのクロスボウから矢が放たれ矢が『分裂』し4機のビットを破壊する。

 

「矢が分裂した⁉︎」

 

有り得ない!矢が分裂するなんて‼︎

 

だが…今目の前でその有り得ない事が起きてしまった。

 

(不味いですわ…ビットが4機とも落ちてしまいました。)

 

後2機、弾道型ビットが残っているが其れは飽くまでも切り札で迂闊に使いたくは無いし其れに

 

(当たる気がしませんわ…)

 

もし当てるのなら自分も犠牲にしなければ行けないだろうが、其れをやすやすとやらせてくれる相手でも無いだろう。

 

(一年最強……偽りでは無いですわね。)

 

 

 

『御堂、矢の装填まで後1分』

 

矢の装填までの時間を伝えるウィリアム・バロウズ。

 

光は右手で握っている剣を胸の前に置き突く体勢をとる、

 

もともとウィリアム・バロウズはこの巨大な盾一体型のクロスボウの所為で必然的に両手で握れず片手でその剣を振るわなければいけない、しかし剣は両の手で握った方が力があるのは当たり前で近接戦闘になれば片手のウィリアム・バロウズは押し負け、この装甲に敵騎の刃が食い込む。

 

ならどうするか?

 

斬るのでは無く、突けば良い。

 

だが…押し負ける云々は俺が前まで居た世界での事でどうにもこのISの力は余り無いらしく片手ででも充分対抗出来る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いですね光さん!国家代表候補生を圧倒するなんて‼︎」

 

「ふっ…オルコットめやはり光を舐めていたな…だがもう遅い」

 

第3アリーナ

 

其処に二人の教師 山田麻耶と織斑千冬がいる

 

山田麻耶はこの二人の戦闘…特に織斑光がイギリス国家代表候補生を圧倒しているのを驚いている。

 

其れもそうだろう、一見唯の素人が国家代表候補生を圧倒しているのだから、IS戦で素人が国家代表候補生と戦うという事は唯の一般人が軍人と戦うと同じなのだから。

 

「しかし矢が分裂するなんてな…」

 

織斑千冬は一旦、光のあのISについて篠ノ之束から聞いた事を思い出す。

 

 

 

 

「ちーちゃん、ひーちゃんのIS『劔冑』何だけどね。」

 

「あぁお前が造ったのだろ?」

 

「ううん…確かに束さんが1から造った物もあるけど…殆どが束さんが手を付ける前から完成していたの。」

 

「何だと‼︎」

 

「実はね…気が付いたら待機状態の劔冑と設計図が研究室に置かれていたの……最初は興味本位で造ってたんだけど」

 

「造っていた?」

 

「…余りにも戦闘に特化しているの、既存のどのISよりも…だけど既に完成していた機体のデータも見てみたけど……正直既存のどの兵器でも勝てないかも知れない…ちーちゃんも見たでしょ?ひーちゃんが銀星号を纏って二千ものミサイルをたった一撃で全て破壊したの」

 

「あぁ…そもそもあの銀星号は何なのだ⁉︎」

 

「実の所分かったのが銀星号は本当の名前では無いらしいんだよね、何でも銀星号の本来の名前は 勢洲右衛門尉村正二世何だって。」

 

「勢洲右衛門尉村正二世……」

 

「ちーちゃん、ひーちゃんはIS学園に行くんでしょう?ならひーちゃんに勢洲右衛門尉村正一門と相州五郎入道正宗を特に村正は絶対に使わないでって言って……じゃないとひーちゃんはいっくんを『殺さない』と行けないから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「既存のどの兵器でも倒せないか…」

 

「え?」

 

どうやら口にしていたらしく隣に居る山田君に聞こえていたらしい。

 

「いえ何でも無い唯の独り言だよ山田君」

 

「はっはぁ……先輩アレを!」

 

山田君の声で私はアリーナを見る

 

其処には盾一体型のクロスボウを構えている光の姿だった。

 

ほう…

 

「此れで決めるつもりか光」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

 

スゥーハァーと息を吐き、目をゆっくりと閉じる

 

そしてゆっくりと目を開ける。

 

劔冑越しで見えないが、目を開けた光の目は何時もの勝気な目では無く、正しく異形の目だった。

 

光の目に『大量の小さな目』があり、それはまさに虫特有の『複眼』そのものだった。

 

そもそも複眼とは元々、昆虫が外敵から身を守る為広角な視界と動くものに対する鋭敏な認識を複眼で獲得した物である。

 

この複眼は元々大鳥香奈枝という、このウィリアム・バロウズの仕手が持っていた異形の目なのだが…

 

そしてこの世界に転生した後、何故か光にも備わっていたのだ、だが大鳥香奈枝の様に常に複眼という訳ではなく、目を閉じ集中し目を開けると複眼になるという物だ。

 

「The paradox of"tell and apple"」

 

ウィリアム・バロウズのクロスボウから矢が発射された

 

「ッ‼︎」

 

セシリア・オルコットは最初矢が分裂するのではと警戒したが一向に矢が分裂する予兆を見せない。

 

ホッとしその矢を躱し光にライフルを向けるが……ブルーティアーズのハイパーセンサーが何と此方に向け曲がってくる矢を捉えた!

 

「なん……ですっ…て‼︎」

 

何故矢が曲がるのか?誘導装置など付いているわけが無い矢が何故曲がるのか⁉︎

 

 

 

さて此処で光が装甲している、このウィリアム・バロウズについて説明しよう。

 

ウィリアム・バロウズとはシュヴィーツの国宝弓聖テルを模して造られた贋作であり、陰義を除く性能はほぼ完全にコピーされている物だ。

 

陰義(しのぎ)とは真打(IS的に言えば専用機)の中でも極一部が使える特殊能力だ。

 

このウィリアム・バロウズの陰義は自在操作矢又はThe paradox of"tell and apple"(テルの矢は決して林檎に届かない)と言う背理論を元に矢を操作する陰義を持っているのだが…この陰義は事実上、理論倒れの陰義なのだ。

 

「射撃点から目的点までの距離の中間に中間点Aを設定する。矢が目的点に到達するには必ず中間点Aを経由しなければならない。そして射撃点より中間点Aの間に更に、中間点Bを置く。中間点Aに到達するには中間点Bを経由しなければならないが、もし射撃点とBの間に中間点Cがあったなら? 更にその間にD、E、Fと無数の中間点を設置すれば? テルの矢は決して林檎に到達しないだろうと言う、この背理論を元に、「放たれた矢が射線の中間地点に到達する度に、再発射(方向転換)することが出来る」という機能なのだ。

 

此れを図で説明するなら

 

   的

   |

   |

   x

   |

   |

   発

発射点(発)と中間点(x)を通る直線上にターゲット(的)があるとする。

      的

   |

   |

   A

   |

   |

   発

矢(A)が中間点に差し掛かった時点で的のターゲットの位置が動いてるならば

      的

     /

    /

   A

  /

 /

このように、ターゲットと矢を通る直線上に再発射点(再)を設定し、

「矢は再発射点から放たれている」ということにすることで矢の軌道が変わるのである。

 

然しこれを実行するのはかなり…いや不可能なのだ

 

何故なら

 

 

劔冑で強化され放たれる弩矢の速度は銃弾すら凌ぐ、これは肉眼で発射した拳銃の弾丸の軌跡と軌道を観測し把握し更に進路上の中間点を認識し干渉しろと言うの等しい。 当然人間には…光でも不可能な条件が付加されたウィリアム・バロウズは理論倒れと言われている。

 

此れでこのウィリアム・バロウズが贋作と言われる理由が分かっただろう。

 

 

だが…その実行不可能の陰義が今発動している

 

其れは光のあの異形の目が理由だ。

 

この異形の複眼で強化された知覚能力でこの陰義を使用しているのだ、複眼を使用している光は今正に時が止まって見えているのだ!

 

そしてこの理論倒れのこの技を

 

「背理の一射(パラドックス・シューティング)」

 

ガスンッ‼︎

 

必殺の矢がブルーティアーズに深々と刺さる

 

「グゥゥッ‼︎……ですが!まだ私は負けていませんわッッ‼︎インタァセプタァァァッッ‼︎‼︎」

 

セシリア・オルコットは短刀を出現させ突撃!

 

正に此れを破れかぶれ、敗れる運命の哀れな敗者の無駄な足掻きとでも言おう。

 

光も剣を構え突撃

 

「ブルーティアーズは!まだ!ありますのよッ‼︎」

 

 

バシュン‼︎

 

 

スカート部分から1機のミサイルが発射

 

至近距離からの音速の質量弾 ミサイルが1機発射される

 

回避不可能!否‼︎

 

 

今の光には異形の複眼がありその驚異の知覚能力で咄嗟に上に少しだけ上昇しミサイルに一瞬足をつけミサイルを『踏み台』にする!

 

「ッ!流石ですわ光さん!ですが……切り札はまだありますのよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

ブルーティアーズ発射ッ‼︎」

 

 

一機だけ残していたミサイルを光目掛け発射、もし当たれば自分も危険…だが!

 

「危険を犯さないで何が勝利ですかッ‼︎」

 

ドォォン‼︎

 

直撃‼︎

 

セシリア・オルコットも無論無傷では無く、至近距離でのミサイル攻撃で所々装甲が焼かれ損傷している。

 

ニヤリと笑みを浮かべるセシリア・オルコット

 

「流石ですわ光さん、流石織斑先生に一年最強っと言われるだけありましたわ……ですが…私の方が一枚上手でしたわね。」

 

ドスッ

 

「えっ?」

 

「誰の方が一枚上手だセシリア・オルコット?」

 

倒したはずの光の声が聞こえる、そして自分の右胸に刺さっている剣

 

『ブルーティアーズエネルギーエンプティ‼︎勝者 織斑光!』

 

 

 

ワァァと会場に居る観客が歓声と拍手を素晴らしい戦いを見せてくれた二人に送る。

 

 

悔しいのに何故か笑みを浮かべて

 

「光さん」

 

セシリア・オルコットはあの自分を倒した白い騎士の名を呼ぶ。

 

「何だ?」

 

「次は私が勝ちますわ」

 

白い騎士 織斑光の表情は見えないが

 

「受けて立とう」

 

笑っているように見えた。




セシリアがイケメンになってる……だと⁉︎

あっセシリアはこの戦いで光に惚れました(好敵手)

一夏とのフラグ?一夏には光が居ますし

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