「光…」
朝 医務室で寝ている光の頭を撫でる。
「早く目を覚ましてくれよ……」
あれから光はずっと目を覚まさず、寝たっきりになっている…まるで童話の眠り姫を連想してしまうが、キスで目を覚ましてくれるなら俺は幾らでもキスをしていただろう。
ふと備え付けの時計を見ると既にホームルームの時間だ、つまり…
「遅刻か…」
本当なら、ずっと光の側に居たいが…千冬姉に遅刻しても良いが授業には出ろと言われているので、準備を整え。
医務室から出る前に光にキスをする。
「また来るからな光。」
「織斑、先ずは席につけ。」
「はい」
教室に着くと一言千冬姉からそんな事を言われ、席に着こうとするが
「貴様が…!」
千冬姉の近くに立っている、三人の男女の内の一人…銀色の髪に眼帯をしている神秘的な小柄な少女が憤怒の表情で此方に詰め寄ってき、右手を振り上げビンタをしようとする
「遅い…」
それは余りにも遅く、仮に当たったとしても対して威力が無さそうなビンタを繰り出した右手を掴み捻る。
すると少女がクルリと回転して地面に倒れる。
「なっ⁉︎……認めるものか!貴様が教官の弟などっ‼︎」
地面に倒れた少女は其の儘の体制で目に涙を浮かべながら、そんな事を言うが
其れを無視して席に着く、別に他人がどう思おうが人の勝手だし…正直付き合いきれ無い。
「さて…今から転校生に自己紹介をしてもらう、先ず神居。」
「はい!」
神居と呼ばれた、黒髪の優しそうな表情をしている男が一歩前に出て言う。
「神居古谷(かむいふるや)です!偶然ISを動かしてしまい、このIS学園に来ました!分からない事が沢山あるので教えてくれたら嬉しいです!」
パチパチと歓声は無くただ、拍手だけが教室に響く。
「えっ?」
困惑の声が神居古谷から漏れる。
今この一年一組は光が大怪我をした所為で入学式の様なハイテンションが維持出来ていないのだ。
其れからフランスの第三の男性操縦 シャルル・デュノアと先程俺にビンタしようとした、ドイツのラウラ・ボーデヴィッヒが其々自己紹介をした。
「さて…其れでは織斑、同じ男同士二人の面倒を見てやれ。さて次の授業は二組と合同で模擬戦闘を行う‼︎直ぐに着替えて第二グラウンドに集合‼︎………其れと織斑、同じ男の神居とデュノアの面倒を見てやれ。」
可笑しい
まず最初に感じたのは違和感だった。
(何で僕が自己紹介したのに反応薄いの⁉︎二人目の男性操縦者なんだよ⁉︎)
本来なら黄色い歓声が僕の自己紹介の後に響く筈だった、だが実際はどうだろうか?
黄色い歓声が一つも飛んで来なかった。
(あれ?そう言えば…何で空席が二つもあるの?)
先程から気になっていた二つの空席、一つは光のそしてもう一つは自室謹慎をしている、篠ノ之箒の席だ。何故二つの空席があるのかと不思議に思うが…
「君達が織斑君と神居君であってる?」
(先ずはシャルロットを攻略しないとな。)
シャルルの問いに答えようとする神居だったが、一夏に其れを遮られる。
「話は後に先ずは更衣室に急ぐぞ!」
そう言いシャルルの手を掴み、走り出す一夏。
暗い部屋に彼女は居た。
名を篠ノ之箒と言い、布団に包まり体育座りでベッドの上に座っていた。
おもむろに彼女は携帯を開き、通話を掛ける。
其れから直ぐ通話が繋がる。
「もしもしひねもす〜おっひさ〜箒ちゃん。」
軽い返事をした彼女こそ、ISをたった一人で造った世紀の大天災で篠ノ之箒の実の姉 篠ノ之束だ。
「姉さん、私は許されない事をしてしまった。」
「うん…知ってるよ」
先程と変わり悲しそうな声で答える、篠ノ之束。
「姉さん…力が欲しい……二人を守る力を…もうあんな過ちを繰り返さないためにッ!」
「……わかったよ箒ちゃん、なら確か今度の臨海学校があるよね?その時に渡すよ……ハイエンドかつハイスペック、白と銀と共に並ぶ紅『赤椿』を」