炎の吐息と紅き翼   作:ゆっけ’

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6:不具合

 尖った山々の間から顔を覗かせる朝日。穏やかな日差しが夜の闇を払拭し、それを待ち侘びていたように、朽ち果てた家々が色を取り戻していく。

 

「んー……ふっ……くっ……ん……」

 

 色っぽい声をあげてとぐろを巻いていた下半身をピンと伸ばし、ディースはベッドの上で伸びをした。窓から差し込む朝の日差しが顔に当たり、意識が覚醒しだしたらしい。寝心地は決して良いとは言えなかったが、それでも十分な睡眠を取る事が出来たようだ。

 

「んー…………はれ? ……リュウちゃん?」

「おはようございます、ディースさん」

 

 むくりと上半身を起こし、ディースは寝惚けた目を擦りながら尋ねた。彼女の目の前には、何事もなかったように食事の用意をするリュウの姿がある。

 

「リュウちゃん早起きねー……。あれ、キティは……?」

 

 まだどこか半分夢うつつなディースは、同じ部屋に寝ていたハズの少女を探して周りを見回した。エヴァンジェリンはディースと違い日の出と共に起き出したので、この場には居ない。

 

「もう起きてますよ。まずはあっちで顔洗って来たらどうです?」

「ふあーい……」

 

 のそのそと重たい足取りで洗面所へ向かうディース。そのいつも通りのマイペースな仕草に苦笑しながら、リュウは何となく心が軽くなった気がした。

 

「……」

 

 結論から言うと、リュウは全くの無事であった。バルバロイが最後の力を振り絞り、自爆的に放った石化魔法。流石にあの時ばかりは、リュウももう駄目かと肝を冷やした。しかし不思議な事に、魔法はリュウに何の効果を及ぼす事もなく、放った当人のみを石像に変えただけだった。

 

「……」

 

 何故自分は無事でいられたのか。訳が分からずしばらくその場で硬直していたリュウだったが、どれほど時間が経過しても、石となったバルバロイはもう動く事はない。その為、リュウは自分の足を掴んでいた石像を放置して、ユンナの家に戻ってきたのだった。

 

 あの岩場周辺には、あらかじめバルバロイがリュウ以外の介入者を妨げる結界の様なものを張っていたらしい。そのおかげか轟音が村まで届いていただろうに、二人と一匹はスヤスヤと寝息を立てていた。そして戻ってきたはいいものの眠気などとうに吹き飛んでいたので、怪我を治癒魔法で治したリュウは、そのままじっと朝を迎えたのだった。

 

「ようやく起きたか。全く、こんな場所で爆睡出来るお前の図太さには呆れるよ」

「何よキティ。それとこれとは話が別なの」

「あー、あの。朝食出来たんで良かったら」

「あら、流石リュウちゃん手際が良いわねー。それじゃ頂くわ」

 

 朝から喧嘩に発展しそうな二人のやり取りを絶妙なタイミングでカットに入るリュウ。簡素な朝食を取っている間も、リュウは昨夜の出来事について何も言わなかった。もう終わった事であるし、二人に余計な不安を与えたり心配させるつもりはない。ディースは全然気付いておらず、エヴァンジェリンはどことなく妙なリュウの挙動を怪しみつつも、追求したりはしなかった。

 

「じゃあ、そろそろボッシュの所へ行きましょうか」

「そこにおチビちゃんの用事があるってわけね」

「フン……あまり録なものではなさそうだがな」

 

 素早く食器類を片付け、用意を済ませたリュウ達はピラミッドのような外観のユンナの研究所へと向かった。朝早くから準備があると言って、先に向かったボッシュがそこで待っているのだ。研究所内部は入ってみると薄暗く、どこか不気味な雰囲気に包まれていた。見物しながら、口数少なく進んでいく三人。

 

「なんだい? この薄気味悪い所は……」

「何かの遺跡……か? それにしては凝った創りだが」

 

 ユンナの研究室以外、この建物は確かにエヴァンジェリンの言う通り遺跡のような印象を受ける。まぁそれは、リュウにとってはどうでもいい事だ。それから少しして、迷う事なくあの怪しげな機械に囲まれた部屋にリュウ達は辿り着いた。そこはかつてバルバロイに襲われ、墓を建てようと多少片づけた時のまま、何一つ変わっていない。

 

「……ここだけ、他とは随分違うわね」

「機械だらけだな」

 

 ディースとエヴァンジェリンも、機械に囲まれた研究室の異様さを不審に感じている。そんな二人を更に奥へと案内するリュウ。所々千切れた配線や、壊れた天井から落ちてきたであろう岩を跨ぎ越えて、徐々にカタカタという物音が聞えてきた。音の発生源は一足先に研究室へと入っていたボッシュだ。

 

「来たよボッシュ。それで、何があるって?」

「おう相棒。もうちょっと待ってくれ。あと少しなんだ」

「?」

 

 ボッシュは半分壊れたような機械を事も無げに操作していた。ボタンやスイッチのようなものが乗った基盤を、カタカタ器用に叩いている。リュウ達三人はそれを妙な気分で見守った。

 

「……よし。相棒、あれを見ててくれや」

「あれって……?」

 

 操作が一区切りついたのか、ボッシュは脇にある機械に前足を指し示した。その機械は襲われた時の惨事を逃れていたらしく、それほど傷ついていない。何か丸い台座のようなものが目立つ不思議な機械だった。

 

「見てろよ」

 

 ボッシュがパチっとその機械の下に付いているスイッチを入れる。すると辺りに、ノイズが混じった声のようなものが響いた。

 

『……や、私を呼び起……は誰で……』

「!?」

 

 次第に機械が安定しだし、ヴンとテレビの電源を入れたような起動音が耳を突く。そしてリュウ達の目の前にある丸い台座の上に、小さな人の形……立体映像のユンナの姿が浮かび上がった。

 

「なに……これ……」

『や、私が目覚めたと言う事は、ユンナ()は死んだようですね』

 

 唖然とするリュウの前で、台座の上のユンナの幻影はまるで人間のように目を細めた。形は小さい上に透けている。時折像がブレて乱れる事があるが、その姿に喋り方、顔の雰囲気、全てリュウの知るユンナと瓜二つだった。唯一違いを挙げるとすれば、若く見える事くらいか。

 

「ボッシュ、これって……」

 

 リュウは何が何だかわからないまま、装置のスイッチを押した姿勢で固まっているボッシュに尋ねた。聞かれたボッシュは忌々しそうに、ユンナの幻影を睨みつけている。

 

「この前よ、思い出したんだよ。俺っちは、このクソジジイに捕まって色々実験されてた。そんでコイツが死んじまったりした場合、俺っちは……どうしてもこの機械を動かさなきゃならなかったんだ」

『や、その通りです。ご苦労でした。外部生体記憶媒体四号。無事にユンナ()の意識をトレースしたバックアップである“私”を起動してくれましたね。プログラムが正常に作動した事は、実に喜ばしい』

「……ケッ」

 

 ユンナの幻影は笑みを浮かべてボッシュを見た。それは自分の作った作品が、自分の思う通りに動いた事に満足した笑みだ。言われた方のボッシュは、終始幻影を睨みつけている。自分を捕まえて色々と酷い事をした相手の思い通りに動かされた事と、それに逆らえなかった自分に腹が立っているようだった。

 

「待って、外部……何? ……プログラムって……?」

『や、そのフェレットは私が作製した“外部生体記憶媒体”の四号機。その中にはユンナ()に万一の事があった場合に目覚め、私を呼び起こすという緊急用のプログラムが刷り込まれていたのですよ』

「……」

 

 ユンナの幻影の発言に、リュウは言葉を失った。そう言えばボッシュと初めて会ったのは、この場所での惨劇の後だ。あの時はボッシュがそれまで寝ていた事に対して、随分太い神経を持っているなぁとだけ思ったが……今の話を聞くと、ユンナが死亡したからこそ起きた、と取れる。そして幻影は次にリュウ本人に目を向けて、やはり満足そうに頷いた。

 

「や、ユンナ()の悲願、人造龍神も無事に起動したようですな。私はついに、“うつろわざるもの”をこの手で造り出す事に成功しましたか」

「……」

 

 訳がわからない。今、幻影は自分に対して何と言った? “人造龍神”。初めて聞く、そしてどこか不気味な響きを感じる言葉。リュウはユンナの幻影を、ただ茫然と見つめている。

 

「リュウちゃん、この人は……?」

「……」

 

 ユンナと全く面識のないディースとエヴァンジェリンは、リュウとボッシュしかわかっていないこの現状に対し困惑を浮かべていた。それにいち早く反応したのは、リュウ達ではなく幻影だ。疑問符を浮かべる二人に対して、仰々しく頭を下げる。

 

『や、これはこれは見知らぬご婦人方。このような姿で失礼致します。私の生前の名はユンナ。ただのしがない研究者ですよ』

「研究者だと?」

「あんた、一体何なんだい? 龍の民の隠れ里のこんな場所に、こんなに機械を運び込んで、何を……?」

 

 二人はこの部屋の機械の持ち主であろうユンナの幻影を警戒していた。訝しむエヴァンジェリンは、単純にユンナの雰囲気が気に入らないから。緊張から口調が戻っているディースは、ユンナの姿形が龍の民と違い過ぎる……言ってみれば部外者である事からだ。

 

『や、あなた方はご存じないと思いますが、ここは龍の民の墓として作られた建物なんですよ。この場には龍の力を弱める働きがありますので、ここで人造龍神の研究開発及び調整を行っていたわけです』

 

 墓。このピラミッド状の建物は、龍の民が最後に眠る地であると言う。道理で何か不思議な雰囲気のする建物な訳である。そんな風に何にでもスラスラと答える幻影に、リュウは口を閉ざしかけていた。今、僅かに話した事で生じた疑問の……そこから先を知りたいと思う自分と、知りたくないと思う自分が居る。どちらの気持ちが大きいかは、手が微かに震えている事が答えだ。

 

「オマエがさっきから言っている“人造龍神”とは何の事だ? コイツの事なのか?」

「リュウちゃんは、龍の民の最後の生き残りの筈だろ? あんたは何でそのなんたらって名前で呼ぶんだい?」

「……」

 

 先程幻影が自分を見て言った言葉。それがどういう意味を持つのか。リュウは何となくわかりかけている。それを確認したくない気持ちはあったが、二人が矢継ぎ早に質問を飛ばした事で、リュウの意図に関わらず幻影は話をしだした。

 

『や、そうですな。順を追って説明しなければなりませんが、端的に申し上げますとソレは紛れもなく龍の民…………の、身体です。但し一度命を落とし、魂を無くした龍の御子のものですが』

「!?」

 

 リュウを含めた三人とも、一瞬本気でその言葉の意味する所を理解できなかった。つまりリュウは死体だと、ゾンビだとでも言うのか? いや、そんな筈はない。体温がある。血が流れている。自分という確固たる存在として生きている。リュウは自分を顧みて、そこでふと思い出した。一番最初にユンナに言われた事を。この身体となった自分が、どのようにドラグニールに現れたかを。

 

「……俺は、空から降ってきたんじゃ?」

 

 ドラグニールの村に“天よりうつろわざる龍の御子が遣わされる”という神託が降り、その通りにリュウが現れたのだという話。リュウはそれを最初にユンナから聞かされたのだ。疑いつつも、そうなんだとリュウは心のどこかで信じていた。だが幻影は、そんな話まるで知らない、という風に首を捻る。

 

『空? 何の事かわかりませんが、それは違います。あなたは私が生涯を掛けて造り上げた最高傑作。“人造龍神”の開発名称を与え、私の持つ技術の粋と龍の民の力を結集した、対女神を目的とした生物兵器……“うつろわざるもの”ですよ』

「……」

 

 ボッシュは目を閉じ、ディースとエヴァンジェリンは絶句し、そしてリュウの顔からは表情が消えていた。幻影の、まるで自分の実績を誇るかのような物言い。言葉の端から滲み出ている自信。それらが、今言った事が嘘や冗談ではない事を物語っている。リュウは縋るようにもう一度声を絞り出した。

 

「じゃあ……今俺が言った話は……」

『や、全くのデタラメですな。大方、起動した直後のあなたに吹き込む為の、稚拙な作り話と言った所でしょう』

 

 デタラメ。ハッキリとそう言われて、リュウは話の中の矛盾に気が付いた。あの時、その話をしたユンナは「村の神官に神託が」と言っていた。だが村にはリュウとユンナと村長以外、誰も居なかったのだ。あの時感じた腑に落ちなさは、その事だった。ちょっと考えればすぐにわかるその矛盾。何故自分は、こんな簡単な事にすら今の今まで気付かなかったのか。

 

「……」

『や、しかし妙ですな。何故人造龍神に、ここまでハッキリとした自我があるのか……』

 

 リュウをまじまじと見る幻影は、何事かぶつぶつ呟いている。リュウは、思ったよりも冷めている自分に戸惑っていた。頭の一部が妙に冷静に、幻影の言っている事を理解している。

 

「おい」

『何でしょう』

「“うつろわざるもの”とは何だ?」

 

 エヴァンジェリンは、会話に出てきた自分の知らない単語の説明を求めた。彼女の幻影に向けられる視線は、既に氷点下を下回る冷たさだ。だが幻影はそれを意に介してすらいない。自らの思想を楽しげに披露する幻影には、まるで生きているかのような錯覚を覚える。

 

『や、“うつろわざるもの”とは、有体に言えば神の事ですよ。永遠の命を持ち、“時”にすら支配されない存在。それこそ神であると、私は定義しました』

「ほう……。ではその定義に沿えば、永遠の命を持つ真祖の吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)も神という事か?」

 

 エヴァンジェリンのどこか挑発的な言葉に、だが幻影は首を横に振った。

 

『いいえ。確かに真祖の吸血鬼は不老と言えるでしょうが、その力を月齢に左右される側面があります。それでは“うつろわざるもの”とは言えない』

「……」

「じゃあ、俺は……?」

『や、“うつろわざるもの”は極端な話、“食べる”必要や“時”による影響などありません。まぁ、あなたには龍の民の生体機能の名残りとして消化器官を残してあるので、食べられないわけではありませんがね』

 

 まるでリュウの事をただの有機物の塊であるかのように、機械的に扱う幻影の言葉。言われた本人よりも、その幻影の話しぶりに怒り心頭な人物がいた。龍の民に入れ込んでいた女性、ディースだ。

 

「……さっきから黙って聞いてれば、訳のわからない事をぺらぺらと……大体、リュウちゃんがあんたが造った兵器だって? 一体どういう事だってのさ!」

 

 ディースは語気を荒げた。先程からのリュウやボッシュに対する幻影の物言いはディースにとって……いや、ごく普通の道徳心を持つ者にとって、聞くに堪えない話である。しかし幻影は淡々と話す。

 

『や、ではもう一度お答えしましょう。そこに居る“人造龍神”は、常識を越えた力を持つ“女神”に対抗する為に、彼女と同じ力が必要と悟った龍の民達の協力の元に私が造り上げた“うつろわざるもの”です。言わば、彼らの最後の希望』

「だから……訳がわからないと……!」

「ディースさん!」

 

 ディースの幻影を見る目には、怒りが宿っていた。手に魔力が渦巻き、今にもそれが放たれそうになる。だが寸でのところで、リュウがそれを強く遮った。

 

「リュウちゃん……?」

「……。ユ……あんたがその、人造龍神てのを造った経緯について……話して。最初から、全部」

 

 ディースを制し、リュウは幻影に静かに問い掛けた。自分が生まれた背景を。“自分”がどうしてこの身体となったのかを知るために。手の震えを抑えて。幻影は少しの間目を閉じて、その後ゆっくりと口を開いた。

 

『や、わかりました。少々長くなりますがご容赦を。話は私がこの村を初めて訪れた時にまで遡ります。当時、私は長い研究の末に確立した“うつろわざるもの”創造の素体とする強靭な生命体を求め、世界中を彷徨っていました。そしてある日、ふとした偶然からこの地へと辿り着きました』

「……」

『初めは私を警戒したこの村の住人達でしたが、私が女神とは何の関係もないただの研究者であることを知り……外の人間との交流に飢えていたのでしょうな、安心したのか様々な話を聞かせて下さいました。お返しにと私の知る知識を幾つか伝えている内に、私はこの村が“龍の民”の隠れ里である事を知ったのです』

 

 ボッシュも含めた全員が、幻影の話を食い入るように聞き入っていた。

 

『私は彼ら龍の民が持つ大きな力に、ある種の確信を抱きました。龍の民の身体こそ私の夢、“うつろわざるもの()をこの手で造り出す”為の器に相応しいと。中でも注目したのは“龍の御子”と呼ばれた幼い子供でした。数世代に一人の確率で生まれる“龍の御子”は、他の民達を大きく超える、素晴らしい潜在能力を秘めていたのです』

 

 幻影は唾液で唇を湿らせる事も、水で喉を潤すこともなく、一定の速度で淡々と説明を続けている。

 

『そして私がこの村に滞在し、数日経ったとある日のことでした。なんと運の悪い事に、御子は崖崩れに巻き込まれ、瀕死の重傷を負ってしまったのです。私は助け出された御子に賢明な治療を施しましたが……その甲斐及ばず、彼はそこで息を引き取ってしまいました』

「!」

 

 話を遮り身を乗り出して声を出そうとしたディースを、再びリュウが手で制した。

 

『私は最後の手段として、うつろわざるものの研究過程で得た副産物の一つ、莫大な生命力を宿す“賢樹のエキス”を御子に投与しました。それまでエキスの効果に耐えて原型を留めた生物は皆無でしたが、彼はその前例を覆し、見事に息を吹き返しました』

「……」

 

 賢樹のエキス。魔法世界に居た時に、耳にした事のある言葉。あの、シュークの街の工場プラント地下での事件。流出した資料にユンナの名が入っていた事が、リュウの脳裏に思い出された。

 

『ですが……御子の体には、一度死んだことにより魂は戻りませんでした。生きてはいるが、からっぽの龍の御子の体。そのままただ朽ち果てていくだけの肉の塊としてしまうのはあまりに惜しい。そう思った私は、この村の長へ秘密裏にある提案をしました。“この体を使って、貴方達の怨敵である女神を倒す為の兵器を造りませんか?”とね』

「!!」

「……」

 

 明らかに、幻影に侮蔑の眼差しを向けるディースとエヴァンジェリン。二人とは対照的に、冷静なリュウ。

 

『や、当初村長は反対するものと思っていましたが、意外にも乗り気でした。後で知りましたが、あの村長は女神に虐げられた時代からの唯一の生き証人だったそうで』

「……」

『村の民達にも協力を仰ぐと、みな快く承諾してくれました。理由を聞くと、自分達が細々と隠れ住まなければならなくなった元凶……女神に、どうしても一矢報いたいのだと。私はそんな彼らの意思を汲む事にしました。許可を得て、この龍の民の墓場に研究所を据え、そして……』

 

 幻影が僅かに言葉を溜めたのは、何を思っての事か。リュウ達にはわからない。

 

『私は、村長を除き村に住んでいた全二十名の龍の民から、彼らの命と同義である龍の力の摘出を行い……その全てを、御子の身体へ移殖したのです』

 

 ……ディースは、拳を震わせていた。エヴァンジェリンですら見た事のない、彼女が見せる本気の怒り。そしてそれに気付いたエヴァンジェリン自身も、自分が今のディースと似たような顔をしている事には気付いていない。

 

『そうして、私の持つ“うつろわざるもの”創造のノウハウと、生き残りの龍の民全員から抽出した龍の力。この二つを注ぎ込み、凡そ八年の歳月を掛けて龍の御子の身体を改造したものこそが…………今そこに居る“人造龍神”という訳です』

「……おぞましいな」

 

 幻影が語った話に対し、一言そう吐き捨てたのはエヴァンジェリンだ。その昔非道な事にも手を染めた事がある彼女だが、その彼女を持ってしても、ユンナの行為は非道以下の下衆外道と蔑むしかなかった。侮蔑どころの騒ぎではない。命ある者としてのプライドが、この男を許してはならないと言っている。しかし幻影は、その言葉を平然と受け止めた。

 

『や、否定はしませんよ。極普通の感性を持つ方なら、誰もがそう思うことでしょう。しかしそれによって人造龍神は、まさしくその名の通りの凄まじい力を内包するに至ったのも事実。恐らくは、女神にも対抗出来る程に』

「……」

 

 衝撃……と言えば衝撃だろう。だがやはり、リュウは先程からそれを冷静に受け止めている。自分でも自分の神経がどこかおかしくなったんじゃないかと思うくらいに。話が途切れ、静かになった部屋には、耳障りな機械音だけが鳴り響いていた。

 

「……さっきの話じゃ、リュウちゃんの……その……“魂”は、無くなったはずじゃなかったのかい。それなら今こうしてここに居るリュウちゃんは……何だっていうのさ」

「魂等と言う抽象的な物が、この世に存在するとは私は思わんがな」

 

 ギリッという音が聞こえてきそうなほどに、ディースは幻影に怒りの眼差しを向けている。それでも、気を使って彼女を抑えようとするリュウに免じて、魔法をぶっ放したりせずに疑問を投げるだけで済ませていた。

 

『や、確かに御子の本来の魂は、この世から消滅していました。魂とは言わばソフトウェアのようなもの。如何に肉体というハードウェアが優れていても、適合するソフトが無ければ起動すら出来ません。ですから私は、人造龍神というハードが完成した後、適合する可能性のある代替ソフト……代わりと成り得る魂を、最も多くこの世に存在し、かつ龍の民に近しい種族。即ち人間から、無差別に抜き出す事にしました』

「!? そんな事が出来るってのかい!?」

『や、無論です。何しろ魂を扱う呪術こそ私の専門分野。長い年月をかけて完成させた私の秘術は、生きた者から魂だけを取り出す事が出来ますから』

「……」

 

 リュウは思い出した。ウィンディアでの事件を。フォウ帝国に居た“男”は、死者から魂を抜き出して自分の力にしていた。そして、その術が未完成であったとも。そもそもの開発者がユンナであるとも語っていた。全ての線が一つになった。

 

『ですが、如何な私とてそう簡単には適合させられませんでしたな。最初に呼び寄せた魂は、肉体に入れた瞬間跡形もなく焼け落ちました。次の魂は、入れた途端に凍りつき、砕けてしまいました。三人目の魂は、まるで雷にでも打たれたように……』

「も、もういい! あんた……あんたは、それで一体、何人を犠牲に……っ!」

『や、私の中にある記録では、四十九人ほど呼び出し、そして失敗したとありますな』

「……」

 

 生き残っていた龍の民を。四十九人もの人間を。己の目的のためだけに犠牲にしたと、悪びれる事なく淡々と述べる幻影。リュウはやっと、“自分”が何なのかを理解した。

 

「つまり“俺”は、オマエの術で抜き出された五十番目の魂……って事か」

『や、なかなか理解がお早いですな。あなたもご婦人方のように、お怒りになりますか?』

「……」

 

 普通ならば、怒らない理由がない。特にリュウは当事者だ。非人道的な行いの数々を平然と打ち明けるこの男を、仮に生きていたとして、何発殴ろうと誰も文句は言わないだろう。だがリュウは何故か、ディース達のような怒りの感情が湧いてこなかった。代わりに心に浮かぶのはただ一点。ただ一つの疑問。自分自身の、トップシークレットについて。

 

「……エヴァンジェリンさん、ディースさん、申し訳ないんですけど……ちょっとだけ席をはずして貰えませんか。あと、ボッシュも」

 

 突然、幻影と二人だけにしてくれと願うリュウ。ディースとエヴァンジェリンはその頼みを聞いて思わず唸った。今、リュウを一人にしても大丈夫だろうか。自棄を起こしたりはしないだろうか。そんな視線を送っている。

 

「でも……」

「俺は大丈夫です。だから、お願いします」

 

 リュウの色をなくした鬼気迫る表情に、二人と一匹はそれ以上何も言えなかった。無言でその部屋、そして龍の民の墓からも出て行く。これでこれから話す内容は、他の誰にも聞かれないだろう。今、耳障りな機械音が響くこの部屋には、リュウと幻影しかいなくなった。

 

「……聞きたい事がある」

『や、なんですかな?』

 

 一連の話を終えたユンナの幻影からは、喋り疲れなどは感じられない。機械であるから当然と言えば当然だ。僅かに、リュウはその事にだけ腹立たしさを覚えた。

 

「さっきの、魂を抜き出したって話。その術は、どういう風に相手を決めるんだ?」

『や、“声”で呼び掛けるのですよ。大まかに設けた適応条件を満たす生命に。そして声に反応した時点で、その魂を強制的にここへ連れてくるのです。魂のみを対象とした召喚術、と言い換えても良いでしょう』

「……。でも俺は、魂ってのを取られてない」

 

 リュウは幻影の説明に矛盾があると感じた。自分がこの身体となったであろうあの時。確かに“声”というのに心当たりはあるが、魂のみではなく物理的に身体ごと闇に吸い込まれたのだ。そこに違和感を覚える。問い詰めるようにその事を告げると、幻影はわかっていたように頷いた。

 

『や、先程は言いませんでしたが、記録によればユンナ()は失敗の連続だった魂の適合を高める方法を編み出し、五十人目にその方法を使用する事を検討していたとあります。ですからあなたは、その方法で召喚されたのでしょう』

「……じゃあそれは……それまでのと、どう違う……?」

『や、あなたに使用された術は、魂ではなく肉体ごと召喚し、その過程でそれら全てを一つの魂へと還元する画期的な手法です』

「!」

 

 幻影の説明は要するに、リュウにはもう元の体、というものが存在しない事を意味していた。今この身体に、元の自分の全てが魂となって収まっているから。それを理解した瞬間、リュウの中で何かがぷつりと切れた。自分が心のどこかで縋っていた、いつか元に戻れるのだろうという漠然とした希望の糸が、断たれたのだ。

 

「……」

 

 それが、どうでも良いと言う訳では全くない。ようやく、この幻影に対して腹立たしい気持ちも湧いてきた。けれど、今言った事は本当に聞きたい事ではなかった。召喚だとするなら、ますますわからない事がある。どうしても、納得いかない事があるのだ。

 

「じゃあ……ここからが本題だ」

『どうぞ』

「俺は……元々この世界には居なかった」

『……。や、申し訳ありませんが、質問の意味を理解しかねます。まさか死人だった、とでも仰るのですか?』

「違う。俺は生きてた。生きてたけど……こことは、違う世界でだ」

『!』

 

 幻影は、そこで初めて驚きの表情を示した。それこそ、リュウの最大の疑問点。何故、別世界に居た“自分”なのか。どうしてこの世界に居なかった“自分”が、召喚されてしまったのか。ユンナの術が、そもそも自分を対象にする事自体が不可能だと思えた。

 

「……ねぇ、何でさ。何で俺なんだよ。俺はこの世界とは何の関係もない。魔法世界なんてのも、竜なんて存在も、全部架空の話なんだよ。あんたらの事も、女神とかも……全部!」

 

 リュウは我慢できなかった。今まで誰にも言えずに溜め込んでいた本音を、自分をこんな風にした原因と思われるこの男にぶつけた。さっきから妙に理解できてしまっている自分への苛立ち。その事に対する八つ当たりの意味もある。

 

『や……どうもあなたの口ぶりでは、まるで私達の事すらも以前から存じているかのように聞こえますが……?』

「ちょっと違うけど……知ってる。あんただけじゃない。エヴァンジェリンさんやディースさんの事も、ナギ達の事も女神も、少しずつ違う所はあるけど……みんな知ってる」

『……』

 

 それはリュウにとっての最大の秘密。この世界の事を、今まで関わってきた人達の事を、その人生を、この先世界に何が起こるかを……リュウは、出会う前から知っていた。“架空の物語”として。記憶として知識として。もしもこの場に他の誰かが居たら、どういう事だとリュウを問い詰めただろう。そしてユンナの幻影は、リュウが言った事を吟味するように考え込み、少ししてから……

 

 ……笑いだした。

 

『ははは……はははは!』

「!?」

『ははははは! ……は……や、これは失礼しました。お見苦しい所を』

「……何が……そんなにおかしい……!」

『や、いえいえお気を悪くされないよう。あなたの話を笑ったのではありません。しかし……なるほどなるほど、そういうことでしたか。それでユンナ()は、“あなた”をわざわざ残しておいたという訳ですか……』

「……」

 

 リュウは困惑した。幻影は何かに納得したように頷いている。幻影の中でだけ疑問が氷解し、リュウにはそれが何の事かさっぱりわからない。睨むような視線で話せと促し、幻影は咳払いの真似事をしてから再び口を開いた。

 

『や、一科学者としてこのような陳腐な言葉でしか言い表わせないのは甚だ遺憾ではありますが、敢えて申し上げましょう。これは奇跡です』

「……」

『や、“あなた”は……いえ、“あなたの住んでいた世界”は、本来私どもの世界からは絶対に干渉出来ない世界なのでしょうな。“あなた”が知り得る知識は、私達の時の流れを外から自由に見る事が出来なければ、到底得られるものではありませんから』

「……」

『その世界に居た“あなた”は、私達の時の流れとは隔絶された存在であると言えましょう。そうつまり私達から見た“あなた”は……紛れもなく、“うつろわざるもの”だ』

「……」

 

 永遠の命を持ち、決して変わらない神の如き存在。確かに“この世界を外から見る事の出来た異世界”に住んでいたと言う“リュウ”は、この世界の人間からすれば、それと同じ超常的な存在に見えるだろう。だがリュウは、そんな風に言われる事を心の中で嫌だと思った。自分はただの人間だ。この世界の人達と自分との間に、違いなど何一つない。

 

 リュウの告白にやや興奮気味だった幻影は、だがそこでふと考える仕草を取った。

 

『や……しかし何故、“あなた”を呼び出す事が出来たのか……私一人の力だとはとても考えられない……』

「……」

 

 ユンナの思考を忠実にトレースしたこの機械は、自らで考えるという柔軟な思考ルーチンを備えている。だから幻影は考えた。ユンナの持つ魂を吸い出す術に、異世界に干渉するような力はない。仮にそのような事を行うとしたら、それこそ人知を越えた莫大なエネルギーが必要な筈。そして、幻影は辿りついた。一つだけ、“リュウ”を呼び寄せる可能性がある事に。

 

『……そう、ですか……そうとしか考えられません……それが“あなた”を呼び寄せたとしか……』

「……ちゃんと話せ」

『や、確証のない私の推測でしかありませんが……構いませんか?』

「いいから、話せ」

『……先ほども申し上げた通り、その身体に宿る龍の力はこの村で生き延びていた龍の民達の力の結晶です。移殖の際、彼らの女神に対する憎しみも、同時にその身体に流れ込んだ可能性が十分にある』

「……それで?」

『その彼らの思い。女神を倒したいと言う切実な願いが、私の術に何らかの作用をし、私達の事をよく知る“あなた”という異世界のうつろわざるものを、次元を超えて求めたのかも知れませんな』

「……」

 

 自分を呼んだ“声”は、何かを待ち侘びていたような声だった。リュウはその声によって……いや、ユンナの術と、龍の御子の身体に宿る龍の力によって、一つの魂へと変えられてこの世界に呼び込まれたのだ。その説明を聞いたリュウは、どこか納得してしまっていた。それがまた腹立たしくて、リュウは言葉を発さない。

 

『や、では私からあなたに尋ねたい事があります。“あなた”は、当初から自我がありましたか?』

「……。そりゃ、あったよ」

 

 幻影はそれまでの興奮を抑えるようにして、リュウに妙な事を尋ねてきた。その質問の意図がわからず、リュウは投げやりに返した。

 

『なるほどやはりですか。……や、本来ならば私の術で召喚した魂に、自我が残るという現象自体が有り得ない事なのです』

「……?」

『私の術は魂を抽出した時点で、自我の消去……フォーマットを行います。魂は、その身体を起動するためのただの部品に過ぎませんから。そう言えば村長にはそのように伝えてありましたから、自分の思うように動かせると意気込んでいましたな』

「……」

 

 リュウは、ドラグニールに唯一残っていた龍の民、村長に会った時の事を思い出した。あの時、村長は怒りの表情でこう言っていた。「約束が違う」と。つまりそれは、リュウに自我があるとわかり、そのせいで人造龍神を思い通りに操れないという事に気付き、彼は激昂したのだ。しかし村長はもう居ない。今となってはどうでもいい事だと言える。

 

『や、私の術はある種、呪術のようなものです。つまり召喚の際、“あなた”は何か呪力を削ぐ道具を身に付けていた可能性が高い。それが私の術に抗い、動作不良を引き起こした……』

「道具……?」

 

 リュウは、あの日の事を思い出そうとした。龍堂で吸い込まれる前。あの時自分は、そんなご利益のあるような物を何か持っていたのかどうか。だが頭がごちゃごちゃして、よく思い出せない。そんなリュウの前で、幻影はどこか残念そうな表情へと変わった。

 

『……や、私の見解から申し上げまして、元がなんであれ、今の“あなた”は非常に不安定な存在と言えます。何故なら今の“あなた”は、まっさらな筈の魂というソフトウェアに発生した、正真正銘の不具合(バグ)だからです』

「!」

『不具合である以上、取り除くのが私の仕事ですが、ユンナ()はそれをしなかった。元来自我など有るはずのない人造龍神に、最初からあなたが居た。その事にユンナ()は何か思うところがあったのかも知れませんが……』

「……」

『今後、不具合である“あなた”に一体どのような事態が起こるのかは、わたしにもわかりません。いやはや、死してなお興味が尽きませんな』

「……」

 

 自分の存在を不具合とまで言われても……リュウは、怒れなかった。いや、正確には怒ろうとしている。既に受け入れている、という事を受け入れないように。

 

「何で……」

『……?』

「何で俺は、こんなに冷静にいられるんだよ。何で……」

 

 口を出た呟き。それは本音である。今、自分がこうしてこの世界に居ることが、この身体であるということが、さも当たり前のように感じてしまっている。先程からの話を受け入れてしまっている自分というものに、戸惑いを感じているのだ。

 

 そしてそれに対して幻影は、あっさりと答えを口にした。

 

『や、それはそうでしょう。いくら私の呪術に抗ったとはいえ、フォーマット自体を全て回避したわけでは無い筈ですから。例えば、元の暮らしへの未練や心配の消去。そしてその身体や自らの立場に対する順応感覚の初期化。そういった処置が、“あなた”に影響を与えた筈』

「!」

 

 幻影の言葉は、今までリュウが抱えていた謎に解答を与えた。何故、リュウは自分に疑問を持つ事がほとんどなかったのか。何故、まるで最初からこうだったかのように思ってしまっていたのか。そして今冷静でいた事への答えが、それなのだ。一気に全てを理解し、リュウはやっと、内側に渦巻いていたユンナに対する憤りが噴き出し始めていた。

 

「お前……お前は…………最低だ」

『……や、そう言われる事は重々承知の上です。私は、私の目的の為には如何なる犠牲も仕方のない事だと思っていますから』

「!」

 

 リュウは思わず拳を握り締め、振り上げた。激しく高ぶる龍の力が集中し、部屋を光が満たしていく。

 

『や、私を破壊しますか?』

「……」

『……構いませんよ。どうぞ、おやりなさい。“あなた”にはその資格がある。ユンナ()も、もしかしたらその為に“あなた”を消去せずに残したのかも知れません』

「……」

 

 リュウは苛立ちを隠さないまま……拳を下ろし、そしてその場から立ち去った。自分の内側にあるどうしようもない感情を抑えるように、足早に龍の民の墓から出ていく。

 

「相棒」

「あ、リュウちゃん……」

「……」

 

 墓から出てすぐの所で、三人は待っていた。ボッシュ、ディース、エヴァンジェリン。皆一様に神妙な顔付きをしている。普段ならそこで大丈夫ですよと愛想笑いの一つも返しただろうが、今のリュウはとてもそんな気分ではなかった。もう夕刻近くなのか大分薄暗く、湿気と曇り空も相まって、今にも雨が降りだしそうな気配を漂わせている。

 

「……」

 

 リュウは無言で元ユンナの家へと足を向けた。三人も、それを追って家に入っていく。

日が暮れて、ポツポツと雨粒が地を濡らし始める。リュウはずっと、ソファに腰掛けて考えていた。自分の正体と、この身体になった理由について。この家で目が覚めて、その時自分は何て思った? 勇者だとか、ちょっと嬉しいだとか。そう思っていた自分が酷く馬鹿に思えた。

 

 リュウは望んでいない。頼んでもいない。ユンナの夢? 龍の民の最後の希望? ……今ほど。今ほど希望という言葉に否定的な思いを抱いた事はない。何だそれは。人を人とも思わない仕打ちをしておいて、夢だ希望だ? 馬鹿にするのもいい加減にしろ。

 

 ……しかしそう思う自分とは裏腹に、既に順応している自分も居る。心ではようやく疑念に気付けたのに、頭ではこれでいいと思っている。いや……思わされている。

 

「……」

 

 生き残った龍の民の力の集合体。なるほど。道理で最初から強い力を持っている訳だ。彼らの犠牲の上に、たまたま自分が乗ったというだけ。そしてこの先、“自分”はどうなるかわからないという宣告。怒りたい自分と、怒れない自分との間での堂々巡り。

 

 

 深夜。激しく地を打つ雨音だけが聞こえてくるユンナの家の中は、とても静かだった。


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