宙を目指す世界にて 【凍結】   作:シエロティエラ

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アンケート途中経過です。
1.ヒロイン要らずが10票
2.楯無が5票
3.シャルロット、本音が4票
4.簪が3票
5.セシリア、オータムが1票
となっております。
中には理由を書いてくださった方々もいらっしゃっいました。大変参考になり、おおいに助かっております。

更新します。

それではゆったりと。






実習、中華っ子参上

 

 

「この時間はISの実習だ。専用機持ちは前に出ろ」

 

 

週明け最初の授業、現在一組のメンバーは初の実習授業のために、全てアリーナにいる。

実習なので、全員ISスーツなるものに着替えて整列している。その外見は、はっきり言えばスク水みたいである。子供が着るのならまだわからなくはないが、着ているのは二次成長期終盤の少女達。はっきり言って目のやり場に困るイデデデデッ!?

 

 

「どこを見てるのですか?」

 

「何もしてないし見てないだろう!? 冤罪だ冤罪グォウッ!? 背中をつねるな、スーツ越しでも痛いヌォウッ!?」

 

「……どうだか」

 

 

理不尽な折檻を受けていると、周りからは好奇の視線と黄色い声を浴びせられた。一夏よ、見ていないで助けろ。

 

 

「痴話喧嘩は後にしろ。織斑、オルコット、衛宮は前に出ろ。そしてISを展開するんだ」

 

 

千冬に言われた通り、俺達三人は前に出て並んだ。確か具体的なイメージをもって念じればよかったのか。ふむ、造作もないな。

 

 

「ほう? 衛宮は早いな。代表候補生や国家代表とさして変わりない展開速度だ」

 

「イメージだけが取り柄なもので」

 

「成る程な。オルコットは、まぁ当然の結果か。織斑は遅い、もう少し早く展開出来るようになれ」

 

「……はい」

 

「次は飛行だ、三人とも上昇しろ」

 

「「「はい!!(了解)」」」

 

 

千冬の指示で俺達は上空に昇った。やはりと言うべきか、経験豊富なセシリアが一番早く上昇する。

しかし俺や一夏は飛行などしたことがないから、飛行するイメージしろと言われても無理な話である。試合中の飛行は単に直進しただけだから、今回の飛行とは少し異なる。

……待てよ? 確か聖杯戦争の折、キャスターが浮遊しながら戦闘していたな。あれをイメージしてみるか。

 

俺は早速キャスターの動きをイメージし、それを模倣した。結果から言えばそれは成功だったらしく、俺の動きは幾分かマシになった。

 

 

『何をしている、織斑。白式のスペックはブルーティアーズと守護者よりも上だぞ!!』

 

「んなこと言われても!! これどうやって飛んでるんだ?」

 

「説明してもよろしいですけど、その場合長くなりますわよ?」

 

「……やめとく」

 

「一夏、昔の特撮とかを思い返してみろ。お前の場合案外しっくりくるかもしれんぞ?」

 

「特撮かぁ、やってみるわ」

 

 

そこからは暫く三人による飛行訓練が行われた。先程の特撮云々の話のあとから、一夏の動きは格段に良くなった。

 

 

『よし。では急降下の後、地上10㎝の位置で緊急停止。オルコット、衛宮、織斑の順だ』

 

「ではお先に失礼しますわ」

 

 

千冬の指示に従い、まずはセシリア、次に俺が急降下と緊急停止を行った。結果、セシリアは指定された地上10㎝での緊急停止を完了したが、俺はそれよりも更に5㎝高い位置で停止した。

 

 

「まぁ初めてにしては上出来だ、精進しろ。次!! 織斑の番だ!!」

 

 

千冬に呼ばれ、最後に一夏が急降下してきた。が、そのスピードは落ちることなく、真っ直ぐに地上に向かってくる。このままだと地面に頭から突っ込むだろう。

 

 

「……士郎」

 

「……なんですか、織斑先生?」

 

「……頼む」

 

「……」

 

 

本当ならこのまま放っておいて体に刻み込むのだが、教師に頼まれれのならば仕方がない。

武装の黒弓を無言で高速展開し、まずは剣を一本つがえる。そして更に4本分のイメージも固め、すぐにつがえることが出来るように待機させておく。

一夏が地上30メートルに来たとき、俺は一夏の両腕両足胸部目掛けて、一息に剣を射た。

 

 

「うおおお止まらねアダッ!? ブフゥッ!?」

 

 

5本の剣が直撃した一夏は、スピードを大幅に削られて墜落した。しかしそれによって地面にクレーターが形成されることはなかった。

 

 

「……イツツ、今のは士郎か?」

 

「そうだが?」

 

「結構痛かったんだけど」

 

「では聞くが、少々の痛みを負うことで罰則が下るのを回避するのと、大した負傷は無くともクレーターを一人で埋める罰則を受けること、どちらが良かったか?」

 

「……止めてくれてありがとう」

 

「よろしい」

 

 

聞き分けの良い子は好きだぞ。

 

 

「では次は武装展開だ。三人とも主武装をだせ」

 

 

主武装か。ならば俺はあれだな。

俺は白黒の双剣、セシリアはビームライフルを展開した。一夏は少し時間がかかり、千冬に注意されていた。しかしセシリアよ。

 

 

「銃口をこちらに向けないでくれ。俺を射殺する気か?」

 

「え? ああ!? も、申し訳ありません!!」

 

「オルコット、展開するときのそのポーズは止めろ。今のようになってしまうからな」

 

「……はい、先生」

 

「まぁいい、織斑はそのブレードしか装備がないからな。次にオルコットと衛宮は準武装を展開しろ」

 

 

準武装か。だとしたら俺の場合は黒鍵か黒弓になるな。ならば両方とも展開するとしよう。

左手に黒弓を、右手の指の間に黒鍵を三本、自分の周囲には五本ほど剣を突き立てる。

 

 

「「……はい?」」

 

「し、士郎さん、それは?」

 

「士郎、お前のそれ……まるで死神だな」

 

 

死神とは失礼な。

 

 

「衛宮、お前の武装はそれで全てか?」

 

「まぁ大体は。あとは地面に刺している剣と同様のものが三百ほど、全てスロットに納められています」

 

「「「「うそーん……」」」」

 

 

ええい、珍獣を見るような目で見るな。カレンも、ニヤニヤするぐらいならフォローしてくれ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初の実習授業から暫く経過した某日夕刻。

夜の帳が降り始めた時刻に、一人の小柄な少女が、大きなボストンバッグを肩から下げてIS学園の校門に立っていた。

 

 

「……ついに来たわ。待ってなさいよ、一夏!!」

 

 

小柄な少女は頭のツインテールを揺らしながら敷地内を闊歩していく、が、その勢いは暫くすると沈静化した。理由は単純。

 

 

「もう!! 事務室はどこなのよ!! 地図ぐらい寄越しなさいよ!!」

 

 

迷子になっていたのである。まぁIS学園の敷地の広さは、アリーナ等の設備のこともあり、とある大学の敷地と同じ広さは普通に有している。ならば地図が欲しくなるのも無理は無いだろう。

迷ったなら人に聞けば良いだろうと思うだろうが、残念ながら時間帯が時間帯なため、周囲には人影はない。ちょうどご飯時なのだ。

 

 

「━━…だから━━…でだな」

 

「それは━━…で━━…だから」

 

「なら━━…よろしいのですよ」

 

 

そこに数人分の話し声が聞こえてきた。加えてそのうちの一つは男子の声である。

 

 

「ッ!! この声は、一夏!!」

 

 

ツインテールの少女は、先程までの不機嫌な雰囲気は何処に行ったのか上機嫌となり、声に向かって走りだし、唐突に立ち止まった。気のせいか、その目からはハイライトが消えている。

 

 

「箒、悪いけど効果音の説明じゃあわからないぞ?」

 

「むぅ……」

 

「あ、いや、教えようとしてくれる気持ちは嬉しいぞ?」

 

「一夏さん、無理に理解する必要はありませんよ。私の説明も箒さんの説明も足掛かりに過ぎません。一夏さん自身が納得のいく感覚を掴む必要がありますわ」

 

「でもなぁ……」

 

 

三人は話しながら少女に気づくことなく、寮へと戻っていった。少女は無表情にその方向に視線を送る。

そして少女の纏う冷たい空気がついに氷点下を迎えようとしたとき、

 

 

「こんな場所で殺気を撒き散らすな、お嬢さん」

 

「うきゃあ!? 誰よ!?」

 

「あらあら、楽しそうね」

 

 

先程までの殺気は何処に行ったのか、後ろから抱えあげられたことにより、重い空気は霧散した。

抱えられている少女と抱えている青年は頭二つほど身長に差があり、端から見れば仲の良い御近所様同士のやり取りだ。側で微笑むもう一人の少女の存在が、より一層その雰囲気を纏わせる。

 

 

「よしよし、良い子だから騒ぐな。近所迷惑だぞ?」

 

「し、士郎ね!? こんなことをするのは士郎ね!?」

 

「あらあら逆効果みたいよ、士郎。寧ろ余計に興奮してるわ」

 

「む、そうか。なら愚図る前に下ろすとしよう」

 

「最初っからするなっての。愚図るて、あたしは赤ちゃんか」

 

 

再び地上に戻った少女は一息つくと、自分の後ろに立つ二人に体ごと振り返った。

 

 

「久しぶりね士郎、カレン。二年ぶりかしら?」

 

「そうだな。君は変わりなさそうだ」

 

「ええ、色々な意味で変わりないようで」

 

「むきー!! どういう意味よ!!」

 

 

夜は更ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇねぇ織斑君、聞いた? 転校生の話」

 

「何でも中国の代表候補生なんだって」

 

「二組に入るらしいよ?」

 

 

現在一組では、新たに学園に転入してきた少女の噂で持ちきりである。中国というと、中二のときに本国に帰ったあいつを思い出すなぁ。あいつは元気にしているのだろうか?

 

 

「一夏? 気になるのか?」

 

「箒? ああそうだな。どんなやつかは気になる」

 

「むぅ……そうか」

 

「国家代表候補生らしいですが、二組のクラス代表は既に決定しています。ですから安心しても良いと思いますわ」

 

「その情報、古いよ」

 

 

突如教室の入り口の方から、俺にとって懐かしい声が聞こえた。まさかな、まさか転入生はあいつなのか?

俺が入り口に目を向けると、そこには非常に懐かしい人物が非常に似合わない態勢で入り口に立っていた。

 

 

「鈴? ……お前、鈴か?」

 

「ええ、久しぶりね一夏」

 

 

鳳鈴音。

箒が別の小学校に転校していった直後に中国から転入してきた、俺の幼馴染みの一人だった。中二のときに本国に帰ったはずだが、代表候補生になっていたとは。

まぁとりあえず、だ。

 

 

「鈴、なにやってるんだ? 似合ってないぞ?」

 

「んなっ!? 何てことを言うのよあんたはッ!!」

 

「え? え? 織斑君の知り合い?」

 

「スクープよ!!」

 

 

一組のみんなが何やら騒ぎだしたが、今はそれどころではない。箒とセシリアが何か聞きたそうな顔をしているが、とりあえず席に着かせた。なぜならば、

 

 

「むきゃ!? 誰ッ……よ……」

 

「ホームルームの時間だ。さっさと自分の教室に戻れ」

 

「ち、千冬さん……」

 

「織斑先生だ。さっさと行け」

 

「マム・イエス・マム!!」

 

 

千冬姉の指示に、敬礼で応える鈴。なんと言うかあれだ、千冬姉相手だとまったくといっていい程違和感がない。

やはり千冬姉はショーグン様だったヌォウッ!?

 

 

「何か失礼なことを考えたか?」

 

「……滅相もありません」

 

「どうだかな。席につけ!! ホームルームを始める!!」

 

 

朝っぱらから理不尽だ……。

 

 

 

 

 

 

 

 






はい、ここまでです。

クラス代表就任パーティーですが、後に小話として執筆します。

さて、次回は食堂での出来事と『貧○』騒動です。酢豚騒動は彼らの居住区が違うのでとばします。


それでは今回はこのへんで。





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