はい、試しに書いてみることにしました、三作目です。
なんか思い返せば、私が書くのって滅多にみないクロスオーバーや、カップリングばかりのような…
まぁまぁ第一話、入りますね。
それではゆったりと
見渡す限りの荒野。
数えるのも馬鹿馬鹿しくなるほどの剣が乱立するその地に、彼はいた。
その地は元々一つの街だった。
だがその街は死徒により、亡者の蔓延る死都となってしまった。
彼は亡者となった住民もろとも、街を破壊した。
助かった人間も僅かにいたが、その中に自分を狙う魔術師がいたことに彼は気がつかず、彼は致命傷を負わされてしまった。
無論その魔術師は始末したが、だからといって助かるわけではなく、今こうして倒れ伏しているのである。
「……まったく、これでは奴のことは言えないな。助けた人間に殺されるなど、笑い話にもならん」
あの男と違う点を挙げるとすれば、まずは『世界』と契約していないこと、これは大きい。
二つ目は、あいつがどうだったかは知らんが、一応は俺には家族がいたことか。
それ以外はこの白い髪も、鋼色の瞳も、黒い肌も、真っ赤な外套に軽鎧も瓜二つである。
二つ目に関しては、色々と葛藤があった。
たくさんの人々の命を奪ってきた俺が、当たり前の幸せを掴んで良いのだろうか?
俺のような存在が、家族を持つことが許されるのか?
そういった思念が俺を絶え間なく襲った。
だが彼女は、そんな俺を受け入れた。全てを知り、俺の歪みまでも知った上で、俺を受け入れてくれた。
「なんでもう少し、側に居てやれなかったんだろうな……」
戦地へと赴く俺を、いつも真顔で見送っていた。
いつも平然とした態度を示していた。
俺はそれに甘えていた、彼女の目が、悲しみを帯びていたことを知りながら。
「……せめて……死ぬ前に一度でも」
今更許されないとわかっている。だがそれでも俺は、もう一度だけでも、彼女の顔を見たかった。
視界が暗くなる。もうそろそろか。
享年2○歳とは、随分とまぁ早死だ。病などで満足に生きられない人達に失礼だよな。
もし来世が許されるのなら、そのときは……
━━━━━━━ぃ
━━━━━━さい
「いい加減に起きなさい、この駄犬」
「ウェ?」
何故か今俺が一番聞きたくて、だが一番聞きたくない声が聞こえた。
寝ている感触からして、俺はまだあの荒野にいるのか?
俺は思わず目を開けると、目の前には銀髪金目の女性がってぇ!?
「……カレン? 何故ここに? 俺は死んだのでは」
「死んでないですよ。あの人が治療しましたから」
「あの人? ……凛? それに万華鏡も何故?」
身を起こして視線を向けた先には、魔導元帥と呼ばれる第二魔法の担い手たる万華鏡、キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。そして俺の元師匠である遠坂凛がいた。
「あなたを追ってきたのよ。治療は私がしたわ」
「お前には封印指定が出ておるが、むざむざ渡すのは癪なのでな」
「……俺をどうするんだ?」
治療してくれたのはありがたい。だが、封印指定が出ているのであれば、どの道逃げなければならない。
だがそうすると、カレンがここにいる理由がわからない。
色々と思案していると、ふと凛の手元に目がいった。
その手には、七色に輝く万華鏡のような短剣が握られていた。
同じものが万華鏡の腰に差してあることから、あの短剣は彼女個人で造り上げたのだろう。
「いたったのか?」
「さぁ? これから私の卒業試験も兼ねて、あなたを平行世界に逃がすために使うわ」
凛はそう言い、こちらに大きめの荷物を投げてきた。
見た限り、かなりの量の荷物が入っている。
「今この場にはいないけど、イリヤと桜も心配していたわ」
「……そうか」
「それと彼女に関しては、自分もついていくと言っていたからよ。向こう側で、一人でも理解者がいないと辛いだろうからって」
カレンがついてくるのは、そういった理由か。まったく、本当になんでもう少し大切にしなかったのだろうな。
桜とイリヤのことも、もう少し気にかければよかった。
頭の中で後悔していると、俺達二人を中心にして、虹色に輝く魔法陣が形成された。
それに伴い、凛の手にある短剣も、眩い輝きを放つ。
「いずれそっちに行くわ。遊びに行くか、仕事で行くかはわからないけどね」
「ああ、わかった」
「士郎、お前にはこれを渡しておこう。私の旧友に渡してるのと同一のものだ」
万華鏡はそういい、携帯電話を一つ差し出した。
聞いた話では死徒二十七祖が一人、ゼルレッチの旧友のコーバック・アルカトラスは、これと同じような携帯で、ゼルレッチなどと連絡を取り合っているとか。
まぁ俺も携帯電話越しに、コーバックとは話したことがある。
「定期的に連絡せい。お前の冬木の家や私、コーバックや凛にも繋がるようになっている」
「そうですか。ありがとうございます」
魔法陣と短剣の輝きが強くなる。もう間もなくだろう。
「……凛」
「なに?」
「……ありがとう。俺は、これから頑張っていくから」
「……ええ。カレン?」
「なんでしょう?」
「この馬鹿をお願いね?」
「わかってます」
短い別れも終わり、俺達は眩しい光に包まれた。
こうして衛宮士郎は、この世界から去った。
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飛ばされた世界の先、俺達は地面に投げ出されていた。周りを見渡すと、どうやらここは廃教会の前らしい。
「……カレン、大丈夫か?」
「ええ、問題ないわ。それに……」
彼女が何やらゴソゴソ動く音がした。
「体のほうは、とても愉快なことになってます」
カレンの言葉に疑問を覚えた俺は、すぐさま自らに解析をかけた。
結果、肉体年齢が7歳まで若返っていた。
『世界』の修正なのだろうが、これは少し酷い。
序でに言うと、俺の髪と肌、傷跡はそのままだった。
「……とりあえず、そこの教会に入ろう。廃れていても、雨風は凌げるだろうからな」
「同感ね」
二人して荷物を抱えて、教会の中に入った。幸い着ている服も縮んでいたので、ずり落ちたりすることはなかった。
教会の中はボロボロであり、椅子は壊れ、床は酷く軋む状態だった。
唯一の救いがあるとすれば、屋根と窓は壊れていなかったことだろう。
「細かい調査は日が昇ってからにしましょう」
「そうだな。君は休んでいてくれ、修繕は俺が朝までにやっておく」
「早速一人でやりますか、この駄犬。私も掃除ぐらいはできます。
それにどうも体が若返ったことによって、体質による体の劣化も治ったみたいですしね」
「……そうか。ならお願いする」
月明かりで桜の花が確認できたから、この世界では春なのだろう。ならば脱水の心配はないはずだ。
しかし異世界において、最初の共同作業が廃教会の修繕とは、いやはや我が事ながら、呆れて何も言えないな。
はい、ここまでです。
さてこの作品ですが、衛宮夫婦は巻き込まれない限り、傍観の姿勢を貫く形にしようと思っております。
無論ちゃんと原作に介入はさせるのでご安心を。
ただ士郎の魔術に関しては、出すタイミングが非常に難しいため、更新も熟慮の結果遅くなるかもしれません。
それでは今回はこのへんで