スノーフレークⅡ   作:テオ_ドラ

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10話で未来編が終わると言ったな、あれは嘘だ。
勢いでパティエンティアの戦闘シーンを書いたら
長くなってしまったので、その分、少しだけ伸びます。
というか未来編、主人公以外、出てくるのが全部が
女性というアレでアレなことに今更作者気付いてます。


008.「キミを待っている人がいるはずだから」

左右に可愛らしく髪をまとめた

ミディアムツインテール、

くりっとした愛嬌のある瞳に華奢な体。

着ている服装もハニージャケットという

肩と背中を出した可愛らしい白い衣装だ。

黒で染まる宇宙空間に真っ白い服は

まるで美しく映える一輪の花のよう。

 

とても戦うような服装ではない女性。

だがニューマンでありながらダブルセイバーを持ち

最前線で常に戦い続けるファイターの守護輝士……

 

「パティさん!」

 

駆けつけてくれた頼もしい味方に、

クリスは歓喜の声をあげる。

パティはウィンク一つ、

 

「ここはあたしたちにどーんと任せなさい!」

 

彼女の持つダブルセイバー、

「ゲイルヴィスナー」が光を放ち暗闇を照らす。

両剣、というよりはまるで大剣のようなフォルムで

青白い神秘的な装飾と鋭い矛先を持つ武器だ。

雷と風の力を宿し、その輝きにダーカーたちが怯む。

 

「デッドリーサークル!」

 

投げられたゲイルヴィスナーが回転しながら周囲を舞い、

ダガン・ユガたちを蹴散らしていく。

だがユグドラーダたちは仲間を盾にしながら突っ込んでくる。

両剣を投げてしまっているパティは無防備、

クリスが前に出ようとするが、

 

「ふふん」

 

彼女は得意げな笑みを浮かべる。

 

「やれるかと思った?

 残念、もう一本あるんでしたー!」

 

そして取り出したのはもう一本のゲイルヴィスナー。

 

「イリージュンレイヴ!」

 

跳びかかってきたダーカーを

体全身を動かしながら激しい乱舞で蹴散らしていく。

そして彼女の手元に投げた両剣が戻ってくる。

両手にゲイルヴィスナーを構えて、ポーズを決めた。

 

「これぞダブルダブルセイバー!

 なんてねっ!」

 

ゲイルヴィスナー自体、

出力が強すぎて扱い辛い武器だ。

だというのにそれを2本扱うだなんて無茶にもほどがある。

けれどそれを勢いとノリだけで

使いこなすのがパティというアークス。

 

「……」

 

彼女がちらっとクリスを見る。

何か反応を求めている表情だった。

 

「あっ、っと、えーと、カッコいいです、パティさん!」

 

「でしょー!」

 

どうやらあっていたらしい。

ここが最前線であることを忘れてしまうほど

楽しそうな笑顔だった。

彼女が守護輝士に選ばれたのは

その身体能力と乱戦を潜り抜ける技量だけではない。

どんな場所にいても笑みを忘れずに

仲間たちを励まし、希望を与える姿勢を評価されたからだ。

実力だけでいえば守護輝士の中でも下の方だろう、

だが、彼女以上に人を惹きつける守護輝士はいない。

 

そんなパティに周囲からダーカーたちが襲い掛かる。

周囲からの押し潰すように迫る攻撃、

さしもの彼女もさばききれるかどうか。

けれど彼女は一人ではない、頼もしい相棒がいるのだから。

 

「こらバカ姉!

 何も考えずにいつも突っ込んで!」

 

叫び声と共にパティを守るように

いくつものマグのようなものが飛来する。

どこか間の抜けたようなネコの姿、シャト。

 

「……」

 

それが4匹飛んできてパティの周囲に展開する。

そしてそれぞれが雷撃のフィールド「ナ・ゾンデ」を発動させた。

跳びかかろうとしていたダーカーたちが

ナ・ゾンデに飛び込んで感電して足を止める。

そこにまた違うマグ、ウサギのような姿をしたソニチが

5匹ほど飛翔してきて敵の合間をかいくぐって射撃を始めた。

突然に至近距離からの攻撃にダーカーたちは

目や足を撃たれて怯んでしまう。

 

「トルネードダンス!」

 

そこへパティが突っ込んで吹き飛ばし一掃する。

 

「さすが私の妹、ナイスタイミング!」

 

「パティちゃん、今日はカッコいいとこ見せたいのはわかるけど、

 きちんと考えないと」

 

後ろから駆けつけてきたのは

パティとよく似た容姿をした彼女の妹。

区別の仕方はツインテールがちょっと下に向いているのと、

前髪の向きが違うというところだろうか。

あと、雰囲気と胸囲は大分に慎ましい。

服装は姉よりも少し露出が少ないながらも

リボンのついた可愛らしいリトルブリム。

色は姉とは対照的に黒色の落ち着いた色だった

 

「周囲の敵は任せるからね!」

 

「はいはい、わかってるよ」

 

彼女は武器を持っておらず、

代わりに端末を操作していた。

彼女が操っているのは複数のマグ、

射撃に特化した「シャドゥーク」と

法撃に特化した「マドゥーク」。

それを自在に操り姉をフォローするのが

彼女スタイルだった。

ティアは守護輝士ではないけれど、

常に姉妹コンビで活動しているので

実質はパティエンティアであわせて守護輝士という感じである。

 

「クリス君、巻き込まれないでね」

 

そして彼女が操るのはマグだけではなかった。

 

突如として飛来したのは無人の戦闘ヘリ。

3機は巧みにダーカーの攻撃を避けながら

的確にバルカンやミサイルで応戦していく。

操っているのはティア。

マグだけでなく戦闘機まで同時に操作しているのだ。

元々はフォースだった彼女だが、

成長する姉にあわせて気付けばこういう戦い方になっていた。

 

「……これが実力の差」

 

乱戦を得意とする姉と

サポートと範囲戦を行う妹。

クリスは自分一人ではどうしようもなかった場面を

いとも容易くひっくり返した二人の姿に呟く。

 

「キミにはキミのするべきことがあるんじゃないかな」

 

パティは笑いながら告げる。

 

「うん、クリス君。

 キミを待っている人がいるはずだから」

 

ティアも頷く。

 

「パティさん、ティアさん……」

 

「ここはお姉ちゃんたちに任せなさい!」

 

戦うこと以上に大切なことがある。

二人はそう伝えていた。

 

「一番、パティ! いきまーす!」

 

パティがゲイルヴィスナーを2本とも投げる。

 

「ハリケーンセンダー!」

 

投げられた両剣から凄まじい竜巻が発生し

ダーカーたちを巻き上げて行く。

 

「二番、ティア! いきます」

 

彼女の指示でマグと戦闘機が範囲攻撃をすると同時に

 

ウィーン……

 

後方の甲板から砲台が出現する。

 

「これで!」

 

それはフォトン粒子砲。

アークス本部からの遠隔操作でも発射は可能だが、

けれどやはり精密な射撃を行うことはできない。

アークスシップに当てずに小さいダーカーたちを

撃ち落とすのは難しいからだ。

だがティアなら可能である。

照準を微調整し、最適な射撃軸を導く。

 

「クリス君、さあ!」

 

4門の粒子砲が火を噴いた。

クリスは頷き、

フォトン粒子砲のレーザーの合間を駆け抜けていく。

 

「……師匠!」

 

激しい戦闘音を背中に、

クリスは振り返らずに駆け抜けていく。

 

 

敵の集団は突破した。

これで【深遠なる闇】の元へと行ける……

というほどやはり敵は甘くなかった。

 

「――ォォン!」

 

羽をはためかせて現れ、

クリスの前に立ち塞がったのは大型ダーカー。

まるでカブトムシのような角に、

巨大な爪のついた羽。

黒光りする強固な皮膚を覆われた

拠点破壊用のダーカー……ダークヒプラス。

考えうる中でダークファルスの次に最悪な相手だ。

 

「くっそ!」

 

世壊種の群れの次はこんな大型の敵が現れるなんて……

やはり【深遠なる闇】は使役するダーカーが桁違いだ。

 

爪からダークヒプラスがダーカー因子の塊を放ってくる。

当たれば致命傷になるのは勿論、

足場となっているアークスシップにも被害を与える。

かき消さなければいけないが、

クリスにそんなことができるはずもない。

 

そこへ――

 

「スターリングフォール!」

 

周囲に生まれたのは高密度のフォトンの刃。

それが展開し、爆発することでヒプラスの攻撃を防ぎきる。

 

「私、参上ですわ!」

 

手には眩しく光り輝く飛翔剣。

柄に翼のような装飾がありただただ美しいの一言。

ネメシスデュアル、それを扱うバウンサーは一人しかいない。

 

「カトリさん!」

 

「遅くなりましたわ!

 ここは私に任せて先にいきなさいな!」

 




宇宙空間で発生する竜巻とはいかに。
書いてる本人すらよくわかってません。
フォトンとは実に不思議なモノです。

【未来編TIPS】
[マシーナリー]
ティアだけの専用クラス。
なおアークス本部からは正式なクラスとしては認定されていない。
戦死するアークスたちが使っていたマグ、
飼い主を失ったことで使われることなく放置されていた。
それを見かねたティアが改修し、
支援機能を切って代わりに攻撃に特化させたのが
彼女の操る「シャドゥーク」と「マドゥーク」である。
全部で15匹を彼女は率いている。
サモナーが扱うペットに似ているが
自主的に動くペットとは違い、
マグはティアがプログラムした通りに行動する。

またマシーナリーはマグだけでなく
様々な兵器を同時にコントロールすることができ、
戦闘機に加えてアークスシップに装備された
武装の数々を行使する権限を与えられている。

様々な兵器を同時に使用するということは
勿論膨大な情報量をさばく必要があるため、
また的確に操作するのには高い資質を要求する。
現状ではティア以外にはいない。

【深遠なる闇】との戦いで疲弊する状況だからこそ
生まれたクラスといえるので、
恐らく違う未来ではティアはフォースのままであっただろう。
戦う武器はあれど、それを扱うアークスの数の不足……
彼女は、先に逝ったアークスたちの想いと共に
今も光の見えない世界で姉と戦いを続ける。

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