スノーフレークⅡ   作:テオ_ドラ

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007.「そうだとしても、行くしかないんだ!」

突然に鳴り響く警報。

クリスは慌てて飛び起きる。

アンジュのメンテナンスが終わるまでの間、

医務室のベッドを借りていたのだが

つい熟睡してしまっていたらしい。

ダーカーとの戦いの後、

そのまま来たので疲労がたまっていたようだ。

 

勢いよく体を起こすと

体の上から何かが落ちる。

甲高い音を立てて床に転がった物を拾い上げると、

それは牙のアクセサリー。

 

「――!?」

 

弾かれたようにアンジュのいる

カプセルに視線を向ける。

だがカプセルは開いており、

中は無人になっていた。

 

「まさか……!」

 

大切にしていたネックレス。

それを自分に預けた意味、嫌でもわかってしまう。

 

「くっそ!」

 

慌てて部屋から飛び出しゲートエリアへと走る。

警報が鳴り響いているということは、

ダーカーが襲来しているという以外にない。

しかしアンジュの様子から察するに恐らくは……

 

「【深遠なる闇】!」

 

もしそうであるなら前回の襲撃から1年。

オラクルに甚大な被害を与えたのは

クリスもよく覚えている。

 

『……クリスさん、聞こえていますか!』

 

その時、通信機から若い少女の声。

同時に送られてくるのはゲートエリアとは違う場所。

 

『あなたはそこへ向かってください!』

 

声の主をクリスは知っていた。

守護輝士専属のオペレーターであるシエラ。

一般のアークスたちと関わることはほとんどない。

だというのに何故、

自分に通信をかけてきたのだろうか?

 

「そこには、何があるんだ!?」

 

彼女がわざわざ指示してきたことだ、

何か意味があるのは間違いない。

 

『その先に、アンジュさんがいます!』

 

「!?」

 

『守護輝士たちの判断です、

 あなたを向かわせることは』

 

どうして、と問いかけようとした言葉を飲み込む。

理由は大事ではない。

自分がしようとしていたこと、

それを手助けしてくれているのだから。

今、言うべき言葉は

 

「ありがとう!」

 

クリスは走る。

移動しながら端末に送られてくる情報を

頭の中で整理していく。

アークスシップを取り囲むように

出現しているダーカーの数は数えきれないほどの無数。

【深遠なる闇】が厄介なのは本体だけではない。

ダーカーを使役する力、

しかも水棲系や玩具系など全ての種を仕向けてくる。

大型種はさすがに数は少ないとはいえ、

アークスたちの何倍もの数は脅威だ。

防衛線を突破されてアークスシップを破壊されれば、

それはオラクルの敗北を意味するのだから。

アークスたちがそれぞれ指示に従い、

持ち場に散っていくのがレーダーに映る。

そんな中、クリスが向かっているのは

【深遠なる闇】の本体がいる方向。

一番の激戦区であり、最も危険なエリアだ。

クリスの実力では荷が重すぎる。

足手まとい……

そんなことは自分が一番わかっていた。

 

「そうだとしても、行くしかないんだ!」

 

指定されたポイント、

そこにあるハッチから甲板へと飛び出す。

そこにはまだダーカーはおらず、

他のアークスたちが引きつけてくれているからか、

大きなダーカーの集団の裏側に出れた。

 

「師匠は……!?」

 

レーダーで反応を探すが、

どこにも彼女の識別信号は確認できない。

けれどわざわざシエラが教えてくれたのだ、

きっとこの先……

【深遠なる闇】のところにいるに違いない。

本体までの距離はまだある。

ここからはダーカーを蹴散らしながら進まねばならない。

 

『……クリスさん、気を付けてください!』

 

シエラの声に四方に向いていた意識を前方へと向ける。

その前方からはまた新たなダーカーの集団が

クリスのいる方向に向けて迫ってきていた。

 

しかもそれは普通のダーカーではなかった。

 

「……世壊種!?」

 

姿は通常のダーカーによく似ている。

けれど禍々しい赤いラインの入った彼らは

「世壊種」と呼ばれる似て非なる物。

吐き気を催すほどの濃いダーカー密度、

全てが桁違いの戦闘力と生命力。

その名の通り、世界を破壊する……

そのためだけに生み出された存在だ。

 

「抜刀!」

 

グレスミカを背中から引き抜く。

クリスが敵う相手ではない。

けれど、それでもやるしかない。

その先に、会いたい人がいるのだから。

 

迫りくる世壊種は

クモのようなダーカー、ダガンの強化種「ダガン・ヨガ」

その後ろからは二足で走る、

頭の後ろに爆弾を詰めたゴルドラーダの強化種「ユグドラーダ」。

その数、あわせて50以上。

突破するだけでも、無事に済むかはわからない。

 

クリスが決死の覚悟を決めた時、

 

「デッドリーアーチャー!」

 

突如として飛来したダブルセイバーが

激しく回転しながら敵を薙ぎ払っていく。

世壊種相手だというのに、

まるで紙屑のように吹き飛ばす圧倒的な威力。

 

並のアークスには不可能。

こんな真似ができるのは、そう

 

「アークスいちの情報屋、

 ならびにアークスいちの双子の美少女アークス!

 パティエンティアが姉、パティ……

 困ったフォトン感じ満を持して登場!」

 

――守護輝士たるアークスだけだ。

 

駆けつけてくれた女性の姿に、

クリスは自分のフォトンが昂ぶるのがわかった。




【未来編TIPS】
[守護輝士(ガーディアン)]Ⅱ
本作で設定されている10人の守護輝士の詳細
なお守護輝士だけが☆13以上を装備している、という設定。

HU:オーザ(スレイヴシリーズ)
Fi:パティ(ガルシリーズ)
Ra:???
Gu;???
Fo;クラリスクレイス(創世器)
Te;???
Br:イオ(オービットシリーズ)
Bo:カトリ(ネメシスシリーズ)
Su:???
特殊:アンジュ(オフティアシリーズ)

実は半分くらい未設定です。
未来編もあと3回で終わりなので、
???のキャラは登場しません。

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