スノーフレークⅡ   作:テオ_ドラ
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スノーフレークⅡ表紙

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012.「……まだ、することがある」

気付いた時にまず感じたのは、激しい体の痛み。
それはフォトンを限界以上に引き出した反動……
指先を動かすだけでも億劫であった。

(けれど……動く)

力を入れると、砂を掴んでいた。
少し湿って指につき、爪に砂が挟まる不快な感じだ。
そこに至ってやっと気づく。
自分が倒れている場所の違和感に。
アークスシップにも当然ながら「土」はある。
けれどこんな感触は初めてだ。
知識でしか知らない「砂浜」。

(……なんなんだろう、この匂いは)

湿ったような、それでいて少し独特な臭いだった。
クリスの記憶にはないモノなので混乱してしまう。

「……師匠!」

そこでやっと自分がつい先ほどまで何をしていたか思い出す。
守護輝士たちのお蔭で【深遠なる闇】に辿りついた。
けれど待っていたのは、師の串刺しにされた姿。
その彼女が自分へ手を向けた瞬間、
光に包まれたところまでは記憶はあるのだが……

「ここは……どこなんだ?」

今、クリスがいるのは足跡ひとつない綺麗な白い砂浜。
見上げると雲一つない青い空……
いや、そこにあるのは頭上なのに水面?
不思議な光景が広がっていた。

「惑星……なのか?」

デジタルでしか聞いたことがない
静かなさざ波の音だけの世界。
クリスは生まれてからアークスシップから出たことがない。
物心がついた頃にはもうアークスは
宇宙空間でダーカーと戦っていたので、
一部のメンバー以外は「惑星」で活動をしたことはないのだ。
唯一といえる惑星アムドゥスキアは
ダーカーの浸食が激しくてそれこそ守護輝士クラスでないと
立ち入ることすら禁止されていた。

『……エラー』

端末を叩いて現在地を調べようとするが、
壊れてしまっているのかどの操作もエラーで返ってくる。
どれだけ過酷な状況でも精確な情報をくれる端末が動かないなんて
こんなことは初めてだった。
当然ながら通信もどこへも繋がらない。
経験のないことにクリスは不安が沸きあがってくる。

「どういうこと……なんだろう」

訳が分からない。
まさかここが天国というわけでもないだろう。
初めて見る光景は、美しいとは思うのだけれども、
でもそれ以上に自分を不安にさせてしまう。
痛む体を起こして立ち上がる。
カトリから託されたリンドブルムは
オーバーヒートして壊れてしまっている。
背負っていたグレスミカは問題ないようだった。

とにかくアークスシップへ戻らなければ。
早く戻って、結末を知らねばならないのだから。

「……ん?」

波の音だけの静かな世界に、少しの違和感。
振り返ると

ドバーンッ!

水面から何かが飛び出してきた。
それなりの巨体なのだろう、
水しぶきをもろに浴びてしまったクリスはよろめく。

「なんだ!?」

それが地面に降り立つと、衝撃で地面が揺れる。
クリスが膝をついて見上げたそこには

「ウォォォォォォォォォ!」

それはまるで岩。
ずんぐりとした紫色の巨体に、
丸太のような巨大な手足。
泳ぐためなのか流線的なフォルムであり、
頭の日本の角は鋭く尖っていた。

咆哮をあげてを見下ろすそれは

「……原生種!?」

クリスの知らない存在だった。
それは無理もない、
この惑星……水に覆われたウォパルは
彼の知っている世界ではもう失われたはずの場所だったから。
データーベースも使えない彼が
海王種、オルグブランと呼ばれる獣を知るはずもなかった。

「抜刀!」

ギョロリと濁った眼がクリスを捉える。
ダーカーとは違う存在。
だが自分に対して敵意を持っているのはわかる。
グレスミカを抜き、両手に構えて敵を迎え撃つ。

ぶんっと鈍い風斬り音を立てて腕が襲い掛かる。
クリスにとってはそれは当たるはずのない鈍重な攻撃だった。

「うわぁ!」

だが、避けきれずに交差した飛翔剣で防ぐ。
勢いを殺すこともできず、呆気なく後方に吹き飛ばされる。
砂浜だったため衝撃は少なかったが、
それでも何度かバウントして飛んだ彼のダメージは大きい。

彼が避けれなかったのには二つの理由がある。
まず一つは純粋に弱っているから。
ダーカーとの激戦の後、回復もしていない状態だ、
満足に体を動かすことができなかったのだ。
そしてもう一つはクリスはアークスシップの甲板でしか戦ったことがない。
つまり「不安定な足場」での戦闘経験がなかったのだ。
砂に足をとられて自慢の機動力を活かすことができずに
攻撃を直撃してしまっていた。

「くっそ……!」

情けない、歯ぎしりしてしまう。
こんなところで立ち止まっているわけにはいかないのに。

のっそのっそとオルグブランが迫ってくる。
どうやら警戒するまでもないと決めたらしい。
無防備な歩きにクリスは腹が立ってしまった。

「……まだ、することがある」

飛翔剣を持つ手に力を込める。
フォトンは尽きてはいない。
文字通り死力を尽くせばまだ動ける。
クリスが起き上がろうとしたところへ

「レーゲンシュラーク!」

いつ接近していたのだろう、
一人のアークスが背後から飛び出し
オルグブランの額に突っ込んだ。

虚を突かれた海王種は成す術もなく、
額にガンスラッシュを突き立てられる。

「ァァァァァァァァ!!!」

生き物にとって頭は急所だ。
そこに深々と刃が突き刺さったのだ、
断末魔を上げてオルグブランがゆっくりと力なく崩れ落ちる。

「あ……あ……」

一瞬の出来事、クリスはその光景に……
いや、自分を助けてくれたそのアークスの姿を見て
口をぱくぱくとさせる。

「師匠!」

何も考えずに飛び出した、
自分が追い求めていた姿がそこにあったことに。
そうだ、きっと今まで見ていたのは悪い夢。
やっと……やっと長い夢から覚めたに違いない。

だけれど

「ん」

何が起きたか彼にはわからなかった。
腹に強い衝撃を受けクリスの意識は途切れたのだった……



最近、更新サボりがちですがなんとか更新。
惑星ウォパルの描写をちゃんとしようと思いつつ
面倒くさなくっておざなりになっちゃいました。

たった一撃で死ぬオルグブラン、
さようならオルグブラン、キミの勇士は忘れない。






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