あと、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。 本年もどうぞよろしくお願い致します
「そ、そんな事が…」
元いた世界が辿って来た歴史、あのクソッタレな戦争、俺たちが兵士となった発端のテロ…俺はそれを提督に話した。
この話を聞いた提督の第一声がこれで、三人の反応はやはり、何も言葉が出ない様子だった。
「そして君達はそのテロ事件がきっかけで兵士になった…と」
新島中将の言葉に静かにうなづく。すると、提督の後ろに控えていた長門さんが口を開いた。
「貴様らの世界と兵士になった経緯は分かった。だが、兵士である証拠が欲しい。疑うつもりはないのだが、最近は鎮守府を狙う輩も多いと聞くからな」
長門さんの言った事は当然だろう。いきなり現れて異世界から来た兵士です。なんて言われてすぐに信じる方がおかしい。予測はしていたからその「証拠」を机の上に出した。
俺達の時代の硬貨と所属、氏名、血液型、認識番号が書かれた身分証、そして、「もしもの時」に片方が噛まされて黒い袋に身体ごと収められ、もう片方が俺の代わりに帰ってくる小さな銀色の板……そう、認識票だ。
3人はそれを手にとってマジマジと見ている。すると、身分証を見ていた提督が何かに気づいた様だ。
「ねえ、貴方達の部隊…海兵隊“特殊武装偵察隊”って何?」
あぁ、聞かれると思っていた事がついに聞かれてしまった。 どうするべきか…そんな事を考えていると横で龍弥が
「柊二、この世界で俺達を知る者も居ない。それに、仲間になる事を考えると話してもいいんじゃねぇか?」
大丈夫だろうと確信したのかそう言う。 まあ、確かに、これから世話になる事を考えて、情報の提供は必要だろうからな。その対価として俺らも情報やら何やらを提供してもらうつもりだが…
「その前に、この部屋に盗聴器の類はありませんね?仲間内で面白半分で仕掛けた物とかも」
すると、話そうとしたのを遮って龍弥が提督に盗聴器が仕掛けられてないかを聞き出した。
「えっ、そんなの無いはずだけど?」
突然の問い掛けに戸惑いながらも無いと答え、それを確認した龍弥は「分かりました。ちょっと失礼」と言って席を立ち、バックパックからある物を取り出し、スイッチを入れて机の上に置いた。
「それは何?スマホみたいな形してるけど…」
「ああ、これはECM装置みたいなモノです。保険のつもりでちょっとかけさせていただきました」
その答えに「はぇ〜」と納得した提督が、すぐに話の続きに入ろうと俺達の部隊がどのような部隊なのか話して欲しそうに目をキラキラさせていた。
何というか、この人見かけによらず好奇心旺盛なんだろうな…
まあ、いいか
そして俺は「ては、その事について…」と一言置いて海兵隊特殊武装偵察隊について話しをした。
相変わらず3人は驚いた表情で話しに聞き入っている様子で、途中質問をして来たりと、とても興味深そうだった。
そして数分後、再び中将が口を開いた。
「疑うような事をして申し訳なかった。しかし君達はこれからどうするんだ?元の世界に戻れるかもわからないし、仮に戻れるとしてもその間はどうするつもりだ?」
俺は龍弥をちらりと見ると意図した事を察したのか小さくうなづいた。 元より俺達の答えは一つしかない。
「先ほど2人で話し合って決めました」
「そうか…ではその答えを聞かせてもらおう」
そして俺は3人を見据えて言った。
「櫻井柊二、星野龍弥の2名は、この世界でも我が国の為に全力を尽くさせてもらう所存です」
異世界とはいえ、同じ日本 そして俺達は日本の盾となり矛となる兵士。だったらやる事はただ一つ、この国の為に戦うだけだ。
いや、この国だけじゃない。艦娘達を守り、帰るべき“家”となるこの鎮守府を守り抜く存在でありたい。
「そうか。 頼もしい答えが聞けて良かった。宜しく頼む」
「私からも、宜しくお願いします」
新島提督と中将はにこりと笑って右手を差し出し、俺と龍弥も2人の握手に応じた。 どうやら長門さんも満足した様子だ。
その後はこの世界の情勢、俺と龍弥のこの世界での身分、戸籍、所属部隊などについて中将、提督と話し合った。
戸籍はどうするのか…そう思っていると中将が、中央に掛け合って何とかするそうだ。
なんでも政府にコネがあってそこで何とかしてくれるとか…… あと、階級は引き継ぎで少尉のままで良いそうだ。
新島中将…あんた、俺達に対してこんなにもしてくれるのは有難いが、色々とチート過ぎやしないか…
そして中将は提督の叔父様という本日2、3回目の驚き。何故2、3回目かって?驚き過ぎてもう疲れたからだ。悪いか?
此方の世界は深海棲艦という未知の生命体による侵攻を受けて制海権を奪われている事、そして人類(主に日本)は深海棲艦の出現と同時に現れた太平洋戦争時の軍艦の名を持つ艦娘達と共闘して制海権の奪還の為に日々戦っているらしい。
海外でも日本と同様に艦娘が出現した国もあったり、艦娘が出現しなかった国は既存の通常兵器を改良して対抗するなどの対策を取ったり、某国では艦娘の技術の奪取・拉致を試みて返り討ちに合うなど各国は様々な手段を講じているようだ。
しかし、まあ某国はいつも通り平常運転と…
そして最後に俺達の存在、部隊を他の鎮守府、外部に漏らさない事を確約してもらい話し合いを締めた。
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一通りの話し合いが終わって雑談していると、ドアをノックする音が聞こえて来た。 だが、ドアを向こうの気配は1人ではなく大人数…提督の許可と同時に開いたドアから3人のセーラー服を来た少女達がワラワラと入って来た。
なるほど、この子達も艦娘か。すると、双眼鏡らしき物をぶら下げた1人の少女と目が合う。
あれ?この子どっかで見たな… 思い出す前に
「あー‼︎さっき榛名さんを助けた兵隊さんです‼︎」
大きな声で俺と龍弥を指差す少女を見て某名探偵のごとく指差している。 ああ、さっき俺達を見つけた子か!すると、他の2人も近くに寄って来た。
提督「そうそう。この2人が榛名ちゃんを助けたの。その前に自己紹介してね?」
雪風「陽炎型駆逐艦8番艦、雪風です!どうぞ宜しくお願いします!」
雪風と名乗った少女に続き2人も自己紹介をしてくれた。
雷「雷よ!かみなりじゃないわ!そこんとこ宜しく頼むわね!」
電「電です。どうか、よろしくお願いいたします」
3人とも自己紹介をしてくれたのだが、やはり個性があるなと感じた。雪風は元気溢れる自己紹介を、雷はハキハキと頼りになる感じで電は優しく穏やかな性格なのだろう。そんな自己紹介だった。ただ、目が合うと顔を赤くして俯くのは何故だろう…
「ねぇ司令官、この2人はこの鎮守府の事まだ知らないのよね?私達が案内してまわってもいいかしら?」
頼りになりそうな子…雷が俺達に鎮守府を案内したいと提督に申し出た。俺自身もこの鎮守府の事が気になっていたのでありがたい。
「そうね。じゃあ2人の案内をお願い。私も後で行くから。」
「じゃあ司令官行ってくるわね!さっ、行きましょ!」
とても張り切った様子の雷達に、俺と龍弥は手を引かれて執務室を出た。
その様子を提督と中将、長門さんは微笑ましく見ていた。
ほんと疲れました… あ、あと、一般曹候補生の試験が(とっくの昔に)終わりました。 結果は合格。 これでやっと夢が叶いましたよ…
通知が来た時はもう、言葉で言い表せないくらいの喜びでンアッー‼︎ってなりました
あとは、入隊までの1日1日を大切に過ごして行きたいですね。 向こう行ってからもこの小説は続けていくつもりです。
次回もお楽しみに