それではどうぞ
2019年 6月13日 11:27(AM)
横須賀鎮守府正面海域
side⁇
迂闊でした。 2日に及ぶ遠征から帰還すると私達の鎮守府は深海棲艦と深海陸戦兵の攻撃を受けていました。
私自身も深海棲艦の攻撃で傷を負いながらも無事に何とか撃退して提督と金剛お姉様に会おうとしたその時
「榛名さん!左!逃げて!」
後ろから聞こえた雷ちゃんの声にびっくりして左を見ると、守備隊の皆さんが倒した筈の深海陸戦兵が私に筒のような武器を向けていたのです。
口から血を流して私を睨みつける青白い深海兵特有の顔と目が合ってしまい私は身体が固まったかのように動けなくなってしまいました。
「ッ⁉︎……」
守備隊の皆さんもそれに気づいたのか銃を一斉に構えますが、私に武器を向ける敵の方より早くが私を撃つでしょう。
(金剛お姉様、比叡お姉様、霧島、そして提督…ごめんなさい…)
まだ死にたくない。誰か、助けて!
そう思って来るであろう痛みに備えて目を瞑ると…
グチャッ…
私に武器を向けた敵は撃たなかった…いや、誰かの撃った銃弾によって頭を吹き飛ばされ、胴体を貫かれて既に倒されていました。
(助かった!)
その瞬間私は身体中の力が抜けてしまい、その場に座り込んでしまいました。
雷ちゃんと電ちゃんが私を支えるために来て、2人の優しさと何も出来なかった情け無さに私は思わず涙をこぼしてしまいました。
守備隊の皆さんが駆けつけて倒れた敵兵の生存確認をしてるようです。
『嘘だろ…頭と胴体ドンピシャだ…こんな腕のいい狙撃手うちの鎮守府にいたか?』
『狙撃班、今のはお前達が?違う?こっちが撃ったんじゃない?じゃあ誰がやったんだ』
『頭は一撃で吹き飛ばされてるし、心臓にピンポイント…50口径でも使ったのか? でも音が聞こえなかった。相当な腕の持ち主だな』
口々に今起こったことを言っています。 どうやら誰が助けてくれたみたいですが、どこにいるんでしょう。守備隊の皆さんも辺りを見回して探しています。
「あっ、見つけました!」
近くで双眼鏡を持っていた雪風ちゃんが遠くの岬を指差しています。どうやらあの場所にいるみたいです。しかし、あんなに遠くからここにいる敵を狙い撃つなんてかなりの練度と技術があるに違い無いですね。
「榛名ちゃん!それにみんな無事で良かったぁ〜」
建物から出てきた私達の提督が目を赤く腫らして今にも泣きそうな様子で飛び出してきました。 その後は私達が今起こったこの事を提督に話して守備隊が私達を助けてくれた彼らを捜索しに行くそうです。
私を助けてくれた人…とても気になります。
そう思うと何だか早く会いたくなってきました。
side out
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side 柊司
しかし何故あの場所からここにいる事がばれたんだ。偽装もしてたし、双眼鏡を使ってるとはいえ簡単に見つけられるはずがない。
もしかしてスコープに光が反射してばれたのか? それはまず無い。蜂の巣のようなハニカム構造をしたキルフラッシュで反射しないはずだし、銃身も偽装を施したからそれも無い… という事は俺らの偽装が足りなかったということか…
そんな事を思いつつ伏せていると龍弥が聞いてきた。
「おい、次はどうする? 連中がどう動くかはお前分かってんだろ?」
「ああ」
俺達の居場所がばれたのなら連中のやる事は限られてくる。敵だと思うのなら砲弾か航空機による猛爆撃、そして歩兵部隊による掃討。 味方だと思うのなら一応クリアリングはかけるだろう。そこで交渉…って流れだろう。
今回は航空機の音や砲撃が無い。という事は後者だろうが、如何にせん不安が残る。完全に味方である確証がない。 まあ、その時はその時だがな…
ふと耳を澄ますと遠くから車のエンジン音らしき音が聞こえてくるのが分かった。 ふっ、噂をすれば何とやら…
「お客さんがご来店だ。歓迎して差し上げろ」
横で龍弥が報告する。5人近い気配を感じる。木と木の間が空いているとはいえ草も深く、偽装があるから簡単には見つからないはずだ。実際敵兵が30㎝も前を歩いて行ったが見つかることもなかった。 あれは確か中国でのミッションだったな…
「気配を消せ。 それと、‘‘万が一’’に備えろ」
龍弥に指示を出しておれもM4を構える。その時すぐ近くから声が聞こえた。
「隊長、本当にここにいるんですか?雪風ちゃんがこっちにいるって言ってましたけど、もしかしたら待ち伏せしてるかも知れませんよ」
「大丈夫。俺の勘だけど、この森の中に絶対にいる。それにさっき榛名ちゃんを助けたんだから味方だろうが」
隊長…あんた正解だ。確実にこの森の中にいるし、真横にいるから気付かないのか? 待ち伏せしてるのも正解。そして君達が気付かないから横で龍弥が苦笑いしてるし…
真横ににいるのに気づかない事に滑稽に思えた俺はちょっとしたイタズラを思いついた。
(少し連中を脅かしてやろう。後ろからだ)
(了解…ぷっ)
それは連中がここを通り過ぎた時に後ろから突いてびっくりさせてやるというものだ。
そして連中はものの見事にスルーした。
よし…
(いくぞ…3カウントだ)
3…2…1
(今だ!やるぞ!)
物音を立てずにゆっくりと立ち上がる。そして連中に銃を向け
「動くな!」
後ろから声がするのにびっくりこいたのか、連中も慌てて此方に銃を向けてきた。だが、隠してるのか、焦っているのが丸分かりだ。それに1人は安全装置が掛かってるし、大丈夫かこいつら…
「き、君達がさっき撃った狙撃手か?」
そう思っていると89式小銃を向けながら隊長らしき人物が聞いてくる。
「…もしそうだと言ったら?」
「銃を降ろそう。俺達は敵じゃない」
「よし、分かった。 降ろせ…」
緊張が解け、両者銃を降ろした所でさっきの男が無線で話をして、話が終わったのかこんな事を言った。
「提督が君達と話をしたいそうだ。今から鎮守府に向かうから来てくれ」
「了解した。こっちも荷物をまとめるから少し待ってくれ」
「おい、良いのか? 」
横で龍弥がリュックの中にスポッティングスコープをしまいながら言う。
「大丈夫だ。見たところあいつらは敵ではない事は確かだし、俺達もこの世界の情報が欲しい。 何の情報も無しにあの青白い顔したゾンビみたいな連中とやり合うか? それにこんなとこで野営してる所で帰れるかは分からん。 だから情報が必要なんだ」
「でも俺達は特殊部隊だぞ? ペラペラとこっちの話をする訳に『そこのところは問題ない』はぁ?」
「確かに身分は向こうも知りたがるだろうが話すのは鎮守府のトップの人にしか話すつもりはない。だが、話すのは向こうの情報を得てからだ。俺達の方から話すなんて真似はしない。」
「そう言うと思った。さて、方針も決まった事だしとっとと荷物まとめて行こうや」
そう言って俺達は連中の高機動車に乗って横須賀鎮守府へと向かった。
そう言えば今日は8月15日太平洋戦争が終結した日ですね。そして私の友人の誕生日でもあるこの日…
日本の為に戦われた英霊に感謝と哀悼の意を表すると共に、このような戦争が2度と起きないように今一度平和について考えてみてはどうでしょう
次回もお楽しみに