戦国ラブライブ! 〜みんなで作る戦国時代〜   作:pocky@

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第三幕 猛虎襲来

[第三幕 猛虎襲来]

 

 

前回のラブライブ!

「異次元」に飛ばされた穂乃果。そこで海未と出会うことで自分が置かれている状況を理解し始める。そこが「戦国時代」だと分かった穂乃果は「戦国時代」から抜け出すための方法を考える。そこで穂乃果はお婆ちゃんの言葉を思い出し、抜け出すための手段はそこで自分に課せられた天命を果たすことであることだと気づく。

その天命が戦国大名「高坂家」の当主として家臣を引っ張っていくことなのではないかと思った穂乃果は、この乱世を生きぬくことを決意した。

しかし、そこに関東一の巨大勢力、北条氏政率いる北条軍が高坂の領地を奪いとろうと兵を進めてくる。高坂は自分の領地を守るためにも戦わなければならかったのだが、その兵力の差は歴然としており、高坂家には敗北ムードが漂っていた。それを見た穂乃果は「まだやってもいないのに諦めるな」と家臣達に呼びかける。その言葉により家臣達は奮起。運に任せた奇策で、奇跡的に北条氏政を討ちとることが出来た。これにより、関東は高坂家が治めることとなったのであった。

 

 

「いやぁ、本当に北条さん倒せちゃうとはね〜♪」

 

「この戦の勝利は凛と海未のおかげね。ありがとう、2人共」

 

「いえ、私は大したことはしていないので。氏政公の首をとったのは凛ですし」

 

「凛もあんなに上手くいくとは思ってなかったよ!飛び出したのが完璧なタイミングだったにゃ〜」

 

北条軍を倒した日の夜は鹿嶋城全てを使い、盛大な祝賀会が行われた。家臣達は勝利の余韻に浸り、酒を豪快に飲み干す者もいれば、陽気に踊っている者もいる。そんな賑やかな会となっていた。

 

「穂乃果ちゃん、北条を倒したから私たち関東一の軍隊だよ〜♪凄いね♪」

 

「そうだね、ことりちゃん!ことりちゃんも色々ありがとね!」

 

「いやいや、ことりはみんなと比べたら特に何もしてないよ〜」

 

「ことりちゃん後方支援で頑張ってくれたじゃん!後方支援も戦ではかなり重要なんだよ♪そうだよね、海未ちゃん!」

 

「ええ、そうですね。後方支援がなければ私たち戦場に出て戦う者達はかなりの苦戦を強いられるでしょう。ことりはかなり重要な役割を果たしてくれているのですよ?」

 

「穂乃果ちゃん、海未ちゃん... ありがとう」

 

この3人の絡みは現代とあまり変わらないな、と穂乃果は思った。何百年前にもこうして3人は笑っていれたのだと思うと感慨深いものである。

 

「穂乃果、あなたは関東を治めるわけだけど、どこを拠点にするの?」

 

絵里が穂乃果に拠点についてきりだしてきた。

 

確かに今後関東を治める上ではかなり重要なこととなってくる。

 

「えーっと... ここじゃダメなのかな?」

 

「本気で言ってるの、あなた。この鹿嶋城は他の大名と比べてもかなり小さい城よ。関東を治める大名がこんな小さい城を拠点にしてどうするの」

 

そんなことを言われても困る。穂乃果はそう思った。いきなり戦国時代に来て、いきなり関東の巨大勢力と戦い、いきなり関東を治めることとなった穂乃果。城のことまで頭が回るわけがない。

 

「そうね、エリーの言うとおりよ。こんな小さな城じゃ戦力もまともに確保出来ないし、もし、いきなり敵がこの城に攻めてきたとしたら、この城には守る手立ては無いから高坂は終わるわ。そうしない為にも新しい拠点は考えた方がいいわよ」

 

「へー、そうなんだ...。じゃあ城について考えよう!次の課題は穂乃果達の新しいお城だよ!」

 

「ええと、穂乃果?盛り上がったところ申し訳無いのですが...。その話は明日にしませんか」

 

「ええ?何で?出来ることは今すぐやっちゃおうよ!」

 

「いや、私もそうしたいのは山々なのですが...。あちらを見てもらいますか?」

 

「ふぇ?」

 

穂乃果は海未が指さした方向に目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

....にこが酒を片手に口から汚物を吐き出し、うつ伏せに倒れていた....

 

 

 

 

 

 

「にこちゃん!?大変だよ、海未ちゃん!!にこちゃん死んじゃうよ!早く救急車を....」

 

「いえ、死ぬことはありません。にこはいつも祝賀会となるとああですから...。...というわけですので明日にしませんか?」

 

「...うん、そうだね」

 

 

その夜は皆が大騒ぎし、皆が楽しんだ。そんな夜も更けていき、次の朝を迎えた。

 

「...きょうもぱんがうまいっ....」

 

ドタドタドタドタドタ ガラッ!

 

「穂乃果!!あなたはいつまで寝ているのですか!!今日は新たな城について話すと言ったでしょう!?もう全員揃っていますよ!?さあ、早く起きて、こちらに来て下さい!!」

 

昨日は夜遅くまで起きていたせいか、穂乃果の体はいつもよりも重かった。寝起きが悪いのはいつものことなのだが、今日はそれ以上に悪い。

 

「海未ちゃんは朝から元気だなぁ....」

 

重い体を起こし、眠い目を擦り、トレードマークであるほのまげを結う。

 

「さてと...」

 

家臣達が集まる大広間へ向かった。

 

 

「穂乃果〜?あんた遅いのよ!このにこにーを待たせるなんて本当信じられないわ」

 

驚愕だった。にこは昨夜あんなに酔い潰れていたではないか。なのに何でこんなにピンピンしているのだ。

 

「あはは.... ていうか元々にこちゃんが酔い潰ちゃってたから会議が今日になったんだよ?」

 

「はぁ?にこが酔い潰れてた?そんなことある訳無いじゃない♡」

 

こいつは何を言っているのだ。

 

「ほーら、みんな揃ったことだし、新たな拠点について考えましょう?穂乃果、あなたはどう思うの?」

 

「うーん.... どこがいいかなぁ... どこか候補みたいなのはあるの?」

 

「はい。あなたが寝ている間に絵里と幾つか目星をつけておきました」

 

「あはは... さすがだね... それで?どこなの?」

 

「1つ目の候補は小田原城です。北条の城をいくらか改造してみるのもいいかと。あそこなら周りは攻めてくるのも大変でしょうし」

 

「北条さんの城をそのまま使うんだね、でも何か穂乃果は嫌だなぁ」

 

「何故です?」

 

「だって... 北条さんの幽霊とか出そうじゃない?」

 

 

「ッ!!幽霊!?嫌よ!絶対に嫌よ!海未!小田原は無しよ!!」

 

 

絵里がいきなり大きな声を上げる。これに皆は騒然とした。

 

「え、絵里?どうしたのですか...?」

 

「ハッ!!ごめんなさい、取り乱したわ。...とりあえず小田原は無しよ」

 

「あー、そうやったね〜♪ 絵里ちは幽霊とか苦手やったね〜♪

「のっ希!?」

 

「へー、そうなんだぁ、絵里ちゃんってぇ幽霊苦手なんだぁ...♪ いい事聞いたにこ♪」

 

「にこ!?あなた何をする気なのよ!!」

 

「えー、何もしないよぉ〜?にっこにっこに〜♡」

 

絵里の幽霊が苦手なところも現代と変わらず、この3年生の絡みも現代とほとんど同じ。本当にここは戦国時代なのかと思うほど、穂乃果にとって居心地が良かった。

 

「う、海未?早く続けて?」

 

「ええ。 2つ目の候補は東京にある神田明神という神社の近くですね。そこには城は無いので、新しく建てることとなりますが」

 

「!!神田明神の近く!?よし、じゃあそこにしよう!」

 

神田明神と聞いて穂乃果は大声を上げる。

 

「即決ですね... 何故そこがいいと思うのです?」

 

「神田明神の神様はね、いつもμ'sのことを見ててくれたんだ....。ファーストライブの時も、ラブライブの時も....。だからさ!穂乃果はそこがいいと思うの!」

 

「何かよく分かりませんが...。色々と思い入れがあるようですね。ならそこにしましょうか?皆さん、何か問題はありますか?」

 

「ないよ♪ことりは穂乃果ちゃんが決めたことについていくだけだから!」

 

「まぁ、どこでもいいんじゃない?」

 

「ならそこにしましょうか。絶対小田原より良いわ」

 

「じゃあ決まりだね!次の高坂家の拠点は東京だよ!」

 

こうして関東を治める大名、高坂の新たな拠点が決定した。

 

「さて...。城を建てるわけだけど...。誰が指示するのかしら?これも決めないとダメね」

 

「そうね。現場を指揮する人がいなきゃ作業が進まないわ」

 

「しょうがないわねぇ♪ ここはにこがやってあげても....」

 

「花陽ちゃん、やってみたらええんやない?」

 

「ええっ!?私!?でも私は....」

 

「私も賛成です。花陽はいつも裏で頑張ってくれていましたし、たまには表に出て手柄をあげても良いのではないですか?」

 

「じゃあかよちゃん!やってくれるかな!?」

 

「....分かりました!この小泉花陽... 高坂家の新たな拠点を素晴らしいものにして参ります!」

 

「ぬぁんでにこのことをスルーするのよ!!」

 

「花陽、頑張ってね。期待してるわ」

 

「かよちゃん頑張ってね!高坂家の裏はことりが支えておくよ♪」

 

「みんな... ありがとう!」

 

「ちょ、ちょっと...ここににこがいるでしょう!?」

 

「暴れ馬は黙っとき」

 

「誰が暴れ馬よ!!」

 

「ああ、そうでした。新たな城の名前どうしますか?」

 

「そういえばそうね、忘れてたわ。穂乃果、あなた何か案はある?」

 

「ふふふ... 城の名前はね... ちゃんと決めてあるよ♪」

 

「そうなんですか?因みにどのような名前なのでしょうか?」

 

「それはね.... 【音ノ木坂城】だよ!」

 

「「音ノ木坂城...?」」

 

「そう!神田明神の近くには音ノ木坂っていう土地があるの!そこに城を建てるから... それでいいかなって」

 

「意外とまともな名前だったわね」

 

「もっと飛び抜けたこと言うのかと思ってたけど.... 普通だったにこ」

 

「無難で良さそうですね、ではそれにしましょうか」

 

「あれ?何か思ってた反応と違うような...?」

 

「じゃあこれより高坂家は花陽を中心として新たな拠点、【音ノ木坂城】を建てていきます。関東を統一した大名、高坂の新たな船出よ!」

 

 

 

〜武田家〜

 

「高坂は今何をしておるのだ」

 

「大方新たな拠点を決めているかと。関東を統一したことですし、現在の鹿嶋城では用が足りないのではないかと」

 

「そうか...。高坂...。氏政を倒したとなると放ってはおけない大名だな...」

 

「ええ。高坂から武田に攻めてくる事はほぼ無いかと思いますが、今の高坂には勢いがある故、もし攻められたとしたら、いくら武田といえどかなりの損害が予想されます」

 

「あぁ。上杉との合戦もまだ決着は付いておらんが...。ここは高坂を潰しにいくのが適策じゃろうな」

 

「はい。あちらもまだ武田用の策をたてているとは思えない故、ここは一気に攻め入りましょう、御屋形様」

 

「よし。そうするか....。近いうちに出陣する。皆にそう伝えてこい」

 

 

 

 

 

〜鹿嶋城〜

 

「さて... 新たな拠点が決まったのは良いことなのだけれど...。1つ気がかりな点があるのよね...」

 

絵里が珍しく深刻そうな顔をしていた。かなり重要なことなのだろう、穂乃果は絵里の顔を見てそう思っていた。

 

「ええ...。私も1つ気がかりなことがあります...。多分絵里と同じ事かと...」

 

海未も同様だった。

 

「ええと?2人ともどうしたの?ようやく落ち着いて生活出来ると思ってたんだけど....?」

 

「「出来るわけないでしょう!?」」

 

穂乃果は2人から怒鳴られた。

氏政を討ったことで高坂は絶体絶命の状態から一気に関東を治める大名となった。世に言う下剋上だ。それを成し遂げた今、勢いのある高坂に何が気がかりな事があろうか。穂乃果の内心はそうだった。

 

すると、絵里と海未は顔を見合わせて、同時に同じ名前を発した。

 

 

 

「「武田」」

 

 

 

「この武田こそが私達の気がかりな点です」

 

「武田...?武田さんっているの?」

 

「ええ、戦国最強...武田信玄。山梨を治める大名よ。隣国に戦を幾度と仕掛け、圧倒的な兵力でその国や城を確実に攻め落とす....」

 

「赤備えの武田の騎馬隊は....。考えるだけでも恐ろしいものです。こちらが関東を治めた今、隣国で現在一番勢いのある高坂を潰しておくべきだ、と考えるのが妥当でしょう。いつかは分かりませんが、武田は確実に攻めてきます」

 

「ええ!?そんな強い人がこの近くにいるの!?ひと段落したと思ったのに.... また強い人と戦わなきゃいけないのぉ!?」

 

「仕方がないでしょう?やらなければやられます。実際、天下統一を目指すのであれば、武田はいつか必ず倒さなければならない存在。確かに恐ろしいですが、戦うしかないのです」

 

「ええ、そうよ。策は私達が何とかして練るから...」

 

「なら穂乃果も手伝うよ!」

 

「ええ?しかし...」

 

「相手は戦国最強なんでしょ?ならさ、みんなの力を合わせなきゃ勝てないよ!!それは策を立てるのも一緒。だから...ね?」

 

「.... そうですね。穂乃果の言う通りです」

 

「よし、ならみんなを大広間に集めてちょうだい。そこでもう一度会議をひらくわよ」

 

 

 

 

大広間にはことり、花陽を除く7人が集まった。

 

「何?いきなり緊急会議だなんて。私にもやることあるのよ。早く済ませてくれる?」

 

「そうよ。にこだって色々やることがあるんだから!早く済ませてちょうだい」

 

「ええ。そのつもりです。ですがこの会議次第では高坂の運命が変わるやもしれません。なので、しっかりと会議に参加して下さい」

 

「そんなに重要なことなのかにゃ?」

 

「ええ、そうよ。冗談抜きにこれは重要なこと。だからみんなちゃんと話を聞いてちょうだい」

 

絵里と海未の本気の顔を見て先程まで文句を言っていた2人も黙り、部屋に何とも言えぬ緊張感が漂う。

 

「現在、高坂は関東を治める大名になったわけだけど... 1つだけ気がかりな点があるの」

 

「....武田やね」

 

「...希は分かっていましたか。...希の言う通り、甲斐の虎....武田信玄こそが私達が気にしていることです」

 

「確かに、言われてみればそうかもね。武田は隣国に何回も戦を仕掛けてるし...。しかも今の私達には勢いがあるから、近いうちに潰しに来るのは妥当」

 

「さすが真姫ね。理解が早くて助かるわ。...真姫が言った通り、武田は近いうちに高坂に兵を進めてくるでしょう。だから今から武田に対する策を全員でたてます」

 

「そうやんね。考える頭は多いほうがええからね」

 

「武田さんは主に騎馬隊だってことだから... ここは同じ騎馬隊のにこちゃんの意見を聞きたいなぁ、なんて...」

 

「分かったわ。騎馬隊はにこが一番詳しいだろうからにこに任せてちょうだい」

 

「頼もしいわね。じゃあ早速聞かせてくれるかしら?」

 

「騎馬隊は基本的に接近戦よ。だから遠距離攻撃には弱い... そこが騎馬隊の弱点にこ。でも弓矢位なら普通に避けられるし、弓兵隊に突撃して壊滅させることくらいは簡単に出来る。だから幾ら遠距離攻撃には比較的弱いって言っても弓兵くらいじゃあほとんど意味はないわね」

 

「じゃあ何がいいの?」

 

「うーん... にこの経験上じゃあ鉄砲隊が一番辛かったわね。あんな速い弾丸なんていくら騎馬兵でも避けることは出来ないわ」

 

「あー、確かにそうね。昔、北条とやった時、にこの騎馬隊に北条は鉄砲隊で応戦してきて....」

 

「そう、にこの最強騎馬隊が唯一撤退した戦よ。確かあの時は馬防柵も立てられてて、まともに攻撃出来ずに負けた覚えがあるわ」

「じゃあ馬防柵を立てて、鉄砲隊で応戦すれば...」

 

「待って、その時のにこちゃんの兵の数は約3000くらいだったわよね。今相手にするのは武田の騎馬隊よ?相手の予想される軍勢は約30000。いくら馬防柵を立ててこっちに来ることを抑えられても、私の鉄砲隊だけじゃ撤退に持ち込むことは出来ないわ」

 

「じゃあみんな鉄砲を使えばいいじゃん!」

 

「確かにそういう考えになるだろうけど、鉄砲はうつまでにとても時間がかかるの。どれだけ数を用意しても、一発うつためにあれだけ時間をかけていては柵を破壊されて終わりよ。せめて... 鉄砲を連発出来る方法があれば話は別だけど....」

 

全員が沈黙する。鉄砲隊が無理なら他にどんな手段があるのだろうか。正面からぶつかるという手もあるだろうが、それでは確実に負けてしまう。

 

(うーん... 武田さんって確か... 織田信長に何だかの戦いで負けてたような...。織田さんはどうやって勝ったんだっけなぁ...。先生が授業で話してたような気がするんだけどな〜。こんな事ならちゃんと授業聞いておくべきだったよ....。...あれ?でも確か織田さんって鉄砲使って勝ったんじゃ...?

でもどうやって?馬防柵?連発して打てる方法?....!!!)

 

穂乃果が急に立ち上がる。それに驚いた家臣達は皆穂乃果を見つめていた。

 

「みんな!!鉄砲を連発出来る方法があったよ!!」

 

「!?そんな方法があるというのですか、穂乃果!?」

 

「うん!真姫ちゃん!鉄砲をいくつか準備して!みんなも一回外に出て!」

 

 

 

「で?鉄砲は準備したわ。早く説明してちょうだい」

 

「真姫ちゃん、そんなに焦らない、焦らない♪」

 

「ええと、本当に時間がないので早く説明していただけますか?」

 

「分かったよ、海未ちゃん!じゃあ説明していくね! ええと、絵里ちゃん、希ちゃん、にこちゃんの3人に鉄砲を持ってもらって、一連に並んでもらったわけだけど...。3人とも?うつ準備はいいかな?」

 

「ええ」

 

「じゃあ絵里ちゃん!一発ドーン!」

 

バァァアン

 

「そしたら絵里ちゃんは列の最後尾に戻って!そしてもう一度鉄砲に玉をこめて!..さあ次!希ちゃんドーン!!」

 

バァァアン

 

「希ちゃんも列の最後尾に戻って鉄砲をうつ準備してね〜。じゃあ次!にこちゃんドーン!!」

 

バァァアン

 

「はい次絵里ちゃん!」

 

バァァアン

 

「こ、これは....」

 

「凄い...。本当に鉄砲を連射できてる...」

 

「名づけて三段構えだよっ!!」

 

 

「「三段構え?」」

 

 

「うん!今見てもらった通りだから三段構え!どう?」

 

「ハラショーよ!これは使えるわ!!」

 

「そうやね♪ これなら武田とも戦えるで!」

 

「そういうことだから真姫ちゃん!鉄砲をたくさん用意してね!」

 

「ええ、もちろん。いくらでも用意するわ」

 

「これで決まりましたね。武田と対する際は、馬防柵を利用し、三段構えで騎馬隊を殲滅する...。そうと決まれば早速準備を始めましょう」

 

「そうね。準備は早い方がいいわ。じゃあ馬防柵は鹿嶋城の手前の北浦川付近に立てましょう。そこで武田を迎えうつことにするわ」

 

「じゃあみんな!馬防柵を立てにいくよ!」

 

「「オー!!」」

 

 

 

 

 

 

〜武田家〜

 

「御屋形様。高坂討伐、いつになさいますか?」

 

「....今いくらの兵を用意出来る」

 

「約40000程度かと」

 

「40000か.... なら十分か....。よし、勘助。今から武田は高坂討伐に向かう。出陣の準備をするよう皆に伝えてこい」

 

 

 

 

〜高坂家〜

 

「馬防柵も立ったし、鉄砲もいっぱい準備出来たし!もう武田さん対策はバッチリだね!」

 

「そうね。でも気を抜いちゃダメよ?上手くいくとは限らないんだから」

 

「もちろん!しっかり気を引き締めていくよ!」

 

そんな会話をしていると、部屋の襖がいきなり開く。そこには息を切らしたことりが立っていた。

 

「どうしたの?ことりちゃん?」

 

「星空軍から伝令が届いたのっ!...武田家約40000の軍勢でこちらに進軍中....!!」

 

「なっ!?40000!?聞いてないわよ、そんな大群!どこから用意するのよ....」

 

「40000!?ええ!?そんなに多いの!?」

 

武田の軍勢の数を聞き、穂乃果と絵里はうろたえた。それもそうだろう。予想していた軍勢は30000。だが実際武田はそれより10000も多い軍勢で進軍して来ているのだから。

いくら策があろうとも、これだけの数となると話は別になってくる。

 

「どちらにせよ、考えた策で迎えうつしかないわ....。ことり!全員に出陣の用意をするよう伝えて来て!」

 

 

 

〜武田家〜

 

「よいか、皆の者。これから高坂討伐のため関東へ兵を進める」

 

「「オォッ!!」」

 

「高坂は今天を味方にし、勢いもある...。だが、そんなもの恐るるに足らず!!よいか。武田の騎馬隊は天下一...。負けることなどあってはならぬぞ!!」

 

「「オォッ!!」」

 

「油断せずに行くぞ。....皆の者!!出陣じゃぁ!!!!」

 

 

「「オォォォ!!!」」

 

 

 

 

 

〜高坂家〜

 

「これから、武田さんを迎えうちに行くよ、みんな!」

 

「「ハイッ!!」」

 

「武田さんの兵の数は凄いけど....。三段構えがあればきっと大丈夫!! 何とかして武田さんをしのぐよ!!」

 

「「ハイッ!!」」

 

「じゃあみんな、行くよッ!!!」

 

 

「「オォーー!!!」」

 

 

 

 

〜北浦川〜

 

「じゃあみんな鉄砲は持ったかな!?」

 

「「オー!!」」

 

「じゃあ馬防柵の端から端まで3人一列で並んで!!」

 

穂乃果の命令を受けた兵達はゾロゾロと三段構えの列に並び、準備を始める。

 

「穂乃果。準備は整いました。あとは武田の到着を待ち、臆することなく戦うのみです」

 

 

「そうだね...。あとは凛ちゃんからの報告を待とう」

 

 

 

北浦川は25000も人がいることが嘘のような静寂に包まれた。

『徐かなること林の如く』

嵐の前の静けさだったーー

 

 

 

 

「伝令!!!!!!」

 

 

 

 

今まで聞いたことが無いようなことりの叫び声が耳をつんざく。

 

「星空軍より伝令!!武田軍、ただいま茨城に到着!あと少しで北浦川へ到達致します!!」

 

いよいよ武田との合戦が始まる。

 

「さあ、みんな!いよいよだよ!!確かに怖いけど....。怯まずに行こう!!!」

 

「「オォーー!!!」」

 

ダダダダダダダダダダ!!!

 

 

大地を揺るがす轟音が聞こえてきた。

 

 

 

 

〜武田本陣〜

 

「先鋒は勝頼に任せた。あいつは一体どこまでやってくれるのか....」

 

「本当に良かったのでしょうか?勝頼殿などに先鋒を任せてしまって」

 

「あやつは武田の跡取りになるやもしれん男。この戦でどれだけやれるかを見極める」

 

「そうですか...。いざとなれば我々も突撃しますが...」

 

「出来れば勝頼に蹴りをつけてもらいたいところじゃな。勝頼に任せた兵は約25000。高坂の軍勢も約25000....。兵力は同等故、高坂を壊滅まで持っていってほしいものじゃ」

 

「そこまで出来れば我々も勝頼殿を認めましょう」

 

「勝頼であればやってくれるであろう。側室との子とはいえ、わしの血を継いでおるからの。心配をする必要はない」

 

「そうであると信じましょう」

 

 

 

 

〜北浦川〜

 

ワァァァァアア!!!

 

武田軍が到着した。高坂、武田の合戦の火蓋が切って落とされる。

 

「じゃあみんな!作戦通りにいくよ!!放てぇぇえ!!!」

 

バァァァアン

 

無数の銃弾が武田に向かって放たれた。

 

「次ぃ!!」

 

バァァァアン

 

作戦通り、三段構えにより鉄砲は連続して火を吹く。これに驚いたのか、武田軍は少し動きを止める。

 

「よし!武田が怯んでいるわ!海未!!」

 

「分かりました。皆さん!!一斉掃射です!!」

 

園田軍弓兵隊の弓矢が騎馬隊に向かって飛んでいく。驚いてその場にとどまっていた武田の兵達に命中する。

 

「さぁ!みんな!攻撃の手を緩めちゃダメだよ!放てぇ!!」

 

 

バァァァアン

 

 

〜武田勝頼軍〜

 

「何故じゃ!!何故銃弾がこう連続して飛んでくる!?そのようなことがあり得るというのか!?」

 

「殿ぉぉぉ!!!」

 

「何事じゃ!!」

 

「先鋒隊壊滅!!!このままでは25000の軍が壊滅します!!」

 

「殿!ご采配を!!」

 

「....鉄砲隊など恐るることはない!!全軍突撃じゃぁぁあ!!」

 

「なっ!!そんな事をしてしまえば我々は滅びますぞ!?」

 

 

「そんな事があるわけがなかろう!!我々は天下の武田じゃ!何を恐るることがある!!突撃じゃぁあ!!」

 

 

 

 

 

〜武田本陣〜

 

「御屋形様ぁぁ!!!」

 

「何事じゃ。そのように焦りおって...」

 

「先鋒の勝頼軍25000、壊滅まで時間の問題でございます!!」

 

「何!?何故そのような事態になっておる!!」

 

「高坂が鉄砲を使い勝頼軍を壊滅状態まで持っていったとのこと!」

 

「鉄砲じゃと!?それだけでどうやったら勝頼の軍を壊滅まで持っていけるというのじゃ!!」

 

「それしか情報が入っていない故、そこまでは....」

 

「勝頼に撤退せよと伝えろ!!武田は今、関東より撤退する!!」

 

 

 

 

〜武田勝頼軍〜

 

「くそっ....!これでは父上に示しがつかぬ...!!何か何か策があるはずじゃ...、何か....!!」

 

「殿。御屋形様より撤退せよとの命令にございます。今すぐ全軍撤退を」

 

「何...!?父上が撤退せよじゃと!?この武田が負けるというのか....?そんな...!!」

 

「殿!!早く指令を!!」

 

 

「っ!!武田軍!!全軍撤退じゃぁあ!!!」

 

 

 

〜高坂軍〜

 

「凄い....。こんなに上手くいくなんて...」

 

「ええ、私も驚いています...。ちょっと出来すぎですね」

 

「この戦はもう勝ったも同然にこ!」

 

「伝令っ!」

 

「ことりちゃん?どうかした?」

 

「武田軍全軍撤退せよとの命令が出た模様!」

 

「...ってことは?まさか...!!」

 

「ええ...!!私達、高坂軍の勝ちよ!!武田に勝ったのよ!!!」

 

 

「「オォーー!!」」

 

 

 

かくして高坂は武田との合戦で勝利をおさめてしまった。この知らせは瞬時にして全国に広まっていく。

 

 

〜上杉家〜

 

「殿。武田が敗戦したという情報が」

 

「何?武田が負けただと?どこに負けたというのだ」

 

「関東の高坂にごさいます」

 

「高坂....。あの北条を討ったところか」

 

「左様にごさいます」

 

「そうか。厄介なやつが出てきたな....。高坂、覚えておくとしよう」

 

 

〜鹿嶋城〜

 

「勝った、勝った〜♪」

 

鹿嶋城では勝利の祝いが行われていた。

 

「にこっち〜?今日はあんなことになっちゃだめやで?」

 

「本当よ。汚物とか片付けるの大変なのよ。こっちの身にもなりなさいよ」

 

「えぇ〜?にこがそんな汚いことするわけないでしょう〜?」

 

「どの口がいってるのよ。毎回のくせに」

 

「今日はぁ、武田に勝っちゃったからぁ、い〜っぱい飲むにこ♡」

 

 

 

その瞬間だった。にこの口から盛大に汚物が噴出される。

 

 

 

「ヴェェ!?汚ったないわね!!今回はいつにも増して凄いんじゃないの!?全く!!」

 

「あーあ、やっちゃったね〜。てことで真姫ちゃん、掃除するで〜」

「何で毎回私が巻き込まれるのよ...。汚物処理班じゃないのよぉ!」

 

 

ガヤガヤ

 

「あーあ、にこはまたやったのね」

 

「あはは... あれ、毎回やるんだね、にこちゃん...」

 

「はい、毎回です。いい加減にして欲しいものです」

 

「あー、そうだ。穂乃果。同盟を結ぶ気はない?」

 

「同盟?あのー、戦わないで仲良くなるやつ?」

 

「ええ。福島の綺羅から同盟を結んで欲しいっていう書状が来てるんだけど」

 

「うん!いいよ!」

 

「じゃあ明日にでも福島の綺羅に会いにいくわよ。穂乃果、準備しておいてね。くれぐれも失礼のないように」

 

「分かったよ、絵里ちゃん!」

 

 

 

翌日、穂乃果達は綺羅家の当主に会うために福島へ出発した。

この福島での出会いが穂乃果の運命を変えるものとなる......

 

 

 

 

 

 


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