魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第七十一話

「つ、ツクモさんが俺の仲間に? 一体どういうことですか……って! その前にその体勢は止めてください!」

 

 ツクモの行動にアルハレムは混乱しながらも、まずは土下座を止めてほしいと頼む。

 

 夜の部屋に全裸で土下座する猫又の魔女と、それを見下ろす人間の男と別の魔女。

 

 何も知らない人間が子の光景を見たらどう思うだろうか?

 

 アルハレムは自分だったら問答無用で有罪判定を下すと思うし、ライブが今のこの部屋を見たら発狂して斬りかかってくるのが容易に想像できる。

 

「アルハレム殿。知っての通りツクモさん達の使命は、こちらのヒスイ殿をあの魔物を生み出す森から助けだし、その身を守ることでござる」

 

 アルハレムの頼みを聞いてツクモは両膝を床につけたまま顔を上げると、自分を仲間にしてほしいと言い出した理由を話し出す。

 

「こうしてヒスイ殿を魔物を生み出す森から解放できたでござるが、それで全て終わったわけではなく、ツクモさんには彼女をこれからも守る義務があるのでござる。そしてアルハレム殿と主従契約を交わしたヒスイ殿を守るには、ツクモさんもアルハレム殿と契約の儀式で主従契約を交わすのが一番だと考えたでござるよ」

 

 そこまで言われてアルハレムはツクモが自分の仲間になりたいと言い出した理由を理解した。

 

 確かに同じ魔物使いを主に持つ魔物達は、主を経由して魂が繋がっていて遠く離れていても、どこにいてどんな状態なのか大体だが互いに知ることができる。それに同じ魔物使いを主にすれば一緒に行動し易くなるだろう。

 

「これは猫又一族の事情による勝手な申し出にござる。例えアルハレム殿が契約の儀式をしてくれても、ツクモさんはいざというときにアルハレム殿よりヒスイ殿を取るでござろう。しかしそれでも仲間に加えてくれるのであれば、ツクモさんはヒスイ殿と同様に全身全霊で尽くさせてもらうでござる。タマとミケは今までどおりにこの地に残し、猫又一族もこれからもマスタノート家に協力するでござる」

 

「……その話、母さんも知っているんですか?」

 

 アルハレムが聞くとツクモは頷いてから答える。

 

「ええ、アストライア殿にはすでに話しているでござる。それでアルハレム殿が了承すれば構わないと返事をもらったでござる」

 

 つまりアルハレムがツクモを仲間にすれば、マスタノート家はこれまでどおり猫又一族の協力を得られるということ。そした母親であり領主であるアストライアも承知しているのならば断る理由はなかった。

 

「……分かりました。ツクモさん、俺の仲間になってください」

 

「っ! 感謝するでござる。アルハレム殿!」

 

 アルハレムが仲間にすることを了承すると、ツクモは再び土下座する体勢で礼をする。

 

「いや、だからそれは止めてくださいって。……ちょっと待ってください」

 

 ため息をついたアルハレムは、自分の荷物から契約の儀式を行うための四本の短剣を取り出すと、それを床に突き立てて陣を作り、長年家族のような付き合いをしてきた猫又の魔女を自分の仲間にしたのだった。

 

「これで仲間にした魔女は五人か……」

 

「にゃはは♪ 魔女を五人も仲間にした魔物使いなんて世界広しとはいえアルハレム殿くらいでござろうな♪」

 

 戦乙女と同等以上の力を持つ高位の魔物である魔女五人に加えて、リリアの協力があれば自身も戦乙女と同等の力を使えるアルハレム。ヒスイの実力はまだ未知数だが、もはや領主の騎士団ともやり合える程の戦力と言ってもいいだろう。

 

 自分でも信じられないといった風に呟くアルハレムにツクモは笑顔を向けながら立ち上がると、それまでずっと無言で緊張した表情をしているヒスイのところに歩み寄った。

 

「……それでは」

 

「……」

 

「え? ええっ!?」

 

 ツクモがヒスイの服、その両肩にある結び目をほどくと彼女の服は何の抵抗もなく床に落ちて、霊亀の魔女の裸体があらわになった。


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