魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第五十四話

 魔物を生み出す森は城塞都市マスタロードから片道で大体一日くらいの距離にあり、森に着いたのはマスタロードを出発した翌日の昼頃だった。

 

 森に着いたマスタノート家とビスト家の兵士達は、昼食を兼ねた森に突入する前の最後の休憩をとっていた。

 

「……なあ、ライブ? お前、本当に俺達と森に入るのか?」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 休憩時にアルハレムが訊ねるとライブは頷いて肯定する。

 

 今回のダンジョン攻略の指揮を執っているアストライアは、全ての兵士達を突入させずに全兵力の半数だけを森に突入させて、もう半数は森の外に残しておくことに決めた。

 

 そして遠く離れた相手に指示を出せる固有特性を持つアストライアは森の外に残り、自分の子供達とその仲間達に森に突入する兵士達の指揮を任せると、そこにライブが森に突入する部隊に加えてほしいと言ってきたのだ。

 

「考え直さないか? これはマスタノート家の戦いだ。ビスト伯であるお前にもしものことがあったら……」

 

「後方に残っても、俺がアストライア様に手伝えることはない。それよりも俺自らが前線に出た方が、突入部隊に参加しているウチの兵達の士気も上がるだろ?」

 

 森に入るのを止めさせようとするアルハレムにライブは首を横に振って断る。ここまでの話を聞いた限りでは、若いのに責任感のある勇敢な青年領主のように聞こえるのだが……、

 

「………本音は?」

 

「お前にばかりいい格好をさせるか! 俺も森の中で戦って、ツクモさんとタマさんとミケさんに格好いいところをアピールするんだ!」

 

 と、聞かれた途端に欲望を暴露する。……何というか、色々と残念である。

 

「そんなことだろうと思ったよ……」

 

「ええ、まだ付き合いは短いですが私もこちらの方が自然に感じられます」

 

「………」

 

「生き、生き、と、して、る」

 

 鼻息を荒くして本音を叫ぶ友人にアルハレムがため息を吐くと、リリア、レイア、ルルもそれに頷く。

 

「にゃはは♪ まあ、一緒に戦ってくれるのならツクモさんは歓迎するでござるよ。タマ、ミケ、ライブのことは任せるでござるよ」

 

「「はい」」

 

 ツクモが楽しそうに笑ってから後ろにいる二人の部下である猫又にライブの護衛を任せると二人の猫又、タマとミケが揃って返事をした。

 

 タマとミケの姿は、二人ともツクモと似たような服装をしており、タマは髪も頭の猫耳も艶のある黒に対して、ミケは黒髪がわずかに混ざった金髪に茶色の猫耳を生やしていた。

 

「まあ、いざという時はツクモさんが守ってあげるでござるよ。アル、ライブ、安心したでござるか?」

 

「え? あ、はい。ツクモさんにそう言ってもらえると心強いです」

 

「はい! 俺も心強いです!」

 

 胸を張ってアルハレムとライブを守ると言うツクモ。そんな猫又にリリア達三人の魔女が反応して対抗するような目を向ける。

 

「……アルハレム様をお守りするのは私達の役目です。随分と腕が自信があるようですけど、それほど貴女は強いのですか?」

 

「………」

 

「よく、考え、たら、ルル、達、貴女、の、力、知ら、ない」

 

「むむ? リリア達はこのツクモさんの力を疑っているでござるか? ……では証拠を見せてやるでござる♪ ステータスでござる」

 

 リリア達三人の挑むような視線に、ツクモは自信ありげに笑うと自分のステータスを呼び出して三人の魔女に見せた。

 

 

【名前】 ツクモ

【種族】 猫又

【性別】 女

【才能】 28/50

【生命】 1120/1120

【輝力】 1120/1120

【筋力】 110

【耐久】 115

【敏捷】 110

【器用】 112

【精神】 113

【特性】 魔女の血統、自動才能強化、猫と化す魔女、投擲の天才

【技能】 ☆身体能力強化、☆爪操作、☆柴光爪、☆柴光弾、★中級短剣術、★中級格闘術、★中級投擲術、★中級薬術、★中級泳術、★隠密移動

【称号】 九十九代目探索部隊隊長、マスタノート家の影の実力者

 

 

「「「…………………………………………!?」」」

 

 ステータスに記された情報にリリア達三人は思わず絶句し、それを見たツクモが笑みを深くする。

 

「にゃはは♪ 驚いたでござるか、小娘ども? マスタノート家の影の実力者であるこのツクモさんに生意気言うのは百年早いでござるぞ」


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