魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第四十七話

「この部屋も久しぶりだな」

 

 昼食を終えたアルハレムは自分の部屋に戻っていた。

 

 この部屋でクエストブックを見つけて隣国の森に飛ばされ、ここまで帰ってくるのに半月ほどしか経っていないが、ひどく懐かしく感じられた。

 

「ここがアルハレム様のお部屋ですか。……ええ、とてもいい部屋ですね♪ 部屋中からアルハレム様の匂いが漂っていて、部屋にいるだけでこのリリア、興奮してきちゃいます♪」

 

「………」

 

「ここが、今日、から、私達、の、寝床」

 

 アルハレムが部屋に入るとリリア、レイア、ルルも部屋に入る。

 

 アストライアとアイリーンにアルテアは昼食を終えるとそれぞれの政務に戻り、ライブはツクモの部下である猫又のタマとミケに会いに行き、ツクモは何処かへと行ってしまった。今この部屋にいるのは、アルハレム達四人ともう一人。

 

「………」

 

 アリスンは兄の腕に抱きつきながら部屋に入ってきた三人の魔女達を敵意のある目で見る。

 

「何で貴女達がお兄様の部屋に来るのよ? 貴女達の部屋は別に用意してあるでしょ」

 

「そうはいきません。私達はアルハレム様の僕なのですから、アルハレム様と別の部屋なんてありえません」

 

「………」

 

「アル、ハレム、我が夫。私達、別々、の、部屋、あり、えない」

 

 当然のように答えるリリア達にアリスンは苛立ったように怒鳴る。

 

「だからそんなの認めないって言ってるでしょ! いいから出ていきなさい! 私は今から久しぶりに会ったお兄様とお話をするんだから!」

 

「いいえ。そういうわけにはいきません。私達はこれからアルハレム様と『食事』をする予定ですので」

 

「はぁ? 昼食ならさっき食べたじゃない? あれだけじゃ足りないの?」

 

 疑問の声をあげるアリスンにリリアは妖艶な笑みを浮かべると、アルハレムに近づいて彼の股間にそっと手を当てた。

 

「な!? 何をしてるのよ!」

 

「今度の食事はこちら♪ 食事は食事でも『下』の方の食事です♪」

 

「んな!?」

 

 突然のリリアの行動に声をあげたアリスンは、妖艶な笑みを浮かべたサキュバスの言葉を理解すると顔を真っ赤にした。

 

「お、おい! リリア? お前こんなところで何を言ってるんだ?」

 

「だってアルハレム様。私達、この三日間ずっとライブさんと一緒の馬車の旅でずっとご無沙汰だったのですよ? もう私だけでなくレイアもルルも限界なのです」

 

「………」

 

「リリア、言う、通り。ルル、達、もう、我慢、できな、い」

 

 妹の前で変なことを言い出したリリアをアルハレムが止めようとするが、サキュバスは負けずに言い、ラミアとグールもサキュバスの言葉に頷くと自分達の衣装に手をかけて脱いでいく。

 

「な、な、な、な………!?」

 

 アリスンは自分の目の前で三人の魔女達が裸体をさらすのを見て、赤くなっていた顔を更に赤くして口をぱくぱくと開けたり閉めたりした。

 

 本気だ。本気でこの三人の魔女達は今から兄と肌を重ねるのだと、貴族の少女は理解した。

 

「あ、アリスン? これは……」

 

「い、イヤァァァ! お兄様フケツーーー!」

 

 アルハレムに声をかけられたアリスンは脱兎のごとく部屋から逃げ出した。

 

「あらあら? 思ったよりウブな方だったようですわね」

 

「ふ、フケツ……」

 

 リリアはアリスンが走り去った方を見て首をかしげ、アルハレムは妹の言葉にある意味自業自得とはいえいたく傷ついたのだった。

 

 ☆★☆★

 

 その日の夜。アストライアは自分の書斎で一通の手紙を書いていた。

 

 手紙を書き終わり封筒に入れて封をすると、アストライアは振り向かずに自分の背後にいる人物に声をかけた。

 

「何か用か? ツクモ?」

 

「……アストライア殿はアルを『アレ』に推薦する気でござるか?」

 

 ツクモはアストライアが書いた手紙に視線を送りながら聞き、それにマスタノート辺境伯は苦笑しながら答える。

 

「そのつもりだ。アルハレムを陰謀渦巻く政治の道具に使うことに怒っているか? お前はからかいながらもアルハレムを実の弟のように可愛がっていたからな」

 

「……アルはギルシュの名門貴族マスタノート家の人間。それがクエストブックを手に入れて冒険者となったとなれば、いつの日かこうなるのは分かっていたでござるよ」

 

 アストライアの言葉に冷静に答えるツクモ。その態度は「否定はしないが賛成もしない」と言外に語っており、そんな猫又の態度にアストライアは、

 

(全く……。あのサキュバス達といい、このツクモといい、私の息子は随分と変わった女に好かれるな)

 

 と、自分の息子に感心と同時に呆れを感じた。

 

「とにかくアルを『アレ』に推薦するならば、その前にやってほしいことがあるでござる。……マスタノート家当主アストライア殿。今こそ我ら猫又の一族とマスタノートの一族が百年以上前に交わした約束を果たしてもらうでござる」

 

「……ほう?」

 

 真剣な表情となっていうツクモの言葉にアストライアは振り向いて彼女の顔を見る。

 

「お前が今になってそれを言うとは……きっかけとなったのはアルハレム、奴が連れてきた魔女達か?」

 

「左様でござる。あの三人のステータスはここに来る前、馬車の中で見せてもらったでござるが中々興味深い内容でござった。特に彼女の力をかりれば我ら猫又の一族の悲願が叶うかもしれんでござる」

 

(なるほどな。……やはりあれはそういう意味か)

 

 アストライアが内心で納得したように頷いているとツクモが口を開く。

 

「アストライア殿。猫又の一族の悲願達成のため貴殿のご子息、アルハレムとその仲間である三人の魔女達を貸してほしいでござる」


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