魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第二百四十八話

「アイツ、何をやっているのよ? さっさと封印を解きなさいよ」

 

 時は少し遡り、魔女が封印されている石の社から離れた場所でアルハレム達の様子を見ていたリンは苛立ちながら呟いた。

 

「リン様。アルハレム様にも色々と準備がお有りなのです。なにしろこれから一人で魔女と戦うのですから」

 

 リンの隣に立つリョウがたしなめるように言うが、彼女はそんな言葉など気にした様子もなく鼻を鳴らす。

 

「ふん。何よ、それ? アイツ、もうあんなに魔女を従えているんでしょ? 今更魔女の一人や二人で何、慎重になっているのよ? ……全く、あんな厄介な条件がなかったらヒューマンなんかに頼らずに済んだのに」

 

 リンの最後の言葉は隣にコシュとヨウゴがいるため流石に小声であったが、それでもリョウの耳はそんな小声の呟きを拾っていた。

 

 歳若いエルフは他の人間の種族、特にヒューマンを下に見て侮る傾向があるのだが、リンと同じ世代のエルフは長老格のエルフ達の影響のせいか特にその傾向が強い。これまでにもリョウやリンの父親であるエルフの領主サンが何度も言い聞かせたが、一向にリン達のヒューマンを見下す態度は治らなかった。

 

「リン様! いい加減に……………っ!?」

 

 リョウが先程よりも強い口調でリンをたしなめようとしたその時、突然強い光と風が生まれた。

 

「こ、これは……!?」

 

「一体何なのよ!?」

 

「ふ、封印が解かれた……!」

 

「これで……伝説の魔女が復活する!」

 

 突然の強い光と風にリョウとリンが両腕で顔を庇っていると、そこにコシュとヨウゴの声が聞こえてきた。

 

「何ですって!?」

 

 コシュとヨウゴの言葉にリョウが手で光から目を守りながら魔女が封印されている石の社の方を見ると、石の社は今の突風で吹き飛んだのか影も形もなく、代わりに見えたのは……。

 

「光の……柱?」

 

 リョウと同様に手で目を守りながら前方を見ていたリンが呟く。彼女の視線の先には、石の社があった場所から数条の青白い光の柱が天に登っていた。

 

 ☆★☆★

 

「い……痛っ」

 

 地面に倒れて気絶していたアルハレムは背中の痛みで気がつきゆっくりと上半身を起こした。

 

「何で俺、地面で倒れていたんだ? 俺は確か、石の社の中で………!?」

 

 若干記憶が混乱しているアルハレムは額に手を当てて記憶を辿ると、自分が気絶する前まで何をしていたかを思い出して慌てて立ち上がり辺りを見回した。

 

「そうだ! 魔女は! 封印はどうなったんだ!?」

 

 見ればアルハレムは契約の儀式の為に自分が作った魔法陣の端まで吹き飛ばされていて、社がある方に視線を向けてアルハレムはそこにあった光景に思わず呟いた。

 

「……光?」

 

 アルハレムの視線の先では、石の社が彼と同じ様に吹き飛ばされてなくなっていて、社があった場所には人の形をした青白い光が立っていた。人の形をした光は身体の輪郭から女性だと分かるが顔などの細かい所は分からず、その背中の辺りからは数条の光の線が天にと伸びている。

 

「まさか……あれが封印されていた魔女なのか?」


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