魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第二百四十一話

「よりにもよって今やって来るとは、間が良いのか悪いのか分からぬな……。分かった。失礼のないようにお通ししろ」

 

「はい」

 

 額に手を当てて呟いた後でコシュが命じると、来客を知らせに来た僧侶が一礼して本堂を後にする。

 

「コシュさん? 来客の予定があったでしたら俺達は席を外しましょうか?」

 

「あ……いえ。出来ることならば、その……拙僧としてはアルハレム殿達にはここにいてほしいのですが……」

 

「? そうですか……?」

 

『…………………………?』

 

 アルハレムが訊ねると何やら歯切れの悪い言葉を返すコシュ。今までの堂々としたものとは違うその態度に、魔物使いの青年も彼の仲間達も揃って首を傾げた。

 

「コシュ殿? どうしたのでござるか? その来客とやらは一体………まさか」

 

「ツクモさん?」

 

 コシュに問い詰めようとしたツクモだったが、言葉の途中で何かに気づいて苦虫を噛み潰したような表情となり、そんな彼女をヒスイが不思議そうに見る。大抵の嫌な事は飄々と受け流すこの猫又の魔女が、こうまであからさまに嫌な表情をするのはとても珍しいことだった。

 

「実は今やって来た例の客というのは……エルフなのです」

 

『……………………………!』

 

 新たにこの寺に訪れた来客がエルフであるとコシュが言い辛そうに告げるとアルハレム達全員の表情が強張った。

 

「……何でエルフがここにやって来るのですか?」

 

 リリアが自分の主であるアルハレムと仲間達の気持ちを冷え切った鉄の様な声で代弁する。魔物使いの青年達はただでさえ様々な事情によりエルフに対する好感度が最低であったのに、先程の封印された魔女の話を聞いた為、もはや「エルフ」という単語を聞いただけで気分を害するようになっていた。

 

「全ては封印されている魔女を救うためです。魔女にかけられた神術を解除するにはアルハレム殿の協力も必要ですが、同時に開祖の兄に協力したエルフが使っていた神術をかける道具も必要不可欠。今日来てくださったエルフは、その神術をかける道具を持って来てくださったのです」

 

「そうだったのですか……」

 

 アルハレムがコシュの説明に一応は納得してみせるが、まだ完全に納得していないといった表情をしており、それは他の仲間達も同様だった。

 

「アルハレム殿達がエルフに対してよく思っていないのは重々承知です。しかし今、このシン国のエルフ達をまとめているのは他種族に偏見を持たない御仁で、封印されている魔女の件も退治ではなく助けることに賛成してくれました。ですからどうか……」

 

「なっ!? 貴方達は!」

 

 コシュが不機嫌そうなアルハレム達をなんとか宥めようと話していると、成鍛寺の本堂に一人の少女の声が響き渡った。


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