「それじゃあ……そろそろ始めるでござるか?」
「え? ツクモさん? 始めるって何を……って、ええっ!?」
シュルル。パサッ。
突然自分の前に回り込んだツクモにアルハレムが声をかけようとすると、猫又の魔女は突然服を脱ぎだして自身の裸体を露わにする。
引き締まった四肢。鍛え抜かれた筋肉と丸みを帯びた柔らかな肉が同居する胴体。そして胸元にたわわに実った二つの巨峰。
男は勿論、女性から見ても一種の理想で、何度も見慣れたはずのアルハレムでも興奮を禁じ得ないツクモの裸体に、魔物使いの青年は驚いて思わず視線を逸らした。
「つ、ツクモさん? いきなり服なんか脱いで一体どういうつもりですか?」
「にゃふふ♩ どういうつもりも何もそんなの決まっているでござろう?」
妖艶な笑みを浮かべたツクモが自分の顔をアルハレムの顔に近づける。
「今夜は性欲が溜まりに溜まったリリア達が全員でアルハレム殿が搾りカスになってもなおも搾り取ろうとするのは間違いないでござる。だから今のうちにツクモさん一人だけで楽しませてもらおうと思ったのでござるよ」
「い、いや、それはまずいでしょう? こんな事がバレたらリリア達が怒り狂うのはツクモさんだって知っているは……むがっ!?」
「にゃん♪」
何とかツクモを止めようと説得しようとするアルハレムだったが、話している途中で魔物使いの青年は顔に乳房を押し付けられて言葉を遮られ、乳房を押し付けた本人である猫又の魔女は短く艶かしい声を上げた後で楽しそうに笑う。
「にゃはは。その時はその時でござるよ。……それにアルハレム殿の『ここ』は満更でもなさそうでござるが?」
そう言いながらツクモはアルハレムの股間に手を当てると、手に感じる感触に期待と喜びで胸を高鳴らせた。
「これまで数え切れないくらい、それこそ飽きるくらいツクモさんの裸を見たり肌を重ねてきたのに、それでもこんなに反応してくれるとは女として嬉しい限りでござる。では早速服を脱がすところから……」
「ツクモ様ここにいましたか……ニャアアアッ!?」
ツクモがアルハレムの服を脱がそうとしたちょうどその時、隠れ里の猫又の一人が家の中に入ってきて目の前の光景に猫の鳴き声の様な悲鳴をあげた。
「まったく……。これからって時に無粋な事をしてくれるでござるね。ツクモさんとアルハレム殿はこれからお互いの愛を確かめ合うところなので今すぐこの家から出てしばらく……具体的には二時間くらいこの家に近づかないでほしいでござる。……ああ、ついでにリリア達が調合場から帰ってきたら適当な理由をつけて遠ざけてほしいでござる」
「ふざけるんじゃねーですよ!? 私だけじゃなく隠れ里の猫又達全員がアルハレム様にお情けをいただけるのを我慢しているのにツクモ様だけズルいですよ!」
自分の主と肌を重ねるのを邪魔されてツクモが不満げに言うと、家の中に入ってきた猫又は尻尾を膨らませて怒声を上げる。
「ズルくなんてないでござるよ。アルハレム殿と肌を重ねる事ができるのはアルハレム殿の僕になったツクモさん達の特権でござる。……それで? この家から出て行かないのだったら何の用でござるか?」
「……え? ええ、そうでした。実は今、この隠れ里にアルハレム様に是非お話がしたいと言うヒューマン族のお客様が来ていまして、それでお迎えに来たのです」
「俺に客……? それってもしかして……」
ツクモさんに聞かれて猫又はここに来た目的を思い出し、それを聞いたアルハレムは何か思い当たることがあるのか、部屋の隅に置かれている自分の荷物……正確にはその中にあるクエストブックを見たのだった。